連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

父、新キャラについて説明する
そんな二十四話でございます


正しさで救えなかったから

 御鏡君の個性によって学園艦へと帰還した私は、一仕事終えた満足感を味わいながら艦内の道を歩いていた。

 

 やあ、画面の前の皆様、場面が変わっても私だ。希望ヶ峰 絶だよ。前回はすまなかったね。なにぶん思った以上に彼がチンピラだったもんだから、おじさん、ついやっちゃった。

 あんな風にイキってる若者ってのはなんでこう、自分の力というものを過大評価するんだろうかね。私の娘を見習って謙虚になったほうがいいぞ。

 

「それにしても御鏡君。今回はとても良い働きだったね。さすがは一期生筆頭だ」

「はい! ありがとうございます! 全ては学園長様のおかげです!!」

「どうだね? 君の働きを労ってスイーツでもご馳走しようじゃないか」

「そ、そんな!? あの程度でそこまでいただくわけにはっ!!」

「はっはっは! なぁに遠慮はいらない。そうだ、ならば私自ら調理をしよう! まさか私の手掛けたものを食べれないとは言わないだろうね?」

「う、う~~・・・! そ、それじゃあいただく以外の選択肢がないですよ~~」

 

 後ろに控えて着いてくる彼女はこちらが語りかけるたびに表情を変え、見ていて飽きることはない。こういうところを見せるようになってから本当に見違えるほど魅力的な少女になったものだ。初めて会ったときにはそれはもう根暗ってな具合でどうしたもんかと思ったが、やはり変われば変わるものだね。

 

 そういえば彼女、御鏡 ミラという少女についてほとんど説明がなかったね。画面の前の皆様にはいきなり新キャラが出てきてなんじゃこいつ、と思っていたことだろう。ここらでちょいと彼女のことを知ってもらおうか。

 

「ちなみになにがいいかね?」

「じゃ、じゃあ・・・・・・モンブランで」

 

 

 

 

 

「ショートケーキ以外あり得ない・・・・・・!!!」

「どうしたの希?」

 

 

 

 

 

 はて、なにか近しい存在がこちらを察したような気配がしたが、いったいなんだったんだろうか? まあいいか。個人的な調理室についたことだし、今は調理をしながらついでに彼女の経緯を脳内で垂れ流しにしていこうじゃないか。あまり好ましくないだろうが、我慢しておじさんの脳内から彼女の姿を想像してくれたまえ。

 

 

 

 まず始めに、私が集めた生徒は『無個性』の人間しかいないわけだったんだが、まあなんというか、私も完璧というわけにはいかないところがあるわけで。

 個性登録票をハッキングして情報収集したわけなんだが、どうやらこの年になっても自分が個性を持っていることに気づかずにいるような子達がいたわけなんだよ。後日教育の過程で判明したんだ。

 

 その一人が、彼女と云うわけだ。

 

 今までも言ってきたが彼女の顔には傷跡が残っており、彼女の証言から産みの母親からの過剰な虐待の結果付けられたものらしい。

 どうやら水商売を生業にしていたらしく、その憂さ晴らしのため、おそらくは父親の方に似ていたその顔には特に激しく憎しみをぶつけていたのだろう。

 我が校への招待も少々変則的で、顧客へのメール対応をさせていたときを見計らって勧誘したのだ。なのせ彼女はそういったものを持たされていないのだからね。直接行くのにもあまり大きな動きをしたくない時期だったので断念せざるを得なかった。

 そんなこんなで入学を果たした彼女だったのだが、まあ常識も知識もないわけで生徒の中でも下の方から数えたほうが早いくらいだったさ。

 

 でも、この学園で発揮されるのは前に進む『希望』ではない。

 他人を自らと同じ底の底へ引きずり込む『絶望』だ。

 

 ちょいと意識を変革してあげれば、彼女はみるみる内にその才能を開花させ、並みいる生徒を押し退けて見事一期生筆頭にまで上り詰めたのだ。

 暗さは鳴りを潜め、毒花の如く艶やかに変化した彼女はその傷を隠すようにしていた髪を切り、見せつけるかのようにし始めた。

 貧弱な肉体は健康的なそれになり、女性的な凹凸が美しい。Dはあるね。

 

 なに?

 『個性』を持った奴は学園の理念に反しているだって?

 知ったことか!!!!

 今さら退けないんだよ!!!

 それに彼女の境遇に同情する者たちが教師のほぼ全員なんだぞ!?

 生徒たちだってそうだし、そもそもこの学園は超人社会で虐げられた者が再起するためのものだぞ!!!

 なんの問題もないわ!!!!!

 

 よし、自己弁護完了。モンブランも完成だ。

 

「よーし、できたぞー」

「わぁあ!! とってもおいしそうですぅうう!!!」

 

 今はこの笑顔になれたことをまずは喜ぼうじゃないか。彼女のこれからの未来が多くの人々の絶望とともにあらんことを私は願うばかりだ。

 幸せそうな顔をしながらハムスターのように頬を膨らませる姿を見ながら、彼女がもたらすであろう未来を思い浮かべると私も自然と笑顔になってしまうね。

 

 

 それはそれは、絶望的な光景になることだろう。

 

 

 さあ、これが食べ終わればメンバーの調整と他にもいろいろとやらねばならないことが立て込んでいるからね。忙しくなるぞ。楽しくなるぞ。

 ああ、娘よ。

 どうか私のこの試練、受け取っておくれ。お前の成長をなによりも誰よりも、私は熱望しているぞ。




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