連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~ 作:アゲイン
始まるぞ!! 体育祭だ!!
そんな五十六話でございます
雄英体育祭 開幕!!
二週間が経った。
修練の日々、地獄のような毎日を爆豪たちはひたすらに耐え抜いてきた、はずだ。
なんというか、実感がないのだ。
記憶もない。
ただ訓練の日々を思いだそうとすると頭に痛みが走り内容を思い出すことができない。
二人は悪寒で震え上がる全身が訴える、これ以上はいけない、という信号に素直にしたがってそれ以上は過去を振り返らなかった。
それにもう、そんなことに気を割いている場合ではなくなっているのだから。
もうすぐ始まる。
そこまで来ている。
歩んだ結果のその場所が。
「・・・いくか」
決戦の時来たれり。
ナンバーワンを決める戦いが、始まろうとしている。
さあ、雄英体育祭の始まりだ。
◆
「なんか久々な気がする」
なんだろう、この、わたしの元に主導権が帰ってきたような感覚は。思っていることを自分できちんと表現できているような。
モノローグを語っているかのような、この感覚は。
「まあ、いいや」
それは、そこまで重要ではない。
目の前のことを頑張ろう。
もう、体育祭なんだから。
「ふう・・・ん」
体の調子もいい感じだ。
どこにも淀みを感じない。
隅々にまで意識が伝わってどこまでも自由に動く。
「まさしく快調」
さあ、見せにいこう。
「父さん」
娘の成長を、今日見せよう。
◆
『---さあやってまいりました!!
現代のオリンピックともいわれる一大イベント!!
今日は快晴! いうなれば新生! ニューフェイスたちの登竜門!!
長々と語る必要はねぇよなエブリバディー!!
雄英体育祭のぉおおお始まりだぁああああああああ!!!!!
』
プレゼント・マイクの宣誓により、開戦の狼煙が上がる。
多くの観客、選手の歓声が会場を埋めつくし、天に響けや地よ割れろやとばかりに、際限なく轟いていく。
「選手宣誓! 代表、爆豪 勝己君!」
18禁ヒーロー『ミッドナイト』が彼を呼ぶ。
ヒーロー科で成績一位の彼が今回の宣誓に選ばれていたのだ。
言っておくけど本当はわたしが一番なんだからね。わたしの経歴上そういう目立つことを避けるために成績は誤魔化されているのだ。
運動服に身を包んだ彼は堂々とした足取りで台の上に歩いていく。
・・・・・・その体は痛々しい姿だ。
全身を包帯で染めた彼の壮絶な日々を嫌でも想像させる。
「---宣誓
俺が一位になる
てめぇら全員ぶっ飛ばしてな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ほう、よく吼えた。
さすがはわたしたちの特設ステージをクリアしただけはある。
今までの彼からは感じられなかったであろう、研ぎ澄まされた感情の噴出を感じる。
一皮剥けてよかったじゃないか。
ここにいる全員を敵に回して、それでも勝つと言ってのけるか。
その意気やよし。
「・・・受けて立とう」
そのくらいじゃなきゃ、楽しくないからね。
怒声の上がる観衆の中、その姿勢を曲げることなく堂々と受け止める彼の姿を見ながら、その宣戦布告を受け入れる。
早く戦おう。競い合おう。
「一番はわたしだ」
それだけは------譲らない。
こうして、雄英体育祭は始まった。
ありとあらゆる人間がその矜持を掛けて戦う刻が来た。
そのぶつかり合いこそが、人を高みに連れていく。
父よ。
その言葉が本当のことだとよく理解できた。
こんなにも、心が踊るのだから。
生徒の中で立ち上がる闘志を感じながら、第一競技の開始を、今か今かと待つのだった。
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