レーヴユナイティア 記憶を無くした戦士達   作:蹴急

8 / 10
遅くなってすいません。


大切な仲間

 

「カァーーカッカッカッカッァ!!ワシ、大・勝・利!!」

 

高らかな笑いと共に勝者であることを宣言する太公望に周りは唖然とした目で見ていた。

 

「太公望!お前一体何したんだ!?」

「ニョホホホホ。 あれはわしのマル秘道具の一つじゃよ」

 

メランコリウムでの戦闘を終え、ナハトがヴールに取り憑かれていた三人を浄化する傍で驚いた様子のキリトからの追求をいつもの飄々とした様子で対応する。

 

「……マル秘道具?」

「もしかして、他にもあるの!?」

 

 

太公望の言葉に反応したのはイヴだ、横にいるユウキは面白いオモチャを見つけた子供のような目で太公望を見つめている。

 

「うむ、記憶が無くて知らなかったのだが、わしの左腕は義手のようでな、こうすると……」

 

と、言って左手の小指を弄ると勢いよく水が飛び出た。しかしその先にはオレンジ色の髪をした仏頂面がいたのだが……

 

 

「こうなるのだ。……どうだ、凄いだろう?」

「ああ、スゲェな……じゃねぇよ!?なんで俺に当ててんだよ!?」

「すまぬ、どうも威力の調整が上手くいかなくてのぉ」

 

再度義手である左手を弄りながら謝り、一護はどこから取り出したのかわからないハンカチで濡れた顔を拭う。

 

「……ったく、まぁ今回は許してグハァ!」

「あっ…………」

「一護ッ!?」

 

再び太公望の左腕が飛び出した、紫の麗人を気絶させたロケットパンチだ。義手が勝手飛んでいった事に太公望は呆然とし、キリトが慌てて一護に駆け寄り宥めているところで、倒れていた三人の浄化が終わったナハトが声をかけた。

 

「皆さん、こちらの『目覚めの人』の浄化が終わりました」

「ナハトお疲れ様!」

 

力を使い疲労し小さくなったナハトにユウキが労う。と言っても抱きかかえ頭を撫でているだけだが。浄化の終えた三人が皆、頭を抑えながら起き上がった。

 

「うっ……」

「こ、こは……」

「あ、頭が痛ぇ」

「気づいたようじゃな」

 

三人が起きた事を確認した太公望が声をかける。

 

「起きていきなりで申し訳ないんじゃが、お主らの名前を聞かせてもらえんかのう?」

「一体何が起きたのか思い出せませんが……わたしはバゼット・フラガ・マクレミッツと言います」

 

始めに名乗ったのは先の戦闘で一番苦戦した紫の麗人だ。バゼットは特に戦闘で怪我をした訳でもなかったので他の二人より回復が早いようだ。それから銀髪の少年と金髪のエルフ少女が続く。

 

「俺は獄寺隼人だ」

「わたしは桐ヶ谷直葉」

「ん?桐ヶ谷とな?」

 

直葉の名前に太公望が反応し、キリトをチラリと伺う。

 

「もしやキリトと関係あるのではないか?」

「確かに……でも流石に記憶が無いからわからないな、それに髪の色とか違うとこが多すぎる」

「んー、まぁそうだのぅ」

 

二人は髪の色から耳や目の色など見るからに容姿が違いすぎる。それでも太公望は納得いっていない、だがこれ以上詮索しても意味もない為に下がる。

 

「二人ともどこか痛かったり怪我をしてねぇか?」

 

一応、ナハトが浄化の際に簡単に治癒もしているが一護が確認を取る。獄寺と直葉は怪我の有無を探す為に自分の体を診て応える。

 

「頭がまだ少し痛ぇがそれ以外なら問題ねぇ」

「私もちょっと頭痛がするぐらいで他は何ともないよ」

「頭痛か……」

「おそらく、ラーフの影響でしょう」

 

頭痛と言われどうしたものかと悩む一護。

それを見て、ユウキの腕に抱かれているナハトが声を出した。ルフレス族の姿であるナハトが喋った事に、獄寺とリーファが驚いた様子で叫ぶ。

 

「しゃ、喋ったー!?」

「UMAか!?世紀の大発見だ!」

「え、えっと……」

 

急にテンションの上がる二人にナハトは頬を引きつらせるが太公望と一護が二人を宥め落ち着かせる。そこからバゼットと獄寺、リーファにナハトがこの世界について説明をし、各々が自己紹介をした。

 

「それでナハトさっきのラーフの影響っていうのはどういう意味だ?」

 

少し脱線したのをキリトが戻し、ナハトも思い出したように応える。

 

「ここメランコリウムではラーフを封印していることは先ほども言いましたよね」

 

その言葉に全員が頷き、ナハトの言葉を待つ。

 

「バゼットさん達が落ちたのは恐らくラーフの結界の中だったのではないかと思います。そのせいでラーフの影響を強く受け、普段より強くヴールに取り憑かれたのだと思います」

「なるほどのぅ」

「ラーフの封印に直接落ちなかっただけマシだったのか」

「ええ、ラーフ本体と衝突していれば気を失うどころか取り込まれラーフの一部になっていたかもしれません」

 

ナハトは結界と衝突した事により綻びが出来、ヴールを呼んだのだろうと続ける。ヴールの気が強かったのもラーフの気が漏れ出たせいだ。

 

「……私達は運が良かったということでしょうか?」

「そういうことだな」

 

バゼットのつぶやきにキリトが楽観的に返す。

 

「結界は修復され、ヴールの気も一掃されたのでしばらく大丈夫でしょう」

「しばらくってことは、またすぐに崩壊するってぇことか?」

 

今まで沈黙を貫いていたガジルが口を開いた。

 

「ええ、ラーフの力が増していて結界も不安定になる一方です。これではここから長く離れるのがより困難になりました」

「他のルフレス族の街に行くことが出来ないってぇことか」

『………………』

 

一護の言葉で場に沈黙が訪れる、しかしそれを獄寺が破った。

 

「厄介な事になっているみてぇだな」

「ああ、厄介な事だけど何とかしないと俺たちの世界も危ない状況になる、それに帰ることも出来ないらしいぜ」

 

苦笑いを浮かべるキリトに直葉が返す。

 

「で、でもこれだけ『目覚めの人』?がいれば何とかなるんじゃない?」

「うん!僕たちならラーフだって倒せるよ!」

 

直葉の言葉にユウキが乗る。しかし、ナハトの顔には陰りがみえる。

 

「ラーフを滅ぼす事はルフレス族の悲願です。ですが、実際私達はラーフを封印することすら覚束ない」

「それは……そうかもだけど…………」

 

場の空気を良くしようとした直葉だが、ナハトの言葉に気を落とす。それを見てナハトは慌ててフォローを入れた。

 

「今、他のルフレス族の街に行くことは出来ませんがこの一帯を浄化したお陰でメランコリウムは落ち着いています。眠ってはいますが他の夢守もいるので当分は大丈夫です。ここでしばらく休んでください」

「本当か?」

 

休息を取れると聞いてキリトが確認を取る。

 

「ええ、私がいなくてもここならヴールに取り憑かれて正気を失うことはありません」

「なら、早速休ませてもらおうかのぅ」

 

太公望が自堕落モードに入ろうとし、他もさっきまでずっと気を張っていたからか疲れを取るため腰を下ろす。すると、ナハトが太公望達から離れようとした。それを視界の端で捉えていたイヴが呼びかける。

 

「ナハト、どこに行くの?」

「……私は少し調べ物をしようと」

「調べ物、ですか?」

 

みんなが気を緩める中、一人気を張り続けていたバゼットが問う。

 

「ラーフを倒す、レーヴァリアから消滅させる方法についてです」

「そんなことが出来るのか!?」

 

今度は一護が食いつく。大きな声でメランコリウムに響いた為、他も自然とナハトに視線が向く。

 

「私が以前、夢紬になる方法について知った遺跡にその様な伝承があったはずです」

「ですが、現に今は封印されています。失敗したのでは?」

「そうかもしれません。……封印のことかもしれない、それでも今は少しでも情報が欲しい」

「それでも今すぐに行かなくても!戦ったばっかだし、ナハトも私たちと少しは休も?」

 

直葉がナハトに休憩するよう促す。だがナハトは首を縦には振らない。

 

「そういうわけには行きません。これは僕が果たさなければいけない務めですから」

 

辛そうな表情ながらもナハトの目には務めを果たそうという意思が感じられる。

一人で行こうとするナハト、しかしそれをキリトが呼び止める。

 

「待ってくれテルン。俺も付いて行ってもいいか?」

「キリトさん……いえこれは僕の使命、果たさなければならない義務ですので、貴方たちはここで休んでーー」

「使命とか義務とか、ナハトお前そればっかだな。くだらねぇ……」

 

ナハトの言葉を遮って一護が声を荒げる。くだらないと言われた事に腹が立ったのかナハトの顔には怒りが灯った。

 

「くだらなくなどない!」

「いーや、くだらねぇな。務めとかご大層な事ばっか言って……そろそろ構えるのはやめやがれ」

「!? ……それはどういう?」

「ナハト、一護は自分も力を貸す、と言っておるのだ」

 

太公望に心内を指摘され、一護は照れ臭そう頬をかく。それを見たユウキが弄る。

 

「一護照れてるぅ〜」

「うっせぇ!……まぁ、そういうこった」

「ナハト、付いて行ってもいいか?というより付いていくからな!」

「一護さん、キリトさん……」

「僕も行くー!」

「私も付いていく」

 

ユウキとイヴが笑顔を浮かべ、ナハトに宣言する。

 

「助けてもらったもん私も手伝いたい!」

「放っておけねぇしな」

「この世界が私達の世界にも繋がっているというのならば私も無視出来ません」

 

リーファ、獄寺、バゼットが続いていく。

 

「みんな行くようじゃのう……ガジル?」

「ギヒッ、俺も行くに決まってるだろ!」

 

太公望がガジルに促すがガジルはそれに不敵に笑って返す。全員が付いていく意思を見せた事でナハトは瞳を潤して頭を下げる。

 

「みなさん……申し訳ない」

「だから!そういうのがいらねぇって言ってんだよ!」

「そうだぜナハト、俺たち仲間だろ?」

「仲間……ですか。何故でしょう、仲間と言われると心が温かくなるように感じる」

 

胸に手を当てて、重い責任などで暗くなっていた心に光が射し込んだような気持ちになっていくのを感じていた。

キリトがナハトを見つめ言った。

 

「仲間なんだから謝るんじゃなくて、もっといい言葉があるだろ?」

 

「ええ……みなさん、ありがとう」

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

8月と9月が思っていた以上に予定が入り書く余裕が無いので、しばらく休載して10月から再開したいと思います。

一応次回予告としまして、

「エクスプロージョン!!」


では、また次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。