レーヴユナイティア 記憶を無くした戦士達   作:蹴急

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天竜

 

士郎、シンク、テルンの三人はルフレスの街が見えてくるところまで来ていた。

 

「あれが、もしかしてテルンの街?」

「はい、ルフレス族の街です。ここからだと小さいですけど結構大きいですよ」

「へぇ、街にはテルンの仲間もいるんだよね。楽しみだなー」

「あ、えと、それは、いるにはいるんです、けど……」

 

最後の方がぼそぼそっとなり、聞き取りづらい。しかし、士郎が気にせずに別の質問を投げかけた

 

「なぁテルン」

「はははい!なんでしょう衛宮さん」

「士郎でいいぞ。まだこの世界が夢だって思えなくてさ、歩きながらでもいいから話してくれないか?この世界の現状とかをさ」

「は、はい分かったです。実は、レーヴァリアは今……」

「⁉︎テルン!危ない!」

 

話をするテルンに蜂型のヴールが襲いかかる。それに気づいた士郎はテルンを庇うように飛び出しヴールの攻撃を受けた。

 

「わ、わわぁぁあ⁉︎」

「士郎⁉︎」

「くっ……油断した」

 

右腕を撫り、怪我の具合を確認するが、痺れているような感覚があることに気づく。

 

「うっ……毒をくらったかもしれない」

「本当⁉︎ 早く治療しないと、でもかなりいるし、ここから逃げるのは難しいかな……」

「あ、あ、あ、ああ」

 

士郎がやられた事とヴールの多さに動揺するテルン。

 

「テルンは下がってて」

 

シンクがテルンに優しく促す。

 

「で、でも……」

 

戸惑い動くことができないテルンに士郎が、

 

「テルンは下がってろ!」

 

毒で足下がふらつきながらも声を張る。

 

「は、はい!すすすみません!」

 

下がるテルンだが周囲のヴールはテルンを狙うように動いた。

 

「テルンが狙われてる?」

「わわ!!」

 

ブォン。

 

突風が吹きテルンに襲いかかるヴールを消滅させた。

 

「風?一体何が?」

 

風の吹いた方を見ると長い青い髪の少女が立っていた。

 

「私も一緒に戦います!」

「女の子……?君は……?」

 

士郎が問いかけるも少女はヴールに向かいながら言った。

 

「話は後にして、まずはこの魔物を先に倒しましょう。……あっ、もしかして毒を受けてますか?先に治しますね」

 

こちらに走って向かってくる少女にシンクが、

 

「僕たち以外にも人が居たんだね。それに僕達よりだいぶ年下の女の子だなんて」

「傷口を見せてください」

 

少女は士郎の腕を見ると傷口に手をかざした。柔らかい光が傷口を覆うと士郎の顔色が戻っていく。

 

「治癒の魔法……?君はもしかして記憶があるのか?」

「え?もしかしてあなた達もなんですか?私、気が付いたらここに居て……」

 

士郎の発言に少女が驚く。このことで少女にも記憶がないことがわかり、話し込もうとする二人にシンクが割って入った。

 

「二人とも話は後にして!」

「あっ、すいません!」

「そうだな、君もあとは俺たちに任せて後ろに下がってて」

 

士郎の発言に一瞬だが少女は目を開く。

 

「え?私も戦いますよ?」

「君みたいな小さな子が戦うなんてダメだろう」

 

当然の事だろうといった顔の士郎に少女はふくれっ面を露わにする。

 

「そういうことですか……、いいです。勝手に戦います!」

「あっ⁉︎待つんだ!」

「天竜の翼撃!!」

 

少女は手に風を集めるとそれを解き放ちヴールを一掃した。

 

「なっ……⁉︎」

「……凄い」

 

二人は少女の力を見て絶句した。

 

「私も戦いますね!」

 

笑顔で告げる少女の言葉に士郎は引きつった顔で答えるしかなかった。

 

「わ、わかった。でも無茶はしないでくれよ」

「勿論です」

 

それから数分、少女の支援魔法などにもよりシンクと士郎は特に苦戦する事なくヴールを倒すことができた。

 

「助かったよ、凄いね、足が速くなったりするあれ!」

「いえ、私もここで初めて人に会えたんで張り切っちゃいました。えと、私はウェンディ・マーベルです」

「僕はシンク・イズミ。よろしくね。それでこっちが……」

「衛宮士郎だ、よろしくウェンディ」

 

戦闘が終わったのを確認し、茂みから顔を覗かせるテルン。

 

「え、えとえとテルンです。こ、こんにちは」

「こんにちは、テルン」

 

笑顔で迎えるウェンディに心を許したのかテルンはウェンディに抱きついた。

 

「わ、わわ」

「随分と懐かれたみたいだな」

「はい、でもこうやって抱きかかえるの、なんだが慣れてるような気がして……」

 

抱きかかえているテルンの頭を自然と撫でるウェンディ。

 

「もしかしたら、ウェンディにはそういった記憶があったのかも知れないね」

「はい。あっ、そういえばみなさんも記憶が無いんでしょうか?」

「そうだった。テルンにそれを聞こうと思ったら魔物が現れて」

 

シンクが思い出し、思わず声をあげるとテルンはたどたどしくありながらも口を開いた。

 

「あ、あれは魔物じゃないです。ヴールって言います」

 

 




読んで頂きありがとうございます。

次回は『死神代行と鉄竜』です。

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