大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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ネットで見つけたたしぎとビビの水着フィギュアがめっちゃ欲しくなった今日このごろ、短くてごめんなさい。




16 閑話(短くて済まない)、顔の無い大将のウワサ

◆Case.カイドウ◆

 

 

新世界、とある島

 

 

島に人気はなく、聞こえるのは森の中から時折響く獣の声。

そんな静かな島の浜辺に灯る大きな灯が一つ。

 

 

「ウォロロロロ…それで?俺はどれ位寝てたァ…」

 

 

「一週間ほどです、大将〝白蛇〟の海を割るほどの一太刀を受けたんだ。

寝込む程度ですんでラッキーですよカイドウ様。」

 

 

連日船で行われるどんちゃん騒ぎに釣られて目を覚ましたのか、カイドウは痛む頭を抱えながらむくりとベッドから身体を起こした。

 

断片的な記憶が蘇る。

 

宿敵であるロジャーの死

 

ヤケになって飲んだ三日三晩

 

そして唐突に閃く海軍本部襲撃

 

立ちはだかった白い髪の女

 

斬られる自分、そして敗走

 

 

「思い出したぜェ…あの女…大将〝白蛇〟…。

アイツについてなんか情報は無ぇのか?」

 

 

船医は困った顔をしながら首を傾げた

 

 

「それが…連日新聞には掲載されるんですが、名前以外詳しい情報が無えんです。他の『災害』の方々も知らねぇって話で、馬鹿げた憶測ばかりが走り回ってます。

政府が意図的に隠してるとしか…」

 

 

「ほぉ…謎か、俺もアイツが『女』って事しか分からねえ。

ウォロロロロロッ…それにしても良い女だった。酔ってるとどんな女も美人に見えるとは言うがアイツぁ本物だ…一本太ってぇ『芯』の入った、な。

じゃなきゃあこの俺が傷を負うハズが無ェ。」

 

 

そう言ってカイドウはミラに斬られた二本の傷跡を撫でながらニィッと笑う。

覇気で強化されたカイドウの身体を切り裂いたということは、彼女が自分を超える覇気を身に付けていたということ。

今まで出会ったどんな女よりも白蛇は気高く、そして強かった。

四皇の権力欲しさに言い寄ってくる女は過去にいくらでもいたが逆に自分に説教かます稀有な奴と出会ったのは生まれて初めてだ。

 

そんな女を自分の物に出来たら……

組み敷いて屈服させ、女の悦びを教え込み、離れられないよう自分だけのものに縛れたら…それはどれだけ愉しい事なのだろうか、想像しただけでカイドウは身震いした。

 

彼女ならロジャー(亡き仇敵)が残した心の穴を埋めてくれるかも知れないと

 

 

「決めたぜ。」

 

 

「はえ?カイドウ様、一体何を決めなすったんで?」

 

 

「大将白蛇……アイツは俺の女にする。今決めた。」

 

 

「なあ!?本気ですかい?

素性の知れねぇ亡霊みたいな奴で、しかも海軍大将なんですよ!?」

 

 

「俺ァ白蛇と直に()ったんだ、亡霊じゃねえことくらい分かってる。

それに大将でも一人の女だ、なら俺の物に出来るハズだろ?」

 

この時点でカイドウの心の内に自殺の二文字は消え、代わりに一人の女性を自分のモノにするという独占欲で満たされていた。

 

 

「そりゃあカイドウ様なら不可能は無ェと思いますが……それで、シンジケート使って情報を集めさせますかい?」

 

 

「当たり前だ、見つけ次第俺が飛んで行って今度こそ〝白蛇〟は俺の女にしてやる……!

ウォロロロロロッ!!!漲ってきたぜ!

まずはシンジケートの強化だな、あと前ジャックの奴が提案してた『能力者の軍隊』計画も同時に進行だ!

酒持ってこォイ!何テメェらだけで呑んでやがんだよォッッ!!!」

 

 

「「「アイサーキャプテン!!!」」」

 

 

景気よく返事した部下の持ってきた特大ジョッキへ波々に注がれた酒を煽りつつ、今後の計画と一足先に〝白蛇〟を傍に侍らせる様を想像し豪胆に笑うカイドウであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆case.エドワード・ニューゲート◆

 

 

新世界、とある海

モビーディック号船長室

 

 

「オヤジィ!オヤジィ〜ッ!!!」

 

 

「うるせえぞマルコ、静かに酒も飲めねえだろうが。」

 

 

「新聞見てくれよい、カイドウの野郎が負けたって書いてあるぜ!」

 

 

「グララララ…あのハナッタレ小僧か、遂にくたばったか?」

 

 

「いやどうやら死んでは無ェみたいだよい。それでカイドウを追っ払った奴の名が……」

 

 

「大将〝白蛇〟ィ……?聞かねえ名だな。

ガープやセンゴクの野郎じゃあ無ェのか。」

 

 

「どうも違うみてえだよい。写真はあるが後ろ姿だけ、それ以外は何も分からねえ。

まるで煙みてえな奴だ。噂じゃ筋骨隆々の大男だとか絶世の美女だとか、わけの分からねえ話ばかり聞くが…」

 

 

「ほぉ、面白ぇ野郎だ。

1度お目にかかってみたいもんだぜ。

なんなら俺達も海軍に攻め込むか?」

 

 

「オヤジがしたいならそうするが…後が困るよい。なんかあったらシマの連中が苦労しちまう。」

 

 

「グラララララッ!冗談だ。

安心しろ、()()()()()()()()()()()()()海軍なんぞに用は無ェよ。」

 

 

右手の巨大瓢箪に入った酒をぐびぐびと飲みながら白ひげは笑う、だが噂の大将への興味は尽きなかった。

 

 

「(センゴクの仕業かもっと上の連中の仕業か知らねぇが、上手い手を使うじゃねぇか。

形の無い大将、好きなだけ印象操作で世の海賊達をビビらせられる……カイドウの野郎を退けたなら尚更効果はデカい。

逆にカイドウのシマは荒れかねねェな、ウチのシマまでとばっちりが来なきゃいいが………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆case.ドンキホーテ・ドフラミンゴ◆

 

 

 

偉大なる航路、シャボンディ諸島

 

 

雪の降る海域、暖かい船内で1人新聞片手に笑う一人の男の姿があった。

 

 

 

「フッフッフ……フッフッフッフ…」

 

 

「ドフィどうした?新聞見るなり急に笑い出して…」

 

 

「これが笑わずにいられるかディアマンテ、お前も見てみろ。」

 

 

「へぇ…新大将〝白蛇〟ねぇ。

………カイドウを退けたのか!?ヤベェ奴じゃねえか!」

 

 

「〝顔の無い大将〟とは海軍本部も芸の富んだマネをしやがる……。

これでカン違いした馬鹿がカイドウに特攻仕掛けるところまで読めたぜ。」

 

 

「なるほどな、この文面ならカイドウは力が衰えたともとれる。

小狡い海軍の考えそうな事だ。」

 

 

実際彼の憶測は当たっていた。

『カイドウが負けた』という事実をセンセーショナルに報じることで勢力が弱まったと思わせ、海賊同士を争わせるという政府の意図もある。

それで生じる一般人への被害は少なくは無いが…それも『大を生かすため小を捨てる』政府の方針にほかならない。

 

 

 

「俺達の〝計画〟に支障があっちゃならねえ…ヴェルゴに電伝虫を繋げ、次いでにコイツの事も調べさせよう。

フッフッフ…誰だか知らねぇが面白い真似するじゃねえか。

退屈しなくて済みそうだ…なァコラソン?」

 

 

「………………………」

 

 

「つれねぇ野郎だな。

トレーボル、出発だ!

どの道海賊である以上いつか白蛇に出会うこともあるだろう。新世界、楽しもうぜ…フッフッフ…」

 

 

「…………………(大将〝白蛇〟…センゴクさんからは何も報告は無いが気にかけておいたほうがいいな…。

とにかく俺は兄の暴走を止めることを第一に考えなきゃならねえ…)」

 

 

ドンキホーテ海賊団、後に巨大な組織の大きな歯車の一つとなるこの海賊団はこの日、偉大なる航路(グランドライン)後半の航路〝新世界〟へと突入した

 

 

 

 

 

 

 

◆case.ニコ・ロビン◆

 

 

西の海、とある島

 

 

「今度はあっちを探せ!」

 

「畜生あのガキ、何処へ逃げやがった!」

 

「捕まえて売り飛ばしてやる!」

 

 

ドタドタドタ…

 

 

…もう行ったみたい。

私はダストボックスの中からひょこっと顔を出して辺りを見回した。

路地裏のゴミが溜まるこの周りには誰も近寄らないし、なんとかお金を盗むことが出来た。

 

 

私はずっと追われる身だ。もう何年も組織に入っては裏切りを繰り返し、新しい組織を見つけるまではこうして海賊からお金を盗みながらゴミ溜めで生活をしている。私の能力は盗みには最適だから…。

むせかえる様なゴミの臭いにももう慣れた、あの海賊達がこの島を出たらこのお金でご飯を食べよう。あ、その前に川で臭いを落とさなきゃ…

 

 

不意にゴミの中、雑誌や新聞を括って捨てられているのを見つけた。

何の気なしにはみ出ていた1枚の記事を取って眺めてみる。

そこには大見出しで『海軍本部、四皇カイドウに大勝利!!!』と書かれていた。

なんでも四皇が海軍本部へ攻め込んだらしい、それを新米の大将が撃退したのだとか。

写真には件の大将の後ろ姿と、彼が光の柱を振り下ろしている様が大きく載せられている。

 

 

「うそ……この光は…」

 

 

私はこの写真の光景に見覚えがある。

そうだ、あのボートの上で見た。

 

私の島を消滅させた紅い光と同じもの…

 

 

「あっ……ぁぁぁぁぁ…」

 

 

思い出してしまって震えが止まらない。大量の軍艦や燃える島なんて比じゃないくらい恐ろしい。

あれは悪夢だ、もう私の心から一生消えることは無い、教授も、お母さんも、私の大切な人全てを一瞬で消し去った地獄の様な現実(あくむ)

 

 

あの血のように紅い光を私は生涯忘れる事はないだろう

 

 

「はあ……はあ……」

 

震えもやっと収まってきたので臭いを取るために川へ向かう、新聞をくしゃくしゃに丸めて外へ放り投げた。

もうあんな記事見たくもない、きっと見たらまた震えておかしくなってしまうから。

 

 

騙して、騙されて、裏切って、裏切られて、自分すら騙しながらこれからもずっとこんな日々が続いていくんだろう。

 

私は…生まれてきて良かったのかな

 

 

………………

 

 

耐え難い過去に怯え、偽り生きるこの少女が本当に仲間と呼べる存在に出会い、自らの恐怖と対峙し克服するようになるのはそう遠くない未来の出来事だ。

 

 

 






次回からちょっと時間が飛びます


次回、ステラの願いと中将総督のお仕事

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