連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

巨英、くる
タイトル通りの三十六話でございます


決着

「・・・希くんは、気絶しているか」

 

 サイクルエンドへの過剰なエネルギー供給により、彼女は精魂尽き果てて意識を落としていた。

 オールマイトは彼女のボロボロな姿に、守れなかったことへの後悔と、敵への怒りがこみ上げる。

 

「・・・・・・許さん!!」

 

 希をそっと地面へと横たえ、前に進むオールマイト。脳無は黒霧の個性により自由を取り戻し、共に死柄木のところへと集まっていた。

 

 

 

「どうしますか死柄木」

「決まってんだろ! やれ、脳無!!」

 

 希に消滅させられた箇所は徐々にだが回復が進み、個性による修復にも限界がきているのがわかる。

 それでも死柄木は目的であるオールマイトの存在に、溢れんばかりの憎悪を込めて脳無をけしかける。

 

「オールマイト! 気をつけて、そいつは打撃が効かないんだ!!」

 

 距離を詰める両者、緑谷はせめてもの情報をオールマイトへと知らせる。オールマイトはそれに軽く頷きを返し、鋭い目線で眼前の敵を睨み付けた。

 

「勝負だ敵よ!!」

 

 そして始まる乱打戦。

 肉体が出すものとは思えないような音が重なるようにして響く。オールマイトは敵が繰り出す拳の重さに内心驚愕していた。

 

「(なんという力だ! こんな相手にこの子たちは立ち向かっていたのか!?)」

 

 自身に匹敵するやもしれない脳無の怪力。加えて対打撃、超回復と並みの敵を越える相手に対しここまで奮戦した者たちを思い、彼の感情にさらなる火が灯る。

 

「負けられないな!!!」

 

 圧倒的な脅威を前にして、退かずにあった者たち。

 その勇気ある行動を、時に人は蛮勇というだろう。

 しかし、しかしだ。

 そこに身を置き、誰かの盾になることこそ『ヒーロー』としての在り方!

 誰よりもそれを実践してきた彼が、その行動に心を奮い立たせられないわけがなかった!!

 

「いくぞ敵よ!」

 

 自身の限界を今越えんとばかりに加速、強力になっていくオールマイトの拳打。風を生み衝撃を放つ人型のタイフーンが、一個の敵へと降り注ぐ。

 

「---ぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 ダムが決壊するように、脳無の腕が弾き上げられる。そこからは一方的な展開となった。

 オールマイトの攻撃に耐えきれず、二本線を刻みながら後退していく脳無。数えきれないほどの拳が脳無を襲い、そしてついに、渾身の一撃が突き刺さり、その巨体を吹き飛ばした。

 

「・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・」 

 

 拳を振りきった態勢のまま、荒い息でその行方を注視するオールマイト。彼は油断せず、壁にめり込んだ脳無を観察する。

 

「(教訓が活きた・・・ということか)」

 

 数ヵ月前、モノクロームとの対峙にて実感した自身の弱体化。友を止めるためにと赴いてあの体たらく。彼はその結果から学び、僅かでも肉体を回復できないかと手段を探しつつ、鍛練をやり直していた。

 その成果が、こうして実を結んだのだ。

 

 

 

「・・・・・・ゲームオーバーだ」

 

 死柄木は脳無の様子から、もうそいつが動かないことがわかった。

 目的を果たせないとわかった死柄木はあっさりと見切りをつけ、黒霧に帰還の指示を出していた。

 

「待て!!」

 

 そこに待ったをかけるのは戦闘の意思を滾らせるオールマイト。

 その姿を忌々しげに視界に納め、死柄木は悔しさというよりは決意のようなものをもって応える。

 

「・・・今のままじゃいけないことがよくわかったよ。癪に障ることだがあの野郎の言葉の意味がようやく理解できた。反省するべきだな」

 

 そして彼は奇妙なポーズでさらに言葉を重ねる。その姿にオールマイトはかつての友の影を見た。

 

「やはり奴が・・・!?」

「だが俺は・・・・・・反省すると強いぜ」

 

 

『次は必ず殺す、オールマイト』

 

 

 その言葉を最後にして、敵の首領死柄木 弔は霧の中に消えていった。

 今ごろ飯田の活躍により、各地の敵も制圧されているだろう。

 しかし、彼らの中に何か後味の悪いものを残したという思いが、勝利したという実感よりも深く、胸に刻まれていた。

 

 

 かくして、USJによる争乱は、こうして終息を迎えたのであった。




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