頑張ってリリィとかオルタとかTSしてる次元とかクラス違いとか作ってかさ増しにかさ増しを重ねた
時々魔法少女・JK・ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとか、塩という概念の英霊としてソルティとかがこっそり混じってる
東京都を中心にして、関東全域とその外とを遮断する、半透明の壁が現れた。その知らせは全国、いや、海外にまで知れ渡り、人々は当然パニックになる。移動の自由という当然のようにあったものを突然奪われれば、そうなるのも自然だった。
それを、苦い顔をしながら恭太郎は観察していた。衛生省もまた、現在の状況に混乱していた。彼の手元に、既に動いている警官隊からの情報が届いてくる。
曰く、壁は外からの人間は受け入れるが中に入ったら出られない。
曰く、壁は天まで伸び、超高度からの侵入を試みたヘリコプターが一機墜落した。
曰く、中の人間は漏れなくゲーム病になる。
曰く、穴を掘っても脱出は不可能。
曰く、壁に近づきすぎるとゲーム病が酷くなる。
曰く、人々はこの壁をスカイウォールと呼ぶ──
「……審議官、これはもうどうしようもありません。自衛隊を出動させるべきかと──」
「いや、駄目だ、無理だ!! もうこれは自衛隊云々の問題じゃない!! 米軍に協力を──」
「何としてでも、これは止めないと!!」
「他国とのかかわり合いの問題にも──」
恭太郎の隣で、数人の部下が言い争う。しかし、何も分からず話題の発展の仕様がない以上、それは何の意味もなかった。煩いだけだった。
もう、政府上層部は何も言わない。これまで何をしようとしてもゲンムコーポレーションからの妨害にあっている政府は、すっかり怯えきってしまっていた。
それは翻せば、彼らが取ろうとした選択は皆CR勢力の妨害に直結することを雄弁に語っていた。
「審議官、どうしますか」
「決断を!! 今、動けるのはもう貴方だけです審議官!!」
恭太郎は、何も言えない。日本が投げ出した責任が今、彼だけの肩にのし掛かる。
その時、突然衛生省のスピーカーが音を立てた。
───
『えーえー、マイクテスマイクテス……』
「……この声は」
路地裏で、マシュはどこかからその声を聞いた。近くに停まっていた車のスピーカーからの音だった。
ナーサリーの声だった。
マシュは車に近づき、耳を傾ける。
『聞こえてる? 聞こえてるわね? これゲームエリア中のスピーカーというスピーカー全部から流れてるわね?』
「……何をするつもりなんでしょう」
『それでは皆、始めまして!! 私はナーサリー・ライムよ、よろしくね!! 突然出てきた壁にびっくりしてるでしょうけど、今はこっちに集中してね?』
───
『皆、ゲーム病に感染してるわよね。ちょーっと、苦しいかしら? だったらごめんなさいね?』
「ふざけてる……!!」
ニコは花家医院で作業をしながら、その音声を聞いていた。腹が立った。ナーサリーというキャラクターには全くもって心当たりはなかったが、ゲームエリア中の全スピーカーのジャックなんてやる存在は、ゲンムコーポレーション以外あり得ない。
「落ち着くんだマスター。聞き逃したら不味いだろう?」バシャバシャ
「……そうよね、ありがと」
フィンがバケツに水を移しながらそう諭す。……彼がやった仕事は、召喚されてからこの方本当にこれくらいしかない。いや、このくらいで収まっていてくれればいいのだが。──患者と戦いをするなんていうのは、最悪の事態だ。ニコはフィンを珍しく少しだけ労いながらそう考える。
『でも大丈夫、その苦しいのを忘れちゃうくらい、楽しいゲームを始めるのよ!!』
……しかしその思いは、叶うかかなり怪しかった。
───
『ルールはとっても簡単。これから皆の元に、一人に一体ずつ、誰にでも平等に、皆の言うことを聞いてくれる
「……何だと?」
まだキアラから出てきた人々の治療をしていた飛彩の口から、思わずその言葉が漏れた。ただ放送に反応するのは向こうに乗せられているようで癪に障ったが、それどころではなかった。
彼は治療を中断し、手近にあったスマートフォンに集中する。
『そのサーヴァントと一緒に、他のプレイヤーのサーヴァントを倒して倒して、沢山倒すのよ!! サーヴァントは実力でも倒せるし、マスターを倒すことでも倒せるわ!! サーヴァントが言うことを聞かなくても、令呪っていうアイテムが三回だけ助けてくれるの!!』
令呪。飛彩は手元を見た。微妙に跡こそ残っているが、彼の手にはもう令呪はない。ジャンヌを送り出すために、全て使ったのだから当たり前だった。
しかし。
「あの、先生、これ……」
「どうしました?」
治療をしていた一人が、飛彩に手を見せた。
令呪が、刻まれていた。
「っ──」
辺りを見回す。全員の手に微妙に痛みが走り、そして、令呪が現れていく。飛彩の頬を冷や汗が走った。
これは不味い。非常に不味い。しかしもう、どうしようも出来ない。何が起こるか分かっても、知らされていても、それを止める術はないのだから。
───
『で、ほとんどのサーヴァントを倒すと、各市町村区の役所に設置された、聖杯っていうアイテムが、万能の願望機になるの!! 何でも願いが叶うのよ!! 嘘じゃないわ、私達が作ったんだもの!!』
「……なあ、神」
「どうした九条貴利矢」
シャドウ・ボーダーは走っていた。今すぐ治療が必要な患者数名を後部座席に乗せ、メディア・リリィに気休め程度の治療をさせながら走っていた。
唯一、シャドウ・ボーダーだけは真黎斗の支配を受けていない。しかし周囲や後方でで鳴り響く音だけで、貴利矢も黎斗神も、状況は理解していた。
「……聖杯って、幾つの魂で満たされるんだっけな。おかしいな、自分、七って聞いてるんだが……」
「七だぞ」
「だよなぁ……!! どうするよ、これもう七どころじゃねえだろ!! 何百万もの聖杯が出来上がるだろうが!!」
「当然サイズは変えるだろうが……どちらにしろ、向こうも複数の聖杯の出現を前提としているんだろうな」
貴利矢は頭を抱えていた。しかし同時に、もうゲンムコーポレーションにいる真黎斗には聖杯すら不要なのか、とも思った。万能の願望機を投げ売りするなら、それ以上の何か持っていることは簡単に予測できた。
『その聖杯なら何でも出来る。誰かを生き返らせることだって、自分が欲しいものを手に入れることだって簡単なの!!』
「自分の、思い違いだったのか……?」
「何がだ」
「いや、最初の方は、自分は真黎斗の目的が日本の支配だと思っていた。自分らがCRの陣営を作り上げても動じなかったのは、ただの実力支配から、聖杯を作るという方法に切り替えただけだと思っていた」
貴利矢はそう呟く。それを、黎斗神は笑い飛ばした。
「君は
マルタは何も言わない。黙々とハンドルを切り、聖都大学附属病院へと走っていく。
『そして同時に、その時点でサーヴァントと生き残っていたプレイヤーは、ゲームマスターである私達への挑戦権を手に入れる。そう、このゲームに参加する皆が、ヒーローになれるの!!』
「……だってさ、神。随分と余裕なんだな、あちらは」
「それはそうだろう、神だからな。流石は私だ。──しかしまあ、私を虚仮にするのは許さないが」
───
『ルールはこれだけ、簡単でしょう? もうすぐゲームは始まるわ。とても、とても楽しいゲームにしましょうね!!』
「っ──」
永夢は唇を噛んだ。悔しかった。何も出来ない自分が、悔しかった。事態は悪化していくばかり。真黎斗は倒せない。
そんな彼の肩をナイチンゲールがさする。
「冷静さを欠いてはいけません、ドクター。今患者が頼れるのは、ドクター、貴方だけなんですから」
「ナイチンゲールさん……」
一瞬、二人の視線が交差した。
この場で、この病の蔓延した戦場で、ドクター以外の誰が命を救えるだろう。そう思えば、不思議と心が奮い立った。
……そこへ、BBのパソコンを持ったパラドが走ってきた。飛彩もついてきていた。
「永夢!!」
「パラド、飛彩さん!!」
「……これを見ろ」
そしてパラドはパソコンを設置し、画面を永夢に見せる。
恭太郎が座っていた。その隣に、見慣れない黒い肌の男が立っていた。
『聞こえるか』
「……恭太郎先生!? ……隣の人は?」
『……サーヴァント、アーチャー。アルジュナと申します』
永夢が問えば、黒い肌の男──アルジュナはそう頭を下げた。永夢はどこか引っ掛かりを覚え、アルジュナとは誰か考える。過去の記憶をひっくり返して、心当たりを探し……見つけた。
……アルジュナとは、インドのサンスクリット文学であるマハーバーラタの登場人物の一人。つまりそれが示していることは──
「サーヴァント……」
『その通りだ。衛生省には、職員と同じだけの数のサーヴァントが現れた。当然どれもがバグスターであり、強い戦闘力を持つ。そしてそれは……もう、そちらにも現れ始めるだろう』
永夢は弾かれたように顔を上げた。辺りを見回す。
──既に魔方陣は現れていた。全ての人間の元に、サーヴァントは顕れていた。ゲームは本格的に始動する。
「「「召喚に応じ参上した」」」
「「「「「私は貴方のサーヴァント」」」」」
「「「「「「「共に、聖杯を」」」」」」」
「「「「「「「掴みましょう!!」」」」」」」
増えていく。増えていく。増えていく。圧倒的な戦力が、従順な兵器が増えていく。そして、これまでに何重にもストレスを重ねてきた人々に、サーヴァントの到来は希望となった。
サーヴァントがいれば、ストレスを発散できる。狂気に溺れた人々はもう、やるべきことを理解していた。
敵を倒せ。ひたすらに倒せ。例えそれが昨日までの隣人でも構わない。最早この世に味方は要らない。仲間などいないこの世界で、ひたすらに敵を倒せ。勝利を、この手に。そして、願いを叶えるのだ。
「もう政府は頼れない!!」
「俺達が、ヒーローになるんだ!!」
「やってやるさ……!!」
「行くぞ、俺のサーヴァント!!」
「私と共に来て!!」
「頼むぞ相棒!!」
「世界は、僕が変えるんだ!!」
不満は渦を巻く。闘争は連なり、暴力となり、全てを破壊する。治療の手は、届かなくなって行く。そうなれば世界は、力が物を言う酷いフィールドに変わってしまう。人々は、ただ生きる為だけに、大切なものを棄ててしまう。
『……このままだと、日本は終わるだろう。もう政府は持たない。国家の崩壊は、遠くない』
「日本が、終わる……!?」
「審議官……」
『……それは防がなければならない。止めるんだ。何としてでも、このゲームを終わらせる』
しかし今、勢いと希望をもって駆け出す人々を止めることは。それは、誰にも出来なかった。
───
人々は、もう自ら箍を外してしまった。かつて振り撒かれた狂気がそうさせたのか、誰にも治療できなかったゲーム病がそうさせたのか、それとも、争いこそが人間の本性なのか。誰にも分からない。このゲームエリアに、それを考える人間はいない。
まず人々は、政府への不満を叩きつけようとした。即ちデモ活動だ。しかしそれは普通のものではなかった──実力を伴っていた。
各市町村区の役所に人々が集中する。その過程で戦いながら。また役所の職員も、自らのサーヴァントで抵抗する。
「──」
3800万人。関東にはそれだけの人間がいる。
そして今それは、3800万人のマスターになり、3800万体のサーヴァントを伴って、戦争を開始した。
マシュはそれを見下ろす。ビルの上に立って、無感動に見下ろす。誰かが彼女に向けて弓を射ったが、彼女は簡単に回避して、その場から立ち去った。
次回、仮面ライダーゲンム!!
───始まった暴動
「止めて皆!!」
「俺達が止めるしかねぇんだ!!」
『■■■■■クロニクル!!』
───数の暴力
「キリがないぞこれ!!」
「逃げ切るのよ!!」
「患者に手を出せる訳がねぇだろ!!」
───国と民の戦争
「これは革命だ」
「国民に銃を向けるんですか!!」
「僕らはドクターです!! 兵器じゃない!!」
第三十話 Alive a life
「戦わなければ生き残れない!!」