Fate/Game Master   作:初手降参

10 / 173
第三特異点 封鎖終局四海オケアノス 不揃いのServant!!
乗ってる船壊すとかどうかしてますよ先輩!?


 

 

 

 

 

   ザザーン  ザザーン

 

「……あの。ここ、船の上ですよね。確かに海の上ではないですが……弁解あります? ドクター」

 

『いや、その……ほら、海での足があるのはメリットじゃん』

 

 

黎斗とそのサーヴァント四体は、第三特異点……の海賊船にレイシフトしていた。

今回の特異点は海とは言われていたが、突然海賊船の上に放り出された一行は、潮風に吹かれながら戸惑いに戸惑う。

 

 

「……誰だあれ」

 

「知らねえよ、何だあいつら」

 

「……よくわからねえが……野郎共やっちまえ!!」

 

 

「あっ、海賊が来ましたよ黎斗さん!!」

 

「分かっている、分かっているとも」

 

 

気づけば、辺りを屈強な男二十人程に囲まれていた。十中八九海賊だろう。マシュは盾を構え、黎斗は余裕ありげにガシャットを取り出す。

 

 

「おおっ、女がいるぜ!!」

 

「なんか金目のもんは……まあ身ぐるみ剥がせばなんかあるだろ!!」

 

「あの金属の塊はすげぇお宝だと見たぜ!!」

 

「ヒャッハー!!」

 

 

「……あの、黎斗さん、これだけの数は、少しばかりきついかと」

 

「恐らく、君には辛いだろうな……まあ、大丈夫なんだろう、ジル・ド・レェ?」

 

「お任せを我が主よ。最高のCooooooolをお見せしましょう!!」

 

 

黎斗はそのガシャットをドライバーに挿す様子もなく、ジルに目を向けた。

名指しされたジルは沢山の視線を浴びながら、得意気に、高らかに、朗々と言い放つ。

 

 

螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)……フフフハハハハハ !! アーハハハハハハハハハハ!!」

 

   ザバザバザバザバ

 

 

黎斗に勝るとも劣らぬ高笑いをしたその刹那、海が音を立てて割れ、異形のナニカが現れた。そのナニかは触手を伸ばして、海賊船に絡み付く。

 

 

「ゴゴゴゴ……」ガシッ

 

「……え?」

 

「ん?」

 

「ゴゴゴゴ……!!」

 

   ユッサユッサ

 

「ふぁっ!? 何だクラーケンか!?」

 

「蛸が!! 蛸が船に!!」

 

「揺れる揺れる揺れる!?」

 

 

海中から無数の触手が現れ船を揺さぶる。まだ穴などが空いている訳では無いから、船は沈みこそしないが……船員の殆どが海に引きずり込まれていった。

 

 

「ゴゴゴ……」

 

   ユッサユッサ

 

「ふぅむ……なかなか沈みませんね我が主よ」

 

「流石にしぶといか。派手に沈めてやろう……!!」

 

「ジェットコンバット!!」

 

「あの、黎斗さん!! この船沈める必要あるんでしょうか!?」

 

 

黎斗がプロトジェットコンバットの電源を入れ、コンバットゲーマを呼び出す。そして、それにあることを命じた。

 

 

「この船を穴だらけにしろ。沈みやすいようにな」

 

「本当に何を言ってるんですか黎斗さん!?」

 

「おおクロスティーヌ……その指示はまさに大胆不敵……」

 

「この……沈没も……運命、である……」

 

 

コンバットゲーマが、触手の間を縫って飛び回り、その機関銃を乱射を開始。忽ち船は穴だらけになり、中に水が溜まっていく。

 

 

「ゴゴゴゴ……」

 

   ユッサユッサ

 

「うわあああ!! 沈んでるぞ!!」

こいつらなんなんだよ!!」

 

   バンバンバンバン

 

「うわあなんか飛んできた!!」

 

「白黒の……鳥か!? 悪魔か!? うわ船に穴空いてる!!」

 

「銃弾も効かねえし本当なんなんだよこいつらなんなんだよぉ!!」

 

「やだよぅ」

 

 

「……流石に可哀想になってきました」

 

「気にするな、多少の犠牲は仕方無いさ」

 

 

そうとだけ言ってコンバットゲーマをガシャットに回収する黎斗。もう既に海賊船は半壊、乗員の殆どは海に落ち、残っているものも打ち上げられた魚よろしく喘ぎなからビチビチと跳ねるのみ。黎斗達への脅威は、とっくに無くなっていた。

 

 

「そろそろ私達も行くか。……どうやらあちらの方向に、いい感じの島があるらしい」

 

「分かりました我が主。では、海魔に乗り移りになってください」

 

 

そう言われ、差し出された触手を渡って一行は海魔の上に乗る。

海賊船ツアーから、たのしい海魔ツアーに変更になったという訳だ。

 

そして、全員が乗り終わるのと同時に。

 

 

「ちょっ、溺っ」ゴポゴポ

 

「あっあっあっ」ゴポゴポ

 

「みすてないで」ゴポゴポ

 

   ポチャン

 

 

船は海賊の悲鳴と共に沈んだ。

 

───

 

『なんて事してるんだ君は……』

 

「私の才能をもってすれば簡単な作戦だった」

 

 

海魔に乗って近隣の島を目指しながら。ロマンからの疲れはてたような声にそう返しているのは他でもない黎斗である。

 

 

「うわぁ……なんか、その、すごいヌルヌルします……」

 

「うおおおお!! たこおおおぉぉお!!」

 

「叫ぶ公へ、私は訝しむ、これはヒトデではないのかと」

 

 

サーヴァント達もそんな会話をしながら、大体一時間は費やしてきた。

流石にそろそろお目当ての島の頭の天辺くらいは見えそうな物だが……

 

 

「……あ、やっと島が見えてきましたね黎斗さん」

 

「そのようだな。よくやったジル・ド・レェ」

 

「お褒めに与り恐悦至極」

 

 

それなりのサイズの島だ。取り合えず今晩はあそこで凌げるだろう……マシュがそうして喜んだのも、束の間だった。

 

目の前にまた別の船が現れたのだから。巨大な帆船の先端部には、赤い髪の女……? のような誰かが見える。

 

 

「あっ、あっち側にも海賊船です。島へのルートを邪魔してますね。回り道しますか?」

 

「ああ。流石に大海魔も疲れてきているのだろう? 戦いは得策ではない」

 

「その通りですね我が主」

 

「……ですがクロスティーヌ……あちらは、既に……」

 

   ホウゲキヨーイ!! モクズトキエナァ!!

 

「「「「「あっ」」」」」

 

   バァンッ

 

 

砲弾が近くに落ちる。衝撃波は容赦なく海魔を抉り、疲弊していたそいつらを意図も容易く葬り去る。

当然の帰結として、海魔に乗っていた一行は海に落ちた。

 

 

   ボチャン ボチャン

 

「だ、大丈夫ですか我が主よ!? 己、この匹夫めが!!」

 

「許さない……許さないぞあの海賊!!」

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

 

水中でガシャットを取りだし、電源を入れるびしょ濡れの黎斗。ファントムが彼に問う。

 

 

「クロスティーヌクロスティーヌ、びしょ濡れの君に私は歌う、それ壊れないの?と」

 

「防水加工など容易いこと……この才能をもってすればな!! そして……あいつらは許さない!!」

 

『バグル アァップ』

 

『デンジャラス ゾンビィ……!!』

 

───

 

……その暫く後。

 

 

「いやー、すいませんねドレイクさん」

 

「いやいや、こっちも突然喧嘩けしかけたからおあいこさね」

 

 

マシュが先程砲弾を撃ってきた海賊……フランシス・ドレイクにとそう会話する。

暫くの交戦の後、この海賊船……黄金の鹿号(ゴールデンハインド)に力づくで乗り込んだ一行。その中からマシュが何時ものように交渉役を買って出て、こちらが何者かを話し、今の状況について話し、自分達の目的は何かを解説したのだ。

 

そうして、向こうは割りと快く協力を約束してくれた。……そしてなぜ攻撃してきたのかも教えてくれた。

どうやら向こうは、こちらの海魔軍団に驚いて撃退しようとしていたらしい。そして、砲弾を撃たれて海魔は見事消滅、海に落ちて激昂した黎斗とドレイク達との戦闘が終わったのが十数分前だった。

 

 

「にしても、凄かったねあの時の黎斗。銃撃って当たるのに死なないって……あれ本当に生きてる?」

 

「死んでますよ」

 

「ひぇっ」

 

 

マシュが指差した先にいる黎斗は、海水に濡れたガシャットの手入れを行っていた。

 

あれが先程まで、砲弾やら何やらを受けながら黄金の鹿号の回りを高笑いしながらクロールし、その上でガシャコンスパローで船をよじ登った……とか言っても、普通の人間は信じないだろう。

 

 

「ふぅ……いや、ガシャットが無くなっていなくて助かった。危うく私の神の才能が失われる所だった」フキフキ

 

「おおクロスティーヌ、全くもってその通り」

 

 

「……いやー、どこにでも規格外ってのはいるもんだね」

 

「ですね……」

 

「……ところでさマシュ。結局、この海域には何があると思う?」

 

 

そう切り出すドレイク。マシュはしばらく唸り答える。

 

 

「……ドクターは、ここが大航海時代の結晶と言っていました。それが正しければ、財宝はあるかもしれません……敵は多いでしょうが」

 

「はは、滾るねぇ。早い者勝ちってのは分かりやすい。取り合えずアテを探さないと……って、えーと、じぇっとこんばっと? だかの海図の通りならそろそろ島が見える頃か」

 

 

軽く笑いながらドレイクが望遠鏡を向けた先に、紫の髪の少女が見えた。

 

───

 

「……女神を拐うなんていい度胸してるわね」

 

 

……そんなこんなで、迷宮に飛び込もうとしていた女神、エウリュアレをジル・ド・レェの海魔の触手で捕獲したわけだ。

まあ、強引に船に乗せられた彼女にとってはたまったものではない。当然だがエウリュアレは不機嫌だった。しかし今更降りることも叶わない為、彼女は諦めて外を見つめる。

 

 

「まあ良いじゃないか。どっかの海賊から逃げてたんだろう?」

 

「……煩いわね育ちきった女」

 

「……は?」

 

 

拗ねているのか、もしくはそれが素なのか……エウリュアレの言葉には刺があった。ドレイクは顔をひくつかせる。

 

 

「いや、それは言い過ぎじゃないですか……エウリュアレさん……?」

 

「煩いわねダサい盾女」

 

「こふっ!?」

 

「女神が……おお、女神が見えるぅ……」

 

「ひぇっ」

 

 

そんな毒舌を受け、そしてそれに返してのやり取りを挟みつつ進行していた一行は、後方からの何者かの接近を確認した。

 




高速化!! 高速化!! 高速化!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。