仮面ライダーアマゾンズ -ϘuinϘuennium- 作:エクシ
放たれた弾丸を見切ってシェルカットグローブで弾くオメガとアルファ。
続いて赤松隊の隊員たちがサバイバルナイフでオメガに襲いかかる。アームカッターを大きくさせてサバイバルナイフを弾き、腹部にパンチを叩き込んだ。
一方のアルファも銃弾を浴びせられながら手刀で隊員たちの後頭部を攻撃する。どんどん倒れていく隊員の多さに動じることなく赤松は圧裂弾を装填し、アルファの方に銃口を向けた。
「…!仁さん!」
「…!」
オメガの声で圧裂弾の存在に気が付いたアルファはコンテナに飛び乗る。
「な…!」
「わりいな、コイツは没収だ。」
アルファは赤松の顔面に裏拳を叩き込み、圧裂弾を撃つ銃を足で踏んで壊した。溜息をつくと共に下からジャングレイダーが走り去っていく音が聞こえる。
オメガは冷気を放ちながら悠の姿に戻りこの場を去っていった。
「へ、俺を囮に使うとは…少しは成長してるじゃねえか。」
「鷹山ァ…!」
「お前が4Cの隊長か。ご心配なく。俺はアマゾンを狩るだけだ、一匹残らずな。」
アルファはそういうと隣のビルへと飛び移っていきその場から姿を消した。
カオリは家の外から物音がしたことに気が付き恐る恐るドアを開けた。そこには傷だらけのマモルに肩を貸すハチアマゾンが立っている。
「マモル!大丈夫!?」
ハチアマゾンは冷気を放ちつつ島田の姿に戻る。
「4Cにやられたの?」
「いや…実は…」
「島田くん!」
島田は天城のことをカオリにも伝えた方がいいと言ったが、マモルは傷だらけになった今でもそれをカオリに言わないよう島田に念を押していた。
「…4Cの奴らが多かったんだ。」
「そうなんだ…。仲間の中でも戦うのをやめた人もいるし…仲間が欲しいね。」
「うん…。」
それでも仲間が変わってしまったことは伝えなくてはならないと思う島田。しかし今はマモルの治療が最優先だ。島田はカオリに傷薬と冷蔵庫に入っているハンバーガーを持ってくるよう頼んだ。
カオリが部屋の奥へ行くのを見ると島田はマモルの耳元で天城のことを話す。
「天城…一体どうしたというんだ。覚醒していたわけじゃないだろ?」
「うん…もしかしたら4Cに何かされたのかも…ね。」
マモルの目は出会った時に比べて随分鋭くなったように思える。それは戦いの中に身を置く決意をした彼成りの覚悟の現れだったのかもしれないが島田にとってはどこか寂しくも感じだ。
夜まで研究に勤しんでいた始はやっと自分のマンションにたどり着いた。自転車を駐輪場に置き、鍵を探しながら歩いているとこの間大学で出会った青年が入口に立っていた。
「水澤くん!どうしたんだ、こんなところで。」
「先生、すいません。この時間ならご自宅にいらっしゃるかと思って。」
「いやそれは全然いいんだが。それよりその血…アマゾンか?怪我は?」
「大丈夫です。ほとんど返り血です。」
「そうか、とりあえず家に入りなさい。」
「いえ、娘さんもいらっしゃると思いますしここで失礼します。先生にお会いしにきたのはこれを調べてほしいんです。」
そういってアマゾンロウが捨てたアマゾンズインジェクターをポケットから取り出し初めに渡す悠。
「これは?中に少し液体が残ってるようだがこれを?」
「はい、僕の温厚だった仲間がアマゾンを喰らうコッパタイプになってしまったんです。恐らくその薬品がそうさせたんだと思います。」
「コッパタイプ…前まで鷹山くんもそうなっていたらしいね。彼の細胞も採取してあるから、それも含め見てみよう。」
「ありがとうございます。僕、こんな感じでいつ死ぬかわからないからすぐに先生に渡さないとって。」
「そんなことを言うなよ。君とはきちんとアマゾン細胞の研究をするって決めたじゃないか。」
「そうでしたね。すいません。じゃあ…失礼します。」
「あ、そうだ。鷹山くんの子供…生まれるのは12月になりそうだ。」
「…じゃあ僕はその間、仁さんを見張っています。」
悠は赤いメットを被り、ジャングレイダーで去っていった。夜は真夏の暑さを感じさせず心地が良い。もしこんな状況じゃなかったらもっと気持ちがよいツーリングが出来るのにと新たな命の誕生のことを聞き思う。悠はジャングレイダーのアクセルを回して山の方へと走っていった。
冬に入ると早朝の任務にはカイロが必須となる。きちんと腰と腹部にカイロをつけた三崎はサブマシンガンを手にボタンフックエントリーの態勢でアマゾンたちの隠れ家のドアに背中をつけていた。
「じゃあ行くぞ。」
-
「ハァァ!アマゾンッ!」
熱気による衝撃派によって隠れ家のドアを吹き飛ばす。コッパの合図と共に三崎と望が部屋の中へ入っていく。サブマシンガンとサバイバルナイフを構えた2人に襲い掛かるアマゾンたち。
「ノンちゃん!」
「わかってる!オラァ!」
望の蹴りがクモアマゾンの腹部に叩き込まれる。レガースから放たれる電撃がクモアマゾンの体を麻痺させる。
三崎はサブマシンガンによる連射攻撃をモズアマゾンに放ち、体の部位を吹き飛ばしていく。
コッパは2人の攻撃に怯んだアマゾンたちの頸動脈に両手を使ってアームカッターで切り裂く。奇声に近い叫び声をあげて2体のアマゾンは倒れた。
「ハカちゃん、終わったよ。」
「あぁ。」
コッパは倒れたアマゾンに飛びついて喰らい始める。その姿を見ないように三崎と望は家の外に出た。
「何度見てもありゃ慣れないなぁ…。」
「そんなことよりおかしくねえか?」
「え?」
「少なすぎだろ。アマゾンたちの隠れ家で一斉駆除って話だったのに2体しかいねえってどういうことだよ。」
「あ、確かに…。」
望がすぐにトランシーバーで令華にこの違和感を伝えた。通信をしている間に口にアマゾンの黒い血がべっとりとついた商が家から出てきた。三崎はすぐにハンカチを出して商に渡す。
「あーあーあー、これで拭きなさいよ。」
「…さんきゅ。」
「おい、お前ら。」
「あ、なんかわかった?」
「あぁ。この場所に行って話を聞けって。」
「話って…だれに?」
望は黙ったまま輸送用バンに乗り込む。三崎もやれやれと呟きながら運転席に乗り、商は渡されたハンカチで体についた返り血を拭きながら望が座る荷台に入り込んだ。
指定された場所にいたのは三崎と望がよく知る人物 福田だった。今シーズン最も寒い日と天気予報で言っていたが、福田はいつもと変わらぬ装備で無表情で武器の手入れをしていた。
「福田さんがウチらを呼んだんですか?」
「…そうだ。アマゾンが全然いなかっただろ。」
「そうそう。隠れ家なのにおかしいねって話しててさ。」
「4Cが先に駆除していたんだ。家から離れていた奴らをお前たちは駆除したというわけだ。」
「なるほどね。お残りを頂いたってわけだ。」
「その話をしにきたんじゃない。橘局長からお前たちに伝言を預かってきた。」
「伝言…?」
福田はポケットに入っている封筒を望に渡した。
「簡単に言えば4Cと野座間共同でアマゾンたちの最大の隠れ家を叩こうというわけだ。先ほどお前たちが駆除を行った家で別の隠れ家の情報が手に入った。場所は関東北部の地方都市の山林地区の中にある廃別荘だ。」
「なんで4Cが共同なんて?」
「お前たちには…尾宿がいるだろう。」
バンの中で必要にハンカチで血を拭き続けている商を見ながら言う。
「こちらにはアマゾンロウがいる。2体のアマゾンの戦力と我々、そしてお前たちの力で一気にやろうってわけだ。」
「なるほどね。これを令華様に言えってわけね。」
「お前たちとパイプがつながっている俺に橘局長は言ってきたというわけだ。…頼んだぞ。」
福田の顔はどこか疲れているようであった。アマゾンを駆除するという点に関しては昔と何ら変わりはないのにその頃と比べて何か違う気がする。
「おっけ。まぁハカちゃんにもそれでいいか聞いてくるよ。」
「三崎。」
「ん?」
「…奴はマモルじゃない。代わりにはならないぞ。」
「…!」
「……わかっているならいい。」
今の自分の顔も福田のような顔になっているに違いない。三崎はそう思いながら商の元へ行くのをやめた。
後日三崎と望、商は4Cに呼ばれた。入口で福田が出迎え、厳重なセキュリティを通って橘のいる局長室に足を踏み入れた。
「久しぶりだね、元駆除班の皆さん。是非実戦経験豊富な皆さんには”私の”4Cに入ってほしかったから非常に残念だったよ。」
皮肉交じりの再会に三崎は思わず苦笑いを浮かべる。仲間だった前原をあんな姿にしたこの男の元で誰が働きたいと思うだろうか。
「そして初めまして、尾宿商くん。」
「アンタがこのベルトを俺に渡した張本人ってことか。俺の体を調べて何しやがった?」
「君のそのアマゾンを喰らいたいという”感情を量産”したんだよ。」
「感情を…?」
「それがこれだ。」
局長室の扉が開くとそこにはストレッチャーに縛られた天城が運ばれてくる。その顔は無機質で感情が失われていることが一目でわかった。
「…!こいつは…!」
「ハカちゃん、知ってるの?」
「…いや。」
嘘をついた。三崎は信用できる男だったから今まで嘘をついたことはない。だが今は単に昔の自分を知られたくなくて嘘をついたのだ。この男はトラロックの日、人を喰っていた商を止めに入った”人間とアマゾンを繋ごうとしたアマゾン”だった。
そんな男が今や人間たちについてアマゾンを無慈悲に狩る機械になったというのだろうか。今はアマゾンを喰らうような生き物には見えない。いやむしろ生き物に何か必要なものが欠けてしまったかのような存在…。
局長室を出ると三崎たちは青山隊の待機室に通された。中には青山と隊員の藤尾、中島が座っており、わざとらしく丁寧な挨拶をする。
「私が4Cの青山隊隊長 青山です。よろしくお願いします、元駆除班の皆さん。」
「へっ、くっさいことしてんじゃないよ、青山ちゃん。」
「へへ、皆さんお久しぶりです。俺が野座間にいた頃と変わんないっすね。」
「まさか清掃班だったお前が4Cで隊長やるとはな。」
「三崎さんと同じような理由ですよ。」
「金は大事だなあ…。」
野座間製薬の元清掃班であった青山は駆除班の面々とは顔なじみであった。福田も久しぶりの雰囲気に表情にはあまり出さないもののどこか嬉しそうであった。
「今回はウチの班、そして白木隊と野座間の皆さんで別荘地へ駆除にし行きます。天城は黒崎隊の管轄ですが今日は非番なので俺たちがみます。」
「4Cの戦力は?」
「最近完成した圧裂弾という武器がありますが、衝撃波が凄まじいことや別荘の構造上崩壊の恐れもあるので容易には発射出来ないのが推測されます。後は野座間側とそこまで変わらないかと…。」
「じゃあ天城ってアマゾンは?ハカちゃんとそんな変わらないかね?」
「尾宿商に関してはこちらもそこまで情報がないので何とも言えませんが、黒崎から1つ言伝があります。」
「言伝?」
「『天城には決して見方は近づくな』だそうです。」
「…!」
ストレッチャーに縛り付けられ大人しくしている彼が本当に戦いに参加出来るのか不安であったがまた別の不安が三崎と望を襲った。
一方の商は青山隊の隊員たちに天城のことを聞いていた。
「なぁ、奴はロウ成分ってやつでアマゾンを喰いたくなってるんだよな。」
「そうだよ。お前の中で分泌された成分を人工的につくったもんらしい。」
「そんな成分ごときであんな腑抜けだったやつをアマゾン狩りのモンスターに出来るもんかね…。」
カラスアマゾンになった時の戦闘力は確かに目を見張るものがあったのは覚えているが結局甘いことしか言っていなかった印象が大きい。そんなやつが容易に殺戮衝動に目覚めるものなのだろうか。
そんなことを思いながら準備を始めた周りを見て、商も身支度を始めた。
十数人分の食器を洗い終えたカオリは次に洗濯をするために別荘地の庭に出た。各地の隠れ家が4Cと野座間の駆除班に襲われ、行き場をなくした者たちは皆この別荘にいるのだ。
「カオリちゃん、洗濯は俺がやるよ。」
声をかけてくれたのは剛だ。アマゾンを助けた人間ということで足がつくのは時間の問題だと思ったのか一緒についてきてくれた。そしてもう1人の人間がここには住んでいる。
「でも結構な量ありますよ…?体壊しちゃいますって。」
「おいおい、俺はぁ昔大工だったんだぜ?体力なら自信があんだ。それより神山になんか持ってってやってくれねえか?ブーブーまた文句言ってんだ。」
伸びきって脂ぎった髪にニキビだらけのその顔にはイースヘブンの教祖として贅沢の限りを尽くしてきた男の面影はない。
「わかりました、じゃあお願いしますね。」
人間を喰らうことなどアマゾンならば簡単だ。しかしカオリたちにはそれは出来ない。マモルはかつての仲間を喰らいそうになってしまったから、島田は単に趣味が合わないから、そしてカオリはかつて人間を愛してしまったから人間を喰えなくなってしまった。
逃がせばアジトの場所も4Cにバレてしまうだろうし結局神山をここまで連れてきてしまった。しかし無理やり連れてきたころに比べて随分安定したというか…とにかく馴染んでいた。
わがままでいい奴でないが、神山がいることは最早当たり前のようになっていた。ペットのような感覚なのだろうか。カオリにもよくわからなかった。
「はー、気持ちいいなあ。」
体と洗濯物のしわを伸ばしながら作業をするカオリ。今日は12月にしては珍しくちょうど良い気候だ。しかし島田の一言でその余裕はなくなる。
「人間たちがここに近づいてる!すぐに準備をしろ!」
「…!じゃあ水澤くんに連絡も…。」
「アイツに…か。マモルは嫌がるだろうな。」
「…でも守ってはくれるし。」
「…そうだな。だがまずは逃げる事を優先するんだ。」
カオリはすぐに洗濯かごを置いて自室へ駆けていった。ついにここも見つかってしまった。また逃亡の日々が始まるのだ。
『こちら白木隊です。アマゾンたちがこちらの動きに気が付いたようです。』
「まじか…了解。先におっぱじめててくれ。」
青山隊のバンに先に別荘付近で待機していた白木隊の隊員から連絡が入った。
「あらら、どっからバレたんかな。」
「簡単だ。俺や天城がこのバンに乗っているからだろ。」
「どういうこと?」
「アマゾン同士はお互いの存在が分かる。コッパタイプの2人は匂いがちがうんじゃねえか?」
望の指摘通り。三崎も「あぁ~」という声を漏らした。
「そんな遠い所から感知できるやつがいたなんてなぁ。まぁもう白木隊が戦闘に入ってます。すぐに援護行きますよ。」
青山と野座間駆除班らの会話を聞いた福田はアクセルを強く踏んで現場へ急いだ。
銃声の音を聞いて部屋で休んでいたマモルは目を覚ましすぐに飛び起きる。部屋を出ると白木隊の隊員たちがマモルに向けてショットガンを放つ。熱を発しながらモグラアマゾンに変わるマモル。
「ウォォオオ!!」
傷が治ったことでかえって強化された肩アーマーがモグラアマゾンの戦闘力の高さを思わせる。硬化クローで襲い掛かる隊員たちを次々と攻撃していく。
入口の方では青山隊の輸送用バンが到着し、後ろから三崎、望、青山、商が出ていく。そして福田が運転席の横にあるボタンを押すと天城は自身の拘束が取れて自力で荷台から降りた。
「……ンンアアアア!!!!」
「!?」
拘束が取れたことがトリガーとなっているようだ。天城は血走った眼をギラギラと輝かせて手にしているネオアマゾンズドライバーを装着した。それをみた商もアマゾンズドライバーを腰に巻く。
天城はオレンジ色の液体が入ったアマゾンズインジェクターをネオアマゾンズドライバーのインジェクタースロットに装填しギミックを動かしてすぐにアマゾンズインジェクターでロウ成分を注入する。
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「アアアアア!アマゾンッ!」
「ウォォオ!アマゾンッ!」
爆風が辺りを包み込み、周りは砂埃で前が見えなくなる。それが晴れると2人はコッパ、ロウへと変身していた。
「さて行くぜ、ハカちゃん。」
「待て。」
コッパは後ろにいる4Cと駆除班のメンバーたちを止めた。アマゾンコッパの視線の先は砂埃が晴れてたところにバイクに跨った人間のシルエットがあった。
「…!」
それはジャングレイダーでここに駆け付けた悠だった。ヘルメットを取るとどこか大人びた表情が見え成長が感じられる。
「悠…お坊ちゃん…?」
「悠…。」
「…お久しぶりです。でも…みんなを殺させはしない!」
カバンからアマゾンズドライバーを取り出し装着し、アクセラーグリップを捻った。
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「…アマゾン。」
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冷静な掛け声はどこか鷹山仁を思わせる。立ち姿も理性的なオメガに対し、ロウは奇声を発しながら立ち向かっていった。
更新遅れました、エクシです。いろいろ忙しかったのとS2の最終回を見て…ショックでなかなか書けなかった。。。
いやーよかったです。しっかり終わらせてほしかったという方の気持ちもS3はよという気持ちもわかるので複雑ですが、とにかくよかったと思います。
ネタバレ?になりますがこの話のMtoN編は13話で一応切り上げるつもりです。
その後は未定ですが、今のところまだ続けるつもりではあります。
今更ですが「Quinquennium」は5年間という意味があるそうです(知らなかった)。
空白の5年間を埋めるのはMtoN。そして14話以降はまた別の5年間を…なんて考えてます。
その事を考えるとなかなか今の部分に手が付かなくて…。
しかしなんとか完成させようと思っています。これから遅めの更新になるかもしれませんが、感想、お気に入り、推薦等でモチベーションを上げられれば更新頻度高く出来るかと思います。是非お願いします。