ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsゲコガシラ

「いくぜ、ゲコガシラ!」

 少年……ショウブのその言葉と共に、モンスターボールから、泡を首に巻いたポケモンが飛び出した。あわがえるポケモンのゲコガシラだ

 ゲコガシラ……確か、初心者用ポケモンの一匹、ケロマツの進化系。それが意味する事は、進化したポケモンを使う程の実力者。バッジを持っているというのも、嘘ではないのだろう

 

 「ギル、『つるぎのまい』!」

 アズマの指示は何時もの一手。進化したポケモン相手に、素の攻撃では火力に欠けるだろうという判断

 「ゲコガシラ!『えんまく』だ!」

 一方相手も、直ぐには仕掛けてこない

 ゲコガシラが何処かから煙幕を張って姿を隠す。忍者みたいな行動だ

 だが、動きを隠せるというのは利点でもある。次の動きがバレないし、此方の攻撃もかわしやすくなる

 

 「良い判断だ、もう一度『つるぎのまい』!」

 アズマの指示に従い、ヒトツキが鞘と刀身を擦り合わせ火花を散らす。特殊な力を使って自身の刀身を研ぎ、一時的に切れ味を上げる。それが剣の舞攻撃ではないが、研いだ剣の切れ味は、普段を大きく越える

 「ゲコガシラ!『でんこうせっか』だ!」

 一方、少年の指示は……無意味なものだった

 

 「なっ!?」

 電光石火、煙幕から飛び出したゲコガシラがヒトツキの隙を付き、急襲する

 ……も、その一撃はヒトツキの体をすり抜け、後方に着々する

 僅かな動揺。ゲコガシラが、煙幕から出た状態で硬直する

 「その隙を付け、『おいうち』!」

 ヒトツキの刀身が、動きの止まったゲコガシラの喉に激突した

 

 「何が……」

 少年は混乱している

 「ちょっとショウブ!ヒトツキはゴーストタイプよ!」

 横から、そんな声がした

 見ると、少年と同い年くらいの、フォッコを連れた少女が居た。アサメタウンの住人がポケモンバトルを見かけて寄ってきたのだろうか

 「な、何だって!」

 少年が驚愕する

 確かにアサメタウン周辺では見かけないポケモンだ、単はがねタイプか何かと勘違いしていても可笑しくはない

 「ギル……ヒトツキは、はがね/ゴーストタイプだ。知らなかったとはいえ、残念だったな!更に『おいうち』!」

 更にヒトツキの追い討ちがゲコガシラに突き刺さる

 いや、激突したゲコガシラの姿が泡になってほどけた

 

 水分身。『ゲッコウガvsアギルダー、夜の忍者大決戦』等の映画でゲッコウガが使っているのを見たことがある。まさか煙幕の中で用意していたとは驚いたが

 「いよっしゃ!ゲコガシラ!ケロムースだ!」

 「ギル、『まもる』!」

 煙幕から今度こそ飛び出したゲコガシラが、首に巻いた泡を投げる 

 だが、殆どの技を受け止める『まもる』の防壁には……

 阻まれず、ヒトツキを地面に拘束した

 「……そうか。ケロムース自体は技じゃない」

 ならば、これはアズマのミス。受けるのではなく回避しなければならなかったのだ

 

 『ゲコッ!』

 得意気にゲコガシラが鳴く

 「ギル、動けるか」

 聞くも、ヒトツキは動かない。ムースで拘束され鞘に入った姿のまま動けない

 「決めるぞ、ゲコガシラ!」

 「ならば、『かげうち』!」

 「動けないのに無駄な事を!『みずのはどう』!」

 ゲコガシラが、口から数条の水のリングを打ち出す。水のタイプの技、『みずのはどう』だ。ムースに拘束され、地面から動けなくなったヒトツキに回避出来るはずもなく、波動は激突する

 「かんっぺき!」

 『ゲコゲコッ!』

 勝ち誇るように、ゲコガシラが腕を組み

 影に腹を打たれ、崩れ落ちた

 「ゲコガシラ!」

 「忘れているな。『かげうち』は影を操る技。動けなかろうが関係ない!」

 ゆらゆらと、ヒトツキが浮かび上がる

 ケロムースをみずのはどうにより洗い流され、動けるようになったのだ

 「ゲコガシラ!立て!」

 「頑張って、ゲコガシラ!」

 少年と少女がゲコガシラを応援する

 一撃で倒せるかは微妙な所

 「ケロムースで攻撃を鈍らせたはずなのに……」

 ヒトツキが自慢気に揺れる

 「鞘に入ってやり過ごした。刀身はムースに触っていないので問題ない」

 「くっ!ゲコガシラ!」

 騒ごうが、ゲコガシラは倒れたままだ。恐らく、戦闘不能

 「負けられない。こんな所で……こんな……所で!一緒にチャンピオンになるんだろう、ゲコガシラ!」

 「そうよ、立って、ゲコガシラ!」

 「無駄だ、流石に戦闘ふの……」

 ゲコガシラの目が開いた

 

 水辺でもないだろうに、と言いたくなる程の水がゲコガシラを覆う

 『ゲ、ゲコッ!』

 全身に水を纏い、ゲコガシラが立ち上がる。激流……危機的状況であればこそ沸き上がる力

 「この……力は!」

 少年とゲコガシラが此方を見据える。その手に、纏った水により、巨大な水の手裏剣が形成されてゆく

 「いくぞ!」

 「『かげうち』!」

 だが、その影からの一撃は纏った水に弾かれる

 「『みずしゅりけん』!」

 『ゲェェェッ、コォォォ!』

 トレーナーとシンクロするように、天に掲げた手から、大振りの投擲

 巨大な3つの手裏剣は、其々が別の軌道を描き、ヒトツキに激突した

 

 『ゲコッ!』

 今度こそ、勝ったなとばかりにゲコガシラが腕組みを決める

 「有り難うギル、よく頑張ったな」

 3つの手裏剣を受けたヒトツキは、流石に浮き上がれず、倒れていた。確認するまでもない。戦闘不能だ

 『ゲ……コ』

 激流で限界を超えていたのか、腕組みのまま、ゲコガシラも倒れる

 だが、先に倒れたのはヒトツキ。そしてアズマには他のポケモンが居ないが、少年には少なくともさっき捕まえたヤヤコマが居る

 つまりは

 「負けました。言ってた通り、強いな、君」

 そういう事だった




ギル(ヒトツキ)♂ Lv:22

おや アズマ
とくせい ノーガード
もちもの なし

わざ つるぎのまい/まもる/おいうち/かげうち(/せいなるつるぎ)

ゆうかんなせいかく
Lv15のときに、ナンテン屋敷地下で出会った
うたれづよい


ゲコガシラ♂ Lv19

おや ショウブ
とくせい げきりゅう
もちもの なし

わざ
えんまく/あわ/みずのはどう/でんこうせっか
(ケロムース/みずしゅりけん)

がんばりやなせいかく
Lv5のときに、プラターヌ博士から贈られた
正義感が強い

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