ダンガンロンパ・H&D ~絶望だよ、全員集合!~   作:名もなきA・弐

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 第一章の探索編の前編です。
 ここから永久や生徒たちの詳しい描写を行います。どんなみなさんが好きになってくれるキャラがいることを祈ります。
 それでは、どうぞ。


CHPATER1 才能はかく語りき
(非)日常編 「探索と超高校級の生徒」


【モノクマ先生の特別授業】

えー、オマエラ。『才能』とは「ある個人の素質や訓練によって発揮される、物事を成し遂げる力」のことを言います。

これがある方は人から望まれたり妬まれたり一躍トップスターになることが可能となりますが同時に溺れて堕落する原因にもなります。

オマエラも、用法用量を守って正しくご利用ください。

 

 

 

 

 

しばらく笑っていたモノクマはやがてあの不愉快な笑い声を止めると私たちを黒い瞳と赤い瞳で睨みつける。

 

『おやおやぁ、何だいオマエラは。そんなしょぼい学生服なんか着ちゃって』

「仕方ないだろ、俺たちは学生なんだ」

「それにこれしか着ている服はありませんしね」

 

その言葉に一関君は憮然と、姉の方の神楽阪さんは「やらやれ」と言いたげに肩をすくめる。

しかし、それに応えたのはモノクマだ。

 

『その心配はナッシングだよ!オマエラの客室に、生活の必需品と相応しいお洋服を用意したからね。サイズも服装もぴったりの奴を準備したから、例え塗り壁みたいな方でも全然大丈夫だから!』

「今何て言ったこら」

『では、ボクはこれでっ!しゅわっち!!』

 

私の言葉を無視してモノクマ(くそぐるみ)はそのまま姿を消してしまった。

全員がどうするべきかと悩んでいる中、第一声を発したのは一関君だった。

 

「とりあえず、気持ちを落ち着けるためにも一端部屋に各自戻ろう。奴の言っていた必需品とやらも気になるしな、確かレストランもあったし落ち着いたらそこに集合しよう」

「そうだねー。このままじゃどうにもならないしねー」

「だな。あんな胸糞野郎がいた場所なんてこっちから願い下げだ」

 

彼の言葉に細井さんと、意外にも一条君が賛同しパーティーホールから出て行くと残りのメンバーもそれに頷き一人また一人と各自個室へと戻って行った。

そして私も、通路からこれからのことを考えていた。

こんな非日常な空間から、みんなで生き残る方法を……。

 

 

 

 

 

通路を渡り、所謂プライベートスペースに到着すると自分を模したドット絵と名前が書かれている扉を見つける…気付かなかったが妙に手が込んでいる。

ドアの取っ手を握って引くと最初の時と同じスイートクラスの室内が私を出迎えた。

正面から見て左側には人目で分かる高級な白いベッドに近くにある机の上にはタイプライターのような物が置いてあり、窓側にはミニテーブルと椅子が備わっている清潔感のある部屋だ。

ベッドの上には綺麗に畳まれた緑色の服と片手に収まるほどの黒い端末が置いてあり、それを手に取りながら自分のことを振り返ってみる。

……物心がついた時、育ての親は父親だけだった。

母は私を産んだ後に亡くなり、そこからは男手一つで父親が育ててくれたのだ。

父の仕事は、探偵だった。

元々刑事でもあった父は現役時代に培ったキャリアとコネを活かし探偵事務所を設立し、デスクワークが苦手な父のために私も手伝いをするようになった。

すると、何時の間にか事務所の人たちよりも事件の書類整理や報告書作成などの事務作業が速く出来るようになり、終いには事務所の経営すらも周囲から任せられるようになっていた。

そんなこともあって中学と入学した高校では生徒会の庶務委員として活動していたりもしている。

そんな私が……。

 

「超高校級の庶務委員、か」

【超高校級の庶務委員 貝原 永久 TOWA KAIBARA】

 

端末『電子生徒手帳』に浮かび上がった文字に自嘲気味に零すと、自室にあった服に着替えていた私は、右の壁際にあったクローゼットの姿見で自分の姿を確認する。

フード部分にペイントされたオレンジ色のマークが特徴的なパーカーと膝丈までの灰色のスカートは私の小柄な体型にぴったりと合っており少しくせっ毛のある茶色く長い後ろ髪を青いリボンで一本に纏める。

 

「……地味ですね」

 

一般の高校生から漫画やラノベに登場する味気ない庶務キャラにランクアップした自分の姿に、鏡に映る私の顔は増々仏頂面になる。

しかし、こうしているわけにもいかない。

私はクローゼットを閉じると、電子生徒手帳をパーカーのポケットに入れて探索を開始するべく客室から出た。

 

 

 

 

 

「あ、貝原さぁん」

 

私がレストランに到着するころには大半のメンバーが揃っており、椅子に座っていた清浄さんが手を振る。

衣装を変えた彼女に返しながら私も適当に座り、しばらくして着替えを終えた神楽坂姉妹と松成君、桐生君が来て席に座ったのを確認した一関君は眼鏡を軽く上げて話を切り出した。

 

「よし、じゃあ始めるぞ。しばらくは俺が仕切らせてもらうが何か異論がある場合は遠慮なく言ってくれ、可能な限り対処していく」

 

彼の言葉に私を含む全員が肯定すると、少し安堵した様子で話を続ける。

 

「あのぬいぐるみ…モノクマは俺たちを閉じ込めてコロシアイをさせるつもりらしい。だが、奴の言うことには信憑性がない。まずは俺たちだけでここの調査をしよう…ペアになるなり個人なり構わない……どうだ?」

 

期待の籠った眼差しに全員が無言で頷いたのを確認した一関君はやっと笑みを見せてから次の言葉を紡いだ。

 

「よし、探索開始だ!なるべく危ないことはするなよ」

 

 

 

 

最初にレストランを調査することにした。

パーティルームとは異なり、やや豪華な装飾で彩られておりほんの少しだけリッチな気分にさせる。

部屋の隅から隅まで調べて見るがこれといったものはなく、目ぼしい発見もない…すると、私の他にも調べていたそこにいた二人の男女が声を掛けてくる。

 

「貝原さん。どう、調査の様子は?」

「全然ですね、そちらは?」

「こっちも、自由度が高いんだか低いんだか分かんないよー」

 

白い兎を模したパーカーの上に黒い学生服を着た本庄君の言葉に返すと、デニムパンツに胸元部分を強調した水色のシャツを着た細井さんが困ったように話す。

…そう言えば。

 

「本庄君は確か、幸運?でしたっけ」

「う、うん。それが僕の才能、らしいんだ」

 

自身なさげにそう喋った彼は困ったように中性的な顔立ちを曇らせる。

 

【超高校級の幸運 本庄 因幡 INABA HONJOU】

「僕も聞いたことがあるんだけど、希望ヶ峰の制度で毎年ごとに抽選で選ばれた者が『超高校級の幸運』とされるんだって」

「運も実力の内ってことですか」

 

そう呟いた私は腕を組むが本庄君の自身なさげな表情は変わらない。

元々彼自身が小柄なのとふわふわした髪型、そして着ている服もあって非常に可愛らしい…高校生と言われても大半の人は信用出来ないだろう。

 

「でも、僕はあんまり運が良いとは思えないんだ。こないだだって帰りのバスに乗った時にバスジャックに巻き込まれたんだ」

「ええっ!?だ、大丈夫だったんですか!!」

「銃を突き付けられた瞬間、思わずしちゃったくしゃみに犯人が油断して…その隙に乗客の人全員が取り押さえたことでみんなが助かったんだ」

「ラッキーじゃないですか!」

 

その続きに思わずツッコミを入れてしまった。

本人は不運だと思っているが、犯罪に巻き込まれて…しかも乗客全員が無傷で済んだのは本当に幸運だと言わざるを得ないだろう。

しかし、それでも本庄君自身は解せないと言いたげな表情を浮かべている。

 

「そんなことないよ、もし本当に幸運だったらバスジャックなんて起きなかっただろうし怖い思いもしなかったと思う…僕は本当に不運だよ」

 

本庄君はそう独りごちるとそのまま黙ってしまった。

空気を変えようと隣にいた細井さんに話しかける。

 

「細井さんは、確か…」

「うん、グラビアアイドルをやってるよー」

【超高校級のグラビアアイドル 細井 麗 URARA HOSOI】

 

彼とは対照的に笑顔を見せた彼女は元気よく手を挙げた。

ショートにした黒髪と年相応の可愛らしい顔立ち、そしてすらりと伸びた身体は陶磁器のような白い肌と相まって非常に健康的だ。

……動く度に揺れる前の脂肪が自分のコンプレックスを刺激されるようで空しくなるのは内緒の話だが。

 

「自然の多い田舎で農業やりながら生活してたんだけどー、中学二年の時に地域のテレビ局のプロデューサーさんにスカウトされたんだー」

 

なるほど、あの健康的な身体の秘密は農作業で鍛えられた影響なのか……しかし、人を疑うことを知らなそうな性格をしているので自分の身体がある意味凶器であることに気づいていないのだろうか。

 

「嫌じゃないんですか?だって、その…自分の身体を全国に流されているんですよ?」

「それは恥ずかしいけどー、みんなが喜んで元気になってくれるならそれで良いかなーって思ってるから今は気にしないようにしてるよー」

 

のんびりとした言動の割には意外とタフな部分があるようだ。

そんな彼女に関心をしながら私は最後に聞きたいことを伝えるべく口を開いた。

 

「……どうやったら、そんなに大きくなれるんですか?」

「ふぇー?」

「貝原さん、目が怖いよ」

 

後ろで聞こえる本庄君の言葉を無視して私は細井さんに詰め寄った。

 

 

 

 

 

「やぁ、貝原さん」

「おやおやおやおや、これはご機嫌麗しゅうですね」

「使い方は知らないかもしれませんけどご機嫌麗しゅう」

 

レストランの奥にある厨房には灰色のブレザーの上にエプロンを身に着けた綾崎君と、青を基調とした白いエプロンドレスを纏った神楽阪さん(姉)とタイトスカートと黒いスーツ姿の妹さんがいた。

綾崎君は顔だけをこちらに向けて微笑み、神楽阪さんはスカートの裾を摘まんで頭を下げる。

妹さんの方もあざとさの残る動作で頭を下げる。

しかし、何と言うべきか……。

 

「似合ってますね、三人とも」

「そんな褒めないで下さいよ、褒めたところで威張ることしか出来ませんよ」

「私に至っては照れ隠しにマッスルバスターをするぐらいしか出来ませんよ」

 

満更でもないような笑顔で彼女たち双子はハイテンションに受け答えをする。

 

【超高校級のメイド 神楽阪 麻衣華 MAIKA KAGURAZAKA】

【超高校級の秘書  神楽坂 舞耶  MAIYA KAGURAZAKA】

「神楽阪さんたちは…」

「麻衣華で良いですよ。妹もいますし紛らわしいでしょう」

「私に至ってはマーちゃんでも可ですよっ!!」

「えと…ま、麻衣華さんと舞耶さんは、やっぱりメイドと秘書なんですか?」

 

放っておくとどんどん進んで行く彼女のトークに私はたじろぎながらも質問をすると麻衣華さんと舞耶さんは姿勢を正してから改めて姉の方が話を始める。

 

「答えはもちろん、イエスです。私と舞耶ちゃんは代々主に仕える家系の人間でして、とある財閥に仕えていたんですよ?」

「はぁ…」

 

楽しそうに語る彼女だが近い距離で話しかけてくるため私は相槌を打つことしか出来ないがそれでも話は舞耶さんへとバトンタッチして進んで行く。

 

「ですがそのご主人様がとんだかませ臭のする眼鏡でしてね?『使用人は道具だから黙って仕事しろ』だの『俺を誰だと思っている』だのうるさくてうるさくて…ですから姉さんと一緒に彼の名義を使って株取引したんですよ」

「それ、大丈夫だったのですか?」

 

「あの時の顔は面白かったなー」とへらへら笑いながら語る彼女と必死に笑いを堪えている麻衣華さんに一種の恐ろしさを感じるがそれでも話は止まらずに進む。

 

「まぁ、結果的に大勝ちしたのでご主人様のお父上…旦那様を上手いこと言いくるめて事なきを得ましたが最終的にお暇をいただいて二人揃ってフリーで活動することになったんです」

 

あまりにもスケールの違う話にどう答えて良いか迷う中、苦笑している綾崎君に今度は話を移す。

 

「綾崎君は家庭科部でしたっけ?」

「うん……とはいっても僕は彼女みたいに事情が違うけどね」

【超高校級の家庭科部 綾崎 隼人 HAYATO AYASAKI】

 

話し方は本庄君と似ているが温厚かつ落ち着いた物腰から爽やかさを感じる性格を感じさせる。

しかし、家庭科部か……一体どのような活動をしているのだろう。

私の問いに答えるように綾崎君は笑ってから話す。

 

「基本的には裁縫でぬいぐるみ作りや調理実習などの生活や文化に関わる活動を主にしているよ。まぁうちの高校だと女子力向上が目的になっているけどね」

「どうして家庭家部に?」

「特にないかなぁ。ただ運動部が好きじゃなかったから小学校、中学校の時は家でも出来る家庭科部を選んで、高校に入学した時も入部したことあるから選んだ感じかな」

 

「うーん」と腕を組んで答える…どうやら自分の肩書きに対してあまり自覚がないらしい。

そんなことを考えている間に彼は厨房にある食器を取り出す。

片手にあるスポンジから恐らく調査がてら洗浄をするつもりなのだろう、麻衣華さんは厨房にある壁掛け式のホワイトボードに献立をマーカーで書いている。

その近くでは舞耶さんが何処から取り出したか分からないメモ帳に何やらペンを走らせている。

ふと、奥にある貯蔵庫が気になり覗いてみると、そこには野菜やら大きい冷蔵庫がたくさん配置されており適当に野菜を手に取って調べて見ると綾崎君が声を掛けてきた。

 

「ここの食材は種類が豊富だけど品質自体は普通だよ、スーパーやデパートで買える程度の奴だから料理する時は工夫が必要かな」

「分かるんですか?」

 

「ちょっとだけね」と彼は再び笑みを見せてからまた厨房へと引っ込んでしまった。

家庭科部と言われているがもしかしたら『主夫』や『家政夫』の方が相応しいのかもしれない。

 

 

 

 

 

レストランを出てから何処に行くべきか考えていると大柄な男性のシルエット…坂本君を発見した。

彼の服装は茶色と白系統の衣装で統一されておりパイロットキャップと額に乗せたゴーグルと本人の屈強さから教科書で見た一昔前のパイロットを思わせる。

声を掛けようかとも思ったがただならぬ雰囲気だったので会釈だけして横に過ぎようとしたが彼の表情は増々険しくなっていきそして……。

 

「うぷっ、おぇ……!!」

「ち、ちょっと待ってくださいっ!!」

 

口元に手を当てて身を屈め始めたので「やばい」と感じた私は制止させようとしたが電子生徒手帳よりも小さい長方形の箱をポケットから取り出してそこに入ってある白い物体を口に放り込んだ。

しばらくすると、彼の顔色は戻りゆっくり伸びをして私の方向を振り向く。

 

「はぁー……おっ、貝原じゃねぇか。どした?」

「今気づいたんですか?」

 

明るい顔で話しかけてくる彼とは対照的に私の顔は呆れていただろう。

そして、先ほど口に入れた物体について言及する。

 

「さっきのは…もしかして酔い止めですか?」

「いんや、これはただのタブレット菓子。昔薬の飲み過ぎで体調を崩しちまってな、その代わりにこれを食ってんだ」

 

そう言って、彼はタブレット菓子を見せる。

怪しげな薬ではないことに安堵したが……。

 

「やっぱり、乗り物は駄目なんですね」

「まぁなー。何でよりにもよってパイロットなのだか」

 

心底困ったように彼は頭を抱えた。

 

【超高校級のパイロット 阪本 隆馬 RYUMA SAKAMOTO】

「元々俺は親の都合で航空の高等学校に入学したんだけどさぁ、本当は航空機の電子機器や設備…まぁ航空工学だな……それを勉強するつもりだったのに間違って航空科を選んじまって、そしたら……」

「パイロットとしてとんでもない才能を持っていたと……」

「先生や生徒たちから拍手喝采の嵐だったよ。たくよー、本来なら喜ぶ場面なのにあん時は乗り物酔いのせいで全然嬉しくなかったぜ」

 

困ったように笑う彼に私は苦笑いするしかなかった。

乗り物が苦手な人物がパイロットの才能を持っていたら、世のパイロットたちはどんな表情をするのだろう。

ふと、彼のいる方向を見るとビニールのようなものが貼られておりガードしているようにも見える。

 

「あれは?」

「一回だけ間に合わなくてリバースした跡だよ、モノクマに滅茶苦茶怒られちまった」

「何してるんですかあなたはっ!?てか、何もされなかったのですか!?」

「『今回だけだよ!』と言われたきり何も…後、『電子生徒手帳は良く見とけ』って」

 

その言葉に私はポケットから電子生徒手帳を取り出すと、様々な文字が色ごとに区別されたメニュー画面が開かれて順々に調べて見る。

見ると、メニューの中に、「通信簿」の文字があり、それをタッチすると、画面はドット絵にデフォルメされた人物たちの顔グラフィックと名前の表示に切り替わった。

そして、最後に表示されている『記念旅行の心得』をタップする。

 

 

1、乗船した生徒たちはきちんと共同生活を行いましょう。なお、『共同生活の期限はありません』。

 

2、夜十時から朝七時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

 

3、就寝はプライベートペースに設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

 

4、この世界について調べるのは『自由』です。特に行動の制限は課せられません。

 

5、学園長兼船長であるモノクマへの暴力を禁じます。また、モニター及び設備の破壊を禁じます。ゲロに至っては言語道断です←NEW!!

 

6、生徒同士で殺人が起きた場合は、その一定時間後に『学級裁判』が行われます。

 

7、学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、『クロだけが処刑』されます。

 

8、学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合、残りの生徒は『全員処刑』されます。

 

9、生き残ったクロは特別措置として罪が免除され、『ナーサリーライム号からの脱出』が許可されます。

 

10、三人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる『死体発見アナウンス』が流れます。

 

※なお、この心得は当客船の規則でもありますので順次増えていく場合があります。

 

 

「坂本君の件、根に持たれてますよ」

「生理現象だ。諦めてもらうことは出来ないかねぇ」

 

開き直ったように話す彼だったが流石の私も閉じ込めた元凶であるモノクマに同情するしか出来なかった。

しばらく彼と話してから何処に向かおうかと手に持ったままの電子生徒手帳を再度起動しようとした時……。

 

『いやっほーーーーーーーーーーーっっっ!!!みんな聞こえるーーーーーーっっ!!』

「「っ!!?」」

 

突如聞こえたモノクマとは違う声に私と坂本君は目を見開き、上にあるスピーカー部分に注目する。

しかし、この声は何処かで……?

 

『うんうん…放送機材に異常はないみたいだね。けど客船に放送室ってあるのかなー?でも現にぼくが使ってるし…えーっとこっちは…』

「エミリか?今の声」

 

呆気に取られている彼に私は呆然とした様子で頷きながらも電子生徒手帳で放送室の場所を確認してからその場所へと向かい、坂本君も後に続くようについてきた。

しばらく歩いて放送室の扉の前で足を止め、ドアを思い切り開けた。

 

「おっ、トワリンとサカモンじゃん。どったのー?」

「いやっ、放送が聞こえたもので」

「やっぱり聞こえてたかー……ここは放送室、つまりぼくの城ってことだね」

 

私たちに気にすることなく、ピンクと黄色といった独特なカラーリングの軍服に銀色のイヤホンマイクを身に着けたエミリさんは美しい白髪を靡かせながら椅子を回転させてドヤ顔を見せた。

 

【超高校級の通信兵 エミリ・パラボナライズ・アヴェーン EMIRI PARABONALISE AVEN】

「通信兵って…何処かの軍に所属しているんですか?」

「そうじゃなくてさ、こういった通信機器や放送機材を上手に使えるから警察のお手伝いしたことがあるんだ。多分そこからついたんじゃない?」

 

あまり自分の肩書きを気にせずに話す彼女は麻衣華さんと通じる物を感じる…もしかしたら波長が合うかもしれない。

そんなことを考えていると、坂本君が口を開いた。

 

「エミリって日本語上手だよな。日本育ちって聞いたけど」

「ママとパパがぼくを育てるためにお祖父ちゃんのいる日本に来たんだってさ。でも一応英語とロシア語は話せるけど…二人とも外国語は?」

 

私たちは揃って首を横に振る。

勉強の英語ならともかくネイティブな言語…ロシア語すらも無理だ。

同じリアクションを見せる私たちにエミリさんは楽しそうに笑った。

 

「ここにいる人たちは面白いなー!ぼくはもう少しここを調べておくよ」

「分かりました、それと……トワリンとかサカモンって何ですか?」

「渾名だよ?」

 

どうやら彼女のセンスは今着ている衣装のように独特らしい。




 特に語ることはありません。あまり多く語ると口が滑りそうで…自分でマップを作りながら四苦八苦しています。
 ではでは。ノシ

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