Fate/Game Master   作:初手降参

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この物語の主人公はマシュ・キリエライトです



第七十一話 色彩

 

 

 

信長が消滅して、シールダーは再びビーストを見る。

 

その体は。

 

 

「中身が……溶け出してる……?」

 

 

……そんな印象を受けさせた。

カルデアスの装甲の真紅が、鎧の中から溢れ出してビーストの腹を伝い、足を飲み込んでいく。泥のように。マグマのように。

 

 

「カルデアスの外壁を破壊した為に、中枢部のエネルギーが溢れ出したということなのでしょうね」

 

 

隣に立ったアルトリアがそう呟く。きっと抑止力からの知識で分析できたのだろう。シールダーはビーストへ一歩踏み出そうとし、そしてビーストから尋常じゃない熱量を感じて踏みとどまる。

 

 

「っ、熱い……」

 

 

カルデアスは高密度の情報体、次元が異なる領域……そのように設定されたもの。触れればただでは済むまい、いや、実際に片腕が溶けたパラドクスという前例もいる。

それが、節操なく溢れだそうとしていた。

 

 

「……ここまで及んだ事を評価しよう。しかしまだだ。勝利するのは私だ。私は神だ……不滅だ……!!」

 

「しかし君も、この熱では耐えきれまい。システム自体がそうは作られていない筈だが?」

 

 

そう声を上げるのは黎斗神のゲンム。

ビーストはそれを見て端から見てもよく分かるくらいにけらけらと笑う。……その姿は、さっきまでより幾らか膨らんでいるように見えて。

 

 

「それは知っているとも。だからこそ私にここまでやらせた君達を評価しているのさ……そして私とて、今すぐにそれに耐えられる作りを産み出せる訳でもない」

 

「……それは、つまり?」

 

   メキメキバキバキバキバキ

 

「っ!?」

 

 

……刹那、肥大したビーストの背中がパックリと割れて、そこから勢いよく真檀黎斗が飛び出した。

 

 

「フゥッ!!」

 

「もう一人現れただと!?」

 

「マトリョーシカかよてめぇ!!」

 

「何、一旦調整をするために意識等の機能を分割したまでのこと……別に神に、人のカタチなど必要あるまい?」

 

 

そう言いながら何でもないように宙に静止した真黎斗は、変身もしていないのに自分の周りに紅い槍状のエネルギーを精製して周囲に落とす。

地面が揺れた。それが貫いた大地はクレーターよろしく陥没し煙を上げる。

しかも脱け殻のビーストの方も全く問題はないらしく、近くのライダー達へとカルデアスの一部を変形させた剣で斬りかかった。

 

 

「っ、こっちも動くのか!!」

 

「触れたら死ぬぞ、気を付けろ!!」

 

   ガンッ

 

 

ブレイブがその刃を受け止めて呻く。ガシャコンソードは煙を上げ始めた。……長く鍔競りあうのは得策ではないだろう。

 

「それでは少しばかり離脱するとしよう。何、すぐに戻ってくるさ」

 

「待てっ!!」

 

『バンバン クリティカル ファイヤー!!』

 

 

そして瞬間移動しようとした真黎斗に、スナイプが咄嗟にミサイルを放った。しかし、全方位から真黎斗の一点を狙って放たれた数多の攻撃を、真黎斗は展開したシールドで眉一つ動かすことなく無力化する。

……しかし、時間稼ぎとしては十分だった。

 

 

「行かせないっ!!」

 

   ギュインッ

 

「っ──」

 

 

直後、体勢を整えて準備を終えたソロモンが魔術を発動して、真檀黎斗を魔方陣で拘束する。一瞬真黎斗のゲンムは動きを止め、すぐに魔術を解除して自由になった。

 

 

   バリンッ

 

「無駄だ。君の魔術では……ん?」

 

 

……しかし、どういう訳だかもう真黎斗は瞬間移動が出来なくなっていた。

 

信長とアヴェンジャーが仕掛けた罠だった。二人がガシャットを触れたのはごくごく短い期間だったし、本当に重要な部分はプロテクトが頑丈すぎて入れなかった。

しかしそれでもやりようはある。信長は自身の消滅をトリガーとして発動する弱体化をガシャットに仕掛け、それはめでたく発動した。ソロモンの魔術を強化したのはその一例に過ぎない。

 

そして、その一つのチャンスが、シールダーに決断させた。

 

 

「あれは、私達に任せてください!!」

 

「……分かりました。幸運を」

 

 

シールダーが飛び上がる。空中に静止していた真黎斗へと飛び上がる。……他の外敵なら真黎斗の意識がなくともFate/Grand Orderの機能を残しているビーストが対応しただろう。しかしシールダーだけは、真黎斗のいないビーストは捉えられない。

 

 

幻想大剣・邪神失墜(バルムンク・カルデアス)!!」

 

 

今までで最も速いスピードで、彼女は真黎斗を突き飛ばした。

 

───

 

 

 

 

 

   スタッ

 

「はぁ、はぁ……」

 

『ガッシューン』

 

 

着地したとき、シールダーは傷だらけだった。何度も繰り返した攻撃は的確に防がれ、逆に真黎斗の攻撃は躱すことが出来ない。そのせいで彼女だけがダメージを受けて、強制的に変身は解除された。

それでも彼女は、真黎斗を強引に他の人々から引き剥がした。

 

 

「……あの時の答えを見つけました」

 

 

マシュは大地を踏みしめて声を張り上げた。視線の先ではゆっくりと立ち上がった真黎斗が、ドライバーを装着もせずにマシュを観察している。

 

 

「あの時……あの時貴方は言いました。人類の歴史に痛みのない改革はなかったと。誰も苦しまない進化はなかったと」

 

「……」

 

 

あの時。まだ、この世界に来て二日目の頃。彼女は真黎斗の世界をどうにか否定しようとして、すぐに黙らされた。

あの頃からどれだけ成長できただろう。いや、本当は何も変わっていないかもしれない。

それでも、今なら言えることが一つある。

 

 

「どんな状況にあっても、人には抵抗する力がある。自分が嫌だと思うことに『違う』と言える力がある。人の未来を決めるのは貴方じゃない。誰かが勝手に強引に引いていくんじゃなくて、皆で進んでいくべきなんです」

 

「……ほう」

 

 

今日まで見てきたもの。混乱する中でも足掻き続けた人間。誰かを救うために走るドクター。自分の決断を貫いたサーヴァント。その全てが走馬灯のように脳裏を駆けた。

 

 

「君の成長は喜ばしいものだ。私の才能が完璧だという裏付けになるのだからね」

 

「……」

 

「それでも、今回ばかりは本気で消去するとしよう。何、この場合は抵抗は無意味だ。君は私に敵わない」

 

『マイティアクション NEXT!!』

 

 

対する真黎斗はマシュの言葉を何でもないと断じて、虚空に出現させたガシャットの電源を入れた。

……どうやらFate/Grand Orderは向こう側に残したらしく、この一本しか出していない。しかしそのガシャットは、向こう側のビースト同様、赤の光を纏っていた。

 

 

「……ええ、そうでしょう」

 

「ほう?」

 

 

……しかし、シールダーは真黎斗の言葉を否定しなかった。しかし降参する気配はない。真黎斗はそれにほんの少し違和感を覚える。

シールダーは真っ直ぐ真黎斗を見て、そしてガシャットを胸の前に掲げ、宣言した。

 

 

「ええ……私だけなら、貴方には届きません。ただ突き進むだけの私には力がない。でも……そのがむしゃらな歩みは無駄じゃなかった。今日まで走ってきたから、皆と会えたんです」

 

「つまり、どういうことだ?」

 

「……私だけの戦いは、もう止めました」

 

『ブリテンウォーリアーズ!!』

 

 

その瞬間。ガシャットの電源を入れたその刹那、シールダーの視界に一瞬だけ別の世界が映り込んだ。

 

数字の見え隠れする白い世界。作られた自分の内面。その中に並ぶサーヴァント……今日までに出会ったサーヴァント。ガシャットの中のサーヴァントも、自分の中に取り込んだサーヴァントも皆並んでいて。……どういう訳だか、キアラも大人しく立っていて。

 

 

「……ふふっ」

 

 

マシュは笑った。これまでに何度も笑えと言われてきたが、この笑いは自発的な物だった。

清々しい気分だった。頬を風が撫でていく。目の前の敵はマシュを観察し続けていて。それもまた可笑しかった。

 

 

「最後まで、付き合ってください」

 

 

……彼女は、変身する。

 

 

「……変身ッ!!」

 

『マザル アァップ』

 

 

バグヴァイザーから飛び出したパネルは、白銀に輝いていた。その中に、仮面ライダーのシルエットが青く浮かんでいた。そしてそれはマシュを飲み込む。

最後の変身。最後の戦い。今がそれなのだと、マシュの直感が告げて。

 

 

『放て護星の砲!! 穿て騎士の剣!! 正義は其処へ征く ブリテンウォーリアーズ!!』

 

「これが私の旅の終わり。私達の旅の終わり。……そして、貴方の終わり!!」

 

 

……変身を終えた彼女は、全身に青みがかった銀の光を纏っていた。無理な変身のせいなのか、エクスカリバーはガシャコンカリバーに変形せず、体にも時折ノイズが走る。それでもシールダーは、戦えた。

 

 

「君に引導を渡してやろう。君を産み出した者として。ここは、君だけの終点だ」

 

『ガッチャーン!! レベルセッティング!!』

 

『マイティジャンプ!! マイティキック!! マーイティーアクショーン!! NEXT!!』

 

 

それに向き合った真黎斗も変身した。やはり赤い光を纏っていた。戦闘力は先程と遜色ないのだろう。

 

赤いカルデアス(ゲンム)と、青いカルデアス(シールダー)が向かい合う。二人が真っ直ぐに互いに互いを見つめあったのは、もしかしたらこれが初めてなのかもしれなかった。

 

そしてビーストは両手のガシャコンブレイカーを握り締め、両手にエクスカリバーとバルムンクを持ったシールダーへと突き進んでいく。

 

───

 

「良かったのか」

 

 

アヴェンジャーが、隣にいたソロモンに言った。

 

もうアヴェンジャーは敵ではない。イリヤもだ。彼らは信長の裏切りに合わせてビーストに反旗を翻した存在。……もうここには敵は、ビーストの半身とナーサリーだけだ。

 

しかしそれでも、ビーストは強大で。中々迂闊にも近づけず、倒す手がかりが見つからない。

 

 

「……」

 

「……彼女を見送らなくて」

 

 

そんな中でアヴェンジャーはソロモンに言っていた。彼は、ソロモンがロマンだと知っている。彼がどれだけマシュを気にかけていたかを知っている。

 

それでもソロモンは、アヴェンジャーの問いにこう答えた。

 

 

「良いんだ。……彼女はもう強くなった。もう、自分の未来を、選びたかった未来を掴み取れる。何も心配は、いらないよ」

 

「……そうか」

 

───

 

「はああっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

   ガンッ

 

 

バルムンクが受け止められる。ガシャコンブレイカーを受け止める。機能を分割したことによって弱体化しかビーストと強制変身解除の後に再変身したシールダー、二人のライダーは、戦力的には拮抗していた。

しかし、戦いが続くのなら話は違う。

 

 

「うっ……!!」

 

「どうした、その程度か!!」

 

 

シールダーは戦いが長引けば長引くほど弱くなる。それはどうしようもない事実だった。

 

ネロの劇場を展開しても、この状態ではすぐに破壊されるだろう。もしかしたら今ならキアラの触手も自由に扱えるかもしれないが、最初から本番というのはリスクが高すぎる。

 

 

「……まだまだぁっ!!」

 

 

それでも、戦い続けると決めた。

 

シールダーは一気にビーストに接近し、二本の剣で一気に敵に食らいつく。

 

 

   カキン

 

   ガン ガン

 

   ガギンッ

 

 

火花が散った。熱に頭がくらくらする。四肢には激痛が走り続けて。腕を降り下ろす度に視界が白く明滅した。

 

 

幻想大剣・邪神失墜(バルムンク・カルデアス)!!」

 

「甘い!!」

 

『マイティ クリティカル フィニッシュ!!』

 

 

宝具を撃ち続ける。例えどれだけ弾かれても。今日までがむしゃらに戦ってきたのだから、この戦いでもそれしか出来ない。

自分は器用にはやれないということをシールダーは知っている。目の前のビーストのようにも、さっき消滅した信長のようにもなれない。

自分は自分にしかなれないのだ。

 

それでもいい。その上で、自分は彼を乗り越える。

 

 

「まだ終わってない!!幻想大剣・邪神失墜(バルムンク・カルデアス)ッ!!」

 

「いい加減に、倒れろ!!」

 

   ガンッ

 

 

ビーストの動きも大振りになり始めた。強く弾かれて、バルムンクが飛んでいく。……それでも、同時に相手の片方のガシャコンブレイカーを吹き飛ばすことに成功した。

 

反動に耐えられずに二、三歩シールダーは後ずさった。一瞬脱力して、エクスカリバーが地面に転がる。瞳は、ビーストしか捉えていない。……旅を始めた頃からそうだったようにすら思えた。

 

 

「……っう……」

 

 

意識が朦朧とする。

ふいに、これまでの旅の全てが蘇った。

 

何も分からなかった冬木。

あっという間だったフランス。

人々が輝いていたローマ。

驚きばかりだったオケアノス。

見ることしか出来なかったロンドン。

沢山悩まされたアメリカ。

決意を抱いたエルサレム。

戦い抜いたバビロニア。

 

そして、沢山の人と出会えたこの特異点。

 

その全てを、力にしよう。そう感じた。

 

 

「……アルトリアさん」

 

 

朦朧とする意識の中で、マシュは地面に転がっているエクスカリバーを掴む。どういう訳だか、ビーストの姿にアルトリアがダブって見えた。そして、そのアルトリアは何かを囁いているようで。

 

……それが何を意味しているのかを、今の彼女は理解できた。

 

 

「……」

 

 

足を踏ん張って真っ直ぐ立ち、拾い上げたエクスカリバーの切っ先をビーストに向けた。

そして、魂の奥で囁いているアルトリアの声をなぞる。

 

 

「……応えてください、皆さん!! 議決開始(ディシジョン・スタート)──ッ!!」

 

 

……それと同時に駆け出した。ビーストへと接近し、その脳天へのエクスカリバーを降り下ろす。当然ガシャコンブレイカーに防がれた。それでも構わない。

 

 

《承認、ジークフリート》

 

『是は、正義ある戦いである』

 

 

そんな声が聞こえた。自分の袂の内から聞こえる声だった。自分に力を貸してくれている英霊の声だった。

エクスカリバーの光が強くなる。

 

エクスカリバー。それは強大な力を籠めた聖剣。その強さゆえに、簡単には全力が出せないように拘束が掛けられている。

今シールダーが行っていることはその拘束の解放。本来は円卓の騎士が行う議決の再現。自分の中の英霊による十三拘束解放の儀。

 

 

「……その音声は……まさか、君は」

 

   ガギンッ

 

「……貴方を、越えるっ!!」

 

 

《承認、ネロ》

 

『是は、ロマン(ローマ)ある戦いである』

 

 

「私のために!! 世界のために!! この世界を、救う!!」

 

 

《承認、殺生院キアラ(ビーストⅢ/R)

 

『是は、自分の為の戦いである』

 

 

光が増していく。それに連れて、自分の力が増していくような気がした。いくらでも前に出られる。ビーストを、押していける。

 

 

《承認、ブーディカ》

 

『是は、勝利への戦いである』

 

 

「貴方の作ろうとしている世界は正しくない!! 貴方の倫理は、この世界には早すぎる!!」

 

 

《承認、ドレイク》

 

『是は、不可能への挑戦である』

 

 

「っ、生意気な……っ!!」

 

『マイティ クリティカル フィニッシュ!!』

 

 

猛攻に慌てたビーストがガシャコンブレイカーのキメワザスロットにガシャットを生成してキメワザを発動した。ガシャコンブレイカーに追加された赤いエネルギーがエクスカリバーを押し返そうとし──

 

 

《承認、モードレッド》

 

『是は、邪悪との戦いである』

 

 

「はあああああっ!!」

 

   ガンッ

 

 

しかし、エクスカリバーに追加された新たな光がそれを押さえ込む。押し負けたビーストは大きく飛び退いて体勢を建て直そうとして。

 

 

《承認、ジャック・ザ・リッパー》

 

『是は、お母さんとの戦いである』

 

 

「逃がさない!!」

 

 

そこに追撃せんとシールダーは斬り込んだ。己を産み出した者へと、彼女は刃を向け続ける。しかしもう、それは不毛な行いではない。

 

 

《承認、ジキル/ハイド》

 

『是は、必要な戦いである』

 

 

「私が見ている未来は一つだけ!!」

 

 

《承認、バベッジ》

 

『是は、理想への戦いである』

 

 

「永遠なんて少しも必要じゃない!!」

 

 

《承認、ロビンフッド》

 

『是は、迷いなき戦いである』

 

 

「一分一秒が愛おしい、当たり前の世界を!!」

 

 

《承認、ランスロット》

 

『是は、精霊との戦いではない』

 

 

「私は、守る!!」

 

 

追いかけ続ける。追いかけ続ける。攻撃を休めずに。自分の体が上げる悲鳴も無視して。

ビーストの方も、こうも責め立てられると対応が出来ない。本来の力を向こう側のビーストと分かち合っている彼は、この、最後の残光をフルに使っているシールダーに決め手がない。

 

 

《承認、ガウェイン》

 

『是は、誉れ高き戦いである』

 

 

「っ……君は、そのまま攻撃を続ければ消滅するぞ!!」

 

「それが何でしょう!! これが私のやりたいこと!! これが私の結論!!」

 

 

《承認、トリスタン》

 

『是は、善い心の者との戦いではない』

 

 

「大切なものが何かは、分かってる!!」

 

   ザンッ

 

 

光が増していく。自分でも直視できないくらいに。ついさっき見たばかりの信長の炎にも負けないくらいに。

それと同時に、自分の足が崩れていくような感覚に襲われた。それでも、構わない。

 

 

《承認、アグラヴェイン》

 

『是は、真実のための戦いである』

 

 

「沢山の人と会ってきました!! 沢山の人が笑っていました!! だから、それを守れれば、それ以上の望みはありません!!」

 

 

《承認、ギャラハッド》

 

『是は、私欲なき戦いである』

 

 

……いつの間にか、変身が解け始めていた。顔のパーツが先端から灰になっていく。

それでも、同時にビーストの変身もまた解け始めていて。なら、手を緩める謂れはない。

 

 

《承認、ナイチンゲール》

 

『是は、誰かを救う戦いである』

 

 

誰かの自由や笑顔の為に戦う仮面ライダー。それに、彼女はどうしようもなく、憧れていた。

 

 

《承認、アルトリア》

 

『是は、世界を救う戦いである』

 

 

「っ……」

 

   カランカラン

 

「終わりにしましょうっ!!」

 

 

エクスカリバーはもう、剣の形が分からないくらいに眩く輝いていた。熱量も、赤いカルデアスよりずっと強く感じられた。それはきっと、希望の熱さだ。

攻撃を受けすぎたビーストの手から、ガシャコンブレイカーが溢れ落ちる。

 

 

《承認、プライミッツ・マーダー(ビーストⅣ)

 

『是は、満足のいく戦いである』

 

 

次の瞬間、シールダーはエクスカリバーをビーストの胴体に突きつけていた。……もう顔の部分の変身は消え、肩の部分も露になっている。

それでも迷いはない。……彼女の口元には、まだ笑みがあった。

 

 

「……これは!!」

 

「待て、止めるんだ……!!」

 

「全てを賭けた戦いである!!」

 

《承認、マシュ・キリエライト》

 

約束した(エクスカリバー)──」

 

 

既に、エクスカリバーを縛っていた拘束は解き放たれた。全てのサーヴァントの願いを練り上げた星の聖剣の極光の束は、人類悪へと放たれる。

 

少女の旅。少女の命。少女の願い。その全てを籠めた最期の一撃の銘は。

 

 

 

 

 

英雄の剣(グランドオーダー)ァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……っ……」

 

 

……マシュは膝をついた。目の前には、近隣の建物を悉く溶かし、地平線まできれいに抉り取られた穴が開いていた。

そして、呻く真黎斗と、砕けたマイティアクションNEXTも。

 

 

「っ……マシュ・キリエライト……」

 

「……何でしょうか、黎斗さん」

 

 

その黎斗はもう立つことも出来ない。マシュの宝具で、胴体から下が存在ごと消滅していたからだった。もう、再生はしない。

 

 

「……私は……間違っているのか?」

 

 

そしてその真黎斗は呟く。掠れた、消えそうな声で。

 

 

「死をなくし……恐怖をなくす行いが、間違いなのか?」

 

「……貴方は、やり方を間違えてしまったんです。もっと……他の人、皆に、寄り添わないと、いけなかったんです」

 

 

そしてそんな彼に、マシュは自分の考えを告げた。少し前までならきっと自分も思い至らなかっただろう考えを。

それを聞き届けた真黎斗は、少しだけ笑った。

 

 

「それは……不可能な話だ……私は、神でしか、ないのだから……」

 

 

──そして。ビーストⅩ、真檀黎斗の意識は、消滅した。

 

 

 

 

 

「……私は」

 

 

それを見届けたマシュは空を仰ぐ。

もう、ガシャットギアデュアルBは砕けた。ガシャコンバグヴァイザーL・D・Vも壊れた。

後はもう託した。

 

最後に、何処までも続く青い空に問う。

 

 

「仮面ライダーに、なれたでしょうか」

 

 

 

 

 

〔……なれたとも。だから今はゆっくりと休めばいい、仮面ライダー〕

 

 

 

 

 

「……ふふ……」

 

 

……そして。少女の体は静かに大地に溶けた。

 




次回、仮面ライダーゲンム!! 最終話!!



───戦いの終わり

「切っ掛けは開けた」

「後はどうすればいいか、分かるな?」

「倒すだけだ」


───悲劇に決着を

「これを使え」

「戦いを終わらせる」

「皆を取り戻す!!」


───最後に勝つのは

「私は諦めない」

「力を貸してください」

「戦いぬきましょう、最後まで!!」


最終話 EXCITE


「フィニッシュは必殺技で決まりだ!!」

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