Fate/EXTRA-Lilith-   作:キクイチ

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第四回戦 三日目

 

「「すみませんでした」」

 

 揃えて放たれた謝罪の声。それはベッドの上から見下ろす俺に向って放たれたものだった。ちなみにアーチャーもライダーも土下座である。ちなみにこの部屋の主――カレンはこちらを高見の見物である。麻婆を食べながら。

 

「でも貴方だって悪いわよ!!あんなの見せられたら完全に情事だと思うじゃない!?」

「確かに、私なんて半裸だったんだぞッ!!それをじー、と見ていたくせに……!」

 

 などと意味不明なことを供述しており――。

 そう、こいつらはあろう事か、俺が全力をもってアーチャーにパスをつなぎ修復に四苦八苦、特に身体の構造修復には手間と精神をすり減らした。

 全くもって邪な気持ちは持っていなかった。

 確かに、性交によるつなぎ方も手っ取り早くていいのだが、アタランテに限ってはそうではない。彼女の宝具はなんの所以があっただろうか―――そう、処女神アルテミスだ。

 彼女はアルテミスに対して純血の誓いを立てているのだから。下手に性交すれば宝具すら使えなくなってしまう。

 

「見ていたのは、その無駄に美麗な顔だけだ――!大体裸にひんむいたのはそのほうがやりやすかったからだ、他意はない!」

「見苦しい――保健室で乳繰り合ったのでしょう?ソリッドブックみたいに」

「余計な油を投下してんじゃねェ!!」

「貧乳……!?」

「言ってねェ!!」

 

 その後めちゃくちゃ説明した。

 

「大体さ、お前らがぐちゃぐちゃにしたこの部屋を!修復したのは誰だと思ってやがるんですかね!!そこのカレンから嫌みをがんがん飛ばされながら修復した俺に謝れェ!」

「そ、それは……ごめんなさい」

 

 彼奴らの暴れたあとを俺は気絶から復帰した後、痛む頬を引きずりながら修復である。

 この世界で魔術を行使すると、それに見合った効果をもつコードキャストが勝手に発動した形になるようだ。今更であるがよりこの一件で分かることになった。

 久しぶりの頭痛案件だ。怒りを抑え込み、話を進めることにした。

 

「で、少しは落ち着いたか?アーチャー」

「ああ、大丈夫だ」

「なんやかんやで、助けちまったわけだが。お前は――俺に、協力をする気があるのか?」

「――是非もない。私の認めたマスターを奪ったのだ、こうして機会が与えられた以上は私にも協力させて欲しい」

「じゃあ、短い間だろうがよろしく」

 

 手を差し出し、握手をした。

 ライダーはそれをむすっとした表情をしながら見ていたが。

 

 

 

 

 先当たってすることは――武器の調達か。

 ふむ……あそこにいるのは、征服王のマスターか。

 

「よう、石野。ちょっといいか?」

 

 欲しいもの、復讐にあたって俺が全力を出すために必要な武器を購買なりにハッキングして貰い購入するなりで入手しようと思ったのだ。

 

「うーん、日本刀ね。ま、ハッキングしてもいいんだが……魔術の基本は等価交換だろ?空気うち/二の太刀との交換でなら――」

「ほい」

「んな!?持ってたのか、一体何処で……?」

「アリーナ」

「ええ?でもまだ第二層は公開されていないし、なら前に取りこぼしたか……?あ、悪い今ハッキングするわ」

 

 そう言って、空中にキーボードを出し、入力していく。

 

「――ほい、これで購買に出たと思うから」

「おお、ありがとう」

「いいってことよ」

 

 

 

(マスターって結構武闘派なの?)

(いや、全然。でも武闘派のやつらから逃げおおせるぐらいには戦えるぜ。代行者に勘違いで殺され掛けたこともあるがなんとか凌いだしな)

(汝よ、自慢になってないぞ)

 

 日本刀はロマン追いかけた時代の賜物なのだ。主に中二病とかの――なんか泣けてきたので考えることをやめる。

 なんにせよ、最も自分が使いやすいモノであるのは確かだ。

 

 そんなこんなで購買へ来た。

 

「すいません、日本刀下さい」

 

 ふむ、たった2万PPTか。安いな。

 ライダーの持っている黄金律のせいか、やたらと金が貯まる一方なのだが。

 エネミーもすぐにポップアップするし。

 日本刀を調べてみる。刃渡りは六十八――ふむ、長めか。そりは浅めだが…悪くはない、むしろいい。重心もちょうどいい位置にあるし、使いやすそうだ。

 チンッといい音を立てて刃先をしまい腰に差し、次の目的場所――エリカを探す。

 

 

 

 

――――――アリーナ

 

 

 結果、いなかった。

 どこを探してもいなかった。ま、それはいいのだが。

 おそらくすでにアリーナに入ってしまったのだろう。

 隣に立つのは、アーチャーであり、ライダーは霊体化したままである。

 

「今日はお預けな、ライダー」

(分かってるわよ)

「ふむ、しかし良いのか?」

「ああ。お前の性能の確認と奴らにライダーの情報を全く与えないことが目的だからな。彼奴らに――完敗を押しつけてやる」

 

 迷宮へと足を進めた。まず最初に出会ったのは、ワニ?型のエネミー。

 

「――狩りの時間だ」

 

 

 

 

 幾重のエネミーを屠り倒し、迷宮を踏破していく。

 途中で藤村大河に頼まれたもの、カニ玉を入手する。つかなんで、アリーナにカニ玉?なんで迷宮に料理が、食べ物があるのか。

 アーチャーの身体が心配だったが思ったより上手く戦えているようだ。

 ふむ、さすがと言うべきか。

 

「どうだ……私の性能は?」

「想像以上だ。さすがと言うより他ないな。ってんん?」

 

 向こうに変なモノがいた。人型でありながら、中々の大きさ…2メートルはある大型のエネミーであった。

 最奥の第一暗号鍵の前に鎮座していた。

 

「じゃあ、アレを倒して一旦探索は終わりにしよう」

「ああ、任せよ」

 

 特にすごいのはその身のこなしだ。この聖杯戦争の形式ではなかなかアーチャーには分が悪いと思っていたのだが、それを一新する戦い方だ。

 巨人の拳をひらりとかわし、カウンターで一撃。エネミーは腕によって横払いを仕掛けるがそれにアーチャーは飛び乗り、前方へ跳躍し、エネミーの背中に一撃と、とてもトリッキーな攻撃を仕掛けていた。俊足を活かしまさしく蝶のように舞い、蜂のように刺すという戦闘方法だ。

 

 正確無慈悲に、相手のウィークポイントを射貫いていく。足の間接を射貫けば、体勢を崩すのは必定である。もし、この聖杯戦争中に戦うことがあったなら、苦戦していただろう。

 

 最後に頭を弓で狙撃し、ついにエネミーは膝から崩れ消失した。

 

 

 

 

――――――マイルーム

 

 

 第一暗号鍵の入手はすることが出来た。

 前回までのごたごたで入手することが出来なかったのである。

 

「で、どうだったアタランテ。身体の方は?」

「ふむ……万全とは言えないが、問題は無い」

「それはよかった……ライダー、納得できたか?」

「別に……いいんじゃない?」

 

 頬を膨らませ、いかにもまだ納得できていませんといった顔である。

 しかし、納得して貰う他ない。この作戦はライダーの情報を全く出さないことに意味がある。戦闘方法、得意な攻撃。情報を与えず、完全な勝利を目指す。そのためには、マイルームでお留守番して貰う必要があるのだ。

 

 ライダーに今回、アリーナに着いてきてもらったのは、アーチャーが信用たるかと言うことを見極めてもらうためだった。これから少なくとも三日はアーチャーと行動するのだ。ライダーからすれば心配という意味で気が気ではないのかもしれない。

 

 ま、霊体化させ続ければいいじゃないかとも思うのだが、さすがに圧倒的な存在感を隠すことは出来ない。何らかの対策をとられ、姿が露見するのも時間の問題である。

 

ライダーには、ここで待って貰いつつ、アタランテと共に迷宮を踏破する。そして相手のサーヴァントの情報を一方的に手に入れるという作戦である。

 

「捨てたものに吠え面かかされる、なんて屈辱的だろうし。復讐にはうってつけだろう?それに危なくなったら令呪を使って呼ぶからさ」

「そこはわかるけど……せっかくの―――」

 

 後半は声が小さくて聞き取れなかったが。興奮したかのように頬に朱が差していた。

 アタランテに確認したいこともあるのでそちらを優先する。

 

「そう言えばだが、アタランテはサーヴァントに奇襲されたんだよな。全く気取らせずに」

「そうだ……全く気づかなかった―――アサシンの可能性があるな」

「アサシンか、となると気配遮断持ちって考えたほうがいいかもね」

「攻撃を食らうまで分からなかったとすれば……かなりの高ランクで保持しているとも考えられるな」

「容姿とかはどうだったの?」

「ふむ、あまり顔は見れなかったが……銀の腕を持っていたな」

「銀の腕?」

 

 銀の腕で有名な英雄など聞いたこともないが、小手のようなものか?

 ふむ、調べるにも小手ではなあ。そんなので有名なヤツはいないだろうし。第一、鎧とかの一部である可能性もある。

 

「ああ、義手だったぞ。機械仕掛けで恐ろしいほどの力を出していたな」

 

 義手ねぇ。だとしたら割と最近の英雄なのかも知れない。機械仕掛けと言うのだから、ひとしおである。なんにせよ、相手に関する重要な情報には違いない。

 

 

 

 少し雑談をし終わった後、明日に備えてねることにしたのだが―――。

 

「なんで俺の寝床にいるのさ……ライダー」

「あら、コーヘイはアタランテに地面で寝かせる気?……まさかアタランテと一緒に――」

「なんでそうなるんだよ……お前らが一緒の床で寝ればいいじゃないか」

「私は何処でも気にしないが」

「俺が気にする」

「あっち、二人も寝られないのよ。せまくて」

 

 どうやら譲る気はないようだ。

 さっさと寝てしまいたいので了承する。

 

「だそうだ……アタランテはそっちで寝てくれ」

「了解した」

 

 そんなこんなで寝ることにしたのだが。

 

 

 

 ――――暑い。

 

 意外にひっついてすやすやと眠るライダーの体温が高く、小一時間たったあとも眠れずにいた。ホントに暑い。

 なので上掛けを取ろうとすると――ライダーが掴み引き寄せてくる。

 暑くて死にそう。しかし、ライダーはすやすやと眠ったまま起きる気配がない。

 寝床から抜けだそうとすれば、ライダーががっしりと掴んでいるせいで寝れない。

 焼け死ぬ。蒸し暑い。

 どこココ地獄?最近地獄ありすぎじゃね?閻魔様ー、地獄漏れ出してんよー。

 

 早く朝になってほしい。

 ――明日が恋しくなったのはこれが初めてかもしれない。

 


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