連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

三人衆最後の一人、宮造と娘の戦い
そんな三十話でございます


USJの三人衆 匠の宮造

 才改学園からの刺客、彼らは今回の襲撃で果たす役割というのがそれぞれ与えられていた。

 

 斑目は増援の妨害。

 紅厳院は黒霧の護衛兼集団戦力の牽制。

 そして三人衆のリーダー、宮造はその能力故にある意味一番大切な役割を負っていた。

 

 

 

 

 

「ふむ」

 

 宮造は果断なく迫る鋭利な刃を見た。十分に命を奪うに足りるその武器を操り、鋭い目線を向けてくる標的のその動きを最小限の動作をもって回避する。

 追尾してくる攻撃を、自身の手に持つ仕事道具にて弾いて距離を離す。

 

「・・・・・・のこぎり?」

「左様。己の仕事道具故、御相手するに不足はないかと」

 

 相手、希望ヶ峰 希が持つ二刀と同じように構えたのは主に木材を切り出すのに使われるおよそ戦闘には向かない道具である。しかしそれを扱うのが自分ならば話は違うと、そういう意味を持たせた動作を見せれば、その氷のような表情を僅かに歪ませ体の各所に力を込めていくのが伺える。

 

「先の紹介では足りぬ部分がありましたな。一応、『超高校級の番匠』などという肩書きを持っております」

 

 番匠、というのは大工の別な呼び方ということでさほど違いがあるわけではないが、何故かそのように命名されている。

 そういった裏事情があれど今は関係がない、必要なのはこの場にて自身の役割を果たすことであると、宮造は改めて目の前の少女に意識を集中させた。

 

 戦闘を開始してからいくらか時間が経ち自身の動きに対応しだした彼女によって、釘投げだけでは迎撃できなくなりついにはこの鋸を出すに至った、となれば最初の関門は突破されたと見ていいだろう。 

 そう判断した宮造は、今度は自分から攻めることして前に踏み出す。大きく広げた両手にて、迎え撃つぞと言外に告げてやれば早速とばかりに襲いかかってくる。

 

「--っふ!」

「甘い」

 

 相手の武器は両刃のブレード。当然宮造が使う鋸よりも厚く鋭い。当然まともに打ち合えば負けるのは必定。しかし逆に言えば多少の柔軟性は持っているということであり通常とは違った動きができる。

 たわませた二対の鋸は迫りくる二刃の内側の腹の部分、さらにその先端を叩くようにして打ち据える。

 それによってずれる剣筋。

 サイボーグとして尋常でない力を発揮するとはいえ、けして技術が通じない訳ではない。機械化されていようとも衝撃を受ければ僅かに止まる。

 その隙が数瞬とはいえ宮造が見逃すわけはなく、

 

 

「御免」

「くっ!?」

 

 

 斬りつけたのは差し出された形となった手首。体を引き距離を離そうとする自分の動きを利用し、その関節に傷をつける。生憎引ききる前に刃の部分から腕をどけられたのでさほど深くはついてはいない。

 しかし、

 

「初めてではないでしょうに、そこまで驚かれますか」

 

 宮造がつけた傷は本人が想定していたよりも浅いものだ。手首を見る彼女の反応はその小ささに比べて酷いものだ。

 

 

 

 

 

「あ・・・あぁ・・・・・・!!」

 

 希の脳内は様々な感情で乱れていた。

 父の刺客、その力量を軽く見た訳ではない。父に挑むつもりで戦闘を仕掛けた。

 にも関わらず、一撃を食らわせるどころか逆にこうして傷をつけられている。

 その事実からもたらされるのは一つ。

 

 

 父は今まで、手加減をしていたということだ。

 

 

 自分が身に付けてきた戦うための力は、全て父から教えられたものだ。そこには様々な方法がある。だが、それが全てでないこと、教えられていなかったことも当然あるといっていた。

 その技術、それをこの男は扱っている。

 

「・・・・・・そういう、ことなの・・・・・・!!」

「何、!?」

 

 宮造がその変化に気づいた時には遅かった。

 瞬間、捉えていたその姿が居なくなる。

 

「(消え、)」

 

 突如湧く、後ろへの気配。

 

「--っせや!!」

 

 その気配に向けて鋸を振るえば、伝わるのは破壊された自分の道具の感触。それも両断されたとしか思えないほどの微細な抵抗。素早く放棄して向き直る。

 

 振り切った体勢のまま、こちらを見据えるその視線。その温度の違いで自身の体に突き刺さるような感覚を覚える宮造。

 

「その笑み、まるでマグマのようだ」

 

 変わらないと思っていた表情は崩れ、何故か笑みを浮かべる少女の姿が恐ろしく映る。

 瞳は変色し紅く染まっている。それもあってかますます抱いていた印象が崩れていく。

 

「---理解、できた」

 

 そして口を開いて出た言葉がこれだ。どうにも自分は勘違いをしたいたようだと、宮造は自身を諌める。

 あの停止は、けしてマイナスの感情で起こった訳ではない。寧ろ逆。少女はあのとき、喜びを感じていたのだと。

 

「父はあなたに告げたのは、わたしの相手をするということ。それはこのためだった、わたしに理解させるためだった!!

 

 

 今理解できた! 心でなく魂で!!

 

 

 成長せよと、あの人は語りかけてくれている。

 わたしに足りないものを、教えきれなかったものを、この男に託したのだと、そうあの人は言っているんだ!!」

 

 

 その光景を見ている宮造は、彼女と同じく理解した。

 真の脅威はここにあると。

 華開くように変貌を遂げるその精神の在り方こそが。

 

「・・・・・・」 

 

 自らの役目、それを見抜くか否か、結果は出た。

 所詮自分の価値などその程度。数あるあの方の才能には届かぬ、その程度の人間。

 しかし、なれど、いやだからこそ。

 

「・・・よろしいか?」

「うん」

 

 その役目、最後まで果たしてこそ本懐。価値を示さずして消えるつもりは毛頭なく、この少女との勝負に挑む自身を誇る。

 

「改めて、その身に刻んでいただこう。

 

 己は宮造 斉像!

 

 生まれ出でし時より地を這いて進む無個性である!

 しかし己は自らに変革を望みて悪を往く者なり!

 己が往く先に希望なく、ひたすらなる絶望の徒なり!

 

 さすれば己が前にて汝何を成す者であるか!」

 

「わたしは希望ヶ峰 希。

 

 悪の父に育てられた正義を志す者。

 父の邪意を砕きその先の未来を望む、その先の平穏を望む者。

 希望の世界を望む者!

 

 わたしはわたしの正義のために、ここであなたを倒す!!」

 

 両者共に挑む者。

 希望と絶望の前哨戦は、こうして佳境へと突入していく。




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