今回ミラの出番すくない(´・ω・`)
「ぎゃははははは!もっと酒だ酒ェ!」
「おいドリィ!酒が足りねぇぞ、酒蔵から持ってこいモタモタすんな!」
北の海、ルーベック島東のミニオン島。
元海軍中将ディエス・バレルズ率いるバレルズ海賊団はこの島の廃墟をアジトとし、住み着いていた。
船長バレルズはラム酒を煽りながら部下達と笑い合う、手元の宝箱にはハート型の奇妙な果実が置いてあった。
「こんな果物一つが一体いくらで売れると思う…?
オペオペの実、単純に考えてもオメェ…医者がコレを食えば世界中から引く手数多の名医になれるのは確実。
歴史上にゃこいつを食って奇跡の手術で難病奇病を直し続け、伝説になった医者もいる訳だ…俺達にゃ関係の無ェ話だがなァ!」
「そうだぜキャプテン!俺たちゃ金の方がいい!」
「政府もこいつを50億ベリーで買い取るなんて頭がどうかしちまってるぜェ!」
「50億ありゃ俺達一生遊んで暮らせる!」
「ドリィ〜酒はまだかア!?」
元海軍中将であるバレルズは裏のコネを使い、偶然手に入れたこの悪魔の実を政府に売りつけようと画作した。
悪魔の実はこの世に二つと無い代物、ある程度の金にはなるとふんでいたバレルズだったが政府から提示された金額はなんと50億ベリー。
船員全員が一生遊んで暮らせる金を約束された彼等はまさに棚からぼたもちと大喜びし、一足先にアジトで祝杯を上げていた。
その様子を監視されているとも知らずに
◆
ミニオン島海岸 海軍監視船
「んで?バレルズの様子はどうだ?」
「一味全員アジトでどんちゃん騒ぎしているようです。
50億ベリー手に入るとなれば皆そうなるでしょう。」
「悪魔の実一つに50億か、政府はそこまでしてンなもんを手に入れたいのかよ。
オペオペの実、何か隠されてんのか?」
「さあ……書物によればオペオペの実は本人の死と引換に〝永遠の命を与える〟ことができるとも言われていますが、真相は定かではありません。」
海軍本部大佐ガスパーデ、及び海兵ヴェルゴは監視船から双眼鏡でバレルズのアジトを覗き込み話し合う。
彼等は3日後に行われる政府との取り引きを密かに立ち会うため、ミニオン島に潜伏していた。
「ですがわざわざミラ中将の部隊から我々の所へ増員を派遣してくださらなくても…」
「ボスの命令なんだ。50億のカネが動くんだろ?
監視は多いほうがいい。」
「ハッ!お心遣い感謝致します!」
「堅苦しいんだよオメー…」
はぁ、と溜息を吐くガスパーデ。
つい先日の事を思い出す。
……………………
大監獄インペルダウンを出航したミラ達一行はそのまま凪の海を渡り、北の海へと到達した。
電伝虫のベルが鳴り、予定通りバレルズを監視するヴェルゴという男から電話が掛かってきた。内容は以下の通り。
バレルズの一味は予定通り数日後、ルーベック島にて政府と取引をする。
しかしそれをドンキホーテ海賊団が邪魔し、悪魔の実を奪おうとしている。
それを見越したセンゴク大将はつる中将とミラ中将をドンキホーテ海賊団が内通者と合流するというスワロー島に派遣した。
つるとミラ、この2人の実力者を持ち出すということはセンゴク大将もかなり本気でドンキホーテ海賊団を捕らえる気だった。
そしてミラはこの時、監視船の戦力補強を提案しヴェルゴ仲介の下ガスパーデ含む20名の部下を増員させたのだった。
「ガスパーデ、これを持っていけ。」
「ああ?何だコリャ。」
出立前、船長室にてミラがガスパーデに手渡したのは手の中に収まる程度の小さな黒い電伝虫だった。
「盗聴用の電伝虫だよ、ベガパンクの所から拝借してきたんだ。
貴重な種だから手荒に扱うなよ?」
「なんでこんなモンを俺に…」
「ん〜…これは私の〝勘〟なんだが…
今回のドンキホーテ海賊団包囲の話、ちょっとウマが良すぎる。罠かもしれん。
だからこいつを持っていけ、盗聴した音声も録音されるから。ミニオン島で何があっても己の正義に従えよ?」
「俺がロクな〝正義〟を掲げて無ェことくらい知ってンだろが。あんま期待すんなよ。それとも…心配してくれてんのか?」
嫌味ったらしく言うガスパーデをミラは軽く笑い飛ばした。
「しんぱいぃ〜?心配などしていない、お前はこの私の右腕だぞ?
いつも通り気に入らない奴は全員ぶっ飛ばして帰ってこい。」
「ケッ!面倒臭ェ上司だぜ…」
…………………
「ああ、監視とか面倒臭ェ…」
ガスパーデが溜息を吐いたその時
「大変です!バレルズのアジトから火の手が!」
監視員の報告を聞き、一気に船内は慌ただしくなった。
監視船の船員は兵としてはエリートだったがマニュアル過ぎて予想外の出来事に対応が追いついていないようだ。
そんな彼等を一番高い階級であるガスパーデは一喝する。
「何ワタワタしてやがるテメェ等、さっさとつる中将に報告だ!ヴェルゴ、俺と来い。他にも少数の捜索隊を編成、周囲の捜索に行くぞ!シャキシャキ動け馬鹿共ォッ!」
「「「は…はいっ!」」」
海兵達は一斉に動き出し、ガスパーデもヴェルゴと共に静かに森の中へと入って行った。
そして直ぐにはぐれてしまったヴェルゴに怒るガスパーデ、そして少ししてから空に〝檻〟が張られ、ミニオン島の廃墟付近は閉じ込めを食らうことになる。
はぐれたヴェルゴを捜索するうち、ガスパーデはミラから渡された盗聴用の電伝虫が信号をキャッチした事に気付く。
◆
スワロー島近海
「なあおつるさん」
「なんだいミラ」
「一つ、思った事を言ってもいいか?」
「奇遇だね、アタシもだよ。」
「「海賊来ないなあ(ねえ)……」」
「ここ本当にスワロー島なのか?」
「そりゃ間違い無いんだが…センゴクの奴、どんな布陣を敷いたんだい?」
「お姉様、おつる中将どうぞ。
ホットミルクです。」
「ここあもあるー」
「お、気が利くな2人とも。」
「悪いね、頂くよ。」
ぷるぷるぷるぷる…ぷるぷるぷるぷる…
不意におつるさんの電伝虫が鳴き出した。
聞けばミニオン島のバレルズアジトから火の手が上がったと、明らかに異常事態だった。
「もしかして奴さん、もう既にミニオン島でバレルズを襲ってるんじゃ無いか?」
「センゴクの奴…ガセネタを掴まされたね。急いで行くよミラ!
パドルシップでウチの船も引っ張っておくれ!」
「承知した。機関部、蒸気機関最大!
フルスロットルでミニオン島まで向かうぞ!」
『アイヨォ船長、こっちの準備はいつでも万全だ!』
カトラスに触れ、帆をたたみ、格納されていたパドルを展開する。
今日は向かい風、波も強いからこっちの方が都合がいいな。
「おつるさん、船を曳航するから向こうに指示を!」
「任せときな、全速力で頼むよ。」
「任せろ。いい機関士を見つけてなあ、絶好調なんだ。」
トムのおかげで蒸気船は絶好調なのだよ。
その時船室から分厚い本を片手にレムが甲板へ上がってきた。
「ミラ、急に船が慌ただしくなった。
異常事態?」
「いや、これから海賊を追って……
そうだレム、お前がクルスと一緒に先行してミニオン島へ行ってこい。
ガスパーデのビブルカードを渡してやるからそいつを使って部下達の安全を確保してやってくれ。」
そう言ってガスパーデのビブルカードをレムに手渡す。
「ビブルカード…説明は前に聞いた。
これを追跡しガスパーデ及び当船舶の乗組員の安全を確保する。
了承、任せて。」
「ああ頼む、戦闘になっても加減はしろよ?それから……救える命は救え。
それは戦闘より優先される、分かったか?」
「……了承、ワタシは当船舶の〝医者〟。
救える命は救う。」
ご覧の通り、レムは俺の軍艦の〝船医〟である。
投獄されている間、ず〜〜〜っと読み続けていた医学書のおかげかそうでないのかレムはたいへん人間の身体に興味を示してた。
医学の知識もある程度持っていたのでそのまま医療班の1人に加えてる。
「よし、じゃあ行ってきてくれ。」
「………」コクリ
頷いてレムは甲板から海へと飛び降りる、そのまま海中から現れたクルスの頭に乗りミニオン島へと凄まじいスピードで向かって行った。
「…お姉様、レム一人にして大丈夫ですの?」
「まあ初戦闘だし、レムの実力(力加減)を計るのに丁度いいだろ。」
「いえあの娘、頭硬いですし。
戻せるからって島を氷漬けにして『全員生かした』とか言いそうですわ…」
HAHAHAHAHA!無い無い!レムに限ってそんな事は……………無いよね?
「……機関全速で」
ふ、不安になってなんか無いんだからね!
チラリと甲板の端を見ればイルミーナとまだ船に居座っているミホークが何やら話しているのが見える、和む
「現実逃避するお姉様も素敵ですが今は現実を御覧になって下さいまし…」
つらたん
◆
ミニオン島、沿岸付近
「2代目コラソン…とんだネズミが入り込んでいたもんだ…!」
しんしんと雪降り積もる中、夜の静寂を打ち破るような鈍い音が辺りに響く。
人目のつかない沿岸付近で1人の海兵が2人の海賊を惨たらしく叩きのめしていた。
「お前が8歳の時に失踪してから次に俺達の下に現れたのは実に14年後、ドフィはお前が弟だってだけで疑わなかった!なのにテメェは!!」
全身を覇気で覆った海兵の一撃が振るわれる度、骨の折れる鈍い音がする。
骨も内臓もグシャグシャにされ、呻きながら地に伏せる海賊を追い打ちとばかりに何度も蹴りつけた。
「この…裏切り者がァッッ!!」
「やめてくれえ!コラさんが死んじゃうよォ〜!!」
必死に脚にしがみつく少年すら蹴り飛ばし、海兵は彼に拳を向ける。
……………
『簡潔に説明しろ、どういう事だヴェルゴ。』
「コラソンは海軍が送り込んだスパイで、お前を陥れるためにファミリーに居たんだ。そっちは今何処にいる?」
『今ミニオン島に着いたところだ。
合流地点のスワロー島を遠くから見ていたら…軍艦が2隻も現れて流石に俺も悟ったよ。
実の弟が俺に牙を向いたとな。』
海兵ヴェルゴはボロボロの海賊2人を尻目にドフラミンゴと連絡を取っていた。
運命の悪戯か、はたまたロシナンテのドジなのか潜入任務だった
ロシナンテの裏切りを悟ったヴェルゴは怒り、彼を殺す気だった。
『この島で起きた事は〝消す〟必要がある…〝鳥カゴ〟を使うぞ。』
「ああ分かった。それで、『俺は今後も海軍に潜伏』…………」
ガサリ
草をかき分ける音にヴェルゴは思わず顔を上げる、そして先程自分の声が被って聞こえたのにも納得し歯噛みした。
ロシナンテを痛めつけたことで少し気を抜きすぎた。
「『済まない、少し外す。用ができた。』」
『………ああ、殺せ。』
ガチャリ
電伝虫を置くヴェルゴ、その視線の先には大柄で悪党面をした1人の海兵が立っていた。
その右腕にはさっきまで自分の声を盗聴していた黒い電伝虫が付いている。
そう、全て聞かれていた
「よォヴェルゴ、ダチとのお電話は終わったか?」
草陰から現れたのは、
◆
「………檻が張られていく?」
クルスの頭に乗り、高速で海を進んでいたレムはようやく見えたミニオン島の一部が檻のような物に覆われていくのに気付く。
「…急いでクルス。」
嫌な予感を感じ取ったのはレムだけでは無かったらしい、クルスは更に速度を上げて海上を突き進む。
次回、悪党VS悪党