ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vs ミロカロス

「サンキュー、助かったよ帰りもお願いな」

 と、不安げにその頭の角のような突起を擦り付けてくるイベルタルを宥めてボールに戻し、アズマは目前にまで迫った山頂を見上げた

  

 「おれ……此処までは来たこと無いから」

 横で震えるスグリ。ナンジャモは居ない

 同じ余所者ならボクでも行ける?と彼女は山の中腹でサザンドラに乗って別れた。スグリの持ち物である仮面を借り、自分でオーガポンと出会ってみたい……そうだ

 ついでに言えば色々と身バレ怖いからねーと笑っていた

 

 そう、身バレ。今から向かうてらす池は、話によれば死んだ大切な人に逢えるかもしれないという逸話があるのだとか

 とすれば、もしかしたら亡くなったナンジャモの曽祖父辺りが本名を呼んで出てくる事で、プライベートが確定するとかそんな事故が起こる可能性もあるのだ。オフの姿を極力見せずに配信者兼ジムリーダーというキラキラの姿を見せてる彼女は、警戒して来ないのもアズマには納得できる

 

 ほんの少しの期待を、父のトリミアンが幻で良いから見えないかという願いを抱きながら、あまり其処に居るポケモンを刺激しないようにアズマは山頂に足を踏み入れた

 

 「ワタクシに会いに来たのですか」

 が、先客が居た

 「わやじゃ、お客さん?」

 「……何故此処に居るんですか」

 それは、杖をついた男。包帯で顔を覆い、今は作業ではないからかローブを羽織ったプラズマ団

 「そのローブ、幹部級に配られていた。そんな人が、何故」

 警戒を強めてニダンギルのボールを後ろ手に握り、アズマは相手を見る

 

 ローブを羽織る偉そうなプラズマ団。とはいえ、今もプラズマ団の格好をしている人間なんて基本善人だからNの理想を信じた者ばかり。だというのに……

 何処か、嫌な雰囲気をアズマは感じていた

 

 「アズマさん?」

 「何だろう、Nさんのような雰囲気を感じない」

 トリオと名乗った彼は、ポケモンへの愛情を感じた。が、何故だろうか、目の前のプラズマ団にはあまり感じなくて……

 

 「あなた、は」

 「来ますよ、ワタクシを助けなさい!」

 「っ!」

 突如として湖面が揺れたかと思うと、光を放つ結晶を水底に輝かせる湖の底から水しぶきと共に巨体が躍り出た!

 

 『みろろろろろ!』

 それは、しなやかな体躯と美しい鱗を持つ、水竜を思わせる優美なポケモン

 「ミロカロス!」

 とても有名なそのポケモンの名を、アズマは叫んだ

 

 「っ!ギル!」

 優雅に体躯で軽くとぐろを巻き、水竜が湖面に降り立つ。更に、吠えると全身に淡い光を纏った

 

 「アズマさん、このポケモンさ」

 「構えてスグリ君、オーラを解き放つってことは、本気で来る!」

 特別な力に晒されたポケモンはオーラを纏い力を増すことがある。トレーナーのポケモンではまず起こらない現象だが、こうした場のポケモンなら起こしたり出来る

 

 「ギル!舞って!

 そしてプラズマ団の」

 「アナタごときが覚える必要はありませんが、ワタクシの名はコードと」

 「コードさん!戦えるならポケモンを!無理そうなら下がって見ててください!

 何故ミロカロスがこんなに荒れたかは知りませんが……今は!」

 相棒に現状打破のためのつるぎのまいを指示しながら、アズマは叫ぶ

 

 いや、打破も何もイベルタルを出せば圧倒して勝ってくれるだろう。が、そもそもミロカロスは好戦的なポケモンではないのだから状況が変だ。そんな時に加減を間違えば瀕死ではなく死をもたらす過剰戦力イベルタルなんて出せるわけがない

 

 そんなアズマを他所に、前髪の長い少年は横に駆け寄り、包帯の男は優雅な程に堂々と杖をついて背後に下がる。どうやら、戦ってくれる気は無い、ようだ

 

 「お、おれもけっぱる!メガヤンマ!」

 羽音を響かせ、現れるのは大トンボ。けれど……

 「スグリ君、それは」

 『ろろろろぉっ!』

 光が一閃する。高く掲げられた首。水竜の口から凍てつく光線『冷凍ビーム』が放たれ、一瞬で大トンボを氷付けにした

 

 「メガヤンマ!?な、ならノズパスに」

 「ギル!守ってやってくれ!」

 『ミロォッ!』

 思わずといったように少年がついさっき打たれた氷タイプの技に耐えられそうな硬い岩のポケモンを出した瞬間、水竜の口から煮えたぎる水の奔流が噴き出した。『熱湯』だ。当然だが湖に暮らすミロカロスは水タイプ、岩タイプには強いポケモンだ

 

 というか、だ。この一瞬の攻防で分かるが、スグリの手持ちは正直言って水タイプのポケモンにとても弱い。オオタチ以外全員水か水タイプが覚えがちな氷技に弱いのだから

 

 が、それを突き付けるのは今は幾らなんでも酷。何より、折れられたらアズマ自身勝つのが難しくなる。そう信じたトレーナーの意を汲み取って、熱い濁流の前に立ちはだかった二本の剣がバリアを貼ってギリギリでそれを受け流す

 

 「あ、アズマさん……おれ」

 「今はやれることを、スグリ君!」

 「んだ!」

 叫ぶ間に、熱湯の放射が終わる

 

 「けんど」

 「ちょっとだけ時間をくれる?」

 「……おれ、頑張るから」

 『みろろろろろ!』

 吠えて一瞬水に潜り、ミロカロスは水面から頭だけ出すと、二度目の『熱湯』を放つ

 「けっぱれ!コノハナ!」

 が、それが届く前にノズパスは消え、入れ替わりに姿を見せるのはどことなく人型のポケモン、コノハナ。更に育てば天狗のようなダーテングとなり、器用に色々とこなす凄い奴になるのだが……

 

 とはいえ、草タイプのコノハナは、噴き出す熱湯を浴びて軽く顔をしかめるも、ぐっとその足を踏ん張った

 成程、野生のポケモン相手ならばころころ手持ちを飛んでくる技に対して好き勝手有利に変えていくのもルール違反ではない。公式戦では突然タイムも取らずに入れ換えるのはマナー違反とされるが、それはあくまでも公平ルールの話

 ならば熱湯を見てからコノハナを出しても構わないし、相性有利な技を受けて時間を稼いでくれる!

 

 「吸え、ギル」

 その間に、アズマは己の手にニダンギルを握り、手となる布に絡み付かれる

 生命力を吸い取るヒトツキ一族、その真髄をもって生命力をオーラに、力に変えて……

 

 『ロォォッ!』

 更に飛んでくる冷凍ビームをノズパスが受け、今度はコノハナだと思ったのか更にもう一発『冷凍ビーム』をミロカロスが放つ

 しかし、スグリは構えたボールを仕舞い、ノズパスに受けさせた。ノズパスは岩タイプ、コノハナに比べて冷凍ビームの効きは遥かに悪い

 

 「オッケーだスグリ君!

 解き放て、ギル!『全力無双激烈っ!剣』っ!」

 その間にアズマ自身の生命力を吸い、限界を越えたオーラの剣となったニダンギルが水面から飛び出したミロカロスへと突貫する!

 

 「いっけぇ!」

 が、その瞬間。水竜の全身の鱗が眩く煌めき、宝石と化した

 『みろろろろろかぁぁっ!!』

 桃色に輝く不思議な鱗、頭に生えるのはハートの結晶

 この現象はナンジャモが見せてくれた……テラスタル現象、そのフェアリータイプ版

 

 『ろかぁぁぁぁぁっ!』

 輝く鱗がオーラの剣の切っ先を防ぎきり、凪ぎ払うように放たれる熱湯が纏めて吹き飛ばす

 

 「ギル!」

 トレーナーの声に反応したのか、水圧に吹き飛ばされたニダンギルは空中で体勢を立て直すが……

 『ノオォ』

 ノズパスはそうはいかない。前のめりに大地に倒れ伏す

 

 「っ!」

 そして、アズマは改めて頭を振ってダメージを逃しながら輝くミロカロスを見た

 

 「ああアズマさん!?」

 「っ!テラスタル、フェアリーか

 そこまでされたら、どう勝つ?」

 宝石のような鱗は眩さを増している。ミロカロスの特性、不思議な鱗か発動してエネルギー遮断性能が上がっているのだろう。となれば、生半可な技ではミロカロスを倒せない

 が、だ。正直なところアズマにはあまりフェアリーへの有効打が無い。さっきの全力のZ技もフェアリーに弱い格闘タイプだ

 

 ニダンギル自身は有利な鋼タイプではあるものの、有力な鋼技は覚えていない  

 

 『みろろろろろ!』

 優雅に、追い払うようにとぐろを巻いた水竜が吠える

 が、その瞬間

 

 「全く、使えない少年達です。ドドゲザン、『アイアンヘッド』」

 突如ボールから飛び出してきた頭に大きな刃を携えたポケモンの振るう頭刀の一撃が、不意を撃ってミロカロスの首へと突き刺さった




注意:この世界のテラスタルは体内エネルギーのタイプに異常を起こしてタイプを変えている性質から状態異常扱いのため、不思議な鱗、根性などの特性の発動条件を満たします。が、ゲームではそんなシステムではありません、独自解釈です。ご容赦お願いします。

ちなみに、現状出てるプラズマ団の二人は一応名前を音楽関係にしています。
コード……和音……その中でも最低の音程は増4度……低い方がソだと読み方はドイツ語でゲーツィス……
なお、アズマ君は暫く気が付きません。

スグリ君に求める未来は

  • クロスグリ君
  • 待っててなおれだけの鬼さま……
  • ナンジャモ…エレキン越えっから…
  • 鬼さま鬼さま鬼さま鬼さま鬼さま
  • 覚醒

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