ダンガンロンパ・H&D ~絶望だよ、全員集合!~ 作:名もなきA・弐
十五人の前に襲い掛かる白黒熊に、どうかお気を付けください。
ちなみに、ダンロン・H&Dのオープニングとエンディングはアニメダンガンロンパ3のOP&EDを脳内に流してください。それでは、どうぞ。
エミリさんと坂本君と共に探索を開始したが放送室は学校の放送室とよく似た構造となっており、私には良く分からない機械が多い。
ふと、一際目立つ黒い二つの機材が目に入った。
ほんの少しだけ好奇心に火がついた私はそれに触れようとした瞬間…。
『ストーーーーーーーーーップッッッ!!!!!』
「きゃあっ!!?」
下から這い出てくるようにモノクマが現れ、私は思わず尻もちをついてしまう。
調べていた二人も突然の出現と声に驚いたのかこちらに近寄り、坂本君が「大丈夫か」と声を掛けてくれたのでそれに返す。
モノクマは気にせずに私が触れようとした機材に指を指す。
『まったく、過ぎた好奇心が身を滅ぼすのを知らないのかな!?ここの放送室はオマエラの生活習慣を乱さないために毎日七時と十時に録音したアナウンスと電子生徒手帳の時間がプログラムされているのっ、素人が勝手に触ったら困るよっ!!』
「じゃあ、後の機材は?」
『んん?あぁ、そっちなら別に構わないよ。使えるんならね』
腕を組んでご立腹のモノクマだったが話題を変えるように質問したエミリさんにそう返すと、何処へと消えてしまった。
エミリさんと坂本君たちと別れ、装飾の施された通路を進むと奥にサイケデリックな扉が見えたので早足で近寄り確認するが鍵が掛かっているのか開く様子はない。
見ると、白い張り紙が貼られており「立ち入り禁止」と大げさな文字で書かれている。
仕方がないと思考を切り替え、歩いていた時に見かけたシアタールームに足を運び黒い扉を開けた。
「あっ、貝原さん」
「えっと…松成君…でしたっけ?」
左手には巨大なスクリーンと右手にはいくつもの座席がある内の一つに、松成君が座っておりこちらに気づくなり笑みを見せた。
人懐っこいその笑みに思わず鼓動が跳ねてしまうが気を取り直して彼の元まで近寄る。
「シアタールームって書いてあったけどこの広さだと映画館みたいだね」
「そう、みたいですけど…」
構造としてはオーソドックスの映画館みたいだがここで映画なんて観られるのだろうか。
疑問に思う私に感づいたのか松成君は私の肩を叩き、スクリーンの付近にある扉に指さす。
「あそこを調べたんだけど、大量のDVDとデッキがあった。多分、あそこに行って映画をセットすれば映画が観れるようになってる」
「調べたんですか?」
「試しにね…コメディにホラー、ラブストーリーまで無駄にジャンルも広かったよ」
呆れたように話す彼に私はふと思った疑問を漏らす。
「松成セイ…それがあなたの名前だったんですね」
「らしいね。でもモノクマの言葉を鵜呑みにするのも危険だと思う…しばらくはこの名前で通すことにするよ」
【超高校級の??? 松成 セイ SEI MATSUNARI】
近づいてようやく気付いたが彼の服装は上下黒いスーツであり茶色いネクタイがひときわ目立つ格好となっている。
身長も高校生からしたら普通より少し高い程度であり小柄な私は少しだけ見上げる形となっている。
「貝原さんは、庶務委員だっけ?」
「はい、中学と今と続けてやっていました」
「でも、何でまた」
彼の問い掛けに私は腕を組んで少しだけ迷う、庶務委員になった切っ掛けなどあまり考えられない。
元々、父の手伝いから発展したものだし率先して任命したわけでもない…ただ、先生に頼まれたからそれを了承しただけだ。
周囲が言うには物事を整理して作業するスピードが速いらしく、ミステリ系の小説を読む時も自然とヒントと手がかりが頭の中に浮かんだ時もあった。
そんなことを彼に話すと純粋に「すごい」と言ってくれるので何だか気恥ずかしくなる。
「そう言えば、貝原さんて敬語なんだね」
「やっぱり、変ですか?」
同年代の友人がいるにはいたのだが家には自分より年上の人間がいるため彼らと話している内に自然とそのような口調になっているのだ、少なくとも今時の高校生らしくないだろう。
「ううん、そんなことはないよ」
そう言って、優しく微笑む彼に私は顔から火が出ないように気を付けるのだった。
エントランスホールに行き私はもう一度、モノクマがコロシアイ宣言をしたパーティホールを調べて見ることにした。
可能性は低いが、もしかしたらモノクマが何か重要な証拠品を落としてしまっているかもしれない。
そう思いパーティホールの扉を開くとそこには二ノ瀬さんと海原君が立っていた。
「あら、永久ちゃん。こんにちは」
「シュコー」
私に気づいた二人は挨拶をしてきたので私も挨拶を返しそれとなく二人の服装を観察する。
二ノ瀬さんは味気ない黒いブレザーとスカートの出で立ちをしており胸元には可愛らしいバッジがあり水色のロングヘアーを靡かせる。
一方の海原君はダイバースーツの上に青いコートを羽織っておりシュノーケルはそのまま装着している。
大人らしい少女と珍妙な格好の男子というミスマッチにも程がある光景にツッコミたい衝動に駆られるがどうにかして堪える。
「何かないかと思ってきたのだけど…外れね。あのクマが何か落としていればと楽観していたけど…そんな上手いことはないわね」
「シュコー…しかし、こういった客船に乗ることは初めてだがこんな設備があるのだな」
「やれやれ」と肩をすくめる彼女とは対照的に海原君は興味深そうに辺りを見渡す。
【超高校級のダイバー 海原 潜絽 MOGURO UNABARA】
「海原君はダイバーでしたけど、何時もそれを?」
「シュコー…海女だったおふくろに『海は強大な魔物だ、潜るにはそれ相応の準備と覚悟が必要だ』と言われてな。以来、シュノーケルは手放さないようにしている」
そう言って、彼は自分がセットしているシュノーケルを指さして答える…その理由にまだ納得出来ないが真面目な性格なので恐らく母親の言葉を信じて装着しているのだろう。
一方で、二ノ瀬さんは大人びた様子で腕を組んで難しい表情をしている。
「…それにしても、妙な船よね。モノクマは映像を見せながらこの船のことを説明したけど構造が他の客船とは全然違うわ」
「そうなのですか?」
「ええ、ロケの一環でアイドルたちの子と豪華客船に乗ったことがあるけどこういうのは船の構造を活かすものなの。でもここはまるでホテルや学校の構造を無理やり船に詰め込んだような…そんな感覚がする」
「全体を調べていないから何とも言えないけどね」と笑みを見せた彼女だがあまりにも冷静な考え方に私や海原君は思わず拍手をする。
「…別に拍手をする必要はないと思うけど」
「すいません、でも二ノ瀬さんは冷静ですね。私なんか自分のことで精一杯なのに」
「スケジュール管理や危険なロケ地を同行していれば嫌でもこうなるわ」
【超高校級の芸能マネージャー 二ノ瀬 香 KAORI NINOSE】
謙遜をするが誇らしげに話す二ノ瀬さんだった。
プライベートルームに一度戻ってきた私は奥の方を調べることにした。
この部屋には私たち十五人の個室があるが特に気にせず進めると鈍い音が響き渡った。
慌てて音の発生源の方に向かうとそこには桐生君がおり、鉄板に向かって強烈なキックを叩き込んでいた。
黒いベストとズボンにミリタリージャケットを羽織っており、本人の強面な容貌も相まって中々におっかない。
「桐生君!?」
思わず叫んでしまった私に気づいた彼は構えを解き、軽く会釈をする。
「貝原か…見苦しいところを見せちまったな」
「いえっ、ところで何をしていたんですか?」
「この船の窓にはあんな鉄板がたくさんあるからな。何とか壊せないかと思ったが…」
横目で彼は巨大なネジで四隅に固定された鉄板を見る…忘れていたが確かに私の部屋にもそれらしい物があったが逃走防止か何かだろうか。
私が考えている間にも桐生君はネジの一つを掴み回そうとするがびくともしない。
「俺の力でも壊れないとはな…」
「すごいパワーですね、えと…」
「喧嘩師…それが俺の肩書き、らしい」
【超高校級の喧嘩師 桐生 和彦 KAZUHIKO KIRYU】
少しばかり苦い顔をする彼に対して、私は恐る恐る尋ねる。
肩書きもあるが本人の顔がこう…ヤクザ顔であるためかなり怖く、無意識の内に委縮してしまう。
「桐生君は高校には…」
「形だけなら在籍している…隠す必要もないから言うが魅祭組っていう下っ端組織のチンピラだ。俺はそこで経営している養護施設で暮らしていたんだ」
「はぁ……」
神楽阪姉妹のようにスケールの大きい話に呆然としながらも返事をする、私の様子に桐生君は文句を言わずに軽く笑う。
「そこで俺は、援助してくれていた姐さんに恩返しをしようと裏の世界に足を踏み入れたんだ」
「それだと、喧嘩師じゃなくてチンピラになるんじゃ」
「それは俺も思ったが…シマにいる酔いどれのおっさんやホームレスの元武闘家に喧嘩を教わっていたことがあるからな、たちの悪い不良たちや喧嘩を売ってくる奴をぶちのめしたこともあった」
「それで……」
思ったよりも高校生らしくない素性に驚くことしか出来ない。
だが、話して見て分かったが彼自身落ち着いた物腰であり会話から悪い人間ではないと断言出来る何かを感じた。
「あのぬいぐるみが何かは知らんが、堅気を巻き込んだツケはきちんと払わせてやる」
その目は鋭く、この場にはいない敵に並々ならぬ敵意を放っていた。
その後は女子トイレを調べたが至って普通の個室がいくつかあり念のため各個室も調べて見たがウォシュレット付の西洋式のトイレだった。
特に語ることもなかったので省略するがダストルームには一関君が立っており紺色の詰襟タイプの学生服に身を包んでおり、凛々しい顔つきの彼は眼鏡の奥に光る瞳をこちらへと向ける。
「君か、貝原」
「ここは、ダストルームですか?」
「そうだ。どうやら私生活で出したゴミは自分で処分しろってことらしい」
【超高校級の優等生 一関 来羽 KURUHA ICHINOSEKI】
私の答えた一関君は電子生徒手帳の操作を始める。
手元を見ると、どうやらメモをしているらしく画面に映る文字をタップして打ち込んでいく。
「奴の道具を使うのは癪だが、与えられた以上は使うことに越したことはない」
「流石は優等生ですね」
「いや、ただ貧乏性なだけさ。優等生を目指しているのも奨学金目当てで勉学とスポーツに励んでいたのが理由」
電子生徒手帳をポケットにねじ込みながらそう自嘲した彼に妙な引っ掛かりを覚えた私は質問をする。
「一応質問ですけど、テストは何時も百点ですか?」
「まぁな。だからって勉強だけじゃない。優等生になるには運動だって出来なきゃいけないし委員会にだって何かしらの形で貢献しなきゃいけない…それら全てが出来てこそ真の優等生だ」
そう持論を述べた彼は、少しだけ真面目な表情を崩す。
「…て言ってもうちは貧乏で家族も多いからさ。せめて良い大学に行ってVIP推薦でも取らなきゃ親孝行にならないだろ」
「……強いですね、一関君は」
私の言葉に「そんなことない」と照れ臭そうに彼は眼鏡を少しだけ上げた。
奥にある扉を開くとそこには焼却炉があり手元にはそれを操作するためのスイッチがある。
不意に一関君が後ろから声を掛けた。
「ここの焼却炉と隣にあるランドリーは午後の十時から午前七時半までは閉鎖しているらしい。最初にモノクマが言っていた」
「そうですか……」
無駄に働き者ですね、あの白黒熊……。
そんなことを毒づきながらも私は焼却室の扉を閉めた。
ランドリーには十六台の洗濯機があり一関君の言葉を信じるならダストルームと同じように閉鎖時間があるのだろう。
ざっと辺りを見渡して、その場を後にしてもう一つの扉を開けると、棚に多くの段ボールやらが積まれており内部には洗浄さんと一条君がいた。
「よい…しょ、とぉ」
「おい、足元気をつけろ!怪我したら危ねぇだろうがっ!」
覚束ない足取りの彼女に対して怒鳴りながらも彼女の身を案じる彼の元に近づき声を掛ける。
服装は白衣で全身を隠すように覆っており本人には失礼かもしれないが彼の神経質そうな顔立ちと見事にマッチしている。
「清浄さん、一条君」
「あっ?何だ、てめぇか。何か進展あったのか?」
私は黙って首を横に振る。
それに対して一条君は苛立たしげに頭を掻きむしると深いため息を吐いた。
「くそっ、何だって俺がこんな面倒なことに巻き込まれきゃいけねぇんだ」
「…何だか意外ですね、てっきりあなたは独断行動を取ると思っていましたが」
「こちとら心理学者だ。人間は誰かと繋がらなきゃ生きていけない生物だってのは重々承知しているし、協調性はバクテリア並にあるつもりだよ」
【超高校級の心理学者 一条 心 KOKORO ICHIJOU】
一条君はそれだけを言うと、さっさと調査に戻ってしまった。
悪い奴ではないのだろうが口の悪さが若干のマイナスポイントになっているなと感じながらも、疲れた様子で息を吐く清浄さんの服装は……。
「イメクラ?」
「はぅ///」
思わず口にしてしまったセクハラ紛いの言葉に顔を赤くした清浄さんは白いナース服を隠すように両手で塞ぐ。
今までインパクトのある人たちの服を見てきたので驚くことはなかったが、彼女の服装は父親が部下たちと飲みに行く店にいるようなミニスカナース服であり綺麗な黒髪と儚げな風貌も相まって非常に繊細だ。
上には防寒用なのか薄いピンク色のカーディガンを羽織っており最初に聞いた肩書きとはマッチしていないように見える。
「滅菌スタッフってこのような格好をするのですか?」
「えとっ、バイト先の病院では確かに看護服は着ますけど…こんな恥ずかしい服じゃありませぇん」
【超高校級の滅菌スタッフ 清浄 和泉 IZUMI SEIJOU】
そう口にすると彼女は恥ずかしそうに両腕で自分の肩を抱く…何だかまるで私がセクハラおやじみたいじゃないか。
「イメクラって言えば、誰だって警戒するだろうが。アホかてめぇは」
呆れたようにツッコミを入れたのは棚にある段ボール箱や道具を漁っている一条君だ。
顔に出ていたのかと警戒しながらも、話題を変えるため彼女の肩書きについて質問する。
「滅菌スタッフって何をするのですか?」
「はい、基本的には医療で使われているコッヘルやペアン、
聞いたことのない医療器具の単語が出てきたことで少し混乱したがどうやら器具の洗浄が主な内容らしい。
「私たちがきちんと洗浄したおかげで、多くの患者さんに安全を提供する…とてもやりがいのある仕事ですぅ」
そう言葉にする彼女の笑顔はとても輝いていた。
一時間ほどかけて船内を見て回った後、私たちはレストランに集まっていた。
テーブルには全員分の飲み物が入ったカップが置かれており、綾崎君が淹れたお茶を麻衣華さんが渡してくれた。
「さて、報告会を始めるぞ。まずは…」
こうして、一関君が議長を務める報告会が開始したが分かったことは船内の簡単な構造ぐらいであり使えないエレベーターと立ち入り禁止の扉のことを私は報告する。
松成君の記憶に関しては、とりあえず全員が信用することにし一先ずは先延ばしにすることにした。
本人も「まずは脱出することが優先」と言ってくれたため、報告会は再び進行する。
「放送室だけど、機材に関するマニュアルがあったよ。下手くそな表紙だったけど分かりやすく書いてあった」
「シアタールームの映写室にも似たような奴を見つけたよ。多分、誰でも映画が観れるようになるんじゃないかな?」
「映画…?」
エミリさんと松成君の報告に本庄君は僅かに目を輝かせて反応したが特に何も言わずに報告を聞くことに専念する。
その後は順番に報告を上げて行き、さしたる成果もなく報告会が終わった。
頭を悩ませる一関君を余所に、松成君がゆっくりと挙手をする。
「いや、こんな時に言うのも何だけどさ。ここには大浴場があったけど、更衣室が一つしかなかったんだけど……」
そこからはやや気まずそうに語尾を小さくしていく。
恐らく話していて恥ずかしくなってきたのだろう、しかし…脱出に繋がる糸口がなかった以上大浴場はぜひとも入ってみたい。
そこで、勢いよく手を挙げたのは坂本君だ。
「よしっ!ここは互いの親睦を深めるべく混浴にしよ…」
「「アホかっ!!」」
アホな発言をした彼に私と一条君のツッコミが彼の頭部をすぱーんとはたく。
しかし、それに対して賛同したのは意外なことに一関君だ。
「ふむ…確かに俺たちは出会って日が浅い。混浴も致し方なし…」
「じゃねぇよっ!?てめぇもアホかっ!むっつりかと思ったらオープンじゃねぇかっ!!」
「ふっ、誤解されがちだが俺はそう堅物じゃないさ。法律に反しない限り、男女交際は積極的に行うべきだ。人間は動物なんだから、仕方ないだろう」
ドヤ顔で眼鏡を光らせる彼に一条君は青筋を立たせており、今にも激怒寸前だ。
そこで、まさかの女子が援護射撃を始めたのだ。
「私は構わないよー?小っちゃいころは村のみんなとお風呂入ったことあるしー」
「今は高校生でしょうが!!てか、あなたは一番混浴しちゃ駄目でしょう!常識的に考えてっ!!」
天然発言をする細井さんに対して私がツッコミを入れる中、舞耶さんが綾崎君に悪戯気のある微笑みを見せる。
「良いじゃありませんか、綾崎君。一緒に入りませんか?入りましょうとも!」
「困るよっ!何で僕限定っ!?」
「好きだからですよ?」
「軽いっ!?こんな軽い「好きだ」って言葉初めて聞いたよ!!?」
綾崎君が拒否する中、何時の間にか男女混合で『混浴賛成派』と『反対派』の派閥が出来上がっておりこのまま論争に突入するかと思われたが…。
『不順異性交遊はいけませえええええええええええええええええんっっっ!!!』
突如現れたモノクマによって終結へと導かれた。
『オマエラ、恋愛はOKだけど混浴だなんて不純なことは許さないよ!ラブリーなお父ちゃんはそんなもの認めませんっ!!』
そう全員に説教すると、モノクマは何時の間にか用意されていた大き目のホワイトボードを用意した。
『ほらっ、これを貸してあげるから!これに入浴中とか書けば大丈夫だろっ!!』
「ありがとうございました。モノクマ」
『まったく、清く正しい生活をするんだよ…じゃ、なーーーーーーーーいっっ!!!』
私の感謝の言葉にモノクマは立ち去ろうとしたが、ウザったい言葉と共にムーンウォーク擬きをしながら戻ってくる。
一体、何の用だ……。
「何の用ですか?私のスリーサイズを教えろと言っても教えませんよ」
『別に良いよ、知ってるし。それよりもオマエラ!こんなくだらないことで揉めてるのっ!せっかくオマエラのためにおもてなしをしているのに…だからボクは怒りました。クマの顔も二・三度までだよっ!』
「何で曖昧にしたんですか」とツッコミたかったが話が進まなくなるためここはあえて沈黙を通す。
そして、モノクマは意味深な笑いと共に話しかけた。
『そこで、オマエラのためにとっておきの写真を用意しました。パーティーホールに直行してくださーいっ!そこにオマエラの知りたい情報もあるからさ……ほらほら、四十秒で支度しなっ!!』
そう言ってモノクマが姿を消すと、私たちは困惑しながらもどうすることも出来ずパーティーホールへと移動した。
『うぷぷ、オマエラ…ちゃんと来たんだね。感心感心…』
「ごたくは良いわ、アタシたちに何を見せたいのか。あるならさっさと見せなさい」
『その強気な態度が何処まで貫けるかな…それでは、これより「超高校級の写真家」が撮影した、とっておきのマル秘写真を素敵なナレーションと共にお送りしまーすっ!よーく見てなっ!!』
最初の時と同じように、周囲が暗くなったと同時に下りてきたスクリーンが3カウントの後に映し出された。
『未来への希望を担う高校生「超高校級」の才能の持ち主たちは、世界の中心である希望ヶ峰学園に通っています』
テレビで観たことのある人物たちの写真が映し出される。
その後はしばらく素人目でも分かる写真と共に淡々とナレーションが流れるが、次の写真に思わず息をのんだ。
『しかし、世界の中心は一瞬にして破壊されてしまいました』
赤黒い空と共に壊れた建物と倒れた人々の写真へと変わり、その後も次々と写真が変わっていく。
『つまり……世界は簡単に崩壊してしまいました』
白と黒のクマのマスクを被った男たちが鉄パイプを持って車を破壊し、人々を襲う写真。
『まるでプチプチを潰すように、簡単にあっけなく崩壊してしまいました』
巨大なモノクマがパンチをしている写真。
『そして人々は絶望によって心を入れ替え…』
大量のモノクマが多くの大人たちを鋭い爪で襲っている写真。
『世界は絶望に満ちた世界へと生まれ変わったのでした』
最後に写った王様のモノクマとモノクマのマスクを被った子どもたちが怯えている写真と共にナレーションが締め括られた。
…何だこれは。今のが外の世界、嘘だ。
だって、あんなの…あんな写真、どう考えたって…!!
『お分かりかな?オマエラが出たくて出たくてしょうがない、愛しい外の世界はあーんな滅茶苦茶なんだよ?」
誰もが何も言えず、モノクマの耳障りな言葉を右耳から左耳へと流してしまっている。
今聞こえている粘着質な声が不安感を煽る。
『お友達はどうなっちゃったのかな?家は?家族は財産や職場は?心配じゃないのかなぁ?』
場違いな能天気さが、狂気が私の鼓動を速くさせる。
何が、何が言いたいのか。
『答えは簡単っ!誰かをさくっと殺して学級裁判で勝てばよいのです!!』
「……ふざけないでください」
「ボクは何時だってマジだよ?だって、オマエラの希望が絶望に変わる瞬間が…最高に面白いんだから」
赤い瞳を輝かせながら「うぷぷ」と笑う奴を見た途端、私の頭は真っ白になっていた。
しかし、それが誰かによって阻まれた。
荒い呼吸を繰り返すと、目の前には黒いスーツ…松成君が私を止めるように受け止めていた。
「松、成君…」
「落ち着いて、貝原さん。もし感情のまま動いたら…」
「うぷぷぷぷぷぷぷぷ」
そんな私たちを嘲笑うようにモノクマは気味の悪い笑い声を漏らす。
「良い判断だよ松成クン。もしオマエラがこの唯一無二のマスコットであるボクのキャワイイお顔を叩いたりした場合!」
モノクマの身体から何かの点滅音が聞こえる。
それに気づいた桐生君は「伏せろっ!」と声を荒げるや否や私の身体は松成君に押し倒されるように床に倒れる。
少しだけ映った視界には本庄君が縮こまるように、麻衣華さんは床に伏せるように…全員が全員耳と目を塞いでいたであろう。
そして、点滅音が速くなりそして…。
モノクマは爆発した。
炎と光を、激しい爆風を撒き散らしながら。
床を黒く焦がし、近くにあったステージの教壇とテーブルクロスを吹き飛ばしながら……。
作り物でも何でもない、正真正銘本物の爆発にその場にいた全員が、男女構わず悲鳴を上げた。
焦げ臭い匂いが充満する空間と目の前の光景に、私たちは固まったまま唖然としている。
『いやー、ナイスリアクションッ!!』
新たに登場した教壇が、モノクマと共に何処からともなく降ってくると、呆気に取られている私たちを見て腹を抱えながら大笑いをする。
『三流芸人よりも良いリアクションだったよっ!ボクもスペアを一つ犠牲にしてまでやった甲斐があったよ!…もう一度説明してあげる、ボクはここの船長でありオマエラの学園長。ここにいる間は、ボクの作ったルールこそが正義…逆らうことは絶対に無理なんだよ。うぷ、うぷぷぷ…アァーッハッハッハッハッ!!!』
その高笑いは私の鼓膜の中で響き渡っていた。
ここは、もう…私たちの常識が通じる空間じゃないのだと。
自分たちはもう奴が行うゲームの駒に過ぎないのだと。
既に理解してしまっていた。
奴からは、決して逃げられないのだと……。
動機まで書こうとしたら結構長くなってしまった感じがしますが…まぁ仕方ありませんね。うん(目逸らし)
モノクマのキャラが未だに掴めません。1・2・V3と3のダンロンシリーズを参考にしているのですが難しいものです。
ではでは。ノシ