Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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第一回戦 二日目

第一回戦 二日目

 

 

 ――目が覚めた。どうやら昨日は疲れからか泥のように寝ていたらしい。

 体を起こし今日やることを簡単に把握しておく。

 とりあえずの計画を立ててライダーと考えを共有する。

 第一暗号鍵――プライマリトリガーがまだ生成されていないようだ。プライマリトリガーとは、アリーナに設置される決戦のステージに行くための鍵である。猶予期間として6日間与えられているが、その間に2つの鍵が生成されるようだ。

 基本は相手の情報を収集し、アリーナでは霊子虚構世界での通貨や経験値を得るためにエネミーを倒すことになるだろう。

 ちなみに経験値は、中庭にある教会でサーヴァントを強化するのに使えるようだが、なまじ高いレベルで召喚されているためあまり重要視しなくてもよさそうだ。というか効率が悪い。1レベル上げるのに必要な経験値が多く、その上1階層で得られる経験値が圧倒的にすくない。

 

 

 

 マイルームを出て、掲示板へと向かう。対戦者がいるかもしれないからだ。

 そう考え向かったが会うことは出来なかった。

 しかし、参加者から俺の対戦者、比島についての情報をある程度入手した。

 曰く、大企業の有名な御曹司であるが、婦女暴行事件、薬物、マフィアとの関係など、悪い噂の枚挙にいとまがない。

 しかし、端からそうであったわけではなく、ある時期から人が変わったように振る舞うようになったようだ。

 変わる前は、典型的な優男だったらしい。

 分かった情報はここまでだった。朝から夜まで、ニュースの話題にのぼるような人物のようだ。

 

 

 

 

 

 

 比島について調べおえ、図書室でも行こうかと思案していると、向かいの廊下にあの小動物めいた少女がいた

。同時に少女の前には、少女と同じく月海原の制服をきた青年がいて何やら言い争っているようだ。

 

「こんなガキが相手なんてな。こりゃ勝ったも同然だな」

「すごい自信ですね!よほどいいサーヴァントを引き当てたんですか?」

「ああ!俺のサーヴァントは最強さ。なにせヨーロッパどころか、世界中に知らないヤツはいない!まさしく太陽王って名前にふさわしいサーヴァントだ!」

「…へぇ。太陽王ですか。それは、強そうですね!」

 

 少女の対戦相手であろう青年は、彼女にいかに自分のサーヴァントがすごいか伝えたいようである。言い争いだとおもったが、ただの自慢話だったようだ。関わるとめんどくさそうなので、図書室に向かった。少女がこちらを見て目線で助けてコールを放っているように思えたが気のせいだろう。

 

 

 

 

 図書室についた俺は、自分のサーヴァントについて調べはじめた。ライダーが言うには、別に俺が真名を探し当てることについては、かまわないらしい。むしろ当てて見せろとのことだ。

 ヒントとなるのはあの白槍である。英霊は、宝具と呼ばれる逸話の集約したものを所持している。

 宝具自体様々なものがあるようだが、基本的には生前愛用した武器などが挙げられる。 例えば、かの有名なアーサー王ならばエクスカリバ―を宝具とするといった具合である。先の例からわかるように、宝具と真名は直結していることが多いのだ。

 ならば、ライダーが白槍を武器とし、宝具として扱っている以上、白槍から絞り込めるのでは?とかんがえたのだ。女性で槍使いとかいるのだろうか。

 

 

 

 

 

 調べ初めてから結構な時間がたったが、全く進展がなかった。槍を使う英霊は数あれど、白槍だったか分からないものが多い。女性で槍を使う英雄もいないではなかったが、ライダーに当てはまりそうな者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 時刻は夕方を迎えた。ピピッ。

 突然無機質な音がなった。携帯端末機からだ。

 どうやら第一暗号鍵が生成されたようだ。

 

 アリーナに向けて歩いていると、少女と対戦相手がいまだに会話していた。

 もはや彼女は、肯定の意見をしめす首振りべこと化している。ずっと自慢話をされていたようだ。青年もよく話し続けられるものだ。少し関心した。

 そんな彼女らのそばを通ってアリーナへと向かう。恨みがましい視線をうけたが知ったことではない。君子危うきになんとやらである。

 

 

 

 前回は、初めてということもあって半分程度しか踏破しなかったが、第一暗号鍵が目的である。よって今回完全な踏破を目指す。

 月海原学園の一階からつながっている迷宮、アリーナへと足を踏み入れる。

 同時に隣では、ライダーが霊体化を解除し現れた。

 

「二回目だけど気を引き締め―――っ」

 

 ライダーは構える。

 どうした、とライダーに問う前にそうさせる原因が現れた。

 

 キシャーー、と目の前に毒々しい色のヒトデに似たものが現れた。グチャリ、グチョリとうごめいている。

 

「海魔――!下がってマスター!」

 

 ライダーが俺の前に出る。エネミーとは全く形状もちがう。無機質さをみせる迷宮の中では、似つかわしくない。

 触手がライダーにむけて攻撃するが、ライダーはひらりとかわし、そのまますれ違い様に一撃。海魔はさかれ、あえなく散った。

 

「おそらく対戦相手の仕業ね。先手を打たれたみたい」

「宝具から生成されたとみて間違いはなさそうだな」

「そうでしょうね。使い魔にしては強力すぎるもの」

 

 一撃で葬り去った貴女が言うセリフか。

 海魔ですら彼女の敵ではないらしい。

 しかし、海魔の召喚か。なら敵サーヴァントはキャスターだろうか。

 

「とりあえず先進みましょう」

「そうだな」

 

 海魔だけではなくエネミーとも戦ったが、特に苦戦はしなかった。探索は、前よりもはやく進んだように思う。というよりサーヴァントが強すぎるせいか、海魔が妨害にすらならないのだ。

 迷宮の奥、すなわち第一暗号鍵が設置されている場所へとたどり着いた。

 そこには金髪、無精髭に白スーツの男と黒髪に黒目されど白人の男。

 目を引いたのは、サーヴァントである黒髪の男の格好だ。白銀の鎧にまるで根が張ったかのように黒いラインが入っている。そして手にしている特徴的な槍。所々金属が見えているが、先程の海魔のような質感をもつナニカに覆われている。

 彼らは、こちらを見て何か言い争っているようだ。

 

「ランサーァ!何故ェこんなにはやくたどりつける!?ありったけの素材≪ソース≫

をくれてやったハズだァ。海魔を放ったんじゃなかったのか!?」

「ええ、50以上の海魔を放ちました。しかし、どうやら想定以上のサーヴァントを保持しているようですねェ」

「ふざけるなァ!NPCとはいえ3人も素材にしたんだぞ!それでこの結果かッ!」

 

 ――今なんと言ったか。NPCを素材にした。そう言わなかったか。

 金髪の男―比島は、こちらを指でさして。

 

「殺せェェェェエ!ランサーァア!あいつらの首を取ってこいィ!今すぐに!」

「はいィ。主の命ならばァ!」

 

 ランサーと呼ばれたサーヴァントがこちらに不気味な笑顔で向かってくる。見開かれた 目が死んだ魚の目のようだ。

 ライダーも前にでる。

 

「くるわよ!マスター!」

 

 辺り一面に、赤い文字が現れる。

 『セラフより≪警告≫アリーナ内でのマスター同士の戦いは禁止されています。』

 

 ランサーの不気味な槍による突きがライダーに向けて放たれるが、ライダーは身をかがめるようにし、白槍で受け、滑らせながら接近する。そして、一閃。

が、ランサーは咄嗟に後ろにさがり鎧の胸の先をかすめるだけだった。

 ランサーは、

「マスターここは、引くべきです。相手が相当のやり手です」

 

 先程ヒャッハー!なテンションで襲いかかってきたとは思えない冷静な声色だった。

 

「チィッ!仕方ないか……。帰るぞォ、ランサー!」

「御意」

 

 リターンクリスタル―迷宮から脱出させるアイテム、を使用し脱出したのか。こつ然と姿が消えていた。

 

 暗号鍵を入手し、ライダーへ声をかける。

 

「俺たちも帰るか」

「ええ、そうね」

 

 俺たちもアリーナから脱出した。

 

 

 

 

アリーナからマイルームに帰還した

 

「はぁ…。疲れたわ」

 

 そう言って彼女はどっかりと座り込んだ。

 まあ、50以上の海魔やらエネミー、ひいてはランサーとまで戦ったのだ。

 疲れるに決まっている。

 

「お疲れ様、ライダー」

「貴方もね、コーヘイ」

 

 少し息をつく。

 そして今回得た情報を話あった。大きな話題は、あのサーヴァントである。

 

「あのサーヴァントは、ランサーだと思うか?」

「うーん…、そうね……。微妙だけどあの技量からランサーってのは、ありえるわ。でもあまり使い慣れていない印象をもったわ。ランサーって決め打ちするのは、待ったほうがいいかも」

「そうか…。海魔の召喚なんて邪教のソレだぞ。…なんにせよ、簡単に倒せる敵じゃなさそうだ」

「それに、NPCを素材にしたともいっていたわ。そんなことが出来るとしたら、キャスターぐらいだもの」

「マスターの方もそうだが、サーヴァントの言動も気になるな。狂気的だと思えば、突然冷静な発言――撤退を提案していた」

「――一回の攻防で私の強さを見切っていたわ。そういうスキルでも持っているのかしら」

「そうかもしれない。これからの情報次第だな。」

 

 今回のアリーナでは、得たモノが多い。多数のアイテムそしてサーヴァントの情報。

 そして、礼装である。鳳凰のマフラー――治癒のコードキャストに加え、俺の魔力量も増やせるようだ。概念礼装のようなものか。

 これをもって祝・役立たず卒業である。

 

「マスター。」

「なんだ?」

ライダーの顔は真剣味をおびている。

「…素材が足りないわ。」

「ひょっとして、頼んだ衣服のことか?どんな素材が必要なんだ?」

「5万」

 

 まさかのお金!?

 

「そうよ、PPTがたりないの。」

 

 ライダーの説明によるとセラフ内の通貨はソースに変換でき、とのことである。

 

 現在の所持金 678PPT 

 全く足りていない。

 しばらく、学生服生活が続きそうだ。

 

 むう、あれだけの戦闘をこなしたのにこれっぽっちか。

 

「そういえば、ライダーって乗る宝具あるの?白槍しか使わなかったけど。」

「あるに決まってるじゃないっ!なかったらライダー失格よ!」

 

 やはり、あるのか。では何故使わないのだろうか。

 

「あるには、あるんだけど戦闘向きじゃないのよね。他の英霊の宝具だったら、そうね。有名な英雄で言えばアレキサンダー大王とかは騎馬の宝具――チャリオットなんかが挙げられるけど、私は馬を武器として使ったことはないから、戦闘向きではないの。馬を呼ぶこと自体できるけど移動にしか使えないわ。」

 

 そう理由があったのか。一度踏破したアリーナに用事があるときは、乗せていってもらうのも、ありかもしれない。

 

 

 

 主な話題について話あったあと、疲れを癒やすため、寝ることにした。

お休み、といいお互い横になる。

 

 

 

 ――倒さなくてはならない敵を見た

 

 ――生き残るには、倒さなければならない

 

 ――結局自身がどうしてここにいるのか、分かっていない

 

 ――真実を得るためには、おそらく聖杯にたどり着く必要がある。どんなに情報を集めても推論の域を出ないだろうからだ

 

 ――相手にどんな理由があろうとも

 

ちらりとライダーをみる。目を閉じ、胸を上下させている。眠ったようだ。

 

 ――倒さなくては

 

 ――自らの願いのために

 

 

 

 


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