東方博麗伝   作:幻想の戦士
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第45話:2度目の彼女の家

 日も沈んで、すっかり暗くなった頃。笑夢は椛に誘われ、彼女の家に上がっていた。一応、霊夢からもし椛の家に泊まるなら泊まってもいいと許可を貰っているため、今晩は彼女の家で過ごすことになる。
 椛の家に上がった笑夢は、彼女の許可を貰って夕食作りをしていた。理由としては、天狗の里を案内してくれたお礼、というのは建前で実際は単純に椛に食べてほしい料理があったからだ。

「さて、作りますか」

 まな板の上に用意したキャベツを半分に切り、それを千切りにしていく笑夢。切り終えると、ボウルにあらかじめ用意していた、小麦粉を水で溶いてすりおろした山芋を練り込んだ生地に、千切りにしたキャベツ、卵を入れて混ぜ始めた。

「えっと…、確か下からすくい上げるように、空気を含ませるように混ぜるんだっけな」

 ボウルの底から、生地全体が混ざるように箸を動かす笑夢。生地がよく混ざりきったのを確認すると、笑夢はコンロに火を点けてフライパンを温め始める。ちなみにコンロは、にとりが試作品といって椛の家に置いたものである。おまけにガスボンベを数本付けて。
 フライパンが温まったのを確認すると、笑夢はそこに油をひいた。油をひきおえると蕎麦を投入してそのまま炒め、水を入れると同時に蓋をして蒸し焼きにした。

(こうしてると、“あの人”とこれ作ったのを思い出すな)

 蕎麦が焼き上がるまでの間、笑夢は昔の事を思い出していた。修行時代、紫の提案で訪れた世界で出会った少年の事を。思い出に浸っているなか、蕎麦が焼けた事に気付いた笑夢は、それを一旦器に移した。フライパンに油をひきなおし、そこに生地を流して焼いた蕎麦を乗せ、その上に生地を流した。ちょうど蕎麦が、生地にサンドされる感じである。
 生地の下側が焼けたのを確認すると、笑夢は生地をひっくり返した。

(最初やったとき、崩しちゃったんだよな、このひっくり返しで)

 昔の自分の失敗に笑いながら、笑夢は焼き上がった生地をお皿に移した。その生地の表面に、即席で作ったお好みソースを塗って鰹節を振り掛けた。

「よし、1枚目完成っと」

 焼いた蕎麦を入れたお好み焼き、すなわちモダン焼きを完成させた笑夢。そのまま残りの生地も同様のやり方で焼いていった。

「お待たせしました、椛さん」

 出来上がったモダン焼きを机に運んだ笑夢。椛は笑夢の作ったモダン焼きに、興味津々のようであった。

「おぉ。美味しそうだね」
「モダン焼きっていって、お好み焼きの1種なんですよ」
「へぇ。前にも笑夢君に朝食作ってもらったけど、笑夢君って料理上手だよね」
「まぁ、藍さんに教えてもらいましたから」

 椛の質問に答えつつ。笑夢は彼女と向き合うように座る。互いに手を合わせて、そのまま合掌した。初めて食べたモダン焼きに、椛は顔を綻ばせる。

「ん~っ。美味しいよ、笑夢君」
「お口にあってなによりです」

 笑顔でモダン焼きを食べる椛を見て、微笑みながら笑夢もモダン焼きを食べていった。夕食を済ませて、湯船に浸かる笑夢。今日の事を振り返りながら、笑夢は明日の予定をたてていた。

「明日、椛さんを母さんの墓に連れていこうかな。そろそろ挨拶もしといた方がいいし…」

 天井を見上げながら、呟く笑夢。ついでにその時、もし彼女がなぜ自分が紫の養子になったのか聞いてきたら、自分の過去の事についても話すと決めた。
 湯船から上がり、入れ替わりで風呂に入った椛の代わりに、布団の準備をする笑夢。相変わらず布団は1枚のようで、今晩も一緒に寝ることになりそうだなと笑夢は思った。先に布団に入って、横になる笑夢。次第に意識が遠くなり、そのまま寝てしまった。

「上がったよ~、笑夢君」

 笑夢が寝てから数分後、椛が湯船から上がった。名前を呼んでも返事の笑夢に、少し疑問に思った椛だったが、布団に近付き、彼の様子を見て納得した。

「ふふっ。寝ちゃったか。まぁ、今日は色々見て周ったもんね」

 安らかな寝息で寝ている笑夢を見ながら、椛は微笑む。短くなった彼の髪を撫でると、ピクリとその体が反応した。

「…こうしてみると、笑夢君って結構中性的なんだよねぇ。顔立ちが」

 彼の寝顔を見ながら、椛は呟く。しばらく彼の寝顔を見ていたが、やがて自分も眠くなったので自分も布団に入ろうとした。その時。

「…んっ」

 笑夢が寝返りをうち、椛の方に体を向ける。ちょうど椛は笑夢に背中を向けている形で、笑夢の目の前には彼女の尻尾があった。不意に笑夢は右手を伸ばし、そのまま椛の尻尾を握った。

「きゃんっ!?」
「ん~…、もふ、もふ……」

 寝ながらの、無意識による行動にもかかわらず、笑夢の握り加減は椛にとってちょうど、1番気持ちいいと感じてしまう強さであった。

(あ、これ……。ヤバい、かも…)

 ふるふると体を震わせ、笑夢が尻尾を離すのを待つ椛。やがて笑夢の握る力が弱くなり、そのタイミングで椛はゆっくりと尻尾を彼の右手から抜いた。かなり敏感な尻尾を、ベストな力で握られ続けたせいか、椛の顔は紅潮し、息も少し荒くなっていた。

「はぁ、あ、危なかった…///。あと、もう少しやられたら、変なスイッチ、入るとこだった…///」

 視線を、幸せそうな表情で寝ている笑夢に向ける椛。お返しと言わんばかりに、彼の頬を指で数回つついて、そのまま布団に入って就寝するのであった。