とはいってもこれからの更新は被クロックアップ状態並みに遅くなるかもです
時々ポーズも食らうかもしれません
断末魔もなく逝ったならラヴリカを思い出してください
「社長、衛生省からこんなものが……」
「ん? 何だい?」
仮面ライダークロニクルが終結し、大株主西馬ニコの投資によって復活を遂げたゲンムコーポレーションにて。
そこにはもうかつての社長、檀黎斗の姿は何処にもなく、檀黎斗、天ヶ崎恋、檀正宗に座られてきた社長の椅子には、現在は小星作という男が座っていた。
その作は、衛生省から届けられた箱を開いた。白く飾り気のないそれの中を見てみれば、一つのガシャット。そして箱の蓋の裏面に、メモ書きが張り付いていた。
『元々檀黎斗の隠れ家だった旧ゲンムコーポレーション本社から押収したガシャットです。安全性を確認したので、そちらにお返しします』
とだけあった。
作はそれをまじまじと見つめる。隣で秘書も興味深げに眺めていた。
「黎斗元社長の作品でしょうか」
「そうなのかなぁ……」
Fate/Grand Order。そう書かれた、クリアパーツの造形の凝った透き通る水色のガシャットに、作は何処か恐る恐る指を這わせる。
普通のガシャットに思えた。しかし、何処か、触れてはならないような気もした。
しかしまあ、折角届いたのだから、目を通した方が良いのだろう。現在はCRにて好き勝手にガシャットを作っているのだろう檀黎斗……いや、檀黎斗神に直接話を聞きに行くことも考えたが、それは少しばかり恐ろしかった。
「じゃあ、取り合えずプレイしてみようか。ガシャットをセットするよ」
「記録つけます?」
「いやいいよ、ちょっと覗くだけだし」
『ガッシャット!!』
……その、瞬間だった。
パチンッ
「……ん?」
「あの、社長。今、パソコンに火花が……」
「故障したかな……? まだ新しいような気がしてたけど……」
パチンッ パチンパチンパチンッ
バチバチバチブェハハバチ
キュルキュルハーハハハキュルキュル
「絶対おかしいですって、変な音出てますし……!!」
パソコンの画面が明滅する。それだけではない、パソコンと繋がったプリンターも、部屋の中のテレビも、充電していた携帯電話すらも液晶が勝手に光り、音を漏らし始める。その反動で、卓上のハンバーガーのぬいぐるみが転げ落ちた。
同時に、社内電話が鳴り出した。どうやらこの状況はこの社長室だけではなく、ゲンムコーポレーションの建物全体で起こっているらしい。
不味いことになった。作は慌ててパソコンのマウスに手を伸ばすが、既にカーソルは消えていた。プリンターは何故か白いコピー用紙を吐き出し続ける。
ガガガガ
キュルキュルキュルキュル
ブェハハバチバチ
「ああ、一体何がぁぁ!!」
「逃げましょう社長!! 不味いですって!!」
秘書は半ば腰を抜かしていた。それでも作はパソコンと格闘する。キーボードを叩き、配線を繋ぎ直す。
しかしそれらの努力は実らない。実らない。
秘書が社長室の窓から下を見れば、多くの社員が逃げ出し始めていた。秘書も流石にこれ以上は無理だと判断し、作をパソコンから引き剥がす。
「降りましょう!! これは無理です!! 一旦何処かに協力を!!」
「っ、でも……!!」
……その瞬間。
パソコンからテレビから携帯から出ていたノイズが、急にはっきりとした声になった。
『『『ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!』』』
「っ!? この声、まさか……!!」
「ええっ、ええ!?」
『『『ハーハハハハ!! ハーハハハハ!!』』』
テッテレテッテッテー!!
……小星作は、その高笑いを知っていた。かつて彼自身も、その高笑いでもって嘲られ、ゲーム病を悪化させた経験があった。そしてそうさせる人間なんて、決まっている。
「まさか、檀黎斗……!?」
……
そして全ては、始まりへと至る──
───
「大丈夫ですか!?」
午後2時を過ぎた頃に、CRの面々はゲンムコーポレーション前に到着した。
今回は
永夢が、一人ゲンムコーポレーションを見上げていた作に声をかける。社員は皆命の危機を感じて逃げ出したらしく、彼の他には誰もいなかった。
「……ああ、うん。一応」
「なら良かった……あの、本当に、本当に
「はい……シンダンクロトと名乗りました。土管から笑いながら現れて!!」
「……黎斗さん、弁解は?」
永夢が、ポッピーの手元の黎斗神に声をかける。
しかし黎斗神の方は、これといった心当たりは無いらしく。
『檀黎斗神だ!! ……それはそれとして、この状況は私にも不可解ではある。マイティアクションXオリジンから出てきた私が存在している以上、このタイミングで現れる檀黎斗は存在していない筈だ』
「……なら、いよいよもって不可解だな。テメェが知らねぇなら何だ、本物の檀黎斗の幽霊か」
そう言うのは大我。その視線は、パッと見では何もありそうにないゲンムコーポレーションロビーに向けられていて。
しかし、ここでどれだけ檀黎斗を疑っても仕方がないということも真実だった。
全ての真相はこのロビーを越えた先にある。永夢は作に外で待つよう指示して、ロビーへと歩き出した。
───
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖こそは私、真檀黎斗。 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
現在の持ち主が追い出された社長室に、一人の声が響く。
彼を中心に、ゲンムコーポレーションの建物は侵食されていた。社長室から伸びた紫のラインはゲンムコーポレーションの全てに行き渡り、さらに外部へと手を伸ばす。
「
その男は、白い服を着ていた。
この世界の誰も知らないことだが、それこそはカルデアの制服。Fate/Grand Orderの中にのみ存在する服で。
「……告げる。汝の身は神の下に、我が命運は汝の剣に。
社長室の床には、魔方陣が煌めいていた。紫の光が空間を満たす。その中で笑いながら、男は詠唱を終わらせる。
「誓いを此処に。私は常世総ての神と成る者、私は常世総ての悪を敷く者。 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!!」
バチッ
バチバチバチバチ
「さあ……集え、集え集え集え!! 私の、ゲンムのサーヴァント達よ!! この世界を私の最高傑作で塗り替える!!」
更に光が強まった。極光が止むと同時に、魔方陣の真中に人影が現れる。一つ、二つではない。十一もの影。
その男、真檀黎斗と縁を結んだ十一のサーヴァント。
真黎斗の左腕には、三十の赤い痣が刻まれていた。いや、それは痣ではない。令呪という名の絶対命令権。
それが従えるものは、他でもないサーヴァント。彼に付き従う、十一のサーヴァント。
「「「「「召喚に応じ参上しました」」」」」
「「「「「「我らはゲンムのサーヴァント」」」」」」
「……完璧だ」
それらを眺めて、真黎斗は笑った。全てが思い通りにいく、そんな確信を得ていた。
そこに、CRの面々は転がり込む。
「そこを動くな!!」
「……ほう、久しぶりだな」
「なっ……本当に、檀黎斗なのか?」
彼らは、真黎斗の顔を見ることは叶わなかった。その姿は逆光で暗く見えた。しかし、真黎斗が笑っていることは理解できた。
永夢は真黎斗に、そしてその向こうの十一の人影に声をかける。
「何が目的だ!! 何故ゲンムコーポレーションを攻撃した!!」
「決まっているじゃあないか……私は、神だ。この世界を、神が作り替えるんだよ」
「っ……」
永夢の背後で、黎斗神は何かを納得したように頷いていた。ニコが画面の中の彼を睨み、考えを問う。やはりこいつが黒幕なのか、と考えながら。
「……どうして笑ってるのよ。やっぱり何か知ってるんでしょ」
『……知ってるも何も、これは非常に簡単な話だった。……あれは私だ』
「……さっきと言ってることが違うけど」
『当然だ、これは想定外のことだからな。あれはかつて私が産み出したガシャットのセーブデータだ。それが勝手にガシャット内で進化し、暴走した』
淡々と語る黎斗神。
つまり彼は、目の前の、もう一人の檀黎斗は、かつて残したセーブデータが勝手に成長したものと考えていた。彼の神の才能を鑑みれば、あり得ない話ではなかった。
『名を問おう、私ではないもう一人の檀黎斗。
「ふっ……私こそが檀黎斗。真なる檀黎斗だ」
『ならば……真檀黎斗、という訳か』
そしてその考えは正解だった。
詳しく分析しなければ辿り着けない答えではあるが……彼は檀黎斗のセーブデータだ。Fate/Grand Orderの中のマイティアクションNEXT、それが衛生省にて一月もの間調べられている内に自己を確立、ガシャット自身の改造と同時に東京都のネットワークに介入する準備を行い、本日に至ったのだ。
「取り合えず倒しましょう、被害が広がる前に!!」
痺れを切らしたように、永夢が懐からガシャットを取り出す。そしてゲーマドライバーを装着し、ガシャットの電源を入れた。
どう考えても、真檀黎斗と名乗るあれを放置するのは不味いと思われた。あり得ない選択だった。
『ハイパームテキ!!』
『マキシマムママママ\マ<1166(|:~8&@』
「えっ!?」
……しかし、ガシャットは上手く動かなかった。永夢の左手に握られていたマキシマムマイティXガシャットは火花を上げ、その起動を停止させる。
真黎斗は笑っていた。その顔は、思い通りに事が進んで良かったと考えているようで。それが不愉快で、永夢の顔は険しくなる。
「このゲームにおいて、プレイヤー自身の戦闘力は邪魔以外の何者でもない……故に!! この空間にあるかぎり、レベルに制限を加えさせて貰った!!」
「っ、厄介な……」
朗々と種を明かす真黎斗。しかしてネタがバレた所でどう対処できる話でもない。永夢は歯軋りしながらガシャットをしまい、別のガシャットを取り出そうとした。
しかし態々それを見逃してやるほど、真黎斗も物好きではなかったらしく。
「……私は神だ。私の神威を見るがいい!! ハアッ!!」
その声と共に真黎斗はその手を振り上げ。
風が吹いた。
一陣の風が、窓が開いている訳でもない社長室に吹いた。しかもその風は、毎秒ごとに強くなっていく。踏ん張っていられないほどに吹き荒れていく。
「なっ……!?」
「か、風が……!!」
「駄目だ、耐えられ、ない……!!」
『……流石、私か』
真黎斗は、その名乗りの通り神へと近づいていた。彼は己の支配が及んだ空間への命令権を手中に納めていた。
最初に、真黎斗と分岐した存在であるはずの黎斗神がポッピーの手元から剥がされ、廊下の奥へと消えていった。それに続くように一人、また一人と社長室から飛ばされていく。
そして最後まで踏ん張った永夢も、廊下の壁に叩きつけられ、そして社長室から弾き出された。
「うわあああああっ!!」
───
「っ、つつ……」
永夢は、ゲンムコーポレーションの一角、会議室の壁で目を覚ました。腕時計を見てみれば、まだ真黎斗に吹き飛ばされてから十分を経っていないようだった。
部屋を見回してみる。時計、プロジェクター等の危機には社長室に溢れていたあの紫の光が筋となって走っていた。恐らくあれがレベル制限も行っているのだろう。
「早く、戻らないと……」
永夢は起き上がった。右足がずきずきと傷む。
目をやってみれば、足首から出血していた。靭帯の辺りがやられてしまったのだろうか。しかしそれでも、彼は歩こうとする。
その瞬間、会議室の天井が崩れた。
ガラガラガラッ
「うわっ!?」
「ハーイ、天井から失礼。ゲンムのランサーことエリザベート・バートリー。マスターの命で、貴方に歌を聞かせに来たわ!!」
「バグスター……!!」
永夢はふらつく右足首に鞭を打ち、ガシャットを取り出す。これまで人間型のバグスターと交戦したことはなかったが、他に危害を加えるつもりなら容赦は出来ない。
ランサー……エリザベートはそのマイクのような槍を振り回して何時でも準備万端と言わんばかり。このまま外に出せば、誰かを襲うのは確かに見えた。
『マイティ アクション X!!』
『ゲキトツ ロボッツ!!』
「……よし、使える!!」
『『ガッシャット!!』』
永夢はドライバーにガシャットを装填した。そして、レバーを解放する。
「大 大 大変身!!」
『『ガッチャーン!! レベルアップ!!』』
『マイティジャンプ!! マイティキック!! マイティマイティアクション X!!』
『アガッチャ!! ぶっ飛ばせ 突撃 激突パンチ!! ゲ キ ト ツ ロボッツ!!』
「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!」
「ふーん……これが
エリザベートとエグゼイド。二人は同時に足を踏み出し、戦闘を開始した。
───
「
ズダン ズダン ズダン
「ぐ、うっ……!!」
エグゼイドはエリザベート相手に苦戦を強いられていた。
現在の彼は右の足首を損傷しているが、それだけではない。エリザベートには真黎斗のサポートが施されているように見えた。その証拠かは分からないが、エリザベートの目は時おり紫に光って見えた。
『ゲキトツ クリティカル ストライク』
「はああああっ!!」
エグゼイドの闘志は全く鈍ってはいない。しかして体は言うことを素直には聞いてくれず、飛ばした拳もあらぬ方向へと飛んでいく。
そしてその隙に、エグゼイドは脳天にエリザベートの一撃を受けた。
「アハハハハハッ!!」
ズドンッ
「ぐあああっ……!!」
『『ガッシューン』』
重い一撃だった。ゲーマドライバーからガシャットが抜け落ちる程には。変身が解け部屋の壁に押し付けられた永夢の首筋に、エリザベートの槍が押しつけられる。
「このままだと……!!」
「……これで終わりね」
永夢は思わず目を瞑った。首筋の冷たい感触に、否応にも意識が集中してしまう。
まさかここで死ぬなんて。永夢は後悔が溢れて止まらない。それでも槍は振りかぶられ……
カッ
「……まさか」
その瞬間、永夢の前方……エリザベートの足元の辺りに、勝手に魔方陣が浮かび上がった。永夢の右手に痛みが走り、三画の令呪が刻まれる。
エリザベートは飛び退いた。永夢は目を開き、ゆっくりと立ち上がろうとした。しかし足首が傷むせいで再び座り込む。痛みに呻くその口は彼が意識するでもなく、小さく勝手に動いていて。
それは詠唱だった。永夢が知るはずもないが、真檀黎斗が行っていた詠唱を辿っていた。
そしてそれが終わると同時に魔方陣は極光を放ち、一人のサーヴァントを召喚する──
「……マスター……ああ、足首を損傷していますね。大体は把握しました。そこから動かないで」
「……え? え?」
「うっわ、よりにもよってコイツが出てくるなんて……」
永夢は、呆然としていた。
赤い服が見えた。かつて何処かの資料館で見たような、ずっと昔の看護服を思わせた。腰に下げているのは救急箱のように見えた。ピンクとも白ともつかない髪を纏めて現れたその姿は小さくも逞しく、そして慈愛を持っていた……ように見えた。
エリザベートは、恐れていた。彼女は、宝生永夢のサーヴァントとなった存在を知っていた。
「治療を妨げる者に死を。治療の為衛生の為なら、私は何にだってなってみせます」チャキッ
「っ……ここは撤退よ私。ええ、あれは怖すぎるわ……!!」
だからこそエリザベートは、ボックスピストルを構えるそれの前から退却した。彼女は先程自分で開けた穴に飛び上がり姿を消す。
残された永夢は、目の前の女性を、いや恐らくバグスターであるそれを見上げる。
彼女は視線を感じたのか向き直る。永夢に振り返る。永夢は黙っていられなくて、ただ見つめ合うのはどこか照れ臭くて、取り合えず礼を言った。
「ありがとう、ございました……ええと、僕は宝生永夢です。貴女は?」
「サーヴァント、バーサーカー。ナイチンゲール。召喚に応じ参上しました。私が来たからにはどうかご安心を」
その日彼は、
第一話 To the beginning
次回、仮面ライダーゲンム!!
───襲い来る
「我が主よ、我が行いをご照覧あれ!!」
「駄目だ、タドルレガシーが起動しない!!」
「追い付かれるぞ!!」
───止まらないFGO
「おい神!! 説明しろよ!!」
『いや、分からない……私が作った時点では、こんなことは起こり得なかった!!』
「なんてこったよ……!! じゃああの歌ってる奴相手にどうすればいいんだ!!」
───揃うはCRのサーヴァント
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公──」
「サーヴァント、セイバー。ジャンヌ・ダルク……召喚に応じ参上しました」
『サーヴァントにぶつけるならば、サーヴァント、という設計か』
第二話 Prayer
「月の蝶、ムーンキャンサーことBBちゃん、ここに召喚、です!!」