Fate/Game Master   作:初手降参

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(キョウリュウジャー幻の33.5話を見ながら)
棚からブレイブ……っ!!

ソシャゲって凄い(小並感)
型月ももっと色々やらないかなー
魔法繋がりでウィザードの続編とか作らないのかなァーッ!!



第三十四話 Justiφ's

 

 

 

 

「う、う……」

 

 

マシュは全身の痛みに耐えながら起き上がった。……そこは、夕陽が射す車の中だった。自分の手足を見れば、明らかに誰かに治療された跡が残っていた。

 

 

「ここは……」

 

 

周囲を見回す。貴利矢と、メディア・リリィが目に入った。また、後ろの方には数人の衛生省職員の姿も見えた。

ここは、シャドウ・ボーダーの内部だった。集団で痛め付けられていたマシュの元にやって来た彼らは直ぐ様彼女と、衛生省の職員達を回収し逃亡する最中だった。

 

 

「また会ったな、シールダー」

 

「……!!」

 

 

貴利矢の一言で、マシュの脳裏に嫌な記憶が閃いた。ポッピーやパラドの顔、真黎斗からの令呪、破壊されたCR、それらが一気に頭の中を走った。

 

 

「……ぃ」

 

「いやー、無事で良かった。キャスターのお陰だからな、感謝しろ……ん?」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 

気がつけば、マシュはひたすらに謝罪していた。どれだけ後悔してもCRはもう戻らない。彼らがこうしてシャドウ・ボーダーに乗っているのも、マシュがCRを破壊したせいだ。そう思えば、ただ謝るしかなかった。

 

 

「あー……」

 

「まあ落ち着けよ。後で他の奴等と合流する。それまで待ってろ」

 

 

貴利矢はそう言い、車窓から外を見る。

人通りは、めっきり少なくなっていた。戦いの場に人が集まり、そうでない場所はすぐに過疎化するようになっていた。

 

───

 

ジークフリートは、先程まで戦場だった場所に立っていた。倒された人間は皆消滅し、その場に残っているのは幾らかの遺品だけだった。イベント参加者は皆ナーサリーからそれなりの報酬を受け取って去ってしまった。

ジークフリートはその遺品を回収しながら考える。

 

 

「俺は……」

 

 

何が、したいのだろう。彼は考える。

ゲンムコーポレーションを裏切るには、彼は仲間を思いやりすぎていた。彼には共に人理を救った仲間がいて、大切に思っていた。

人々が足掻くのを見届けるには、彼は優しすぎた。人々が今も聖杯を求めて殺しあっていると思えば、心が痛んだ。

マシュと共に行くには、迷いがあった。ジークフリートは彼女を信じていたが、彼女の行く道に自分がついていって、何になるのかとも思った。

 

冷たい風が彼の頬を撫でた。

 

 

「……」

 

 

正義の味方。自分の正義は、何なのだろう。

 

───

 

 

 

 

 

シャドウ・ボーダーは聖都大学付属病院に停車し、衛生省の生き残りを下ろして永夢を乗せた。やって来たのは永夢だけだった。ナイチンゲールは結界のコントロールをする必要があり、残りは、結界周囲の警備を行っていた。

 

 

「……初めまして。宝生永夢です」

 

 

永夢は、どこか畏まった様子でそう言った。彼はマシュに対して、何の恐れも持ってはいなかった。マシュはマシュで何か返そうとするが、結局返答に困り、唇を震えさせるだけで終わった。

 

 

「……今回は、恭太郎先生達を助けてくれて、ありがとうございました」

 

「……」

 

「どうして、助けてくれたんですか?」

 

「……救いかったから、です」

 

 

永夢は、マシュのその言葉を好意的に受け取った。即ち、彼女もまた他人のために動ける存在なのだと捉えた。

 

 

「良かった──もし良かったら、僕らと一緒に……」

 

 

だから聞いた。永夢はバグスターに希望を持っている。きっと分かり合えると。だから。

しかしマシュはそれを拒絶した。彼女としては、当然の判断だった。

 

 

「……いえ、それは、出来ません」

 

「大丈夫です。CRを破壊させたのは真黎斗さんなのは分かっていますから──」

 

「そうじゃなくて!! ……私が、決めたんです。……貴方達の、味方にはなれませんが。私は私で、人を救います」

 

 

マシュはもう決めていた。自分は決着をつける。自分は、自分の為に、自分勝手に人を救う、と。

……永夢は、拒絶するマシュの瞳の奥底に決意を見た。そして、彼女を仲間にすることを諦めた。

 

 

「でも……一つ、教えてください」

 

 

……今度は、マシュが問う番だった。

 

 

「何で、人を助けるんですか?」

 

「何でって……」

 

「人は、残酷で、醜くて、恐ろしくて、粗暴で、傲慢で、それなのに、どうして貴方は、人を助けるんですか?」

 

「──」

 

 

マシュのその問いで、永夢は自分の些細な勘違いに気がついた。マシュは人を救う。それは確かなのだろう。しかしそれは決して他人のためではない。

永夢の、知らない考えだった。人を信じられないまま人を救う。その結論に至るまでに、どれだけの壮絶な思いがあったのだろう。永夢はマシュを測りきれなかった。

 

 

「……貴女は歪んでいる」

 

「どうして、ですか?」

 

 

永夢の口からそう呟きが漏れた。

 

 

「人は確かに間違ったことだってする。でも、同じくらい人には素晴らしいところがあって、そして、人は生きていれば間違いをやり直せる」

 

「いえ……そんな」

 

「僕はドクターです。僕は、僕の全てを懸けて、今命の危機にある人を救います」

 

「……どうして?」

 

「僕は昔、生死の危機をさ迷いました。とても、怖かったんです。痛くて、苦しくて、辛くて。今日寝たら、二度と目覚めないんじゃないか──そんな思いを、ずっとしてきました。そんなとき、お医者さんだった先生に、助けてもらって。憧れたんです、ドクターに。僕は、今苦しんでいる人を、救いたい」

 

 

それは宝生永夢の過去。かつて死にかけ、救われた人間が抱いた願い。ありきたりな医者の起源(オリジン)

……しかしその思いは、マシュには届かない。彼女には受け入れられない。

 

 

「……私には貴方が分からない。それはつまり、自分の為ではないんですか? 貴方自身が、勝手に、救いたいと思ってやっているのと、何が違うんですか? 患者はきっと助けてもらいたがっている、と決めつけて治療するのと、何が違うんですか?」

 

 

そんな質問が口をついて出た。

挙げ足取りだ。人は他人の心を読むことが出来ない以上、きっと相手はこう思っているはずだ、いやそうではない、きっとこうだ……という理論に果てはない。

 

しかしマシュには分からない。自分勝手に人を救う、救う相手のことなど慮ってやるものか、という結論に達した彼女には、人を純粋に助けたいという精神が理解できない。

 

 

「僕の為……いえ、違います。僕は、患者の皆さんに寄り添いたい。その助けになりたい。やっぱり、貴女は……違う結論に、達したんですね」

 

「ええ……私は決めました。私は私が望むままに人を救う。人が苦しんでいるのを見ると、自分も苦しいから。私の大切な人が苦しむから。私は、私のために誰かを救う」

 

「……」

 

 

同じようで、違う二人。

違うものは、寄り添う意思があるかないか。

 

マシュには、他人に寄り添えるだけの余裕がなかった。黎斗に作られて産み出され、葛藤し、結論を迫られた。その末に出した答えを、彼女は己の芯とした。

永夢には、他人に寄り添えるだけの過去があった。他人に助けられて命を繋ぎ、それに憧れ希望を抱いた。その末に辿り着いた世界で彼は人を救おうとした。

 

マシュは、座席を立った。最後に、未だパソコンに繋がれて横たわるポッピーを一目見て、彼女は無言でシャドウ・ボーダーを出る。

永夢は暫くの間フリーズしていたが、マシュを追って飛び出す。

 

 

「待って!!」

 

 

声をかけた。マシュの姿は薄くなっていたが、まだ消えてはいなかった。

彼女は振り返り、永夢を見る。

 

マシュは、永夢を善いものと思っていた。

少なくとも彼女は心の奥底では、永夢のような在り方に憧れていた。そうありたい、とも思った。

それでも、無理だと思った。自分は、彼のようにはなれない。少なくとも、全てを終わらせるまでは。

 

永夢は、マシュとも分かり合えると信じていた。ポッピーやパラドのように、バグスターであっても人間とは共生できる。きっと彼女もそうなれると、信じていた。

 

 

「……私は、貴方とは分かり合えない」

 

「僕は、貴女を諦めない」

 

 

……マシュの姿が掻き消えた。永夢は、薄暗い空の下立っていた。

 

───

 

「ナースステーションはどちらに?」

 

「ああーこちらですこちらです」

 

 

恭太郎ら数人の衛生省の生き残りは、灰馬の案内でナースステーションまでやって来ていた。ちびノブが慌てて清掃するのを跨いで、彼らは椅子に腰かける。

 

 

「……ここを、衛生省にします」

 

「……はい?」

 

「ここを衛生省にします。情報をかき集め、最後まで抵抗を続けます。彼らが今頑張っているのですから、私達も出来ることをしないといけませんからね」

 

 

恭太郎はそう言いながらパソコンを起動した。そして、周囲の情報を探し始める。そして。

 

 

「灰馬先生」

 

「はいっ!! 何でしょうかっ!!」

 

「この病院にいるマスターとサーヴァントを表にしてください。何か、策があるはずです」

 

 

そう言った。恭太郎はまだ諦めていない。ほぼ全ての機関が安全区域に引きこもる中で、衛生省だけは戦闘続行の意思を示した。彼の心には、永夢の姿が残っていた。

 

 

「これはチーム医療で挑むべき事柄です。休んでいるわけには、いきませんよ」

 

───

 

 

 

 

 

「やっと、分離が完了した……!! ハハ、ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!」

 

「いや喧しいわ神」

 

 

既に太陽は沈みきった。永夢は国会議事堂に戻り、シャドウ・ボーダーは聖都大学付属病院を出ていた。

 

黎斗神が、サーヴァントの魂が二つ入ったブランクガシャットを掲げて笑っていた。そのガシャットの中に、今は更にポッピーから完全に引き剥がされたキアラの残滓が込められていた。

 

メディア・リリィが、ポッピーの身体に軽く治癒で刺激を与える。

……それだけで、ポッピーは目を開けた。

 

 

「おお、おお!! 起きた!!」

 

「良かった……一先ず回復には成功したようだ」

 

 

黎斗神が胸を撫で下ろす。ポッピーは一つ伸びをして起き上がり、自分の体をペタペタと触った。それだけで彼女は状況を認識する。

 

 

「私……」

 

「悪ぃな。助けに入るのが遅れた」

 

「ううん、いいの」

 

「君の体を修復した。普通の行動は出来るようになったが、まだ完全回復には程遠い。変身は出来ない」

 

「……大丈夫」

 

 

ポッピーはそう言いながら、ガシャコンバグヴァイザーⅡを手に取る。窓の外を見れば、丁度花家医員への道を通っていた。

 

 

「……少し、止めてもらっていい?」

 

「どうしたポッピー?」

 

「──ちょっと散歩。身体に異常があったらいけないし」

 

───

 

シャドウ・ボーダーを降りたポッピーは、寒々とした空の下を歩く。この空の下でマシュと出会ってからまだ一週間も経っていないのだと考えると、とても一日は長いように思えた。

 

ポッピーと出会ったあの時と同じようにぼんやりと歩いているマシュが、ポッピーの目に入った。

 

 

「……ねぇ」

 

「……っ」

 

 

声をかければ、マシュはポッピーに振り向いた。彼女はポッピーが回復したのだと知って頬を緩ませかけ、すぐに表情を戻す。

 

 

「……ごめんなさい。私があの時、倒すのを手伝っていれば……」

 

「それはいいの。もう、いいの。……マシュちゃん……これ」

 

 

ポッピーはマシュの謝罪をやんわりと止め、そして、その手に持っていた物を差し出した。

 

 

「これは……」

 

 

ガシャコンバグヴァイザーⅡだった。ポッピーはそれを、躊躇いなくマシュに差し出していた。

 

 

「……どうして?」

 

「私は、戦えないから」

 

「でも」

 

「持ってて。きっと……きっと、役に立つ」

 

 

ポッピーの目は真剣だった。彼女はこれまでの戦いで、マシュと、そしてCRのドクターを信じていた。きっとこの行いが問題解決への一手になると信じていた。

そんな目を向けられれば、断ることは出来なかった。マシュはそれを恐る恐る受け取り、鞄にしまう。

 

 

「……ありがとう、ございます。きっと、私は決着をつけて見せます」

 

「……頑張って」

 

「……はい」

 

 

そしてマシュは消えた。ポッピーは、微笑みながら見送った。

 




次回、仮面ライダーゲンム!!


───マシュの行く末

「貴方は狂ってる!!」

「私が直々に出迎えてやる」

「私の手で、終わらせる!!」


───決戦の始まり

『仮面ライダークロニクル!!』

『マイティアクション NEXT!!』

「「変身……!!」」


───一人の結末

「何で、確かに──」

「私を甘く見るな」

「……え?」


第三十五話 Justice


「私には、三人のお父さんがいます!!」

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