名探偵と料理人   作:げんじー

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あれ?なんか主人公の葛藤を書きたかったんですが全然違うところに着地してしまいました。一応、次話はジェットコースター殺人事件が起こります。

それと今回は「トリコ」のネタが多めになっております。


それではどうぞ。


第十話 -龍斗の悩み-

紅葉と伊織さんの引っ越しが無事終わり、家における約束事と役割分担を決めた。

普段の食事は俺が基本担当し、手が空いてれば一緒に作る。紅葉も俺とあってから料理に興味を持ってくれて実家ではよく作るようになったのこと。買い出しは朝誰が行くかを決めて、掃除ゴミ捨て洗濯は分担して当番制に。紅葉の物もあるので、普段から通ってもらっている女性の家政婦さんは人数を減らして継続で雇用することにした。伊織さんは自分が担当したがっていたが分担については俺が押し切った。だってこういうの家族みたいじゃないか?と言ったら紅葉が二つ返事で伊織さんを説得してしまった。

部屋は俺が使っている和室の二つ隣に紅葉、伊織さんが玄関に一番近い空き部屋を使うことになった。

紅葉が席を立っている時に伊織さんに「あまり羽目を外しすぎないようにお願いします」と言われてしまった。……なんかすごい気まずいんだが。まあ今から共同生活するんだし初めに言われただけまだましか。それじゃあ、夕飯でも作るかね。

 

「それじゃあ、今日は俺が一人で作るよ。今日だけは歓迎の意味を込めて豪快に作ろうと思ってるから期待してて」

「そんな、いつも通りでもええんよ?龍斗クンのなら問題ないって知ってるし」

「せっかくの同棲開始の記念日だしね。気合も入るってもんさ」

「ど、同棲…」

「私はお嬢様のお付きでパーティにご同行させていただいたことがありますが龍斗様のお料理を口にする機会が巡り合わせが悪く、これまでなかったのでとても楽しみです」

 

改めて、今の状況を言葉にすることで黙ってしまった紅葉と期待の言葉をくれた伊織さんを置いて俺はキッチンに向かった。さーて、ちょっと期待はずれに見えるかもしれないけど、やるかね。…っと、あの包丁ださないと

 

 

「おまたせ」

「……龍斗様、これは。豪華とおっしゃっていましたが私には普通のサラダにコンソメスープ。それにパン。メインはハンバーグ、ですか?にしか見えないのですが」

「ええ、伊織さんがおっしゃったまんまのメニューです。シンプルですが家庭の料理としてはごくありふれたものですよ」

「……!!紅葉お嬢様にお出しするのが普通の料理……ですか!歓迎とおっしゃっていたのは嘘だったのでs「待って伊織」……お嬢様?」

「伊織。このお料理どれもすごくええ香りするよ?今まで嗅いだ事の無い。香りだけで唾液があふれてきました」

「……確かに。ですが先ほど歓迎と…」

「伊織さん。まずは食べましょう」

「……そうですね。香りからして手を抜いたわけではないと思いますし」

「それじゃあ、頂きます。ようこそ、緋勇家へ!!」

「「頂きます!」」

 

紅葉はまずサラダから手を付け、伊織さんはスープから口にするようだ。

 

「な、なんやのこの野菜!めっちゃみずみずしくてしゃきしゃきしとる!!噛めば噛むほど甘みが濃くなって!どこのお野菜なん!?こんなの食べたことあらへん!」

「このスープも野菜の優しい甘みがしっかりとあっていくらでも飲んでいけそうな透明感がありながらも思わず噛んでしまうほどの重厚感も調和している!」

 

二人は食べる度に料理を称えてくれて、それでいて持つ箸は止まらずどんどん皿を空にしていった。そして二人はメインのハンバーグに手を付けた。二人して言葉もなく唯々手を動かし。気づけばすべての料理を綺麗に平らげてくれていた。

 

「「……ごちそうさまでした」」

「はい、お粗末さまでした。どうでしたか?今夜の夕食は」

「ええ、先ほどの失言深くお詫び申し上げます。ですが、「豪華」「歓迎」と言われてキッチンに向かわれたのに出てきたものが何の変哲もない料理だったものですから。お嬢様への歓迎はこの程度なのかと邪推してしまいました。重ねて謝罪申し上げます」

「でも。今まで食べてきた龍斗クンの料理の中で一番おいしかった。普段のパーティの時は手を抜いてるん?」

 

食後の紅茶を飲みながら紅葉はそうたずねてきた。

 

「いや。手を抜いているつもりはないんだけどね。俺の最も得意な料理は「家庭料理」なんだ。だけどそれはパーティで求められるものじゃない。それと……ね。今日は特殊な技術をふんだんに使ったから。因みに今日の食材は俺が目利きしてはいるけど商店街でそろえたものだよ」

「特殊な技術?それに商店街って……」

 

俺はそう言って席を立つとパックに入った二個のトマトを冷蔵庫から持ってきて、キッチンにより包丁をとり二人の元に戻った。

 

「これ、二個で300円のトマト。まあ一般的にはちょっとだけ高めの物だけど高級ってものじゃない」

「伊織?」

「ええ。龍斗様のおっしゃる通りです。一般家庭の方が日常的に食べるものですね」

 

流石に食材の買い物の経験がないのか伊織さんに聞き、この値段が普通のトマトの値段であることを教えてもらっていた。

 

「それで、そのトマトがどうしたんです?」

「まあ見てて。とりあえずは一つ」

 

そういい、俺は一つのトマトを綺麗に六等分した。そしてもう一つのトマトを手に取り、集中して細かに包丁を入れ始めた。その動きは包丁が消える程に早くその様子を見ていた二人は目を丸くしていた。

 

「……さてと。このくらいでいいかな。このトマトも六等分してと。後でしっかり話すからまずは最初に切った方を食べてみて。その後に俺が「調理」したトマトを」

「え、ええ。……うん、普通のトマトやね。ちょこっと皮が固いけど」

「はい、私も同意見です。そしてもうひとつを……!!」

「なんやこれ、全然味が違う!!皮もやわらなってるし甘さも酸味も絶妙になってる!それにあんなに包丁を入れていたのに綺麗に形が残っていることもどういう事なん!?」

「さっき俺がしていたのは「暗技」の「蘇生包丁」の応用だよ」

「あ、暗技?蘇生包丁?」

「俺が持ってる技術の一つでね。あまり表に出したくないんだ」

 

「暗技・蘇生包丁」とはトリコの世界で習得した技術の一つだ。これを使えばどんな食材も最高の味を出すことができる。が、そもそも習得できる人間がこの世界にいるとは思えないし必要な包丁はこの世界では作れない。俺が今日使った包丁は俺がトリコ世界で愛用していたもので俺の「裏のチャンネル」に保管していたものだからできただけであって、父さんからもらった包丁じゃ再現できなかった。そのことをぼかして説明した。

 

「それに、それを使わなくても美味しい料理を作る腕に自信はあるからね。今日は歓迎の意味で使ったんだよ」

「そやったんやね。そんな不思議な技術があるんやねぇ。でも美味しかったよ龍斗クン!」

「ええ。本当に美味しかったです龍斗様」

 

二人は笑顔でそういってくれた。うん、やっぱりこの笑顔が見れるのは料理人冥利に尽きるね。

 

歓迎の夕食が終わった後、片づけをして後は寝るだけという時間になり俺と紅葉は俺の部屋で雑談に興じることになった。

 

「ほんに、龍斗クンのお料理は絶品ですなあ。ウチも今まで有名どころの方々のを頂いてきましたけど今日のは龍斗クンのお父様をも超えていましたえ」

「父さんの料理たべたことあるんだね」

「ええ、行った先のパーティで。龍斗クンがつくる物とはまた別の美味しさがあって。龍斗クンのパーティ料理と互角なんやないかと思ってたんやけど」

「俺と父さんはよく似てるからね。人を笑顔にするために料理を作ることを信条にしている。だけどね、父さんが一番おいしい料理を出すのは俺と母さんに作った時なんだよ。手を抜いているつもりはなくてもどうしてもそうなってしまう。だからあー……まあ。うん。美味しかったんだったらよかったよ」

「龍斗クン?誤魔化さないで言葉にしないと分かりやしまへんよ?言ってください……?」

 

俺が言葉を濁したのにその先を察していたのか、いたずらっ子のような表情をしながら追及していた。うぐ。

 

「だ、から。俺も今日は家族に向けて作るくらいに気合入れて作ったよってことだよ!」

「……ありがとう、龍斗クン♪とっても嬉しいわ」

「まったく。まあ、明日からは「買った時の」食材の味を生かして作るから今日ほどの物じゃないけど。毎日誰かに作れるっていいね」

「龍斗クンはホントに根っからの料理人なんやねえ」

「まあね。そうだ。紅葉ともっと仲良くなったら、俺の秘密の部屋に連れてってあげるよ」

「秘密の部屋?それにも、もっとなかよくって……」

 

ナニを勘違いしたのか、紅葉は俺達が座っているソファから見える俺の畳んでいる布団をちらちら見て顔を赤らめてた。

 

「い、いや。そっちじゃなくてだな!俺ら、五年間も会ってなかったんだし、普段のお互いのことを知りあって今よりもっと親密になろうってこと!!ああいうの抜きでも!秘密の部屋もあっち関係のことじゃないからね!!食材についてだよ!」

「な、なんやそうやったんね。ウチったら恥ずかしい勘違いを。でも龍斗クンが悪いんです。今の状況でもっと仲良くって言ったらそんな勘違いしてしまいます」

 

今の状況?夜、二人きり、ソファで肩を寄せ合って談笑、目に見える所に布団、もっと仲良く発言。あ、全然ダメだなこりゃあ。

 

「よく考えたらその通りだ。わるかったよ。まあそういうわけで誰にも言ったことのない秘密を教えてあげる……いや、紅葉には知ってほしい。だからこれから改めてよろしく」

「うん、よろしゅうね龍斗クン。それじゃあウチ部屋に戻るわ。おやすみな」

「ああおやすみ、紅葉」

 

そういうと紅葉は部屋から出ていき俺も目覚ましをセットしそのまま床に就いた。いつかトリコ世界の食材を使った俺の『フルコース』、たべさせてやりたいな。

 

 

 

 

「あーーーーー、おわったあああ!!」

「園子ちゃん、女の子がはしたない」

「だって、やっと期末テストが終わったのよ!これから勉強から解放されるううう」

「もう、園子ったら。でも気持ちも分かるわね」

「それでみんなは今日これからどうする?私は今日部活ないけど」

「オレも特に用事はねーなー」

「私も今日稽古ないわよ」

「ウチも今日はカルタの練習無いし、龍斗も何もないやんな?」

「ああ、今日はこの後仕事は入れてない」

「じゃあさ、じゃあさ。久しぶりにカラオケでも行かない?紅葉ちゃんの歌声も聞いてみたいし」

「私はいいわよ?」

「俺もいいよ」

「なんや期待されても恥ずかしいけど、ええよ?」

「あー、オレは……」

「いくよね新ちゃん?」

「あー、わーったよ!行きゃあいいんだろ行きゃあ!」

 

紅葉が転校してきてから早一月。俺達は高一最後の期末テストに突入していた。そしてたった今終わりこれからカラオケに繰り出すということになった。

あの屋上でのショックか最初はぎこちなかった幼馴染みとの関係だったが、しばらくしたらそんなこともなくなった。女子二人と仲良くなり、休日は地理を教えるという意味合いも兼ねてよく連れ出されていた。俺も三人と仲良くなって貰えて嬉しく思う。そしていつの間にやら俺への呼び名が「龍斗クン」から「龍斗」へと変わっていた。

 

さて、カラオケ屋につき部屋に入った。

「じゃあ誰から歌う?」

「んー、決めた人から順々に入れればいいんじゃないか?というわけで俺は「0:00A.M」」

「龍斗君、いっつも思うんでけど一発目の声にデスボイスってどうなのよ?じゃあ、私は「道楽女王」」

「んー、じゃあ私は「永遠のペイヴメント」」

「ウチは「YOU」を」

「あー、オレはいいよ。歌うの好きじゃ「ほい、Drive Me High」って、龍斗―!?いっつもいっつも勝手にいれんじゃねえ!ってか割り込みで俺一番最初かよ!!」

「カラオケ来るたびに何回も同じやり取りをしてるからねえ。割り込みじゃなくて自分のを入れる前に新ちゃんのを先に入れる癖が出来ちゃったよ」

「くっそ、おぼえとけよ……」

「新一君、歌嫌いなん?」

「紅葉ちゃん初めてだもんね、驚くと思うよ…」

 

そうして、カラオケによる期末テストの打ち上げが始まった。

 

「……な、なんというか。なんともいえへんね」

「いいのよ、言っちゃって。音痴だ―って」

「そうそう、新一ってバイオリンとか楽器は大丈夫なのに歌は壊滅的なのよね」

「うっせーな!だから来たくなかったんだよ。なのにいっつもいっつも連れてきやがって!」

「いいじゃない、音痴でも歌が下手でも歌う事って楽しいよ?」

「へいへい」

「だいたい新一は……」

 

「あー向こうはほっといて私達だけでも歌いましょうか。それにしても紅葉ちゃん上手いじゃない!びっくりしちゃった」

「おおきに、でもみんな上手やったやん!……彼以外」

「そうなんだよなあ、新ちゃん耳はいいのになんでか外すんだよな。自分の歌声聞いてて音が外れるのに気持ち悪く感じたりしないんかねえ」

「まあまあ、旦那の悪いところは今嫁が「誰が嫁よ!」「誰が旦那だ!」……説教してるからいいじゃない。私はまだまだ勉強で溜まったストレスを開放しきってないわよー!!さあ歌うぞーーーー!」

「ふふ、ほんに。愉快な方やなあ、園子ちゃんて。ウチも入れよ。ほら龍斗も」

「ああ」

 

そうやって、俺達は普通の高校生の生活を楽しんでいた。そう、ずっと何もなければこうやって遊んで勉強してバカやって……

 

「はあ、楽しかった!そういえば蘭。期末が終わったけどすぐにこれから部活が忙しくなるんだっけ?大変だねえ」

「うん。都大会が近いからね。去年は数美先輩に決勝で負けちゃって準優勝だったし。ライバルの陽菜ちゃんも今年は気合入ってるって杯戸高校に友達がいる空手部の部員に聞いたし。でも空手漬けって感じじゃないけどね」

「今年こそは絶対優勝できるよ!私たちも応援に行くし!!ねえ、紅葉ちゃん!?」

「ええ、ウチも頑張って応戦するさかい、優勝してな」

「が、がんばるね!」

「……」

 

そう、二年にあがってすぐある空手の都大会。そしてもうすぐオープンするトロピカルランド。いくら記憶が擦り切れていてほとんど覚えていない原作知識だがこれだけはしっかりと覚えている。

 

 

 

 

―工藤新一が江戸川コナンになった日―

 

 

 

 

それが、刻一刻と近づいてきた。13年間続いてきた日常が崩れる日は近い。俺はどうすればいい。「この」新ちゃんは物語で見ていた「工藤新一」じゃない。このまま「コナン」になるのを何もせずに待ってていいのだろうか――

 

 

「なあ、龍斗。何に悩んでるん?」

「え?」

 

あの後解散し、いつものように帰宅し夕食をとった。その後、部屋で寛いでいたのだが風呂に入った紅葉が俺の部屋を訪ねてきて俺にそう言った。

 

「カラオケが終わった後に蘭ちゃんの大会の話のあとや。思いつめた顔してやんか。一瞬やったしすぐ取り繕ってたけど他の三人も気付いてたと思うよ?けど多分蘭ちゃんの心配してるって勘違いしてたみたいや」

「悩み……悩みの心配をされたのなんて初めてかもな」

「龍斗、あの子たちのお兄ちゃんみたいなことになってたやろ?多分三人は付き合いが長くてずっと頼れるお兄ちゃんやって心に根付いてるんや。うちはこの一月ちょっとやけど龍斗とずっと一緒におった。ずっと見てた。そん中でいいとこがいっぱいあってどんどん好きになった。やけど、なんでもない朝は意外と弱くて目覚ましを三つもかけていること。忘れ物をしたりしても何とか誤魔化そうとしたりする癖があること。料理に没頭して朝になってたことに気付かなかったこと。着替えを持っていかないでお風呂場に行ったりすること。他にも一杯いいとこも悪いとこも知ったんや。やから、あの顔は悩みがあるんやってウチはそう思った……って龍斗!?」

 

俺は、つい紅葉を抱きしめていた。本当に俺のことをよく見ているんだって。俺はこの子のことを好きになって心からよかったとそう思う。

 

「ありがとな、紅葉。心配してくれて、気づいてくれて」

「未来の旦那さんを支えるのはお嫁さんとして当然のことや」

 

俺は紅葉を離し向き合った。そして話す事にした。

 

「なあ、紅葉。俺はこれから新ちゃんにとても大変な苦難が起こることを知っているんだ。下手をすれば命を落とすほどの。それがもう近づいてきているんだ。それを止めることはたやすい。けれどそれは新ちゃんにとって今後の探偵として、長い人生において大きな糧になることも知っている。探偵は時に自他に関わらず命を周りを巻き込む危ないこともあることを実感として本当に気づき、探偵としての在り方にすら影響が起きるんだ。そして困難に立ち向かう気力を得る。今ならまだ止められる。安全か、成長か。おれはどっちの道を勧めたらいいんだろうな」

「……それは。難しく考えすぎや。龍斗」

「難しく?」

「いつもの龍斗なら真っ先に安全を取らせるはずや。だけどそうしなかった時点でもう答えは出とるやろ?」

「……だが」

「さっき、みんながお兄ちゃんやと思ってるって言ったけど龍斗もそうや。みんなのこと妹や弟やと思てる。だから守ってやるって気持ちが強すぎるんや。けどな?夢に歩き始めた人に過剰なおせっかいは逆に邪魔になるんやで?それにウチも今の新一君のままやといずれ危ない目に合うんやないかって思う。もしかしたら周りの人も。現実の人は推理小説みたいにものわかりのええ人ばっかやないってことが分かってないんやと思う。こればっかりは痛い目に合わな分からんやろ?それに……」

「?」

「困ったら、助けてあげるんやろ?困ってない時から助けるなんて傲慢やで?」

「傲慢?傲慢……傲慢か。そうだな。その通りだ。ありがとな。俺なりに答えが見つかったような気がするよ。それから……」

「それから?」

「俺の秘密、教えさせてくれ」

「え、でも……」

「俺が。話したい。これは俺の我儘だ。でもこれを聞いたら紅葉は今までと同じように見れなくなると思う。それでも俺のすべてを知ってほしい」

「……そない、重要なこと?」

「ああ。そしてそのことを知って貰って俺は。紅葉に味わってもらいたいんだ」

「??」

「俺の人生の最高のフルコースを」

 

そして俺は語った。俺が前世の記憶があること。前世の世界の事。その世界はこと食事のことに関してはこの世界と雲泥の差があること。前世で1000年生きたこと。前世で美食屋兼料理人をしていたこと。今もその世界と行き来する事が出来る事。いつかはその食材を使った料理を紅葉に食べてもらいたかったこと……

話さなかったことは「名探偵コナン」のこと、そしていずれは魂の管理者=神のような存在になることだけだ。

全てを語り終わった時、もう深夜を回っていた。

 

「……なんか、突拍子もなくて。どう反応すればええのか全然分からんのやけどとりあえず」

「とりあえず?」

「前世に恋人はおったん?」

「へ?恋人?」

「そや、そや!恋人、好きな人、ラヴァー!なんでもええけど恋人は?!」

「ああ、いや。孤児院の運営とかで俺の子供はいっぱいいたしそこの先生といい雰囲気とかになったことはあったけど。不思議なことにいなかったな。子供を育てる事、食の探求と料理を振る舞う事、食材を取りに行く事、宴会で知り合いとバカ騒ぎすることに人生を費やしてたな」

「そ、そうなん?ならよし!」

「いいのかそんなんで?結構ありえないことだぞ?気持ち悪くないか?」

「ビックリはしたけど、気持ち悪いなんてあらへんよ。過去がどうこう言っても今おるのは龍斗やん。好きな人がちょーっと長生き?ですっごい力もってるだけやろ。それよりそのトリコ世界?にウチも行けるんやろか?」

「あ、え、なんかちょっと逆に俺が混乱してるから待ってくれ」

「……ウチは、龍斗にぞっこんなんや。殊更悪いことをしてるんやないんやからそないなことで嫌いになったりせーへん。幼馴染み三人もきっとそうやで?まあこの世の理から外れてるからリアリストの新一君に話しづらいんやろ?いつか話せるとええね」

「……ああ。そうなるといいな」

 

実はこっそり向こうでノッキングした食材をこっちに持ち帰って一人で食べていたりしたので生物の世界間移動に問題ないのは知っていた。なので俺は紅葉を伴い、トリコ世界へと赴いた。すべての規模がコナン世界と桁違いな場所なので今日は俺が開いたデパートを少しだけ回って戻ってきた。その時に偶然入荷していた「エアアクア」を買い、俺の部屋で飲んでいるのだが

 

「く、空気みたいに澄んどる!?何このお水?!いくらでも飲んでいられそう!!」

「エアアクアは世界で5本の指に入る喉越しの良さだからね。気に入ったのなら今度採ってくるよ」

「最初、2リットルで12万ってふざけとるなって思てたけどこれ飲んで納得やわ。水でさえこんなに美味しいなら……」

「ああ。他の物もとても美味しいぞ。ただ、控えないとすぐに太ってしまうからほどほどにね」

「あう、いじわるやわ。でも龍斗、ありがとな。告白してくれて」

「そうしたいと俺が勝手に思って。思わせた紅葉が礼を言うのも変だけどな。これからもいっぱい楽しい食卓を囲もうな」

「ええ。楽しくて、そして幸せな食卓を…ね?」

 




はい、なんかもういちゃこらしてる方が多かったように思います。
主人公と紅葉が会話する場面を書いているとすぐこうなってしまうのです……

わりと強引だったのですが主人公は言葉でそれとなく注意を促しそれでダメだったらその後フォローしていくということに決めました。
介入しないことを決めていない、どっちつかずの状態だと、遊園地に行かないかをしつこく聞く(危ないことを原作知識で知っているから)→それを海外で知る。という流れでもトリコの世界には裏のチャンネル、もしくは「透影」のように瞬間移動の術があるので飛んで行ってしまえるんですよね。
だから、コナンに「する」動機づけを彼一人でどうしようかと悩んでいたら。紅葉さんに解決してもらいました。紅葉さんマジお嫁さん。
主人公は言葉少なですがかなりガチで惚れ込んでます。

やっと原作に入れます。時系列ではなく原作の巻数順に書いていきたいと思っています。それではこれからもよろしければ楽しんでください!
……トリコ成分も増えるよ?

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