Fate/Game Master   作:初手降参

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現在のクロノス

何のドライバーも使用していない為、ポーズもウェポンもなく、素のスペックも低い。しかしプレイヤーの能力が直接反映されるライドプレイヤー形式の変身なので、バグスターである彼女のパワーがさらにかさ増しされてそれなりに戦うことが出来る。
反動はかなり大きく、連続した変身は難しい。



第二十八話 People game

 

 

 

 

「──人理の剣(カルデアス)!!」

 

   カッ ガガガガガガガガ

 

「何だ!?」

 

「っ──」

 

 

エグゼイドがポッピーを引き抜くのと連動するように突然キアラより極光が発生し、彼女を飲み込んで天へと立ち上った。

それが止んだのは、発生から30秒ほど後のことだった。

 

暫くの間あまりの眩しさでろくに前が見えなかったエグゼイドは、いつの間にか人々がキアラから解放されていたことに気がつく。

 

 

「──え?」

 

「あれは……」

 

 

──キアラは、完全に消滅した。囚われた人間は皆、無事に解放されたのだ。

そして、その解放された人の中に、クロノスは一人立っていた。

 

 

「──クロノスだと?」

 

「……マスター」

 

 

ブレイブがガシャコンソードを構える。ナイチンゲールはボックスピストルを構えながらエグゼイドを見て、倒れているポッピーをシャドウ・ボーダーまで連れていけと促した。

 

 

「何故お前がいる、クロノス。お前は、誰だ」

 

 

そして問う。檀正宗は消滅したし、大我はここにはいない。ならば、誰だ?

──その答えは、すぐに明らかになった。クロノスの変身が解けたのだ。そして……マシュの姿が、露になった。

 

 

 

 

 

「お前は……!?」

 

「何故貴女が……」

 

 

思わず声が漏れた。マシュ・キリエライトが出てくるなんて想像だにしていなかった。何故クロノスになったのかも、何故ここにいるかもてんで分からない。

 

ブレイブは、マシュは敵だと認識していた。別に彼女が令呪で無理矢理CRを破壊させられたということは把握している。本人の意思以前に、ゲンムの陣営にいることが敵であるということだと考えていた。なぜ、マシュがキアラを倒したのか、分からない。何故真黎斗がCRへの助太刀を許可したのか、分からない。だから問う。

 

 

「何が目的だ。俺達を何故助けた」

 

 

……マシュは、それには答えない。答えられない。ただ歯を食い縛り拳を震わせ、それだけ。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

そしてマシュはその場から撤退した。彼女は確かに真黎斗を裏切ったが、それでも彼女が破壊してしまったCRのことを考えれば、彼女はもう彼らと共にはいられなかった。

 

───

 

 

 

 

 

「……ポッピーは、大丈夫なのか」

 

 

一足先にシャドウ・ボーダーに戻ってきていたパラドとBBは、黎斗のパソコンと繋がって眠っているポッピーの身を案じていた。どうやら破損は酷いらしく、また修復も厳しいらしい。

 

 

「全く……厄介だ。サーヴァント以外のバグスターをバグスターとして扱えないというルールのせいで、ポッピーをパソコンに取り込むことが出来ない」

 

「それは、そんなに問題なのか?」

 

「パラド、君のときもそうだったが……こうして外からの施術をするのは手間がかかる。穴を塞ぐだけならまだしも、今回は傷口から侵食されかけていた。あと少し遅ければ第二のキアラだったレベルだ」

 

 

……真黎斗の敷いたゲームエリアにおいて、バグスターは人間と大差ない。確かにバリアは貼れるし少しは強い上、ガシャットのパワーもあれば本調子も出せるのだが、結局電子機器に入れないのだ。最初はバグウァイザーにいた黎斗神も、一度出たらもう戻れなくなっていた。

ポッピーは、虚ろな目を半開きにして天井を眺めていた。

 

 

「つまり……治らない、のか?」

 

「当然力は尽くすとも。私の才能を注げば直らないものはない。しかし、時間の問題は別だ」

 

「……戦力に、なれないのか」

 

「そういうことだ」

 

 

パラドは唇を噛む。自分の無力感がもどかしかった。今の、何もない自分では、力になれない。

 

 

「……でしたら」

 

 

パラドの顔をずっと見ていたBBは、唐突に彼に呟いた。パラドは沈んだ目をBBに向け、片耳だけ傾ける。そして言葉を聞き……目を見開いた。

 

 

「私の新しいセンパイになってください」

 

「……は?」

 

「それは、つまり……」

 

 

唐突な提案。マスターであったポッピーを捨てようというBBの提案にパラドは愕然とする。

 

 

「何でそんなことを……!!」

 

「だってそうでしょう? 起きられないマスターより健康なマスターの方がいい、自明の理です。ほら、貴方の令呪はまだ一つ残っているんですし」

 

「っ、お前……!!」

 

 

パラドは怒った。ポッピー(マスター)を軽んじるその在り方に怒りを覚えた。彼はここまでの戦いで、マスターとサーヴァントは一心同体であることがこのゲームのルールだと捉えていたからこその感情だった。

しかし、黎斗神がその怒りを否定する。

 

 

「いいや、合理的だ。現に、マスター換えは簡単に成立する」

 

「ゲンム……!! それだと、ポッピーが──」

 

「共倒れするよりかは良いだろう。私は賛成だ。……何なら、こんなものを出せるが」

 

 

そこまで言って、黎斗神はパラドに藍色のガシャットを取り出して見せた。一本の薄いガシャット。そこには──パーフェクトパズルが描かれていて。

 

 

「……それは?」

 

「君の為に開発した。パーフェクトパズルPocket、レベル2。時間がなかったから精度は低い。しかし、エナジーアイテムを弄るスキルは健在だ」

 

 

……魅力的だった。それがあれば、戦える。

というか、きっと黎斗ならばパラドが契約を断ってもパラドにそのガシャットを与えただろう。しかし、何も飲まずにガシャットだけ得るのも何か気分が悪い。

 

ポッピーを見た。まだ、目覚めそうにない。

窓の外を見た。もう騒ぎは収まっていた。

 

 

「……分かった。飲む」

 

 

そしてパラドは、BBの提案を飲み込んだ。非常に腹立たしかったが、仕方のないことだった。

 

 

「なら、始めるぞ。まずはパラド、君が私に続いて詠唱しろ。告げる。汝の身は私の下に、我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら──」

 

「告げる。汝の身は俺の下に、我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら」

 

「私に従え。ならばこの命運、汝が剣に預けよう」

 

「……俺に従え。ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!!」

 

 

ラインが構築される。サンソンの消滅によって空いていたパラドのサーヴァント枠に、BBがあてがわれていく。

そして、二人は新たな主従関係を結んだ。

 

 

「……はい、よく言えました。ムーンキャンサーの名に懸け誓いを受けてあげましょう!! 貴方を仮の主としてあげますよ、センパイ!!」

 

───

 

 

 

 

 

「……」

 

 

エリザベートは、一部始終を眺めていた。飲み込まれた仮面ライダーも、それを助け出すのも、そしてキアラから唐突に立ち上った見覚えのある光も、全て。

 

 

「……」

 

 

彼女は、何もしなかった。出来なかったのではない。しなかった。まだ自分はどうしたいのか、決まっていなかったのだ。

世界が自分のものになる、と言われれば、中々良い話に思えた。しかし、人々を恐怖に陥れると考えれば、複雑な心持ちになった。

だから今回は、眺めるだけ。見学するだけ。

 

 

「……じゃ、帰りましょうか」

 

 

そして彼女は、その場から消え失せた。

 

───

 

 

 

 

「……あ、終わったみたいですねマスター」カタカタカタカタ

 

「割と早かったな……ん?」カタカタカタカタ

 

 

やはり作業に励んでいた真黎斗は横目でモニターを確認し、一瞬だけそこにマシュの姿を認めた。既にキアラの魂は、ガシャットの中に収められていた。

どうやらマシュは大我の元から仮面ライダークロニクルガシャットを奪い、変身手段を身につけたらしい。そしてキアラを倒したのだ。そう真黎斗は把握する。

 

 

「……しかし、どうでもいいことか」カタカタカタカタ

 

 

しかし無視した。本当にどうでもいいことだった。今はそれより、するべきことがあった。

 

 

「おお、神よ!! 偉大なる我らの神が、今!! 世界を!!」

 

「おうおう、無理のあることでも取り合えずやってみるもんじゃのう。しかしまあ、世界は買ったものが作るもの。是非もなし」グビグビ

 

 

ジル・ド・レェは、社長室の窓から外を眺めていた。これから、神の手によって書き換えられる世界を。また信長も先程入ってきて、Fate/Grand Orderガシャットから勝手に抜き出した杯で酒を煽りながら外を見つめる。

 

それをも無視して、二人はキーボードを叩きパソコンへの入力を継続する。あと少しで面白いことが起こるのだから、心はそれだけで逸った。

……一瞬、真黎斗とナーサリーの視線が交わった。それと同時に、全工程が完了した。そして彼らは同時にニッと笑い、大声で確認作業を開始する。

 

 

「そろそろね……!! 壁の展開準備、完了よ!!」カタカタ ッターン

 

「フィールドの動物以外のテクスチャ完全把握、政府機能のチェック完了!!」ッターン

 

「全員のゲーム病定着を確認!! マスタープログラム試運転、確認!!」ッターン

 

「サーヴァント総数、一万!! かなり無理があるがまあどうにかなった!!」ッターン

 

「全種クラス違いとかコピペも良いところよね!! でも仕方ないわね!! 後から直せばいいわ!! 配備システム起動!!」ッターン

 

「そもそもノルマに無理がありすぎたと思っている!! だが私に不可能はない!! サーヴァント分配完了!!」ッターン

 

 

互いに、巨大なエンターキーに拳を降り下ろす。目は見開き笑みは溢れ、二人は全能感と共に言葉を唱える。

 

そして。

 

 

「「全工程、完了(オールクリア)!!」」

 

   ガンッ

 

 

最後は、二人で一つのエンターキーに手を重ね、同時に押し込んだ。

 

世界が、揺れた。

 

 

「始めるか。最高のゲームを……!!」

 

「ええ、きっと皆喜ぶわ!!」

 

「さあ楽しめ、私の究極のゲーム、Fate/Grand Order Chronicleの開幕だ──!!」

 

───

 

   ブワッ

 

「……!?」

 

 

最初に悪寒を感じたのはパラドだった。シャドウ・ボーダーを出て永夢らと共に救命活動に尽力していた彼は唐突に立ち上がり、辺りを見回す。

 

 

「パラド?」

 

「どうしました、センパイ?」

 

「……これは」

 

 

その瞬間、コンクリートに落ちていた誰かのスマートフォンに文字が走った。

 

 

『東京都を中心に関東全域に半透明の壁が発生。関東から出られない状況に──』

 

「まさか、そんな」

 

 

ゲームは、スタートした。

 




次回、仮面ライダーゲンム!!


───震撼する政府

「自衛隊を出動させる」

「駄目だ、無理だ!!」

「何としてでも、これは……!!」


───全病人マスター化現象

『聞こえるか』

「日向審議官!?」

『……アルジュナと申します』


───発生する暴動

「もう政府は頼れない!!」

「俺達が、ヒーローになるんだ!!」

「やってやるさ……!!」


第二十九話 ARMOUR ZONE


「日本が、終わる……!?」

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