「あ、アーク。この電灯を持っててくれないかな?」
碧の鬼が去った後、アズマは座り込むと懐中電灯を取り出した
『(怪我してますわよ!?何を)』
『「どーするなの?」』
その二体の言葉にそうだねと笑いつつ、けれども紙とペンを取り出す
「うん。あの子の事を忘れないように資料にしないとね。今回、おれ達はカルムさんコルニさん達の計らいで、カロス学会の弟子の研修って旨でキタカミに来てる事になってるんだからポケモン調査資料はしっかりしないと」
とりあえず、と暗い中アズマは出会ったあのポケモンから見て取れる特徴を書き記していく
恐らくは草タイプ。ダークオーラを怖れなかった事から伝説のポケモンと言える強さを秘めているか、或いは悪タイプも併せ持つ
そして、人懐っこい。これについては簡単な話なのだが、『人の道具を好んで持ったり、或いは人の道具に近い意匠を持つようになったポケモンは人懐っこい』というのが定説だからだ
例えば鉄骨を持ちたがるドッコラー一族、スプーンが好きなケーシィ一族、パンツとベルトをしたような姿になるワンリキー一族。どれも種族的に人懐っこく友好的であり、建設や運送等で働いてくれているのはそれも大きい。種族的に人懐っこいのだから大丈夫って信頼があるのだ
そして、あのポケモンも羽織を頭から被ったような姿をしていた。人工ではなく体の一部だろうが、それが服に見えるということは人の中で暮らしたがる人懐っこいポケモンの筈となるのだ
実際、仮面に興味を示したり、人を傷付けてしょげ返ったり、飴を名残惜しいというか少し物欲しそうにしていたりと人に慣れている感じはあった
「誰かのポケモンだったのかな?」
何て思いつつ、アズマは軽くラフ画を描こうとして……
『(ド下手ですわーっ!?)』
『「みゅみゅっ!仕方ないからお手本見せてやるなの」』
ぽん、とゾロアがわざと煙を立ててイリュージョンし、あのポケモンの外見を再現してくれた
『(……こんな子なんですの?なら)』
そして、ディアンシーが手を擦り力を込めると、手の間に小さな宝石が生成される。それは桃色一色で角ばった荒いポリゴンで作ったような造形だが、確かにあのポケモンに似せられていた。少なくともアズマのラフよりは似ていた
「あはは……有り難う、おれのラフより報告書に良いよこれ」
有り難うなと二匹に味の良いポロックを与えて、少しうちひしがれたアズマは資料を切り上げて横になった
そして翌朝。目覚めれば周囲を飛んでいたニダンギルが戻ってくる
「お疲れ、ギル。見張っててくれたんだろ?ゆっくりしててくれ」
ボールに相棒を戻して残りのポケモンを探せば、二体はアズマの横で体を預けて寝ていて、最初に寝ていたモノズだけが居なくなっていた
「サザ?」
すぐに見付かった。後ろ足で立って小さな手をすりすり擦り合わせる胴長のポケモン……オオタチ。愛くるしいそのポケモンと向かい合って、揺れる尻尾をずっと頭を振って追っていた
「おぉーい、サザ!遊んでても良いけどもう村の人々起きてくるぞー」
呼べば、オーラのせいかオオタチはすぐに尻尾を立てて逃げていき、モノズだけが小走りで帰ってくる
「オーラは健在、か」
やはり、あのポケモンは潜在的に伝説扱いされかねない力を持つのだろう、そう考えつつ、アズマは村の人々が居る公民館へと向かった
「はい、手続き終わりですー」
そして、さくっと暫く滞在する為のものを終える。やる気無さげな人によって、だが
あんまり歓迎されてないのかな?と苦笑しながら、アズマはそういえばと話を切り出した
「えっと、プラズマ団の人とか、此処に居ます?」
「あー、居る居る。反省しなきゃーって折角イッシュへ出てったのに帰ってきた奴
何?アンタキョーミあんの?」
実にフランクでやる気がない人によって、あっさりと答えは出た
「今その人は?」
「あー、祭りの人手がないーとか言ってたら昔の伝手でプラズマ団の人呼んでくれたよー
んで?これ以上聞く?」
「あ、すみませんこれで十分です」
そうして公民館を出て、アズマはむぅと唸った
『(どうしたんですの?)』
何時もの好みでバッグに入ったディアンシーからのテレパシーに困ったようにアズマは頬を掻く
「いや姫、もうプラズマ団の謎、ほぼほぼ解けちゃった訳で
余所者嫌いそうだから、話が通ってなかったのかなーって」
『(帰りますの?)』
「いや?そんな訳はないよ。
でもまあ、一つ仕事が終わっちゃったのは……達成してないから寂しいのかもね」
そんなことを思いながら、アズマは村を歩く
『(何処へ行くんですの?)』
「資料について姫達に手伝って貰ったし、オモテまつりはまだやってないし、実は父さんの資料で伝承って大概の部分はもう纏められちゃってて急いで調べる必要もないし……まあ、気になるしベルも居るから後で自力で見には行くけどさ
まずは、あの子も気にしてたし、林檎農園でも行ってりんご飴とか買おうかなって」
言いつつ、アズマは村を見回す
人々はアズマを無視する。服装からしてカロスから持ち込んだ自前の服のアズマは見るからに余所者で、あまり話しかけたくもないのだろう
フリーズ村も閉鎖的だったけど、向こうは観光資源が死活問題だからここまでじゃなかったよなぁ、と寂しさを覚えつつ、横に幼馴染の女の子等誰かの姿を探す。けれど、横には誰も居ない
けれど、背中のバッグは重い。腰のボールは揺れている。誰も居ないようで、ポケモン達が居る
「後、あの子が仮面に執着してた理由とか、怪我してた訳とかも分からないとな……」
と、そんな風に計画を頭で練っていたアズマは、ふとその場には似つかわしくない服装の相手を見つけた
「ん、あれは……?」
スグリ君がびみょーに役に立たないのですが、キタカミ編での味方キャラは?(チナちゃんは今回のボスのミライドンを倒せちゃうので出禁です)
-
とろぼーねこはんたい!イガレッカ!
-
運命かなと現れたN
-
道に迷ったダンデ
-
誰じゃろな?ナンジャモです!
-
マスコットの座はヨなのである!
-
スグリ君(覚醒)
-
今はお面屋じゃが昔はのぅ……