連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

父、絶望として語る
そんな二十三話でございます


絶望を成す者

「まずは語るべくもなくその杜撰な計画とやらでは成功など望むべくもないことは既に明らかになっていることをわざわざ説明してやろう。

 そもそも敵地に乗り込んでやることがたかだかターゲットの抹殺という点でもはや目も当てられない。それは高度な戦術のもと電撃的に行わなければ加速度的に失敗する可能性が上がるものだ。

 それをちんけな敵の集いで行うだとぅ?

 そいつは相手を侮りすぎじゃあないかい。奥の手とやらにそこまで自信があるのだろうね。バカ丸出しだ。

 

 オールマイトを殺すことがそんなに重要か?

 そんなもの誰にだってできる!!

 そこら辺の人間を拉致って殺してバラした映像を大々的に晒して煽って民衆を騙して追いたて精神的に追い詰めればいいだけの話だ。地に墜ちたそのあとに思う存分なぶればよろしい。

 それとも毒ガスまみれの密室に飛び込まなければ助けられない人間が大勢いればそれだけで十分だ。

 やつ一人を殺したいなら、やつ一人でしか救えない人間を作れば、それだけで十分なんだよ。

 

 それでも順序よく殺したいのであれば今回の作戦は、本当に殺すだとかを考える必要性は全くない。

 与えるのは脅威だけでいい。

 いつ、どこで、だれが、どうのようにあろうとも、

 こうも簡単に、すぐそばで、いとも容易くその命の灯火を消し去るにたる脅威があるぞということを、瞼を閉じずともありありと思い返せるような鮮烈さをもって彼らに刻み込むのだ。

 

 その恐怖を存分に利用しよう。

 戦えない足手まといを量産しよう。

 その血袋で全身を固めて動けなくしてやろう。

 噎せかえるほどの絶望を、溢れ落ちるほどの絶望を、何度も何度も与えてあげよう。

 手を動かせば十人死ぬ、足を動かせば百人死ぬ、喋れば千人、死なねば万人。

 ヒーローたる彼らからヒーロー足らしめるヒーロー以外の民衆全てを奪ってやろう。

 

 そのためにまずやることは、こんなちゃちな活動じゃない。

 君が本当にしなければならないことは、この裏の世界において絶対的な存在になることだ。

 今の君を振り返ってみろ。

 こんな寂れたところで、管を巻きながら殺す殺すと、そんなことはそこら辺のチンピラにでもさしておけばいいのだ。

 

 だがしかし、今回の君の行動事態は悪いわけではない。

 内容が悪いだけで、この行動単体で見れば悪の偉業を成すと言っていいくらいだ。

 雄英という組織が今までにない打撃を受ける。それが凄惨で残酷な結果であればあるほどいい宣伝となるだろう。君はその成果をもってさらに大きな事に望むための戦力を得るだろう。

 

 

 というわけで、今回はヒーロー科の子達をズタボロにしてやろう」

 

 ふう、長々と喋っていささか喉が痛くなってしまったね。私の悪い癖だ。止まらなくなってしまうんだよね、語り出してしまうと。

 

「こちらを」

「ありがたい」

 

 丁度よいタイミングで冷えた水の入ったコップを差し出されたので遠慮なく受けとる。こういう細かいところに気が利くものこの娘を供にしている理由の一つだ。

 

「さて、大方喋りたいことは出し終えたのでそろそろおいとましよう。いや悪かったね時間を使って」

「・・・・・・」

「っ!? でしたら私が」

「必要ないよ」

 

 飲み干したコップを返して御鏡君に合図を送る。こちらの手の動きに反応して彼女は一枚の鏡を取り出す。

 

「もう場所は覚えたのでね。記念に一枚進呈しよう」

「こちらでよろしいですか?」

「うん、構わんさ」

「あの、一体・・・・・・」

 

 小走りで壁に設置したのはなんの変哲もないただの鏡だ。大きさもさほどのものではなく手のひらサイズといったところ。それでなにができるのかと黒霧君は思っているのだろうが、まあ君と同じようなことさ。

 

「それではこれでおさらばだ。決行の日までにこの鏡を壊すことなくこのままにしておくならば、それをもって参入に承諾したとして先のメンバーを送ろう」

 

 『さようなら』

 

 それを合図に鏡が輝きだして彼女の個性が発動したのを確認する。たちまちの内に私と御鏡君を包み込んだそれは一瞬の間をおいてそこから二人の姿をかき消した。

 

「・・・・・・これは」 

 

 光が収まればなにもなかったと錯覚するほどに静寂がその場を支配していた。黒霧もそれでようやく理解できた。

 

「あの少女、転移系の個性を持っていたのか」

 

 情報とは違う、という感情と、およそ人の思考ではないという畏怖のような感情が混じり合い、煙のごとき自分の体が震えるのを感じる黒霧。

 

「・・・なんなんだあの野郎は・・・・・・」

 

 その力量の差に完膚なきまで叩きのめされた死柄木は、今まで感じたことのない屈辱があるというのに、それとはまた違った感情が自分の中で生まれてくるのが理解しがたかった。

 

 

 悪と絶望の邂逅は、こうして一端の終着を迎えるのであった。

 しかしそれは、さらなる絶望の幕開けの一つでしかないことを彼らは知らない。

 相手はまさしく、この超人社会で進化した悪意の塊でしかないと分かるのはまた後の話である。




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