連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

娘、戦闘を語る
そんな二十話でございます

この作品初の約三千字という文章量
説明をもっとスマートに出来るようになりたいですね


わたしと戦闘講評

 戦いに勝利したわたしたちは、その結果を出せたことに大いに喜んでいた。

 

「やったね希ちゃん!」

「まさかここまでとはな」

「二人のおかげ。ありがとう」

 

 それからお互いを称えながらみんなのところに帰還する。そこには大番狂わせを起こしたわたしたちに早くも声援をかけてくれる面々の姿が。

 

「すげーぜお前ら!」

「よくもまあやってやったね」

「ンーー驚き!」

 

 それに受け答えしているとヒーロー組のほうも集合したようで、そこでオールマイトの声が掛かった。

 

「ようし。全員揃ったようだね! 早速、素晴らしい結果になったこの試合の講評といこうか!」

 

 希望ヶ峰君! と名指しで前に呼ばれる。作戦の詳しい説明をさせるつもりなのだろう。呼ばれた通りにみんなの前に出る。

 

「こちらでも見ていたが相手の意表を突く良い作戦だった。しかし、この展開にならなければ機能していなかったところもある。もしヒーロー側が三人で来ていたら、とは考えなかったのかね?」

「それはあり得ないと思っていたので」

「ほう、それはなぜだね?」

 

 面白げに聞いてくるけど、別にどうってことはない。普段の生活を見ていて分かりきっている。

 しかしそうは思わないのか、作戦に嵌められた轟君は疑問の声をあげる。

 

「その通りだ。お前は---」

「『いったいどんな根拠があってそう考えたんだ?』 とあなたは言う」

「---いったいどんな根拠があってそう考えたんだ? ・・・っは!?」  

「この通り、あなたみたいなタイプの思考は読みやすい。それこそ次に何を言うかが分かるくらいには」

 

 わたしのこの先読みに動揺を隠せず、驚きの表情をその変化に乏しい顔面に浮かべる彼だけど、この程度なら父に及ばない。あの人ならもっと精度の高い思考トレースが出来るだろう。

 そんな彼は置いといて、わたしは説明を続ける。

 

「彼らが三人で行動しない理由として、まず轟君の個性があげられます。彼の氷の個性は強力ですが、室内での使用となれば大きな制限が掛かります。周囲の味方、今回はオブジェクトも傷つけてはいけないのであまり直接的な攻撃には向きません」 

 

 出来ても精々があのビルの瞬間氷蔵ぐらいだろう。通常であれば大きなアドバンテージだけど、その分思考に大きな隙を作ってしまう。

 

「障子君が向こうに居た時点で内側の動きはある程度把握されます。その場合、下手に動いては位置が分かってしまうのでこちらとしては待ち伏せの選択肢しかありませんでした」

 

 この障子君の索敵もそうと言えるだろう。一旦相手の動きがないと分かれば油断してしまうものだ。

 

「わたしは飛べる個性なので、ビルの凍結に巻き込まれないようにしてから別の部屋に隠れて轟君をやり過ごし、後から来る二人を迎撃するために廊下に待機していました」

 

 この時点で轟君と他二人の別行動になる。周りに影響がでる轟君は先行してくるだろうし、わたしを二人で押さえれば勝利は確実だと思ったのだろう。

 だからこそ、そこに勝機がある。

 

「尾白くんに頼んだことはわざと拘束されてもらうことでした」

「ほう、どうしてわざわざ戦力を減らすようなことを?」

 

 相手の攻撃が分かっているのなら、それを交わすこともできたはずだと彼は言いたいのだろう。でも、それでは勝てない。

 

「すいませんオールマイト、それは俺のほうから説明してもいいですか?」

 

 尾白くんが集団の中から声をあげる。実際に実行した彼から聞いたほうが分かりやすいだろう。オールマイトに目配せし、彼に話すように促す。

 

「では尾白少年。希望ヶ峰君からどのような指示が出ていたのだね?」

 

 みんなの視線の中、尾白くんは語っていく。わたしたちの作戦はこうだ。

 

 

 

 

「まず俺たちが聞かされた作戦は、俺と葉隠の二人で、一人で来るだろう轟を倒すことでした。俺が動けなくされたのは、わざとそうすることで相手を油断させるためです。実際轟は俺が捕まっているのを見て気を緩めていたからな。大成功だったよ」

「・・・そうだな、確かに油断した。でも葉隠はどこから出てきたんだ?」

 

 相手の思惑にまんまとはまっていたことに悔しげな顔をする轟。それでもどうして自分が負けたのか。学ぶ意欲があるのはその瞳が物語っている。

 

「俺の背後で尻尾に乗っていたんだ」

「なに?」

 

 自慢げに目の前に出される尾白の尻尾。彼の個性であるその強靭な尻尾がまさかそのような使われ方をしていたとは思うまい。

  

「オブジェクトのほうに視線がいったところで葉隠に合図を出して轟を襲わせて、希望ヶ峰に貸してもらったスタンガンで動きを封じたってわけだ」

「一発チャンスだから緊張したよー!!」

「まあ保険としてこれも渡されてたけど」

 

 そういって懐から取り出したのはコンクリート片。手頃なサイズにされたそれは投擲するためのものだろう。一度躱されてもそれで邪魔をして、もう一度葉隠に攻撃の機会を与えることも考えていたわけだ。

 

「上手く一度で倒せてよかったよ」

「・・・俺に関しては分かった。でも障子たちを希望ヶ峰だけに任せることについてはどうなんだ。危ないとは思わなかったのか?」

「それについては彼女に聞こう。やれるとは聞かされていたけど、どうやるかまではそこまで知らないんだ」

 

 ある程度納得したのか、今度はわたしのほうに話題が移る。わたしは体の機構を展開し、それを取り出す。

 

「これを使ったの」

「それは一体・・・」

「・・・・・・閃光弾、だな?」

 

 実際に食らった障子君から正解があがる。そう、二人を無力化したのはこの閃光弾だ。

 

「警戒はしていたがまるで気が付かなかった。一階の探索を終えて次の階層に行こうとしていた所でいきなり視界が白く染まった。なぜあんなにもタイミングが良かったんだ?」

 

 電飾野郎も何か言いたそうな雰囲気をしているが口を挟む気は無いようで、こちらを睨むだけだ。こいつに手の内を明かしたくないがしょうがないだろう。

 

「わたしには熱源センサーが備わっている。下の階層から来る二人の体温は、冷やされたあの環境の中でとても目立って分かりやすかった。階段から上がってくる二人のタイミングに合わせてこれを使ったの」

 

 瞳を指差して示す。センサーに変化している時には元の黒から赤い配色になるのだ。

 そしてこの閃光弾は父が作った特別製。破裂音は最小限に抑えられ離れた相手に気付かれない作りになっている。隠密性が求められる作戦なんかで使うことを想定したものだ。

 

「二人が目を眩ましている間に、透ちゃんが使っているスタンガンで簡単に無力化できた」

 

 

 

『何から何まで計算ずくだった』

 

 

 

 そう説明を終えると、周りからまたもや歓声があがる。

 こうしてわたしたちは、ほとんど戦闘をすることなく相手に勝利することができたわけだ。

 

「・・・・・・素晴らしい。その作戦をあの短時間でよく思い付いたものだ。相手の講じる手段を逆手に取る戦術、情報を偽装し油断を誘う手腕は非常に巧みであった。まさしく作戦勝ちと言えるだろう! 改めて、君たちの勝利を称えよう。今回は負けてしまったヒーローチームも、見ていた諸君も、この経験を糧にさらに自身を磨き、仲間との連携についてもっと学ぶといい! これはそのための模擬戦なのだから!」

 

 さあ、次の対戦カードを発表しよう!

 

 そんなふうに締め括った彼の言葉により、わたしたちはようやく注目から逸れることができた。

 悔しげな眼差しをする対戦相手の三人と、次の対戦メンバーの発表にざわめくクラスメイトたちを見ながら、わたしはそっと肩の力を抜いたのだった。 

 




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