Fate/Game Master   作:初手降参

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話を聞いてくださいよ先輩!?

 

 

 

 

「変身!!」

 

『Transform Shielder』

 

 

第五特異点にて。

一行は機械化兵士とレトロチックな兵士が交戦しているのに出くわし、両方の敵から相手の増援だと勘違いされ、そうして戦いに巻き込まれていた。

 

バグヴァイザーを腰につけたシールダーが機械化兵士の銃弾を盾で防ぎながら突撃する。

そしてジークフリートと信長、そしてアヴェンジャーはレトロな方の兵士を吹き飛ばしていた。

 

 

「……ここまで、闘えないのが苛立つとはな。長くて面白味の無いムービーなど、スキップ機能をつけてなんぼだ」

 

 

そう呟く黎斗。……別に心配をしている訳ではない。ただ、シールダーの下手くそな戦いかたや、効率の悪い戦闘方をとる信長やジークフリートに対してもどかしさを覚えているだけだ。

 

 

『Buster chain』

 

「はあっ!! やあっ!!」ガンガン

 

   グシャッ

 

 

機械化兵士を捻り潰すシールダー。その姿は黎斗にこそ頼り無く映ったが、それでも普通の兵士には脅威でしかなくて。

 

 

「纏めて死ね!! 三千世界(さんだんうち)!!」

 

   ズダダダダダダ

 

「かはあっ……」

 

「ぐうっ……」

 

 

レトロ兵を吹き飛ばす信長。隣ではアヴェンジャーとジークフリートが援護を行っている。その戦いは無駄が多いように黎斗は思ったが、当然彼らも大きな脅威で。

 

 

「何だあいつら……機械化兵士を破壊する連中だと……!? もしや、報告にあったサーヴァントタイプか!!」

 

 

機械化兵士を率いていた人間がそう指示を出した。八面六臂の活躍をするサーヴァントにびびったのだろう。当たり前だ。

 

 

「前線後退!! 援軍が到着するまで後退だ!! 急げ急げ急げ!!」

 

 

そう言いながら兵士は逃げ出す。

シールダーはそれを追撃はせず、盾を下ろして変身を解いた。

 

 

「よし、れとろな方の奴等も退却していくぞマシュ!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

信長がマシュにそう報告する。黎斗はようやく終わったと言わんばかりに肩をすくめ、次の目的地へと歩き出そうとし。

 

突然。

 

 

「……!?」

 

 

突然、彼の意識が傾いた。

 

 

「ぐっ……体、が……!!」

 

「どうした黎斗。おい、どうした」

 

 

アヴェンジャーが黎斗に駆け寄る。彼に支えられた黎斗はよろけながら胸を押さえ、黒く固まった血を吐いた。

 

 

「が、あ……」

 

「どうしたしっかりしろ檀黎斗!! おい!!」

 

 

そんな声を聞きながら、黎斗は白い泡を吹いて倒れて。

 

───

 

 

 

 

 

 

「……患者ナンバー9610、重傷……いや、これは最早手遅れ? いや、まだ息があるのに……死んでいる?」

 

 

黎斗は意識を取り戻す。

 

……女の声が聞こえた。話している内容からして、恐らく女医か看護婦だろう。黎斗はまだぼんやりとした頭でそう考える。

 

 

「脈無し、体は冷たく、瞳孔も……ええ。これはやはり死体。なのに、一体……」

 

 

驚くのも無理はない。何しろ自分はゾンビなのだから……なんて言おうとして、黎斗は……悪寒を感じた。

 

あっ、こいつやべーやつだ、と。

 

 

「……取り合えず切断しましょう。いや、でも何処を? 足も手も擦り傷レベル……じゃあ血を吐いた喉?」

 

「……やめ、ろ」

 

「ああ、お目覚めですか。……何処を切断して欲しいですか?」

 

「どこ、も、駄目だ」

 

 

痛む声帯に鞭打ち、黎斗は目の前の看護婦に拒絶の意を示す。

 

 

「ああもう、我が儘を言ってはいけません。一刻も早く切断しましょう。まだ意識があるのは本当に、もう、奇跡的です」

 

「おい、話を、聞け」

 

 

あっさり無視された。黎斗はとっくに生理機能なんて失せている筈の体を冷や汗で濡らしながら、なんとかして抵抗の手段を探す。

 

このままだと、やばい。下手すれば変身する間でもなくバラバラ死体に逆戻りだ。

 

 

「死んでるのに生きている……取り合えず切断します。なんとか血液を回すためには、体は小さい方が望ましい」

 

「やめろと、言っている……!!」

 

『ゲキトツ ロボッツ!!』

 

 

そして、黎斗は唯一手の届く所に置いてあったゲキトツロボッツの電源を入れた。

ゲーマが飛び出し、看護婦を弾き飛ばす。激昂する看護婦はゲーマをむんずと手掴みし殴り付けた。

 

 

「治療の邪魔です。排除します!!」

 

   グシャッ

 

 

黎斗はその隣で喘ぎながら、その場から立ち上がり、テントを脱出した。

 

───

 

「……で、その女……ナイチンゲールにゲーマをけしかけたら、半壊させられた、と」

 

「ああ……くそ、私の体はまだ定期的に壊れるようだ。恐らく寝れば治るレベルだが……畜生、誰が私をここに連れてきた!!」

 

 

黎斗はテントの外に置かれていたベンチに座り込み、隣に立つアヴェンジャーにそうぼやいた。

どうやらここはアメリカ?の軍の拠点らしく、何処其処にそれっぽい国旗が立ち並んでいた。

 

 

「誰が連れてきたか? 当然、マシュ・キリエライトだ。マスターに今死なれては困る、と言いながらお前をここに背負ってきたぞ」

 

「……チッ」

 

 

黎斗は舌打ちをし、暫く黙る。そしてアヴェンジャーはそんな彼を笑い……周囲の異変に気づいた。

辺りが騒がしい。どこかから雄叫びか聞こえる。

 

 

「敵襲、敵襲だ!!」

 

 

一人の兵士が叫んだ。非戦闘要員であろう人々は逃げ惑い、恐慌状態になっている。

黎斗はその人混みの中に、迷わず敵に駆けていくピンク髪、そして件の看護婦を見た。

 

 

「どうする檀黎斗。追うのか?」

 

「ああ……難儀な物だな。サーヴァントはマスターから離れると力を失う……そんな設定をつけた奴を一発殴ってやりたい」

 

 

そうぼやきながら立ち上がる黎斗。アヴェンジャーは彼に肩を貸す。

 

 

「行くのか、マスター?」

 

「当然だ……私が戦えない以上、今あれに死なれては困るのでね」

 

───

 

『Quick chain』

 

「はああっ!!」

 

   ズガンッ

 

「───!!」

 

 

シールダーが謎の兵を吹き飛ばす。

背後からの援護もあって、敵襲に対してこちらは遅れを取ることも無く、むしろ有利に立っていた。

 

 

「相手が弱りました、とどめを!!」

 

「くはは、よかろう!! 虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)!!」

 

 

そして、シールダーの要請にアヴェンジャーが笑いながら答え宝具を解放……全ての兵を消し炭にしてしまった。

 

 

「ふぅ……」

 

『ガッチョーン』

 

「……やりましたね!!」

 

「うむ、大勝じゃな!!」

 

 

変身を解いて一つ息を吐き、今回も勝てた事の喜びを噛み締めたマシュは、いい笑顔で黎斗に向き直る。

 

 

「黎斗さん見てましたか? ほら、私は、ちゃんと他の人と協力して、沢山の敵を倒すことが──黎斗さん?」

 

「……」ガチャガチャ

 

 

……しかし黎斗はと言うと、態々ご丁寧にも即席の作業台を作って、ガシャットにデータを入力していた。

 

 

「……」ガチャガチャ

 

「黎斗さんっ!!」バンッ

 

「っ!? ……何だ、邪魔をするな」

 

 

マシュが顔を強張らせながら作業台を叩く。その顔には怒りが当然のように浮かんでいた。……まあそんなの気にしないのが黎斗だが。

 

 

「黎斗さん!! 今あなたは戦えないんですよ!! 皆で協力して人理を救わないといけないんです!! 分かってますか!?」

 

「知るか。……変身出来ずともまだ手はある」ガチャガチャ

 

 

そう言いながらガシャット……ガシャットギアデュアル(仮)を弄る黎斗。

彼の目はパソコンの画面にだけ向けられていて、それはますますマシュを怒らせた。

 

 

「ああもう!! 一度殴ってでも……!!」

 

 

そう言い、マシュはバグヴァイザーを再び腰につけようとして……

 

 

   ゲシッ

 

「はぐう!?」

 

「……患者に危害を加えるのは、治療の妨げになります」

 

 

先程まで謎の兵を相手に、追撃戦という命懸けの鬼ごっこ(但し鬼は彼女)を勝手に行っていた筈のナイチンゲールに蹴り飛ばされた。

バグヴァイザーは弾き飛ばされ、かなり離れて立っていた筈のジークフリートの所まで飛んでいく。

 

 

「何するんですか!?」

 

「既に死体の状態なのに彼は生きている。私は医師ではないので、詳しい治療は出来ません。……一先ず戦争が終わるまでは、彼には絶対に安静な状態でいてもらいます」

 

「うっ、でも……」

 

「デモも労働基準法もありません。これは医療従事者としての意見ですが、この場において私以外の誰が彼の体について語れましょうか。私の指示を聞きなさい。それ以外は治療の邪魔です」

 

 

マシュは彼女に睨まれ、特に何も言い返せずに萎縮した。

 

そこに、新たな客がやって来る。

 

 

「……王よ、見つけましたぞ。どうやら彼らがサーヴァントのようです。まさかここまで壊滅するとは」

 

「……今こそ我々の出番、という訳か。にしても流石は我が配下ディルムッド・オディナ。君の目は、ええと……そう、例えるなら隼だな!!」

 

 

黒髪に二本の槍を持った男、そして金髪に一本の槍を持った男。

黒髪……ディルムッドと呼ばれた方は恐らく部下で、金髪が上司だと思われた。

 

 

「……成程、今回の敵はやはりケルトか」ガチャガチャ

 

「……黎斗さん?」

 

「ディルムッド・オディナ、そして彼の主フィン・マックール。共にケルト……アイルランドの英雄だ」ガチャガチャ

 

 

そう分析する黎斗。しかしその目は未だパソコンに向いている。まるで興味など無いと言わんばかりに。

 

そして真名を言い当てられほんの少し動きを止めた男、フィン・マックールは、すぐに黎斗の方に向き直った。

 

 

「まさか我が真名を易々と言い当てるとは。なかなか審美の目があると見た」

 

「ゲーム作りには大切な感性だからな」ガチャガチャ

 

「ゲーム……が何かは知らんが、その審美の目は讃えるべき物だ。ともすれば、お前もグラニアを選んでいたかもな」

 

「あ、そ、その……」

 

 

フィンが黎斗を讃える。隣でディルムッドが胸を押さえている辺り、フィンは地味に彼をいびっているのだろうか……マシュはぼんやりと考えた。

 

 

「漫才は後にしてくれ。お前達は私に敵対するのか? しないのか?」ガチャガチャ

 

「当然戦うとも。いや、恭順するなら受け入れても構わないがね」

 

「まさか。お前達みたいな騒がしい芸人といたら、私の才能が腐る」ガチャガチャ

 

 

黎斗はそう言い、ほんの少し顔を上げ、バグヴァイザーを持っていたジークフリートを顎であしらう。

フィンとディルムッドはそのあまりにもあまりな対応に、流石に顔をしかめずにはいられなかった。

 

 

「……なんというか、すまない、二人とも。なんというか、すまない」

 

「……いや、構わないさ。我らフィオナ騎士団の力、存分に見せつけようとも。ゆけディルムッド!!」

 

「御意!! では皆様、お覚悟を」

 

 

ディルムッドがまず前に出て、その槍を軽く降りながら身構える。

ナイチンゲールやマシュが飛び出そうとするのをジークフリートが押さえ、その腰にバグヴァイザーを取り付けた。

 

 

『ガッチョーン』

 

「……ここは私にやらせてくれ。相手は強敵だ」

 

『Transform Saber』

 

 

そうして変身する仮面ライダーセイバー。己の剣を構え、ディルムッドと向かい合う。

 

黎斗はその姿を何度か確認した後、こう言った。

 

 

「……おい、ジークフリート」

 

「……何だ?」

 

「物は試しだ。使ってみろ」

 

   パシッ

 

「……これは?」

 

 

セイバーは手渡されたガシャットをまじまじと見つめた。

黒に塗られたそれには騎士の姿が描かれていて。

 

 

「……タドル、クエスト?」

 

「バグヴァイザーに挿してみろ。非常に、非常に不快だが、恐らく使えるだろう」

 

「……分かった」

 

『タドルクエスト!!』

 

『ガッシャット!!』

 

 

セイバーはバグヴァイザーにそれを挿入する。すると彼の頭上に、青白く光るパネルが展開されて……セイバーをさらに書き換えた。

 

 

『チューン タドルクエスト』

 

「……行くぞ」

 

『バグルアァップ』

 

『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!!』

 




ガシャットギアデュアル(仮)の完成は近い

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