Fate/Game Master   作:初手降参

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メリーィクリスマァス……サンタ(クロ)()だぁ……
今日は読者の皆に特大の地雷を用意したぞ、ヨロコヴェー!!
神の恵みを喜んで受けとるがいい!!



第二話 Prayer

 

 

 

 

「っ……ここは……?」

 

「どうやら何処かの会議室らしいな」

 

 

飛彩と大我は、永夢とはまた別の会議室で目を覚ました。飛彩は頭から血こそ流しているが軽傷らしく、白衣の埃を叩きながら立ち上がる。そして顔を上げ、大我の背を仰いだ。

 

 

「……おい、背中……」

 

「……ああ、倒れていた」

 

 

飛彩は、大我が背中に気絶したニコを背負っていることに気がついた。どうやらまだ目覚めないらしい。背中の少女を気遣いつつ大我は辺りを見回して、何処かからの足音を察する。

 

 

「……聞こえるか、ブレイブ」

 

「……足音だな」

 

 

飛彩もすぐにそれを察し身構えた。それとほぼ同時に会議室の扉が開き、奇怪な格好をした目の大きな男が現れる。

 

 

「……誰だ、お前」

 

「お初にお目にかかります。ゲンムのキャスターの一人、ジル・ド・レェと申します……そうですね、青髭とでも言えば分かりやすいでしょうか」

 

「……バグスター!!」

 

 

ジル・ド・レェと名乗ったキャスター。それがバグスターだと見抜いた飛彩は、懐からゲーマドライバー、そしてタドルレガシーガシャットを取りだし、電源を入れる。

その隣では大我が会議室の隅にニコを座らせ、やはりバンバンシュミレーションズガシャットを取りだし、電源を入れようと試みた。

しかし。

 

 

『タドルレレレレレf5|\4~:@3@(|:』

 

「っ、やはりタドルレガシーは起動しない……駄目だな。期待はしていなかったが」

 

『バンバンシミュレレレレ@.レ71{|%$レ._.#*』

 

「……仕方がないか。これで凌ぐぞ」

 

 

しかし、やはり起動はしない。大我は早々にガシャットを持ち換えた。金色のガシャット、ドラゴナイトハンターZだ。

ジル・ド・レェはそれを見てニヤリと笑い、胸元からプロトドラゴナイトハンターZを取り出す。

 

 

「奇遇ですねぇ……私もドラゴナイトハンターZは愛用しているのですよ……」

 

「何っ……!!」

 

『ドラゴナイト ハンター!! Z!!』

 

「変身……!!」

 

 

そして、先に電源を入れ、胸元に突き立てた。ジル・ド・レェの体が黒く染まり、竜の意匠が浮かび上がり、より狂暴な姿に転じる。

 

 

『バンバン シューティング!!』

 

『ドラゴナイト ハンター!! Z!!』

 

「これは、使えるみたいだな……ブレイブ!!」

 

「分かっている」

 

『タドルクエスト!!』

 

 

最早戦いは避けられない。そう判断して、大我はドラゴナイトハンターZのコピーを飛彩に投げ渡す。そして二人で並び立ち、ガシャットをセットした。

 

 

『『『『ガッシャット!!』』』』

 

「術式レベル5!!」

 

「第伍戦術!!」

 

「「変身!!」」

 

 

二人の頭上にパネルが表示され、彼らの姿を仮面ライダーに書き換える。同時に二人はその手に産み出されたドラゴナイトハンターのパーツで、ジル・ド・レェに攻撃を開始した。

 

 

『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!!』

 

『ババンバン!! バンババン!! ウァオ!! バンババンバンシューティング!!』

 

『『ド ド ドラゴナーナナナーイ!! ドラ ドラ ドラゴナイトハンター!! ブレイブ!!』 スナイプ!!』

 

「行くぞブレイブ」

 

「分かっている、はあっ!!」

 

───

 

「ピプペポパニックだよ~!!」

 

「っ……オレのガシャットが、動けば良かったんだが……!!」

 

 

それと時を同じくして、ゲンムのバーサーカーと名乗ったサーヴァントと遭遇したポッピーとパラドはと現在悲鳴を上げながら逃走していた。

 

ポッピーは既に変身しての抵抗を試みていたが、ゲンムのバーサーカー……カリギュラがゲキトツロボッツを使用、さらに宝具を発動したことによってその狂気を軽くだが移され、ある種のパニック症状に陥っていた。故に逃げるしかなかった。

 

 

「不味い、行き止まりだポッピー!!」

 

「うわぁ本当だぁ!!」

 

「ウオオ……オオオ……!!」

 

 

しかしそれにも限界はあって。二人は壁に背をピタリとつけ縮み上がる。

いっそ自分が仮面ライダーポッピーに……ともパラドは考えたが、追いつめられた今ではそれも叶わない。

 

 

「女神が……おお、女神が見える……」

 

「っ……」

 

 

カリギュラがその腕を振りかぶる。

 

───

 

「おい神!! 説明しろよ!!」

 

『いや、分からない……私が開発した時点では、こんなことは起こり得なかった!!』

 

 

それと同じ頃、九条貴利矢……の変身した仮面ライダーレーザーターボは道すがらに拾った檀黎斗神を問いただしながら、追跡してくる黒服のアサシンから逃亡していた。

 

初めのうちは戦闘を試みてみたのだが、どうにも自分達の攻撃が上手く通っていないように思えて仕方がなかった。何処か、実体のない物と戦っているようにすら思えた。しかも、何故かバグスターであるはずのレーザーターボは粒子状になることは出来なかった。

 

 

『そもそもサーヴァントはこの世界のスケールに合うようには設定されていないはず……やはりあの真檀黎斗()が改造したのだろうな』

 

「そうかい!! で!? あれはどうやって止めれば良いんだ!?」

 

『倒す他ないが……あれは強いぞ、既にプロトドレミファビートを直挿ししている』

 

「なんてこったよ……!! どうすればいいんだ!!」

 

 

やはり逃げながらレーザーターボが叫ぶ。今日の今日まで殺したり殺されたりしながら関わってきた二人だが、流石にこんな訳の分からないことまで起こしてくるとは予想外だった。

しかも運の悪いことに、レーザーターボは行き止まりに追い詰められた。何とかしろと言わんばかりに檀黎斗神の入れられたバグヴァイザーを突き出してみるが……

 

 

『落ち着けファントム。私だ、檀黎斗だ』

 

「私のクロスティーヌは貴公ではない……私はゲンムのアサシン、ファントム・オブ・ジ・オペラ……おお、クロスティーヌ!! クロスティーヌ!!」

 

 

そう言いながら攻撃してくる。慌てて回避はしたが、廊下の壁には深い溝が刻まれていた。一体どれだけの破壊力なのだろう。

 

 

「うっわ……」

 

(真黎斗)め、強化を加えているか……仕方がない、最後の手段だ』

 

「何だ神!! 何か思い付いたか!!」

 

 

余りの威力に引き気味のレーザーターボに、バグヴァイザーの中の黎斗神が何かを思い付いて告げる。その声には焦りが含まれていたが、同時にある種の確信もあって。

 

 

『右手の壁を砕け、ゲームの開発室に繋がっている!! そして私をコンピュータに接続しろ!!』

 

「……良いぜ、乗ってやるよ!!」

 

 

そしてレーザーターボは、その言葉に活路を懸けた。本来ならバグヴァイザーをコンピュータに繋ぐことは逃走の危険もあったが、一対一でこのゲンムのアサシンを相手するのはかなり無理があった。

 

壁を砕き、手短にあったパソコンとバグヴァイザーを接続する。黎斗神は直ぐ様バグヴァイザーに流れ込む情報を解析し、真黎斗の産み出したシステムの仕組みを探った。

 

 

『この会社に流れているラインに介入すれば……行ける、行けるな』

 

 

黎斗神は逃げ出さなかった。別にレーザーターボのことを気にしている訳ではなく、単純にこの異常事態においての自分(真黎斗)との心を踊らせていたからだった。

そして彼は、真黎斗の敷いたシステムに干渉する。

 

 

『っ……出来た!! 流石私だぁ……九条貴利矢ァ!! 私に続いて暗唱しろ!!』

 

「……おう!!」

 

『素に銀と鉄ゥ。礎に石と契約の大公ゥ!! 降り立つ風には壁を、四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよォ……!!』

 

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公──」

 

 

光が走った。ファントムは突然現れた召喚サークルに対して飛び退き、警戒の姿勢を見せる。

 

 

「……これは」

 

『サーヴァント召喚のサークルだァ……使えたということは、やはり』

 

「……なるほど?」

 

『サーヴァントにぶつけるのはサーヴァント、という訳だ』

 

 

黎斗神が行ったこと。それは、ゲンムの陣営に対抗してCRの陣営を産み出すこと。真黎斗が支配するこの紫のラインが走る空間に存在する人間を、バグスターをマスターとする行い。

故に、この場のレーザーターボと黎斗神だけではなく、エリザベートに追い詰められていた永夢の元にも、ジル・ド・レェと交戦中のブレイブとスナイプ、そして漸く目を覚まし始めたニコの元にも、他のCRの勢力の元にも、召喚サークルが同時に展開される。

 

 

「……なるほど、アンタが俺のサーヴァントって訳か」

 

 

レーザーターボは、サークルに浮かんだ人影に呼び掛けた。その人影は手に握った杖をファントムに振りかざし、光弾を打ち出す。

 

 

   ズドン ズドン

 

「っ……これは……」

 

 

ファントムは、敵が突然倍増したことを悟った。レーザーターボ、その前にいる女性のサーヴァント、そしてバグヴァイザーの刺さっているパソコンの側に現れたサーヴァント。

故に撤退した。分の悪い賭けに出るには早すぎる。

 

 

「……おっ、帰っていったか。やるねぇアンタ。名前は?」

 

『ガッシューン』

 

 

レーザーターボは変身を解き、己のサーヴァントにそう問った。彼の左手には、三画の令呪が刻まれていた。

光弾を打ち出した女性サーヴァント。それは青い裾を揺らしながら貴利矢に向き直る。

 

 

「CRのライダー、マルタ。ただのマルタです。世界を、救いましょう──」

 

「……へぇ。見たところ、キリスト教関係の人か。いいぜ、よろしく」

 

 

そう言い、貴利矢はバグヴァイザーの元に向かう。

これ以上敵の膝元にいるのは厄介だ。黎斗神も連れてさっさと撤退するが吉だと、貴利矢は判断していた。

 

 

「サーヴァント、キャスター。メディアです。あの、よろしくお願いします!!」

 

『……よりによって、メディア・リリィか……!!』

 

 

黎斗神は、己の運の悪さを呪っている所だった。弱い訳ではないのだが、戦闘に用いるには厳しいサポート系、かつ機械関係にも疎いキャラクターだった為、黎斗神が扱うには不便だった。

 

 

「はいはい、さっさとずらかるぞ神。バグヴァイザーに戻れ」

 

『もっと敬えぇ!!』

 

「はいはい。んじゃあ、退却しますかね」

 

───

 

「おお、女神が……女神が見える……!!」

 

「っ……!!」

 

   カッ カッ

 

 

腕がパラドを貫く前に、魔方陣はパラドとポッピーの元にも現れた。逆光で顔は見えないものの二体のサーヴァントが現れ、その内の一体……パラドの前に現れた方のサーヴァントが、巨大な剣でカリギュラを斬りつけた。

 

 

   ザンッ

 

「っ……ウオオ……」

 

 

光が止む。二人の姿が露になって行く。

形勢不利と判断したカリギュラは退却し、後にはポッピーとパラド、そして二人のサーヴァントが残されて。

 

 

「……誰……?」

 

 

ポッピーは静かにそう問った。既に彼女の左手には令呪が刻まれていて。

彼女のサーヴァント、紫の髪の少女は、やや大袈裟に振り返りながら名乗る。

 

 

「月の蝶、CRのムーンキャンサーことBBちゃん、ここに召喚、です!!」

 

「月の、(キャンサー)……?」

 

「違いますよセンパイ。(キャンサー)じゃなくて(キャンサー)です」

 

「癌!?」

 

 

癌という名に衝撃を受け固まるポッピー。

 

しかしその横のパラドは彼女には目を向けず、己のサーヴァントと見つめあっていた。

先程カリギュラを撃退したあの大剣の男。銀髪に、黒いコートの格好をしたその男は。

 

 

「CRのアサシン、シャルル=アンリ・サンソン。召喚に応じ参上しました」

 

───

 

『『ドラゴナイト クリティカル ストライク!!』』

 

「はあっ!!」

 

「フンッ!!」

 

   ザンッ ズドン  ガァンッ

 

 

ブレイブとスナイプがジル・ド・レェを攻撃する。放たれたキメワザは確実にバグスターの体に当たり、しかし相手は対して焦りも驚きもせず。

 

 

「ふふ……?」

 

「何故だ、何故全く動じていない!! 攻撃は当たっている筈……!!」

 

 

二人は、徐々に追い詰められていた。後ろで唸っているニコに攻撃が行くようなことがあってはならないが、流れ弾を撃ち落とすのにも限界がある。

 

 

「これは……不味いな」

 

「撤退をしたいが、それすらも……」

 

 

ブレイブが仮面の下で顔をしかめた。

その瞬間だった。

 

 

   カッ カッ  カッ

 

「なっ!?」

 

「……何だ、この光?」

 

「まさか、魔方陣!?」

 

 

黎斗神が召喚サークルを起動したのだ。この場にいる対象はブレイブとスナイプ、そしてニコ。

光は強まり、人影が現れる。それが彼らのサーヴァント。

 

 

「おのれ……これはいけません、宝具を使わなくては」

 

 

敵の増加を察したジル・ド・レェが、真っ先に宝具を発動した。それによって多くの触手が呼び出され、空間を侵食していく。あまり広くはない会議室に触手が満ちていく。

 

 

「さあ我が主よ、我が行いをご照覧あれ!!」

 

「っ不味い、脱出を……」

 

「ここは13階だ、窓しか無ぇぞ!!」

 

 

スナイプがドラゴナイトハンターを引き抜きながらニコを背負う。何も無しで飛び降りれば、生身なら即死は確実だろう。

そのタイミングで光が止む。触手が空間を埋めるまであと十秒。

 

 

『CRのアーチャー。召喚に応じ参上した……と言っていられる場合ではないな』

 

「サーヴァント、セイバー。ジャンヌ・ダルク……召喚に応じ、って、きゃあ!?」

 

「CRのランサー、フィン・マックール……と、悠長に自己紹介は無理か」

 

 

もう、視界は触手で埋められていた。見通しは悪いどころではなく、ジル・ド・レェですら何も見えてはいない。

猶予はない。会話すらもなく、彼らは窓際に追い詰められる。

 

 

「っ、追い付かれるぞ!!」

 

 

状況を把握した赤い外套のアーチャーが、一本の剣を呼び出して会議室の窓ガラスを破壊した。そして素早く破片を吹き飛ばし、窓枠に足をかける。

 

 

「窓を割ったぞマスター!! 飛び出す!!」

 

「っ、それしかないか!!」

 

『ジェット コンバット!!』

 

 

スナイプも覚悟を決めた。ニコを抱え、ジェットコンバットを装備して空を飛ぶ。その後を追って、ブレイブとセイバー、そしてランサーも空へと飛び出した。

 

───

 

「ああ、飛彩さんに大我さんが!! どうしよう、あんな高い所……」

 

 

飛び出てくるスナイプ達。スナイプはニコと共に宙に止まったが、しかし他の面子は落ちてくる。

地上からそれを見ていた作は、どうしようかと思い、同時にどうしようもないと絶望し、彼らが地上に落ちていく少しの間右往左往していた。

しかし彼には手段があった。少し前に彼の前にも現れていた。

 

ゲンムコーポレーションに流れていた紫のラインは、道路にまで侵食してきていた。

 

 

「……大丈夫ですよ、()()()()

 

 

女の声がした。その声の方向から黒い触手が伸びていき、落ちてきたブレイブを、サーヴァントを優しく包んで、少し遠くの地面に下ろす。

 

 

「あ、ああ、ありがとう」

 

「いえいえ……ふふ、気にせずとも、私を好きに使っていいんですよ、マスター?」

 

 

その女は、尼の姿をしていた。優しく微笑む姿は人間への愛を感じた。作はその笑顔に年甲斐もなく顔を赤らめ、そして安堵の溜め息をつく。

その女は。その真名は。

 

 

「私は貴方のサーヴァント。CRのアルターエゴ、()()()()()()なんですもの。ね?」




次回、仮面ライダーゲンム!!


──解き放たれた黎斗神

『超法規的措置を取らざるを得ない』

「フゥッ!! やはり私の才能が必要になったか……!!」


──広がり行くゲームエリア

「一体目的は何なんだ!!」

「体勢を立て直したら、一気に潰さないと」

「だが今は早すぎる」


──そして、思い悩むマシュ

「私達に、何をさせたいんですか?」

「今は休め。時間は沢山ある」

「これからとっても楽しくなるのよ!!」

「ああ……世界が私の才能を待ち望んでいる!!」


第三話 Real game


「私だって檀黎斗だ、誰よりもこのゲームの設定は知っている」

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