ISー白き鬼ー   作:金谷沙原

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タイトルは割りと適当です


日常と非日常

「そして、多数の軍艦、航空機等を人員に一切死者を出すことなく無力化した2機の白い『IS』はその後捕捉されることなく離脱した。一連のこの事件を俗に『WW事件』または『双白事件』という」

 

今日はここまでという世界史の教師の言葉により、クラス委員が号令をかけ、授業が終わった。

 

「麗!」

 

麗がホームルーム前に帰り仕度を済ませようと準備を進めていると、不意に声を掛けられた。

 

彼女を下の名前で呼ぶ者は限られているため、すぐに誰かがわかった。

 

「何、一夏?」

 

「一緒に帰ろうぜ」

 

「いいよ」

 

たったそれだけの会話だったが、クラス中がざわついた。

 

聞こえてくるのは、やはり付き合っているだの、美男美女でお似合いだの、幼馴染みには勝てない、と言った声だった。

 

彼は、織斑一夏(オリムライチカ)。彼の姉、織斑千冬の繋がりで麗は彼と小学校からの幼馴染みになる。

 

運動神経は抜群、性格も良く、友人も多い。少々唐変木な所がたまに傷。

 

「今日の夕飯どうするの?」

 

「あー考えてなかった」

 

「買い物しながら決める?」

 

「そうしよう」

 

恋人を通り越して若夫婦のような会話を繰り広げる二人に嫉妬の視線が突き刺さる。

 

まあ、主に刺さっているのは男子から一夏に対するものばかりであったが。

 

麗は事件から数年で美しく成長した。

 

十人中九人は振り返るであろう顔立ち、後頭部で束ねられた手入れが行き届いた黒髪、多少スレンダーではあるが、均整の取れたプロポーション。

 

表情は乏しいがふとした瞬間に見られる笑顔にやられた男子は両手両足の指でも全く足りない。

 

買い物を終えた二人は織斑家に到着した。

 

「ただいま」

 

「お邪魔します」

 

「帰ったか」

 

二人が居間に入ると既に先客がいた。

 

「千冬姉帰ってたのか」

 

「ああ、今日は早く終わってな。麗も一緒か」

 

「うん。お邪魔します」

 

「今日は泊まっていくのか?」

 

「そうだね。千冬ちゃんもいるしそうしようかな」

 

麗は織斑家に週2、3回ほど泊まることがある。

 

一般的な思春期男子ならば夢のような状況であるが、

 

「そっか、なら布団出しとかないとな」

 

織斑一夏は唐変木の朴念人であるため、このように普通に対応する。

 

なお、麗の両親はすでに二人が付き合っているものと思っており、一夏が麗の家を訪ねた際は一夏の人柄を認め、公認となっており、麗が千冬と話があるため泊まると言っても照れ隠しだと思い、暖かい目で見送っている。

 

「じゃあ、夕飯作り始めておく」

 

「了解。よろしく」

 

そう言い残し、2階に上がる一夏を呆れたような眼差しで送る千冬。

 

「はあ…本当にあの馬鹿者は。麗のような美人が泊まるというのにあの反応とは」

 

「クス。一夏らしいと思うけど?」

 

「青春というものを何処かに置いてきたようだな」

 

「一夏も千冬ちゃんには言われたく無いんじゃない?」

 

麗に言われ、口をへの字に曲げる。

 

千冬も心当たりがないわけではないので、口をつぐむ。

 

「前から思っていたんだが、そろそろその『千冬ちゃん』呼びはやめないか?もうそんな歳ではないんだがな」

 

話題を変えるために千冬はそんなことを言い出した。

 

麗は表情は乏しいが、小さく首をかしげ、少し考える素振りをみせる。

 

「今さらは難しい」

 

「はあ…まあいい。学院では直してくれ」

 

「うん、了解、織斑センセ」

 

「…少し気になるがまあいい」

 

憮然とした表情ではあるが、一応納得したのか、千冬はそれ以上言葉を重ねることはなかった。

 

「戻った。麗、今どんな感じ」

 

「下拵えは済んだ。後は本格的に取り組むだけ」

 

「わかった。ここからは手伝うよ」

 

「うん」

 

料理を始めた二人を見て、新婚夫婦のようだと思った千冬だが、あえて口に出すことはしなかった。

 

どうせ的はずれな回答しか帰ってこないことが明白だったからである。

 

ー麗が一夏をもらってくれれば私としても肩の荷が降りるというものなんだがな…

 

そう考えている千冬だが、お互いに朴念人のため、正直あきらめている。

 

もう一度小さくため息をつき、テレビに視線を移した。

 

よい香りが流れ始め、料理の完成が間近であることを知らせた。

 

 

ー◇ー

 

 

あっという間に半年が経過し、高校生としての新学期がスタートした。

 

だというのに…

 

「何でこんなことに…」

 

麗の目の前には多数の少女達の視線を釘付けにする、幼馴染の少年がいた。




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