連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~ 作:アゲイン
娘の試験を見ていた教師陣の視点になります
よろしくお願いします
採用担当のヒーローたちは目の前の結果に愕然とするしかなかった。
試験も順調に進み、目ぼしい者たちが注目されはじめ、さあどうするんだ? という場面であったはずなのだ。
0ポイントの標的にどう立ち向かっていくのか、逃げるのかい協力するのかいどっちなんだい、といったところにあれである。
あまりの光に付近の監視カメラが機能しなくなり、復帰したところに見えてきたのはボスの風格を感じさせない姿にされたターゲットの無惨な映像である。
これをいきなり理解しろというのは難題であるがそこは現役ヒーロー、すぐさま我に返り事態の真相を探り出した。
そして発見されたのは驚くべき光景だった。
「なんなのこの娘? 速いってもんじゃないわ」
「うーわ、ここ見ろ。綺麗すぎだぜこの切り口」
「あっ、ここだここ!! ほら、よく見ろって!!」
「ごついなこれ、何メートルあるんだ?」
「離れたアングルから・・・・・・こいつはまいった・・・・・・」
口々に出てくる驚愕の映像、明らかに戦闘に慣れた身のこなし、強力な兵装を難なく操る技能、思いきりの良さ。どれをとっても一線を画した実力であると言える。
「---だけどYO、こんだけできる奴が今まで無名だったってことがありえんのか?」
説明役で実際に多くの受験者の顔を見てきたプレゼントマイクが疑問の声を挙げる。明らかに学生の範疇を越えた戦闘能力、あからさまに力を誇示しているようにも見てとれる行動に、こんなに目立つ奴がノーマークだったこと事態に冷や汗が出てくる。
その事に思い至ったのか、他の面々も顔を曇らしていく。
その時だ。
「な~に、心配いらないだろう」
力強い声色が周囲に響いた。その発言に顔を上げ声の主の方に視線を向ける。
そこには平和の象徴、オールマイトの堂々とした姿があった。
「確かに希望ヶ峰少女の個性は強力だ。戦闘センスも素晴らしい。そんな娘がヒーローになるためにここに来たんだ。むしろ歓迎すべきじゃないか?」
「ですがオールマイト、彼女の経歴は綺麗過ぎる。ここに書いてあるだけでも彼女が優秀であることを証明していますが、あの個性で問題が全く起こらないなんておかしいですよ」
他の担当ヒーローが反論するが、当の本人は笑みを深めるだけだ。
「確かに君の意見にも一理ある。だがしかしだ、頭から否定してしまっては可能性は0だ」
「だったら、」
「そこでだ、私が直接面接をしようと思っている」
この発言に周囲の反応は別れた。驚愕、納得、心配、好奇心等など、いろんな感情が錯綜するなか、さらに彼は発言を続ける。
「これには根津校長にも立ち会って貰いたいのですが、よろしいですか?」
「そうだね! ボクも興味があるよ!!」
「それと相澤先生、よろしいですか?」
オールマイトとは反対側の端の方に、まるで気配を消すようにその男は存在していた。
一見暗い印象を受けるがその実力はこの中でもトップクラスに位置しているアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッドこと相澤消太である。
「・・・・・・なぜ私に?」
「勿論君の観察力を見込んでのことさ。先生なら我々が見落としてしまうようなことでも拾い上げることができると思ってのことです」
自身に対するオールマイトからの評価に思うところがあるのか、数秒目を瞑ってから彼は切り出した。
「そもそもまず、俺は反対です。確かに強力な個性を持っていて上手く扱っている。ですがこいつの試験の行動を見る限りヒーローに向いているとは思えません」
「ほう、それはなぜ?」
「あいつは終始一人で行動していました。他人への介入も最低限、礼すら無視している。まるで自分本意な行動だ」
それではヒーローとしてやっていけない。
言外に、しかし強く、その瞳は語っている。
「だからこそだよ。彼女にヒーローたる志、その根幹を聞こうというのだ。それを聞いてからでも遅くはないだろう」
「・・・・・・引く気はない、ということですか」
「彼女はまだ子供だ。可能性を潰してはいけない」
オールマイトの言葉は穏やかだ。しかしそこには相澤同様、いやそれ以上の思いが込められている。
それを受け相澤もまた、一人の教育者として向き合う覚悟を決めた。
「・・・・・・わかりました、御受けましょう」
「ありがとう、相澤君!!」
それじゃあ呼び出してくるね、と発言を控えていた根津校長が席を立った。プレゼントマイクを供に携え、彼女を迎えにいくようだ。
こうして彼らは邂逅する。世界の敵の娘と。
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