Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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アガルタ、楽しみでふ。


第一回戦 五~六日目

第一回戦 5日目

 

 

 ――目を覚ます。

 ライダーは、すでに起きている。少し雰囲気が変わったように思うのは気のせいか。

 のそり、と起きて今日やることを確認する。といっても敵の真名はすでに暴いている。 が、第二暗号鍵を手に入れてない。アリーナに行かなくてはならない。

 

 

 

 

――――食堂

 

 昼までにはアリーナの探索をおえ第二暗号鍵も手にいれた。ま、そんなこと出来たのはアリーナに敵サーヴァントがいなかったからだが。ライダーの馬で走り回ったのだ。ロデオな目に遭ったのは言うまでもない。

 昨日エリカに頼んだものを受け取るために、食堂に来ていた。

 

(マスター、アレ!あれ買って!)

 

 いきなりの念話。子供か。

 アレ?ライダーが見ているだろう先には、購買が。

 席を立ち近づいてみる。

 

(何が欲しいんだ?)

(あの巻いてるヤツ!)

 

 巻いてるもの?ああ、ロールケーキのことだろうか?

 金には余裕があるので、買ってやることにした。

 買って席に戻ってみればちょうど食堂にエリカが入ってきた。

 

「はい、昨日頼まれた物です!」

「ああ、すまんな。」

 

 エリカの顔には疲労がみえる。

 渡されたものの中に、俺の血液データの入ったボトル、髪データによってできた毛髪。 そして注射器が三本、大量の折り紙だった。

 

「いったい何に使うんですかそれ。」

「ま、ちょっとな。」

 

 そう言って席を離れながら。

 

「何か困ったことがあったら遠慮なく話かけろ、…ではな。」

 

 そのまま食堂を離れた。

 

 

 

 

――――マイル―ム

 

 

 帰ってきたるは、マイルーム。

 ほい、と現れたサーヴァントにロールケーキを渡す。受け取ったライダーは、なんとも嬉しそうな顔をうかべている。ほんとに子供っぽいな。

 

「ふふふ、ありがとマスター。はふっ。…おいひ~!」

 

 喜んでくれて何よりというべきか。特にやることはない。

 相手の真名は既に暴いている。相手はこちらの真名にはたどり着けないだろう。

 なら取るべき策はただひとつ。――引きこもることである。

 相手に会わなければ戦闘する事もない。つまり、情報を与えることがない。

 実に合理的である。

 

 では、マイルームにこもって何もしないのかといえばそうではない。

 魔術を行使するための準備をするのだ。魔術というより呪術だが。

 呪術――自身の肉体を素材にして発動させる、物理現象――といっても西洋魔術の概念でアレンジしたものを俺は使う。

 

 ライダーがロールケーキを食べ終わったころを見計らい、机のうえに金属の器をだす。

 何枚かの紙で巻かれた髪を火でいぶし、炭を作る。インクの中に自信の血液データを入れる。

 自身の毛髪データでできた炭を筆代わりに、折り紙の中心に文字を刻む。魔術刻印を仕込む。

 その折り紙で鶴を折る。魔力封入。そしてライダーへ軽く投げる。

 すると、鶴が自分で羽ばたき、ぱたぱたとライダーの方へ飛んでいく。

 

「ええっ!なにこれ!すごい!」

 

 ライダーの声には喜色が溢れている。もし『焼き尽くす我が憤怒』が宝具だったらと思い、影ながら使おうとしていた魔術だ。

 彼女が喜び、鶴を目でおっていく。その隙にもう一体鶴を折って羽ばたかせる。

 

「すごい、すごい!」

 

 予想以上の反応だ。ただ折り鶴を飛ばしただけなのだが。そんなに喜んでくれると俺も嬉しくなる。そしてまた鶴を折り始めた。

 

 

 

 

 500を折ったところでライダーが手伝いたいといってきたので鶴を折るのを担当してもらい、俺は刻印を刻んでいく。皇帝特権がある、といえば失礼かもしれないが、予想と反して手先は器用なようだ。

 

 

 

 

「あああああ!」

 

 ライダーが発狂した。

 

「まだ7千羽しか折ってないぞ。あと三千羽だ。」

 

 ちなみに一万枚に刻印を刻みつけた俺も鶴折りに参加している。

 魔術はこういう前準備が面倒くさいのだ。

 部屋には、髪を炭化させたことで独特のにおいが広がっている。鉄臭くもある。

 

 気分を変えに外出するのもありだろう。

 

 

 

 

―――食堂 購買

 

 

 ライダーはロールケーキを気にいったらしくまた、要望してきたので買ってあげた。

 気晴らしに焼きそばパンを購入して、帰ってから食べようとして帰ろうとしたとき。聞き覚えのある声に呼び止められる。

 

「火々乃く~ん!」

 

 直感であの人だとわかる。タイガーだ。藤村 大河。

 

「何ですか?」

「ちょっとね!頼みたいことあるんだけど。私の竹刀を探してほしいのよ。」

 

 竹刀?なぜに?

 そう言えばどこかで拾ったような

 データをあされば、竹刀が出てきた。

 

「おお~!もう見つけていたのね!」

 

 いやたまたまだ購買で売ろうとか考えていたが色々あって忘れていただけである。

 

「あと、もう一つ、お願いきいてほしいんだけど、いい?」

「別に、かまいませんが。」

「ありがとー!実はみかん取って欲しいのよね。」

「はい。」

 

 みかんを差し出す。そんな気はしていた。

 

「おお!これも持ってるなんて!さっすが~!」

 

 もう帰ってもいいだろうか。

 

「むう、これは…、うん。決めたわ。先生困ったことあったら真っ先に相談しにくるわ!」

 

 お礼にと、タイガーライトなるものを貰った。

 そう言ってどこかに行ってしまった。面倒が増えたな(確信)

 

 

 

 

――――マイルーム

 

 

 残り三千羽を折り始めた。

 ライダーは上機嫌でロールケーキを食べている。

 俺はもくもくと折り続けついに一万羽作った。

 もういい時間だったので寝ることにした。

 

 

 

 

 ――目が覚める。引きこもり生活二日目。

 今日の朝は刻印を刻む事から始める。ルーチンワーク。単調で面倒くさい作業が始まる。

 一万羽作ることを目処に作業を始める。

 

 

 

 

 三時間も過ぎればさすがの俺とて飽きてくる。

 ライダーは、既に飽きていてタイガーライト――キャンドル型に変化したそれをつついて遊んでいたりする。いや、遊んでいるというより仕組みが気になっているというべきか。

 なにせマイルームに持ってきたら変化しその形になったのだ。

 もう何でもありだなココ。

 なれてしまったが。

 

 鶴を折り続けて飽きるのなら、他の物を折ればいいじゃない。

と言うことで虎とか、虫とかを制作している。

 残り八千弱。まだまだ足りない。

 

 

 

 

「そういえばなんでこんなに折ってるの?」

 

 折っている際中ライダーがそんなことを聴いてきた。

 

「暇だからな。それにこの術式の特性として数があればあるほど、威力が上がり、制御がしやすくなる。そんな利点があるな。西洋魔術の概念を取り入れたせいで、数がないとうまく制御出来ないし、威力も安定しない。」

「じゃあ、どうして呪術オンリーでしなかったの?」

「呪術オンリーだと対価が大きすぎる。まあ、オリジナルの呪術は威力がかなり高いんだが、その代わり自分の魂、死を要求される。もとの術士の霊格が低すぎて話にならないんだ。魂の純度とでもいうべきかな。昔の人用の術式で、現代の俺たちが使おうとすると、犠牲にするものが大きすぎるのさ。他の人間を使って呪術を使うという理論もできて使う人もいるけど。その方法だと正直非効率だし。ホムンクルスを使うこともできるけど魂が脆弱でまともに機能させるには大量に必要で費用もかかる。」

「………コーヘイ、貴方って実はスゴイ人?」

 

 ライダーは目をしばたかせ、こちらを意外そうにみている。

 

「もっとポンコツだと思っていたわ。」

「ポンコツとはなんだ、ポンコツとは。だいたい俺はすごくない。時計塔の講師の方がよっぽどスゴイぞ。水銀を生き物のように扱ったり。生け贄魔術を扱いエキスパートもいたが、あの論文を見たとき震えたよ。というのもこの魔術にもこの論文がここまでのものは出来なかったといっていい。それに俺が時計塔に行く前に俺固有の魔術だと思ってたんだけど、混沌魔術をすでに使っている人がいたらしくてさ。ある講師は混沌魔術のことをゲテモノ魔術なんて呼んでたけど、すでに同じようなことを考えて使ってた人がいたなんてって、びっくりしたなあ。その人がつかってた魔術の基本理論これまたこっt――」

 

「ああ、わかったわ。うん、もうバッチリわかった。あなたが魔術馬鹿だって。」

 

馬鹿とはいってくれるじゃないか。ここからが面白いのに。

ちなみに俺の魔術属性は『空』である。

そのせいか相性の悪い魔術も結構ある。まあ、それをまたアレンジしようとすると混沌魔術と呼ばれるものまでにしてしまったりするのだが。

そういうこともあって、魔術を解析、どんな理論で基盤は何かとかを解析するのが得意になってしまった。俺のようなヤツは異端らしいが。解せぬ。

理論がそのまま利用できる以上、セラフ内用言語―プログラム言語に組み変えれば、問題なく発動する。最初に鶴を飛ばしたのは、それを確かめるためでもある。

この世界用に組み替えたせいか、妙な特殊効果まで付いているようだが。

 

 

 

 

ふと昨日聴いた言葉が思い出し、気になった。

 

「そういえばライダー、昨日真名を明かすのは待ってて、って言ってたけど、俺が探して解明するのはかまわないのか?」

「ええ、べつに。かまわないわ。」

「一応、確認しときたかったんだ。」

 

 

つまりライダーは、自身の宝具を明かしたところで真名にはたどりつけないと考えているのだろう。自身の逸話と関係が薄い?そんな物があんな威力を出せるのか?

槍であって剣。炎。そんな逸話の武器は、聞いたことがない。

しいて、挙げるとするならば、ガラディーン――かのアーサー王の騎士であり、太陽の聖剣を使った男ガウェインの武器――ぐらいである。

すくなくともライダーはガウェインではないだろう。皇帝特権持ってるし。

同様の理由でその妹、ガレスも考えにくい。

マテリアルを確認すれば、皇帝特権のランクはEXと表記されている。

ということは、かなりの繁栄させたか、暴君として有名か。服装からしてローマっぽくないし。服装から判断するなら、中国の始皇帝、とかか?まあ、男なのだが。女という逸話もない。まあ、事実は小説より奇なりと言うし。女性だったとしてもおかしくない。

 

 

 

そんなこんな、しているうちに、一万羽を作りおえ。

明日のために、早めに就寝することにした。

 

 

 

 

 

 ―――明日、実際に、人を、殺す

 

 ―――普通ではないことを、認めてはいけないことを

 

 ―――どう考えても殺すことに

 

 ―――納得がいかない

 

 ―――だが、それでも

 

 ―――覚悟をきめる。腹を括ろう

 

 ―――戦うと決めたのだ

 

 

 




  

 ―――――ついてこられるか?(作者の妄想に)



 

   ......主人公は魔術馬鹿(確信)

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