他もポケモン語にしてやろうかと思いつつ、それじゃあ何が言いたいのか全く分からないだろうと思ったのですが、普通にポケモン語で問題なかった…?
「うん、その子の為のローラースケート、見つけてきたよ」
「本当ですか!」
『(やりましたわ!)』
その為に、ついでに遂に始まるカロスリーグに、ホテルの予約など大体どこも一杯であるが故に、カロスリーグ協会に泊まれないかという打診に分かれていたコルニは、その可愛らしいが同時に凛々しさの強い顔を綻ばせて言葉を紡ぐ
「はい、ローラースケート」
『(これで、遂にスケートデビューですわ!見せてもらった映画みたいに雪の上で滑りますの!)』
「姫、それはフィギュアスケートだ」
ズレた事を言うポケモンに笑いながら、アズマは抱えるには大きいその三輪の靴を受けとる。ディアンシーに合わせたが故か、サイズはなかなかのもの。ディアンシーの1/3くらいのサイズはあるだろう。人間の基準では過剰だが
『(早速外ですわ!)』
そう言ってバッグを飛び出す小柄なポケモン
アズマはその頭を撫でて、コルニに改めてお礼を言おうとして
そうして、その存在に気がついた
長い金の髪を頭の上で結い、灰色の服を纏う女性。その服には、連なる鱗を思わせるフリル飾り。普段見る写真とかなり違う印象で
けれども、アズマがその人を見間違えるはずは、流石に無かった
「……あ、あなたは……」
震える声で、アズマはあまりにもわかりきった事を聞く
「あたしはシロナ。ポケモンの神話を、あなたのお友達と調べている物好きなトレーナーよ」
「やっぱり、シロナさん!?」
その名前を知らぬものは、このカロスひろしと言えどもそうは居ないだろう。メガシンカ研究の第一人者プラターヌ博士等のこの地方の有名人と比べてもなお知名度があるかもしれない
その名をシロナ。シンオウ地方ポケモンリーグチャンピオンにして、神話研究者。伝説ポケモン研究者であるアズマの父ナンテン博士とは同業に近い、生ける伝説の一人
父から話を聞いていたシンオウ神話の第一人者が、其処に立っていた
そして
「ほら」
「あっ……」
そのシロナに背を押され、シロナの背後に隠れていた筈の少女が少しだけつんのめりながら、アズマの前に現れる
綺麗な銀の髪。何時の日かの再会を願って、あの後誕生日プレゼントとしてカイリュー便に頼んで郵送して貰った六枚の花弁を称えた桃色の花の髪飾りが前髪に映え、あの日と変わらない、どこか不安げな眼差し
体は病弱だったが故に同年代ではかなり小さかったアズマより更に小さかった時期からすればそれなりに成長し、確かに女の子なのだと分かる柔らかなシルエットになってはいても、それでも見間違える筈もない
「……また、会えたんだな、チナ」
「とっても久しぶりです、アズマさん」
チナ。アズマにとって、数少ない人間の友達
考えてみれば、自然なことだ。暫く、シロナさんについてシント遺跡に行っていたから電波がと彼女は言っていた。ならば、シロナの弟子みたいな事をしているというのは想像に難くない。そのシロナが此処ミアレに来ていたならば、着いてきていても不思議はないだろう
「元気してた、チナ?」
「はいです。憧れのシロナさんの助手にもなれて、元気一杯です。アズマさんのお陰です」
「おれは、何にもしてないと思うけど」
『(そんなこと無いでしゅ!)』
その声は、銀髪の少女の被った若草色の帽子から聞こえた
違った。若草色のポケモンからだ
「テレパシー?それにこのポケモンは……シェイミか」
「はいです。アズマさんがくれた花束で、この子が寄ってきて」
『(強い感謝の香りがしたでしゅ)』
「この子……シェイミの伝承を調べる縁で、シロナさんとも知り合えたんです。だから、全部あの日、わたしに無茶してでも花束をくれたアズマさんのお陰です」
はにかむように笑って、あの日のように、雪色の少女はその小さな手を出す
「あの日、わたしに感謝の気持ちを伝えてくれて、とってもありがとうです」
「おれの気持ちが、君の力になれたのならば。こちらこそ有り難う、チナ」
アズマはその強くすれば壊れてしまいそうな手を、優しく握り返した
『(ミーに感謝するでしゅ!)』
「そういえば、フカマルは?」
ふと、アズマは古い知り合いを思いだし、そう問いかける
「ごめんなさいです、今日は連れてきてないです」
返ってくるのは、心底申し訳なさそうな声
「そっか、家かな?」
「はいです。お陰でお母さんはかなり良くなったですけど、リゾートエリアだとお買い物が大変なので……」
「だよな、ヴォーダ……は居ないけど、ウィンやライには良く助けられたよ。ポケモンが居てくれると、凄く助かるよな」
けれども、彼は確かにアズマの友達達を助けてやっているのだろう。そう理解して
「……えっと、話進めて良いかな?」
オレサマ知らないしーと空気を読んでリザードンやゲッコウガと体操しているショウブの近く。置いてけぼりにされていたコルニが、少しだけ遠慮気味に、そう話を区切った
「すみません、コルニさんにシロナさん」
「良いのよ、この子が良く話してたもの」
「おれも、シロナさんの話は良く聞きましたよ。あくまでも、憧れのシロナさんが○○って言ってたから買ってみたですとか、そういったのだけど」
手を離し、それでも近くには立ったまま、アズマは大人のトレーナーへと向き直る
「シロナさんは、どんな用で?助手のチナの友人が居るって聞いて、会いに来たんですか?」
「いいえ、ナンテン博士の息子。あなたに色々と聞きたいことがあるの
伝説のポケモンについて。特に……そう、Nの言っていた、青い運命について」
「あおい、運命……?」
はて、とアズマは首を傾げる
「黒い運命は分かります。赤い運命も」
黒い運命とは、恐らくはあの黒水晶のポケモン、そして赤いのはイベルタルの事だろう。ナンテン邸にイベルタルが眠っている事、そのイベルタルが目覚めるだろう事を、それとなく彼は予言していた気がする。君の運命という言葉で
ならば、運命とは伝説のポケモンの事を指すのだろう。だが、青いとなると、アズマはどうにも思い付かない
「青い伝説といえば、スイクン、カイオーガ、後は伝承にはなりますが、ディアルガなんかも」
「青かったです」
「チナ?見たことあるの、ディアルガ」
「い、いえ!ちょっとカンナギタウンで、想像絵とかを……なんですけど、全体的に青い色だったなって」
あわあわと答える雪色の少女を、微笑ましげにその雇い主は見守っていた
「あと青いってなると、コバルトの語源ともなったイッシュのコバルオン。蒼海の皇子マナフィも青でしたっけ。その他だと……ポニ島の守り神カプ・レヒレくらいですか
といっても、どのポケモンとも特に縁はありませんし……」
『ウルォード!』
その鳴き声は、アズマの脳裏に響き渡るが
「すみません、分かりません」
少しだけ悩んで、アズマはお手上げと首を振った
因に、翻訳するとギゴガゴーゴーッ!!【うちの愛娘(違います)がメインヒロインだろうが舐め腐ったことを言うんじゃねぇ反転世界でボコるぞイベルタルゥッ!】となります
そんなに気ぶりギラティナが多いならと、人間のメインヒロイン、本来の想定より前倒しでの登場です