まあ、このゾロアらしき生き物なんて人間に化けるし、大半の伝説はテレパシー使えるしまあ仕方ないかなーと流して貰えると助かります
「弾けろ、オーラ!解き放て、絆!刻め、剣のコロナ!
全力!無双!激!烈っ!剣!」
「まだまだ遅いね」
『にゃおにっ!』
「……もう一度、お願いします!」
それから、約1週間
アズマは未だシャラシティに留まり、ポケモントレーナーのNから、自分の体にあるというオーラを使いこなし、ポケモンと共に戦う術を習っていた
その力の名は、Z技。溢れ出るオーラをポケモンと重ねて放つ、必殺の一撃。だが……その修得は未だ成らず、難航していた
撃てない訳ではない。撃てることは撃てる。当初は練習では上手くいかずに諸共に吹き飛ばされる事もありつつ、『むげんあんやへのいざない』『ぜんりょくむそうげきれつけん』『ブラックホールイクリプス』の3種類の技に関しては、何とか安定して放てるようになってきた。だが、どうしても……
「今日はここまでだ」
「まだ、まだ……」
肩で息をしつつ、アズマは青年を見上げ、そう返す
「キミは友達をこれ以上鞭打つ訳がないだろう?」
「……そう、ですね
少し、休憩しますか」
横のヒトツキが地面に降りているのを確認し、アズマも腰を下ろす
遅いのだ。確かに発動自体は安定して出来るようにはなった
けれども、長い溜めが要る。それでは、実戦向きとはとても呼べないだろう。気持ちの昂り、爆発的な力、そういったものの後押しがあれば割とあっさり放てる、だが普段は、30秒はモノズやヒトツキと二人で精神を集中しなければ、オーラを纏わせられない
『モノ……』
「いや、サザが悪い訳じゃないよ」
地面に丸まり、悲しげな鳴き声をあげるモノズの頭を撫でる
「良くやってくれてる。問題はおれだな」
『(そんな事ありませんわ、きっと)』
「でもなぁ。あの時は撃てる確信があったし、AZさんとの時ももっと早かった
その二回と今と、どんな差があるんだって言ったら、きっとおれの心の持ちようなんだ」
『ロアッ!』
「そこで鳴かないでくれないかな……
はあ」
じゃれついてくる、黒い小さな獣の頭をもう片手で撫でながら、アズマはため息を吐く
悪タイプ、だからだろうか。撫でて良いですかとニャオニクスに近付くとあっさりと逃げられたものの、Nの連れていたゾロアは逆にこの一週間、良くアズマに近付いて来ていた。大体は落ち込んでいる時にからかうように、なのだが……
『「みゅみゅっ!?
良い子良い子する?」』
「しません」
ぽんっと軽い黒煙と共に、黒い獣の姿が変わる。所謂イリュージョンという奴だ。他のポケモンの姿に化けるもの。あくまでも化けているだけなので……
アズマが腕を姿を変えた少女の胸に突き込むと、あっさりと突き抜けた。触れている感覚はない。見せかけでしかないので、姿そのものはゾロアと変わっていない。まるで少女が其所に居るように見えるが、あくまでも居るのはゾロアなのだ
「というか、出来ないだろ?
どんなイリュージョン背負ってても、中身はお前のままなんだから。前足でやるのか?」
『「しょぼーん。今はまだ、姿だけみゅ……」』
少女の姿は揺らめいて消え、残るのは下を向いた小さな獣のみ
ゾロア種は化けたポケモンの鳴き声まで真似ることが可能な賢いポケモンである。なので、人間に化ければ、人間語も鳴き声みたいなものだと話せる……らしい。イリュージョン解除後にたまに咳き込んでいる辺り、割と声帯は無理してるらしいが。こうして、何度かからかわれている
「というか、何でその姿なんだ?」
ふと、アズマは問いかける
ゾロアが化けるのは、色んなポケモン。そして、一人の少女の姿。その姿は、アズマがホロキャスターに組み込んでいるホログラムの一人と同じもの
『「みゅっ?
知りたい?知りたい?」』
再び少女の姿に化け、黒い獣がアズマに乗っかる
頭の上に乗る、割と軽い暖かなもの。一見自分より幼い少女がおぶさっているように見えるように、幻影の少女が動いた
『(気になりますわ)』
『「気になる?気になる?」』
『(どうして、あんなもの用意してたんですの?)』
「そっちかよ」
ディアンシーの言葉に、アズマは頭を振る。イリュージョンにより見えないが、頭の上でバランスを取ろうとゾロアが爪をたてたのだろうか、鈍い痛みが頭に走るが、文句は言わず
「この子がわざわざイリュージョンするならばキミにとってきっと大切な人なんだろう?」
「Nさんまで」
『(大切な、人!)』
「姫、キラキラしない
別に、姫の期待する恋だ何だじゃないよ。昔さ、家の森に木の実を取りに来て迷子になった女の子が居たってだけ。木の実は家のものだし、昔体が弱かったから、子供なりに体調を崩した親の為って事に感動してさ。外まで案内しつつ木の実を勝手に分けたんだ。以来、暫くたまに会って話したり遊んだりしたけど、四年前にシンオウに向こうが越していって、以降一度も会ってない
また会えたら良いなっていう、友人みたいなものかな」
『(ホログラムは?)』
「昔の履歴漁ってたら出てきて、懐かしいなって保存したんだ
今、シンオウでどうしてるんだろうな、チナ」
『(連絡は?つかないんですの?)』
「昔はついたよ。月一度くらい、話したり手紙送ったり
けど、最近は音信不通。手紙も戻ってくるし、ホロキャスターも通じない」
『「みゅっ!だからなの!」』
「……何が?」
『「イリュージョンで会った気分、偉いの!」』
アズマの頭を後ろ足で蹴って一回転、イリュージョンを解きながら小さな獣はしゅたっとその4本の足で着地する
「そもそも、こんな事教えてないんじゃないか?」
『「そこは……前の、前の前の……えーっと」』
「三日前というんだよ」
『「みっかまえにみた!」』
「あぁ、夜風に当たろうとホテルから出たらやけにじっと見てくるズバットが居ると思ったら、あれお前かゾロア」
はあ、とアズマは息を吐いた