Fate/Game Master   作:初手降参

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Wish in the dark (1)

 

それから丸一日。

サーヴァント達がウルクに近づいてくるティアマトに合わせて排出されるラフムを狩りに赴いている中、レオニダスと小太郎はウルクに残った兵士達と共に、黎斗から渡された機械をとうとう組み上げた。

 

 

「……完成しましたな」

 

「ええ……まさかマルドゥークの斧を投擲する為の機器だったとは」

 

 

堂々と南門にそびえ立つ発射台。それはシンプルな造形で、目立った点は両端からはみ出ている紐のみ。

あとはこれにマルドゥークの斧を嵌め込み、力のあるサーヴァント……例えば、宝具を発動したレオニダス等が全力でその紐を引くことでストッパーが外れマルドゥークの斧は五百メートル先まで時速60kmで飛んでいくとのこと。

 

 

「……流石は私の才能だ。フフ、ハハハハ……!!」

 

「ああ、黎斗殿……グガランナはもう良いのですか?」

 

「問題ない。やりたかったことはまだあったが……時間切れだ。グガランナなら、後はナーサリーが全てやれる。……そろそろ前線に赴くぞ、風魔小太郎」

 

 

ウルクの南門を通って現れた黎斗は既にドライバーを巻いていた。彼の目はナピシュテムの牙の向こう側の、三重に堀が用意された平野を見つめる。

 

 

「……はい。今から……始まるんですね」

 

「その通りだ。絶対魔獣戦線メソポタミア……あと一時間もせずに、ティアマトは軌道通りに直進し、アレにかかる。レオニダス」

 

「ええ、動きが止まったら私が炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)を使用するのですよね? で、起動をすると」

 

「その通りだ」

 

 

彼は戦場へと歩き始めた。見据える先のその先にはティアマトが未だ動いている。

しかし黎斗が一人進む様に不安も悲観もなかった。寧ろ、期待に胸を膨らませているようにも見えた。

 

───

 

「AAAAaAaaaaaAAAaAAAAAaAaaAAAAaaaaa……!!」

 

 

ティアマトは進む。周囲の木々を泥で覆いながら進む。その泥は傾斜をものともせずウルクへと向かい、そしてウルクとの間に掘られた堀に溜まっていく。

ティアマトは本来のティアマトとは既に剥離していた。その大角は魔神柱に置き換えられ外敵を睨んでいた。その背には翼ではなく何本もの腕が生えていた。その乳房は既に失せ、瞳の集合体が外的を呪っていた。

 

 

 

「……黎斗さん。来ました、ティアマトが」

 

 

堀の向こう側でティアマトを見上げ、マシュはそう呟いた。彼女の残りライフは29……いや、消滅してアヴァロンの幽閉塔に戻ったのであろうマーリンの助けで残り30になっている。

 

 

「そのくらい分かっている。今さら恐れなどないだろう、マシュ・キリエライト?」

 

「当然です」

 

 

そこには、ウルクの殆どの戦力が立っていた。そこには、未だウルクの中に残る人々の希望が残っていた。

ティアマトは進む。ウルクへと進む……そして。

 

 

「AaaaAAAAAAAAAaaaAAaaa……」

 

   メキッ

 

「──Aa」

 

   メキメキメキメキメキメキメキメキ

 

 

ティアマトの右足にあたる部分の大地が陥没した。

深さにして24メートル、冥界の移転を邪魔しない程度だがティアマトを足止めするにはそれなりの深さの落とし穴。

大地が揺れる。ティアマトがよろける。

 

 

「AAAAAaaaAAaaaa……AAAAAa……」

 

「ティアマト、一時停止!! 今のうちです黎斗さん!!」

 

「分かっているさ」

 

 

「……これが、最後の戦いになる。ここまで良くやった、誉めてやろう……しかして、決して気を緩めるな。心して挑むが良い」

 

 

ウルク南門の近辺の城壁から、ギルガメッシュが大声でそう言った。それと共に彼の側の兵士達が一斉に攻撃を放つ。

それが作戦開始の合図となった。

 

 

「それでは皆さん御武運を!! 行くぞ弁慶、自在天眼(じざいてんがん)六韜看破(りくとうかんぱ)!!」

 

「そっちは任せたニャ!!」

 

「ええ、存分に打ち合って行きましょう!!」

 

   シュンッ

 

 

最初に飛び出したのは牛若丸とジャガーマン、そして弁慶。彼女らは牛若丸の宝具によってずっと遠くまで……それこそ北壁の向こう側まで、ティアマトを守っていたラフムと共にワープしていく。

 

護衛が消え失せ困惑するティアマトを前にして、その場にいたサーヴァントが皆ガシャットを構える。

既に戦いの火蓋は切られた。逃げ場はない。ここで第七特異点を終わらせる。

 

 

『Taddle Fantasy!!』

 

 

セイバー、ジークフリート。腰に輝くはガシャコンバグヴァイザーN。その剣の閃きはあらゆる悪を切り伏せる。

 

 

『Bang Bang Simulations!!』

 

 

アーチャー、織田信長。腰に輝くはやはりガシャコンバグヴァイザーN。呼び出す火縄は意思を告げる号砲。

 

 

『タドルクエスト!!』

 

『マジックザ ウィザード!!』

 

 

ランサー、エリザベート・バートリー。腰に輝くはガシャコンバグヴァイザーL・D・V。その槍は邪悪なるものなれど今は悪へと振るうもの。

 

 

『Perfect Puzzle』

 

『Knock Out Fighter!!』

 

 

アヴェンジャー、エドモン・ダンテス。腰には何もなく、しかして体に直挿ししても耐えうる者。その瞳は真実を見据え、それでも良いと笑う。

 

 

『『ドラゴナイト ハンター!!』』

 

 

カップル、ラーマとシータ。並び立つ二人に直挿しの恐れはなく。その剣は弓は、互いと互いの恩人への思いを力に変える。

 

 

『Britain warriors!!』

 

 

シールダー、マシュ・キリエライト。腰に輝くはガシャコンバグヴァイザーL・D・V。その剣は今や彼女のものとなり、人理を救うと決めた彼女と共にある。

 

 

『シャバドゥビタッチヘンシーン!!』

 

 

ウィザード、操真晴人。腰に輝くはウィザードライバー。その指輪は希望を護る魔法使いが最後の希望となる手段。

 

 

『マイティ アクション NEXT!!』

 

 

ゲームマスター、檀黎斗。腰に輝くはゲーマドライバー。彼の才能は全てを産み出し全てを攻略する。

 

 

『ストーム ニンジャー!!』

 

 

アサシン、風魔小太郎。腰に輝くはガシャットドライバー:プロト。その足は戦場を駆け、外敵を速攻で潰す。

 

並び立つ、並び立つ。並び立つ戦士達が一同に見上げるは原初の母、人間が倒すべき悪。その名をビーストⅡ-Ⅰ(ティアマト)

本能のままに吠えるそれに最早母の面影はなく、故に。

 

人が神と袂を分かつ時が来た( Childhood's End )

 

 

「「「「「「「「「「変身!!」」」」」」」」」」

 

 

『辿る巡るRPG!! タドールファンタジー!!』

 

 

戦うものの回りに光が弾ける。

 

 

『スクランブルだ!! 出撃発進バンバンシミュレーショーンズ!! 発進!!』

 

 

姿が書き換えられていく。

 

 

『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!!』

 

『アガッチャ!! ド ド ドラゴラーラララーイズ!! フレイム!! ウォーター!! ハリケーンランド!! オールドラゴン!!』

 

 

それは敵と全く同じようで、その実全く別のもの。

 

 

『響け護国の砲 唸れ騎士の剣 正義は何処へ征く ブリテンウォーリアーズ!!』

 

 

黎斗()の中より出でてその実正義の力を孕むもの。

 

 

『フレイム プリーズ!! ヒーヒー、ヒーヒーヒー!!』

 

 

絶望を弾き飛ばし希望を護るだけのポテンシャルを持つもの。

 

 

『マイティジャンプ!! マイティキック!! マーイティーアクショーン!! NEXT!!』

 

 

故に彼らは止まらない。彼女らは止まらない。

 

 

『ぶっ飛ばせ 暴風!! ストームニンジャー!!』

 

 

今や人類の未来は、彼らの手の中に。

 

 

「……行くぞ。コンティニューしてでも、クリアする……!!」

 

「俺達が最後の、希望だ!!」

 

 

「AAAAaaLAAaAaaa……!!」

 

 

叫ぶティアマト。

それに相対した一同は臆することなく、敵の懐へと飛び込んだ。

 

───

 

「キキキキ!! キキキキ!!」

 

「イカナキャイカナキャ」

 

「退いてください……私達は行くところがあるんです」

 

「ちょーっと待って? 私の授業受けていかない? 逃れ得ぬ死の鉤爪(グレート・デス・クロー)!!」

 

   ザンッ

 

 

北壁の向こう側では、ジャガーマンと牛若丸と弁慶とがラフム相手に大立ち回りを繰り広げ始める。その耳にも、戦闘が始まったことは理解できて。

これは正真正銘最後の戦い、もう出し惜しみは必要ない。

 

 

「んー、向こうも頑張ってるニャ」

 

「ええ、我々も負けるわけにはいきません。存分に仁王立ちして私の盾になってください弁慶」

 

「ははは拙僧に死ねと申しますか!! ええ喜んで、決してあなた様を一人には致しますまい!!」

 

 

三人は恐れない。恐れている余裕など、もう何処にもありはしない。

 

───

 

「急ぐのだわ急ぐのだわ急ぐのだわ!!」カタカタカタカタ

 

「ぶもー……」

 

 

そして黎斗にグガランナの最終調整を任されたナーサリーは、ジグラット外の街道に場所を移しひたすらにキーボードを叩いていた。

隣ではコードを繋がれて頬杖をつくイシュタル、目の前には既に家屋ほどのサイズになったグガランナ。

 

 

「あと少しあと少し……」カタカタカタカタ

 

「……もう始まってるみたいね。まだ終わらないの?」

 

「今急いで……んうっ……!?」

 

   バタッ

 

 

突然ナーサリーが気を失って倒れた。どうやら限界が来てしまったらしい。

イシュタルがため息をついて、パソコンの隣のボタンを押す。

 

 

「……ええと、こうするのよね……? ポチッと」

 

   ブァサササ

 

「ふっかーつ!!」

 

 

その動作だけでナーサリーは画面の中から再び椅子の前に座り、再びキーボードに向かい始めた。

 

 

「もう何度目よ……少し休んだ方が」

 

「私に構わないで……開発を続けるわ!! ふんっ!!」

 

   カタカタカタカタカタカタカタカタ

 

───

 

 

 

 

 

『タドル クリティカル スラッシュ!!』

 

『ストーム クリティカル ストライク!!』

 

『フレイム スラッシュストライク!! ヒーヒーヒー!!』

 

   ザンッザンッ ズシャッ

 

「AAAAAAAAaAAAAAAAaaaaAAAAaaaa……AaaAAAAAAAAa……!!」

 

 

戦闘開始から二時間。エレシュキガルが冥界の支度を済ませるまで予定だとあと三十二時間。

黎斗によってティアマトの泥への耐性を得たガシャット使用者達は、入れ替わり立ち替わりティアマトへと攻撃を開始して、右足を抜かせないようにしていた。

 

黎斗はデンジャラスゾンビガシャットを使用しながらティアマトの胸部へと駆け上がり瞳の集合体を切り裂く工程を繰り返していた。

そして彼が四回目にそれを行った時、彼は確信する。

 

 

「っ……引け!! 魔神柱部分の勢いが弱まった!! 今なら投擲は防がれない!!」

 

 

その声を合図に、ウィザードとシールダーがティアマトを縛り上げた。

 

 

『バインド プリーズ!!』

 

「鉄の戒め!!」

 

「AAAAAAAaaaLAAAAa──!!」

 

   ミシミシ ミシミシ

 

 

一時的にティアマトが動きを止める。その鎖は一瞬しか持つことなく、すぐに悲鳴をあげて千切れかけるが……その一瞬で十分だった。

 

 

「マルドゥークの斧、投擲!!」

 

 

「了解しました!! 炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)!!」

 

   グググググ

 

   バキンッ

 

 

宝具を発動したレオニダスが、呼び出された三百の仲間と共に、発射台の紐を全力で引いた。ストッパーは外れ、巨大な斧はティアマトの元へと飛んでいき……

 

 

 

 

 

   ズズズブシャアッ

 

「LAaAaAaAaAaAaAaAaAaAaAaAaAa!?」

 

 

勢いよく胸元へと突き刺さった。巨大なティアマトの胸元に、衝撃波すら放ちながらマルドゥークの斧が突き刺さった。

悶え苦しむビーストは堪らず大地に左の膝をつく。

 

しかしティアマトは、胸元から魔神柱を伸ばしてその傷を塞ごうとしていた。

 

何重にもなった呻きと共にティアマトの目が更に増える。元よりウルクを睨んでいただけの双眸に加えて、体表に更に幾つもの目が浮かび上がる。そして哭いた。

 

 

「LAaAaAaAaAaAaAa──!!」

 

「何じゃあれは!? あれでは、あれでは……まるで……」

 

「……魔神柱が覚醒したか」

 

 

……そう。マルドゥークの斧によって、本来のティアマトなら致命傷を受けただろう。死こそなくとも一日は動けなかっただろう。

しかし今のティアマトはティアマトであってもティアマトではない……魔神柱が混ざっている。

彼女の体の支配権はこの瞬間完全に魔神柱のものとなった。百獣母神の肉体は全て奪われ、その権能はやはりサーヴァント達に牙を剥く。

 

───

 

「……」

 

 

キングゥは南門の上に立ち、ティアマトに攻撃を浴びせるサーヴァント達を見つめていた。その瞳は無感動なようで、しかし内心は揺れていた。

 

 

「……ボクの、やるべきこと……」

 

 

彼の隣では、最後までウルクに残ると選択した兵士達が、遠方で暴れるティアマトに攻撃を続けている。

 

 

「……やるべきこと、いや、やりたいこと……」

 

 

隣を見た。一心不乱に狙いを定め、ラピスラズリを砕いて攻撃を放つ彼らはちっぽけで。

それでも尊く見えてしまった。キングゥという機体の中の、エルキドゥの残りカスのせいだろうか。

 

 

「……何をしている?」

 

「……ギルガメッシュか」

 

 

キングゥの隣にギルガメッシュが立った。彼は遥かの戦場を見つめ、ウルクの守りを見つめ……そして手元のガシャットを見つめていた。

キングゥは何かを言おうと思った。しかし出そうとした言葉は唇に引っ掛かり、少し震えさせるだけに終わった。

 

 

「……キングゥよ」

 

「……」

 

「ウルクはここで滅びる。ウルク第五王朝はティアマト、そして我の死でもって終わりを告げる。ウルクの人々はカルデアの尽力で生き長らえたが、ここまで大地が荒らされれば国など持つまい……それは皆が知っていた」

 

「なら、なら……どうして彼らは」

 

 

ギルガメッシュは笑っていた。愉しげに笑っていた。

 

 

「決まっているだろう。ここで死んでも次がある。自分の後を継ぐ物がいる。ウルクの文化が残ればウルクは継続する。人の痕跡が残れば誰かが人の道を継ぐ……そう信じるのだ」

 

「……」

 

闇の中で抱く望み(Wish in the dark)。これを持つ限り、人は進む」

 

───

 

「っ……完成したわ完成したわ完成したわ!! ウッ……」

 

   バタッ

 

 

戦闘開始から六時間。冥界落としが可能になるまであと二十八時間。

ナーサリーが歓声と共に倒れ付した。そしてそのまま消滅する。イシュタルはグガランナがかつてみた調子と同じくらい……いや、さらに強くなりさらに扱いやすくなったのを確認して感嘆の息をついた。

 

 

「ほぉ……こんなにすごいんだ……倒れても仕方ないわね。お疲れ様。ポチッとな」

 

   ブァサササ

 

 

グガランナは鼻息を荒くしていた。イシュタルはナーサリーを復活させながらコードを抜き立ち上がる。

 

対ティアマトの戦闘開始から、既に半日が経過していた。

 

 

「ふぅ……あ、こうしちゃいられないわ、マスターに知らせないと!! ……あ、ありがとうね!!」

 

「良かったわ……じゃあ、行ってくるわね」

 

 

イシュタルが元の姿に戻り、マアンナに乗って空へと舞い上がる。ナーサリーは近くの物見台をよじ登り、反射鏡でゲンムにグガランナの完成を伝えた。

 

 

「出来たわよ、マスター!!」

 

   キラッ

 

───

 

   キラッ

 

「っ、でかした!! 流石は()の才能!! では早速だ……門を解放しろ!! ナピシュテムの牙部分収納、グガランナを放て!!」

 

 

光を受け取ったゲンムは笑いながら飛び退いた。ティアマトは未だ片足を穴につき入れたまま暴れている。

 

 

ウルクの門が開かれるのが横目に見えた。ナピシュテムの牙は中心部分のみ下げられ、その向こうに砂埃が上がる。

 

 

「ブモオオオオッ!!」

 

「よしきた、全員退避しろ!!」

 

『マーイティーアクショーン NEXT!!』

 

『ジェットコーンバーット!!』

 

 

それを見ると共に、ティアマトを足止めするため奮闘していたサーヴァント達は一斉に飛び退いた。

それを気にすることなく、グガランナはティアマトへと飛び込んでいく。

 

 

「ブモモモモモォォォゥウッ!!」

 

   ズドンッ

 

「AAAAAaAAAAAAAAAAaaaLAAAAaaaa!?」

 

 

地響きと共にティアマトは突き倒された。右足は穴から抜けたが、代わりにグガランナの体自体がティアマトを押さえつける。

南門まで戻ったサーヴァント達にも、その戦いの熱が伝わってきた。それは決壊した堀の泥を全て干上がらせ、ティアマトをじりじりとなぶっていく。

 

 

「ブモモモモモモモモモ!!」

 

「Aa……Aa……!?」

 

「本当……本当に、本当にグガランナを作るなんて、ね。私も負けてられないや」

 

 

最もグガランナを扱い慣れているイシュタルが、グガランナを縫うようにして飛び回りながら援護射撃を行いながら、静かにそう呟いた。

諦めるのはまだ先でいい。今はひたすらに足掻くだけ。

 

───

 

 

 

 

 

戦闘開始から十五時間。冥界の準備が終わるまであと十九時間。

その時、グガランナは胴体に穴を開けられていた。ティアマトの方も、角は毟り取られ胸元はマルドゥークの斧が突き刺さっている部分以外捌かれていた。

しかし、ティアマトには不死性が存在していた。一時的にでも拮抗した両者だったが……天秤は、ティアマトの粘り勝ちを告げた。

 

 

「ブモ、モ……」

 

   ドサッ

 

「グガランナ!!」

 

 

グガランナが倒れ伏す。ティアマトはその頭をどうにか引きちぎって、グガランナを無力化した。

 

 

「AAAAAAAAaAAAAaAAAAa!!」

 

   ブチブチブチィ

 

 

不死性故の粘り勝ち。しかしその不死性は強力無比。

例え不死性を剥ぎ取る手段があろうと、この大地においては無意味。

 

しかし、まだ手段は残っている。

 

 

「さて……とうとうこの時が来たな」

 

「ギルガメッシュ王……!!」

 

 

南門前に集合してグガランナの顛末を見届けた黎斗達の元に、アーチャーの格好に衣装を変えたギルガメッシュが歩いてきた。その腰には黄金のガシャットドライバー:ロストが輝き、手ではもて余すようにガシャットを回している。

 

 

「キングゥはどうした?」

 

「……さあな。だがこちらに害は成すまい。……檀黎斗よ」

 

「何だ?」

 

「……このガシャット、使ってやろう。存分に光栄に思うがいい」

 

『Goddess Breaker!!』

 

 

ギルガメッシュを中心に、黄金のゲームエリアが広がった。ティアマトすら易々と飲み込むそれは同時にギルガメッシュの倉と同質の存在で。

 

 

「……変、身」

 

『ガッシャット!! ガッチャーン!!』

 

『至高の王の財宝!! 黄金の最強英雄王!! 人の明日を拓け!!』

 

 

その音声と共にギルガメッシュの回りをいくつもの宝具が飛び回る。彼の姿は極光を放つ黄金のアーマーに塗り替えられ、その手は一本の宝剣を掴み。

 

 

原罪(メロダック)!!』

 

「……ほう、便利なものだな。なるほどこれがガシャットか……仮面ライダーか」

 

 

「あれが……ギルガメッシュ王の……」

 

 

誰からともなく呟いた。その輝きは神々しくも力強くかつ理知的で。

 

 

「AAAAAaAAAAAAAAAAaaaLAAAAaaaa!?」

 

「……我は仮面ライダー……そうさな、仮面ライダーバビロン。仮面ライダー、バビロンだ」

 

───

 

「ひぃ、ひぃ……!! あと少し……!!」

 

 

エレシュキガルは急いでいた。全力でガルラ霊達を走り回らせながら、自分も慌てて移転を継続する。

このままでは持たない。絶対持たない。それは何となく予想できて。

 

 

「クエー!!」

 

「ああありがとうね……あと少しあと少し……」

 

 

それ故に、足になってくれたり運搬の手伝いになってくれる()()()の存在は大きかった。

 

 

「頑張ってるネ、エレシュキガル!! 調子はどう?」

 

「どうもこうも無いわよ!! でもやるしかないの!! あと少しあと少しィ……!!」

 

───

 

ギルガメッシュ……いや、バビロンの戦闘は凄まじい物だった。

一度手を振り上げればティアマトの巨大な体を包むように砲門が展開され無数の攻撃が女神を焼いた。一度攻撃を浴びせられれば盾の宝具をいくつも呼び出し、何倍にでもして反射した。

 

だが足りない。ティアマトは倒れない。地上にて彼女の不死を剥ぐだけの宝具は倉の中には存在し得ない。

 

 

「っ……いっそエアを全力で使うべきか……いや、それは後が持たない……!!」

 

「AaAaAaAaAaAaAaAaAaAa!!」

 

 

ティアマトがまた全身から攻撃を放つ。衝撃波を纏ったそれは、飛び上がっていたライダー達を吹き飛ばす。

 

 

「っぐ……!!」

 

『Game over』

 

 

シールダーがまた倒れ付した。残りライフ17。その隣では信長も打ち所が悪かったのか倒れている。

バビロンは知っていた。これは誰か一人が強ければ勝てる、といった類いのものではないと。最初から知っていた。

 

だからこそ彼は待ち望んだ。全員での勝利への、最後の一欠片を。

 

 

 

 

 

『ギルガメッシュ!! 冥界の準備、整ったわ!!』

 

「存外早かったではないかエレシュキガル!!」

 

 

そしてその一欠片は、この瞬間に嵌められる。

 

 

「そこの。そこのアーチャーよ」

 

「……何じゃ?」

 

 

バビロンはエレシュキガルからの報告を聞くやいなや、隣で膝をつく信長を見た。彼女は思いきり胴体に攻撃を喰らい変身が解けていた為、否応なくガシャットを握り締めて回復を待っていた。

その彼女の隣にて、バビロンが宝具を呼び出す。

 

 

天翔る王の御座(ヴィマーナ)!!』

 

「……これを使え。そして貴様がティアマトを冥界まで落とせ、雑種」

 

 

……信長には願ってもない話だった。このまま動けずにいるのは辛かった。妙に弟のことが思い出された。じっとしていてはいけないと思っていた。

だからこそ彼女はヴィマーナに飛び乗る。そしてヴィマーナは、衝撃波を残して飛び立った。

 

 

「任せよ!!」

 

   ブゥンッ

 

 

上昇する。上昇する。その速度はマッハへと至り、ティアマトの頭部まで瞬く間に上昇する。

そして彼女はそこから飛び出し、刀を抜こうとして──止めた。そして、ティアマトの眉間に突き刺さっているカリバーンを握り締めた。

 

 

「っ……」

 

「LAAaa──!!」

 

 

ティアマトの角……いや、魔神柱が彼女へと攻撃を浴びせようとする。

しかしそれは行われなかった。行おうとしても、体が動かなかった。

 

ティアマトの姿は、その一瞬だけダブって見えた。薄れて見えた。

 

 

「信勝……行くぞ」

 

「AaaaaaLAAAAa……」

 

 

そしてその一瞬で、十分だった。

 

 

「いざ、三界神仏灰燼と帰せ。第六天魔王波旬(だいろくてんまおうはじゅん)!!」

 

   ガッ

 

 

信長は、宝具を解放すると共にカリバーンを握り締め。全力でそれを掴み、足だけはヴィマーナに飛び乗りながら急降下を開始した。下へと落下した。

 

 

   ガガガガガガガガ

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

「AAAAAaaaaaLAAAAAAaaaAAa、AAAAaaa……!!」

 

 

火花が上がる。ティアマトの悲鳴すら打ち消すほどに痛々しい斬撃音が鳴り響く。信長の回りに、神を殺す空間が産み出される。信長はカリバーンでティアマトを股ぐらまで切り裂く。

ティアマトは大きなダメージを受け、ウルクを前にしたまま再び膝をついた。

 

そしてその重量によって大地は割れ、砕け、沈んでいく。

 

 

   ズドンッ  ガガガガガガガガ

 

「Aa、Aa──!!」

 

「逃がすな、追うぞ!!」

 

「ええ!!」

 

 

そしてそれを追いかけて、最後の戦いの舞台は冥界へと移る。

戦いの全ては闇の中へと落ちていった。

 




本当は一つに纏めたかった
文字数がヤバくなった

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