ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsZ技

「『ラブリー スター インパクト』」

 「『無限暗夜への誘い(むげんあんやへのいざない)』!」

 ヒトツキと、心を重ね。逆手に持った剣を、後ろ手に構えた状態から、渾身の力で空を切って振り抜く。同時、フラエッテからあまりにも巨大な、星型のエネルギーが打ち出された

 

 空間が、斬れる。振り抜いた軌跡通り、文字通りの亀裂が場に残り、そこから暗い空が広がる

 漆黒のホラーハウス。真っ黒い空間が、アズマとヒトツキ、そしてAZとフラエッテすらも飲み込んで広がる。だというのに、天候だけは晴れているのが何かミスマッチで。どうせなら、雨の方が雰囲気が出たろうに

 そうして、塗り潰した空間のあらゆる場所から産まれた影の手が、フラエッテと迫りくる星へと延ばされた。次々と延びてくる手に、遂に星は飲み込まれて姿を消し……

 

 「ライ!」

 アズマの体は、その空間の下、海へと落とされた

 背中に走る衝撃。背中から海に落ちたのだ、当然である。何か、数日前もこんなことあったな、なんてアズマは思い……

 その視界を、ホラーハウスを撃ち抜いた星型エネルギーが駆け抜けていった

 やっぱり、ちょっと抑えられるって程度でしかなかったらしい。極普通に、撃ち負けた形。無限暗夜への誘い。あの時、脳裏に響いた二つの鳴き声に教えられた人とポケモンがオーラを合わせて放つ、ゼンリョクの必殺技。それすらも通じないならば、勝ち目なんてものはアズマには無い

 

 それにしても、体が怠いな、なんて思いながら、アズマの体は海へと沈んでいった

 

 「……ぁ痛ぁっ!?」

 そうして、覚醒

 気が付くとアズマは、岸で横になっていた。その視界には、覗きこむフライゴンとディアンシーの姿が映っている

 「……大丈夫、無事だよ、ライ」

 気だるさは残しながら、アズマは何とか上半身を起こす

 枕元でしゅんとしているのか、動かないヒトツキの姿が、視界の端に映った

 

 「配分を 間違えたな」

 「あ、やっぱりですか?」

 アズマも、意識を失う前に一瞬思ったのだ。吸わせ過ぎたんじゃ、と。結果、生命の吸われ過ぎで気絶してしまったのだろう

 「使いこなせ 諸刃のつるぎだ」

 「そうですね。貴方相手だから良かったものの、あのジャケット相手にこんなことしていたらいけない」

 トレーナーが気絶しちゃあいけないだろう、常識的に考えて

 「大丈夫、気にしてないよ、ギル

 お前も、おれも。勝ちたかったんだものな。ちょっと反動で限界越えてでも。それは、おれも同じ気持ちなんだから」

 それでも、何時も黙っているとはいえ、浮かぶことすらしないヒトツキは放っておけず、アズマはそうヒトツキを軽く叩いた

 

 「それで、おれの事は解りましたか?」

 そうして、アズマはそう問い掛ける

 そもそも、このバトル、負けられないとこんなZ技の撃ち合いまでしたけれども、元々はAZがアズマを知るためにしかけたものだったな、と思い出して

 「マスタータワーへ ゆけ

 運命が 待っている」

 「運、命……」

 『エッテ!エッテ!』

 『(運命、ですの?)』

 「それは、どういう」

 「ゆけば 分かる 光に 魅入られし もの 

 強く なるのだ 

 わたしのように 遠い とおい 回り道を したく ないのならば」

 「……はい」

 静かに、アズマは頷いた

 まあ、たぶん認められたのだろう、と思いつつ

 

 そんなアズマが身を起こしている間に、AZはポケットから謎の種を取りだし、地面に撒いていた

 フラエッテがそれに、自分の持つ花の光を振り掛ける。AZが、その場に手を翳す

 「ジーランス」

 言うやいなや、水中から化石のような魚のポケモンが飛び出し、口から水を掛けてまた海へと戻っていった

 魚のポケモンなのでたまには海に放していたのだろうかと、アズマは少しまだ朦朧とする頭でそんなことを考える

 水と光を浴びた種は、みるみるうちに茎を延ばし、葉を付け、花開く

 数分のうちに、種は一輪の花を咲かせていた。フラエッテの持つものと同じ三枚花弁の花、古代に絶滅したとも言われる古代花を

 現物がある以上、種もあるかもしれないしそこから増えることも無くはないのだろうが、良いんだろうか、こんな海の側にそんな貴重なもの撒いて

 

 「持ってゆけ」

 そうして花開いたものを根元から折り取り、男はアズマへとその花を差し出した

 「オトコと ポケモンに 認められた 証」

 「有り難う御座います」

 右手を出して、アズマは素直に受け取る。バッジの時のように、変なプライドは起こさないで

 

 「どう、使えば?」

 「見せれば 分かる」

 「分かりました

 古代花ですからね。とりあえず、貴方と関わりがあるだろうという証明なのは確かです」

 ボフッと、AZの取り出したボールから出てくるのは、壁画の鳥のようなポケモン、シンボラー。他のシンボラーと比べると恐らくはかなり大きいが、それでもAZという巨体と並ぶとそんなに大きく見えない

 「また、会えますか?」

 ジーランスを戻し、肩にフラエッテを乗せ、そのシンボラーに捕まる男に、アズマは聞き

 「フラエッテの 花が 導くように」

 その答えに、微かに笑みを浮かべた




アズール湾、海神の穴。時折恐ろしい鳴き声が響くらしく、バッジ4つ以上のトレーナー以外は立ち入りを禁じられている、浅い洞穴
 一人の青年と、細かな毛を持った一匹のポケモンが、文字通りの対岸で行われた戦いの様子を眺めていた
 「彼のことが気になるのかい
 確かに不思議なトレーナーだね」
 長く青い尻尾をくゆらせる、宙に浮かんだそこはかとなく猫っぽいポケモンに、帽子を被った青年はそう問い掛けていた
 「大丈夫すぐに彼とは出会うことになるだろうからね」
 ポケモンは答えない。じっと、対岸で起こった、空間すら塗り潰すホラーハウスと、それをあっけなく吹き飛ばす星の激突を眺めている
 「キミの目的にも合致するかもしれないね楽しみだ」
 
 「あっ、君!此処は立ち入り禁止だ!」
 そんな青年の前に立ったのは、許可してない人間が入り込んでいる事に気が付いた巡回のトレーナー。バッジ4つを見せることもなく、勝手に入り込んだ人間を止めようと、正義感にかられた職員は職務を果たそうとして
 「それじゃあ旅に戻ろう
 楽しみだよキミと出会う未来が
 キミの理想はどんな形なのかボクに見せてくれ」
 「あ、おい、君!」
 「出番だ出ておいで
 ボクのトモダチ」
 「バトルで強行突破する気か、そんなこ……」
 
 『ババリバリッシュ!!』




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補足となりますが、普通に1000まんボルト等でハイタッチオーラ伝達が出来ている事からも分かるように、オーラさえ発動出来ればポーズを取る必要は無いです。あくまでもあのポーズでオーラを引き出しやすいからやってるだけです
その為、自力でオーラ発動出来る今回のZ技はどちらも事前のポーズを取っていません。仕方ないね

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