実際にこのFGOクロニクルが発生したら作者は喜んでゲームに参加します
引き当てたサーヴァントがカッコいいイケメンか可愛い女の子だったら神を崇める自信があります
『ウォーター!! プリーズ!!』
『キャモナシューティング シェイクハンズ!! コピー プリーズ!!』
青いウィザードが二つの銃を構えながら舞い踊る。放たれた弾丸はランサーとイリヤ目掛けて軌道をねじ曲げ突き進む。
「まだまだね!!」
カキンカキンカキン
その銃弾を、エリザベートが変身した仮面ライダーランサーは斬り伏せた。
彼女は右手にセイバー時に持つ剣を、左手にランサー時に持つ槍を構えて、その二本を振り回しながら戦っていた。
『バインド プリーズ!!』
「っ……この程度!!」
水の鎖がランサーを縛ろうとする。
ランサーはそれに一瞬だけ足を取られたが、それでもその鎖を切り払ってウィザードへと突撃した。
弾丸の雨を掻い潜りながら、青いウィザードに槍を伸ばす。
『Quick chain』
「はあっ!!」
『ディフェンド プリーズ!!』
その一撃は、ウィザードの展開した水の盾で阻まれた。
しかしランサーは慌てない。まだ慌てる要素は何処にもない。ランサーは、自分は勝てると踏んでいた。
「貴方にアタシは倒せないわ。だって──」
『キャモナシューティング シェイクハンズ!! ウォーター!! シューティングストライク!!』
「……」
バァンッ
ウィザードが必殺の一撃を放つ。ランサーはそれを避けようとはせずに、しかしその弾道を見据えて、そして弾丸を剣で粉砕した。
「その剣も!! その銃も!! 全部、知ってるんだから!!」
それがランサーの自負。最後の希望につられてここまで来てしまった彼女の強み。
彼女はウィザードを知っている。檀黎斗によって作られたウィザードの戦いを知っている。ここにいる、やはり檀黎斗に作られたウィザードの攻撃を、見切れない訳がない。
「……」
『フレイム ドラゴン!! ボー ボー ボーボーボー!!』
「姿が変わっても同じよ!!」
ウィザードが業火を身に纏う。その姿も、ランサーは見覚えがあった。ウィザード、フレイムドラゴン。きっと時間制限は無いのだろうが……動きを見切ることは、出来る。ランサーは剣を握り直した。
『ビッグ プリーズ!!』
「よっと……」
巨大な腕が飛んでくれば、その下をすり抜けながら斬りつけた。遠くの方で援護射撃に徹しているイリヤはもろに殴られていた。
『ライト プリーズ!!』
「おっとっと!! その程度かしら?」
眩い光を浴びせられれば、咄嗟に剣で目元を隠した。イリヤは十数秒ほど何も見えなくなっていたようだった。
『キャモナスラッシュ シェイクハンズ!! ドリル プリーズ!!』
ガガガガ
「見切ったわよ!!」
ウィザードが高速回転するウィザーソードガンを投げつけてきても、受け止めて遠くに撥ね飛ばすことが出来た。
ランサーは、ウィザードの攻撃全てに適応していた。これまでの旅で得た、経験値の賜物だった。
ウィザードの方には、微妙に疲れが見え始めた。ランサーはそれ幸いとバグヴァイザーに手を伸ばす。
『チョーイイネ!! スペシャル!! サイコー!!』
『タドル マジックザ クリティカル ストライク!!』
「これで決めるわ──|鮮血特上竜巻魔嬢《バートリ・ハロウィン・ブレイブ・エルジェーベト》!!」
ウィザードの胸から、ドラゴンの頭が現れた。
それと同時にランサーの足元に金切り声のような竜巻が纏わりつき、エネルギーが集中する。
そして、ランサーはライダーキックをウィザードへと放ち、それをウィザードがドラゴンの炎で迎え撃って──
「っあああああ!!」
『ガッシューン』
ランサーが、押し負けた。
当たり前のことだった。うっかりランサーは忘れてしまっていたが、彼女は力量でウィザードを上回っていた訳ではない。正面から争えば、勝てる訳がないのは明白だった。
押し負けたランサーは吹き飛ばされ、変身は解け、エリザベートは溢れ落ちたガシャットを拾いながら立ち上がる。
「ああっ、大丈夫ですか!?」
イリヤがエリザベートに駆け寄った。エリザベートはウィザードを見つめ、そして決断する。
「迂闊だったわね……一旦、逃げるわよ」
「え、良いんですか?」
「仕方ないでしょ!! ……私は諦めないんだから。これは、戦略的撤退なのよ」
勝利だけに囚われるよりも、彼女はどうすればいいのかを考えた。今ここで粘るのは得策ではないと、普通に考えられた。
この撤退は諦めではない。次は倒すという、決意の撤退。
「絶対、今度会ったら追い詰めるんだから。何処に隠れても無駄なんだからね!!」
そう、去り際に捨て台詞を吐いた。
───
『ナーサリー・ライムが8時をお知らせするわ!! 今朝のニュースよ!!』
ニコはその音声を聞きながら溜め息をついた。目の前のベッドで、大我が横たわっていた。
……暫く前に、エミヤが彼を担いできていた。フォーゼにやられた、と。逃げてきたと。
まだ、目を覚ましていない。今フィンが癒しの水を用意している。
「大我……」
『現在、仮面ライダーW、オーズ、ドライブが討伐されたわ!! 鎧武の討伐もあと少しよ!! 皆頑張ってね!!』
「……っ」
そんな声が流れてくる。オーズに加えて、Wとドライブというライダーも倒されたらしい。ニコは彼らを知らないが、きっとそれらも強いのだろうと考える。
自分にも戦う力が欲しい。今彼女の手元にあるのはライドプレイヤーにしかなれないガシャット。自分のコピーを倒してプレイヤーが成長するこの状況下では、ニコは野良のライドプレイヤーも倒せない。
───
その放送は、国会議事堂に戻ったパラドも聞いていた。隣では永夢が水分を補給していた。
ようやく、ここを襲ってくるプレイヤーも居なくなった。全てのサーヴァントを倒し、マスターを保護した。彼らは仮初めの安寧を掴み取りかけていた。
……しかし。
『そして聖杯なんだけれど……何と、千代田区の聖杯が完成度90%を突破したわ!!』
「っ、何だって!?」
「千代田区って、ここじゃないか!!」
「そんな……」
『最も聖杯に近いのは──ムーンキャンサーのマスター、パラドよ!!』
「俺が……聖杯を?」
ナーサリーの声に合わせて、突然パラドの上空に半透明の矢印が出現した。まるで、パラドの居場所を知らしめるように。更にそれと同時に、パラドの持っていたスマートフォンにパラドの位置へと案内するアプリが勝手に登録される。
「うっわ、何か出てきましたよセンパイ!?」
「何だよこれ……!!」
パラドの居場所は筒抜けになった。ゲームエリア中の全てのプレイヤーが、パラドが何処にいて何処へ向かうのかを知ることが出来る。プライバシーは焼き切れた。
『皆、これでパラドの居場所が分かるわね!! 聖杯が完全に完成する前にムーンキャンサーのマスターを倒せば、その聖杯の権利は倒したマスターに移動するわよ!! ラストスパートね!! 楽しみだわ!!』
……つまり、これから何が起こるのかは簡単に理解できる。
再び、聖杯を求めて人々がパラドに殺到するのだ。サーヴァントのある人も、ない人も。失った人を取り戻すため、己の正義を掴みとるため、勝利を奪い取るため──全てのプレイヤーが、パラドを殺しに行く。
この場でそんなことになれば、再び被害が拡大すること請け合いだ。
「……不味いな。パラド、ここから離れないと」
「あ、ああ……」
「そうですね……ここにいたら、目の色を変えてまたプレイヤーが来るんでしょうし」
永夢は、貴利矢に連絡を取ろうとする。
時は一刻を争う。時間がない。
───
「放送終わったわよ!!」
ナーサリーが笑いながら真黎斗に歩み寄った。真黎斗はパソコンに目を向けながらもナーサリーに手を伸ばし、頭を撫でる。そして画面を見ながら少し笑った。
「ゲームは順調に進んでいる。聖杯の完成も近い」
「そうね……仮面ライダーの倒され具合も順調よ。Wは千葉県のアキレウスに倒され、オーズは東京のアルジュナとアルトリア・オルタに倒され、ドライブは栃木のヘラクレス・オルタと柳生但馬守宗矩と相討ちになった」
「そうだな……それらサーヴァントのその後の経過は?」
ナーサリーも真黎斗の隣に腰掛け、再びパソコンを触り始めた。写し出されるのは各々のサーヴァントの経過。
「……まだ変化は無いわ」
「そうか……今はそれでも構わない……ハ、ハハハ……!!」
真黎斗は、大きく伸びをした。物事は順調に進んでいる。今は彼こそが万物の創造神であり、彼の道を妨げられる者はいない。
───
「……俺は」
「大我大丈夫? 意識ある?」
「っ、当たり前だろ……ったたた」
「まだ寝てて大我!!」
暫くして、大我は目を覚ました。目を擦りながら起き上がろうとしたら、尋常でない腹の痛みに顔が歪んだ。
ニコが慌てて大我をベッドに押し付ける。
フィンがニコの後ろから現れた。もう、その手に水はなかった。先程までは何度か大我の治療を試みていたのだが。
「……すまないなマスター。私の癒しの水は、彼には通じなくされている」
「そっか……」
「チッ、ゲンムの野郎め……」
どういうわけだか、フィンの水は大我にだけ効果を発揮しなくなっていた。どうやら大我がフォーゼに倒されかけた際に、彼の体に何かしらの異変が生じたらしかった。
「……アーチャーはどうした」
「また上で狙撃に戻ってる」
「そうか」
大我はまた起き上がろうとした。しかしニコが押さえるまでもなく、余りの痛みで彼は脱力した。
「無理はしないで……生きてて良かった。本当に」
「……」
ニコは、枕元から動けなかった。
───
「待たせたな!! 乗れ!!」
「分かった……ここは頼むぞ永夢」
「気を付けて」
国会議事堂まで、ようやくシャドウ・ボーダーが辿り着いた。その時にはもう時計の長針が半周ほどしていた。もう既に二人ほどマスターが攻めてきていた。
貴利矢が車のドアを開ければ、パラドはBBと共にその中に転がり込む。パラドと永夢の間に、大して言葉はいらなかった。……そして、ドアは閉められた。
「よし姐さん、出してくれ」
「分かったわ。スピード出していくわよ!!」
そしてシャドウ・ボーダーは動き始めた。パラドが車内に入っても、やはり車の上に矢印が浮かんでいた。
───
「……なあ。一応聞いておく。お前は、何がしたいんだ。お前が聖杯に懸ける望みは何だよ」
「……そうですねぇ……」
「何かあるんだろ。ここまで、戦ったんだから」
唐突にパラドはBBに話しかけた。BBの望みを問う物だった。既に彼らの目前に聖杯がある現在、その望みは叶えようと思えば叶えられるのであろう物だった。
「おい、パラド……」
「聞きたいんだ。俺もこいつも同じバグスターだ……叶えられる望みがあるなら、それは出来るだけ叶えたい。何でも、出来るんだろう? 聖杯なら……なあ、ゲンム?」
「……聖杯の力は絶大だ。パラド。聖杯の持ち主になったなら、そして君が望むのならば、何だって叶うのだろうな」
貴利矢はパラドをたしなめようとした。今は協力的なBBだが、彼女の願いを聞き出してしまえば、その結果その願いの為にパラドを裏切る可能性だって存在する。
しかしパラドの意思は固かった。もう彼の本来のサーヴァントは願いを遂げられずに死んだのだから、いっそうパラドはBBの望みを知りたかった。
「えー、私のプライベートですよー?」
「……それでもだ。俺は、お前にここまで連戦を強いた。その埋め合わせがあるのなら、出来るのなら、考慮したい」
BBはパラドの目を見た。真っ直ぐな目だった。
……BBは諦めて、やれやれと肩を竦めた。車窓から外を見れば、すれ違うマスターは皆シャドウ・ボーダーの上の矢印に目を向けていた。
「……また、会いたい人がいます」
そう溢した。小さな声で。
パラドはBBの望みを聞き、さらに聞き出そうとする。
「……誰だ?」
「……でも、その人はまだいないんです」
「……どういうことだ」
しかし、すぐにパラドは状況がよく分からなくなった。また会いたい人がいるのに、その人はまだいない?
「私がそこの人の考えてるゲームのキャラクターだ、って、もう話しましたよね」
「……そうだったな」
BBはパラドとそして後ろの方に乗っていたポッピーを見た。ポッピーはどこか気まずそうにBBの腕の辺りを見つめていた。
「私は、その話の主人公にもう一度会いたいんです。何処にでもいるような人でしたけど。私は、その主人公に救われて、嬉しかった」
「でも、そのゲームは……」
「……ええ。まだ存在していません。私だけ、先に生まれてしまいました」
「──」
パラドは絶句した。最初から故郷のないバグスターであるBBの心情はどんなものなのか、考えることすら出来なかった。
「だから、私はその人に会いたい。聖杯が万能なのは知ってますから、あの人に迷惑かけないような再会も、きっと出来るはずです」
パラドは、その声を聞きながら考えた。故郷のない彼女の望みを、どう叶えれば良いのだろう、と。
……そして、簡単な解決策を思い付いた。
「……ゲンム」
「どうしたパラド」
「Fate/Extra CCC……だったよな、彼女の企画段階のゲーム」
「そうだが、それがどうした?」
「作れ」
黎斗神はその言葉に、一瞬豆鉄砲を食ったように呆然とした。……そして、意味を察してニヤリと笑った。
「今すぐとは言わない。絶対に作れ。彼女がハッピーエンドを迎えられるルートも入れてな」
「……ふ、私に命令するな。私の才能の使い道は私が決める」
「……」
パラドと黎斗神は睨み合った。貴利矢は黙ってそれを眺めた。ポッピーはおろおろとしていた。
そして、BBはパラドの横顔を見て、どこか可笑しくなって……
「……ぷっ」
そして、思わず吹き出した。
「……ふふ、アッハッハハハ!! 面白すぎですセンパイ!! フフフ、ハハハハ!! シリアスなシーンが台無しじゃないですか!!」
「な、何でだよ」
「普通そんなこと言わないでしょう!! そんな物語の根本から揺るがすチート行為なんて考え付きませんよ!!」
何がおかしいのか、BBは笑い続けた。でも、そんな未来が作れるのなら試してみたいと、心の片隅で思ったりもした。何故か、目の端に涙が浮かんだ。
───
「大丈夫かな、パラド……」
「それを考えても仕方がないだろう」
「あ、飛彩さん……」
国会議事堂前に残った永夢は、建物から出てきた飛彩と言葉を交わす。もう、ここにマスターはきっと来ないだろう。永夢はそう考えていた。
「休んでなくていいんですか?」
「大丈夫だ。そっちはどうだ」
「いい感じです。もうマスターは現れませんよ」
皆パラドを追いかけている……とは、永夢は言わなかった。
回りは静かだった。永夢の隣には、飛彩しかいなかった。
……そこに、足音が聞こえ始めた。
コツ コツ
「誰だ?」
「……あれは」
確かにそれは、マスターではなかった。
見覚えのある姿だった。かつて永夢と共に戦った、仮面ライダーの姿がそこにあった。
黒い体に、パーカーを被ったようなシルエットが目立つそのライダーの名は。
「仮面ライダー、ゴースト……!!」
「……確かにマスターではなかったな」
『タドルクエスト!!』
『ドレミファ ビート!!』
飛彩がゲームを起動した。彼の目も既にゴーストを捉えていた。
戦わなければならなかった。永夢もまたガシャットを手に取り、ドライバーを装着する。
『マイティ アクション X!!』
『ゲキトツ ロボッツ!!』
「「……変身!!」」
『『『『ガッチャーン!! レベルアップ!!』』』』
『マイティマイティアクション X!!』
『ゲ キ ト ツ ロボッツ!!』
『タドルクエスト!!』
『ド レ ミ ファ ビート!!』
そして、共にレベル3に変身した。二人は各々の得物を手に取り、ゴーストへと斬りかかる。
『ガシャコンブレイカー!!』
『ガシャコンソード!!』
「「はあっ!!」」
ガギンッ
しかし二本の剣は、ゴーストの手の二本の刀、ガンガンセイバーによって阻まれた。そしてゴーストは二人を蹴り飛ばし、空中浮遊のように思わせる歪な軌道で飛び退きながらドライバーに赤い球を装填する。
『カイガン!! ムサシ!! 決闘!! ズバッと!! 超剣豪!!』
「姿が変わった……!!」
「武蔵……」
ゴーストは着地すると共に、赤いパーカーを身に纏った。その姿のゴーストは、剣豪宮本武蔵の剣術を身に付けていた。
「大丈夫ですかマスター!?」
「あれは、仮面ライダー!?」
ナイチンゲールとジャンヌも二人に加勢する。四対一、数では圧倒的にエグゼイドの側が有利。しかし、油断は出来ない。
「ここで倒しましょう!!」
「ああ……やるぞ」
『ゲキトツ クリティカル フィニッシュ!!』
『ドレミファ クリティカル フィニッシュ!!』
次回、仮面ライダーゲンム!!
───ゴーストとの戦闘
「ここからは、行かせない!!」
『ムゲンシンカ!!』
「俺に切れない物はない!!」
───千代田区の聖杯
「器が、満たされていく……」
「あと少しだ!!」
「追っ手多すぎないかしら!?」
───真黎斗の動向
「これは……」
「ゆゆしき事態、って奴ね、マスター?」
「対策は……簡単だ」
第四十四話 Desir
「俺の望みは……」