連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~ 作:アゲイン
父、原作の悪を嗤う
そんな二十二話でございます
私のその提案に、主催主の死柄木君は顔面につけた手首の装飾の奥から面白くなさそうな視線を向けてくる。いろいろと承服できないところがあるだろうが、まあ話はこれからだ。
「君たちが計画しているパーティーについて小耳に挟んでね。丁度いいしどうせだから参加させてもらおうかとね」
「・・・・・・気に入らねぇ」
「それだけで拒否しないでくれよ。別に邪魔しようってわけじゃないんだからね。人員は出すさ」
またもや懐に手を入れて資料を取り出す。カードのような形状のそれを彼の前に差し出す。
「なんだよこれ」
「学生証のコピーだよ。今回参加させようと思っているメンバーの簡単な紹介が載せてある」
「よろしいのですか?」
普通に考えれば問題行為だが、私は学園長だよ? 生徒の全ては私の管理するところであり所有物なので問題はなにもナッシング。そもそも善人の法に縛られない私にそんなことは関係ないのさ。
「これは見せ札にすぎないさ。それで、どうだい」
「・・・・・・はっ、話になんねぇよ」
差し出したカードを一瞥することもなく投げ返してくる。散らばるそれを素早く回収し元の場所へと納める。
「ふーむ、いい提案だとは思ったのだがね」
「お前なんぞの手なんて借りなくても、俺たちだけで十分だ。オールマイトを殺すのだってな」
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・ぶふっ!!」
自信が感じられるその発言に思わず吹き出してしまった。
なんだって?
『俺たちだけで十分』?
『オールマイトを殺せる』?
ふふふ、いやー、笑わせないでくれよ。
口元を押さえてこれ以上笑わないようにしようとするが、ふふ、ふふふ、うぷぷぷぷぷぷぷ!!
「だぁあーーーーーはっはっはっはっ!!!!」
だめだ! こんな、こんなおかしなことはない!
笑いすぎて思わず席から床に身を投げ出してしまった。それでも収まることなく際限なく笑いが込み上げてくる。
「き、君たちだけで・・・ぐふっ!・・・オールマイトを殺すだって!! 雄英に乗り込んで!? ここまで荒唐無稽な大言壮語が飛び出すとは、もう無理だ! 可笑しすぎる! 我慢が出来ない! ぐふふっ!ぐふ! うぷぷ!うぷぷぷぷぷぷ! ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
バンバンと何度も床を叩き、吹き上がる床の埃やゴミが衣服を汚そうとも収まらない。腹が捩れるとはこの事だ。苦しい。笑いすぎて苦しい。ここまでのダメージはそうそうないぞ。
「学園長。そろそろ」
「ひっ、ひひっ! いやっ、すまなぶふっ! すまないね!」
あー、笑ったなー。ここまで笑ったのは本当に久しぶりだ。
のたうち回っていた酒場の床から立ち上がり、腹に気合いを入れることでなんとか調子を戻すことができたが、ふふ、少しでも力が緩めばまた笑いだしそうだ。
もう一度死柄木君に向き合えばその眼光は憎悪にまみれた凄まじいものとなり、今にも動き出しそうな体の震えがその殺意の大きさを表しているようだ。
「・・・まずはお前から殺してやる!」
「いかんね。『殺した』なら使っていいぞ」
迸るような殺気そのままに、真っ直ぐこちらの首に目掛けて伸びる手。
その手に宿る彼の個性から危険感ともいうべき気配が立ち上ぼり、もう触れる寸前といったところで唐突にその勢いが消失し床へと叩きつけられる。
「・・・あぐぅ!?」
衝撃に呻き声をあげ汚い床に伏せることになった死柄木君。さらにその体は主要な関節をほぼ全て外されている。もちろんこれは私の行たものではない。
「ご苦労」
「はい!」
目にも止まらぬ早業を繰り出したのは私の背後で付き人よろしく控えていた傷顔の少女。一瞬にして脅威なる存在を無力化してのけた手腕はすでに練達の域に届いている。この娘の存在を無視して私に届くとでも思ったのかね。
「大口叩いてこのザマだ。分からんかね? おつむが足りない」
「くそがぁあああ!!」
芋虫のように蠢くその姿、君にとてもよく似合っているよ。
「先人にならい説明しよう。ガキが語る理想とやらがどれほど無意味なものなのかをね」
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