やはり俺が戦略級魔法師なのは間違っている~星を呼ぶ少女~ 作:かのんベール
それじゃあ俺は憲兵さん達と派手に暴れますかね。つっても俺の場合、影が薄すぎて気づかれないまであるからな...。ここはやはり正面から堂々と行くのが一番だろう。司波が俺に憲兵の制服を用意した辺り、俺が内部に入ってから騒ぎを起こすものだと思って計画していたみたいだが、甘いな。俺はそんな奇襲なんかしなくても大丈夫なんだよ。なんてったって、俺もお前と同じ戦略級魔法師なんだからな。
「何者だ!」
「制服見りゃ分かるだろ?憲兵だよ憲兵」
「所属と名前を述べろ!」
おっ!なんかこっちのゲートに向かってトラックが走ってきてるな。丁度いいし使わせてもらうか。
「スペシフィックグラビティー発動!」
俺がトラックに向けて引力を発動すると、トラックはあり得ない勢いで加速する。そして目の前のフェンスを吹き飛ばして俺に激突して止まった。
「なっ...!」
「一体なにが...」
だから、車は急に止まれないっていつも言ってんだろ?あれだよあれ。
目の前のゲートが開いたことだし、早速基地の中に入ろうとすると、やはりというか当然というか制止の声が掛かる。
「止まれっ!止まらんと撃つぞっ!」
「え?ここまでやられておいてまだ撃って無かったの?」
「このっ...!」
なんか今のセリフが挑発と取られてしまったらしく、どこから現れたのかは知らんがいつの間にか全方位6ヶ所からの銃弾の雨を食らうこととなった。まぁ、そんな物理的攻撃は無駄なんだけどね。
「さすがにやり過ぎたか?」
ようやくうるさい銃声が鳴り止む。が、当然だが俺には傷一つ付けられていない。俺の回りに大量の銃弾が落ちているだけだ。俺はそれらの銃弾を魔法を使って全方位にぶちまける。なんてことはない。こんなことは第一高校の生徒ならば誰でもできるし、当たったところでかすり傷になるかどうかが精々の威力しかない。しかしその銃弾が奴等の背後まで飛んでいけばどうなるか...
「スペシフィックグラビティー!!!」
答え、銃弾に撃ち抜かれる。結局のところ俺と銃弾の間に入った時点で、そいつは負けが確定しているのだ。そして再び銃弾は俺のもとに集まってくる。一人で野球をやってた頃を思い出すな。自分でフライを打ち上げて、自分でキャッチする。あれって結構難しいし出来るようになると無茶苦茶たのしいんだよな。
そうやって半永久機関となりながら進みつづけていると、前方から戦闘音が聞こえてきた。さらには俺が殺ったものではない死体まで転がっている。傷口を見るとそのどれもが、刀かナイフかのいずれかでやられている。これは三つ巴気なりそうだな。ちと上から見て確認するか...
「アンノウンテリトリー発動!」
飛行魔法擬きで上空から基地を確認する。
「あいつらか...」
あれってスターズだよな?千葉と西城はまだ気づいていないようだがこのままいけば確実にぶつかるな。先に伝えておいてやるか...
そのまま千葉と西城のそばまで飛んでいくと、ちょうど司波が施設から幼女を伴って出てきたところだった。
(まいったな...。こいつの前で魔法を解除するわけにはいかないんだよな...)
「それじゃあコイツらを頼む。俺は中に戻って研究のデータを処分してくる」
「私たちを見捨てるつもり?」
西城と千葉に任せて立ち去ろうとする司波に、幼女が食って掛かる。おぉう、なんとも生意気な幼女だな...
「そんなつもりはない。だが、研究のデータを破壊しなければ第二第三の君たちが生まれるだけだ。それでは、真の意味で助けたとは言えない」
司波の返答を聞いて言い淀む幼児。
「頼んだぞ」
「おうよ!」
「任せて!」
そう言うと司波は施設の中へと戻っていった。当然のように俺も後を追う。西城と千葉には悪いが、頑張ってスターズと戦ってもらおう。あいつらなら、勝てはしなくても時間は稼げるだろう。それまでに戻れば問題ない。
研究室に入ると白髪の科学者らしき人物が一人いた。
「まだ居たのか」
司波が科学者に話し掛ける。
「ここに研究のデータを全て写せ」
「なんで私がそんなことを...」
「俺がなんでお前を生かしているか分かるか?お前にやらせた方が早いからだ。別に自分でも出来るんだぞ?」
やはりな...、おかしいと思ったんだよ。こいつなら逃げる前に研究のデータを一瞬で消し去ることも容易だったはずだ。それなのにこいつはそれをしなかった。さっき幼女たちに放った言葉も本心からでた言葉なのだろうから嘘はついていない。しかし、真実を言ってもいなかった。データには何か価値があるのだろうか?
その答えは、果たして直ぐに見つかった。
〈連邦国軍人物軍事衛星〉
こいつが地球に向かって来ているということか。もしもこいつが地球に墜落でもしたら、環境汚染は免れないだろうな...。さすがに司波でもこの問題の解決は難しいんじゃないか?だが、こうして予測される墜落の軌道をこいつは手に入れようとしている。恐らく手段はあるのだろう。俺はこいつが戦略級魔法師だと知ってからはなるべくデータを集めるよう努力はしてきたつもりだが、俺の知っている限りでは司波にこの問題をどうにかできるとは思えない。確かにやろうとしていることの見当はつく。軍から渡されていたβプライズ。あれを使えば環境汚染の原因そのものを無き物にすることが出来る。しかし、それでは失敗する可能性がとても高い。こいつの魔力ではその発動がギリギリである点。βプライズがまだ試作の段階であるという点。そして、遥かに高度な魔法の連撃が必要という点がこの作戦の問題にして致命傷だ。
「終わったか」
「あぁ」
俺の心配をよそにして司波は行動を続ける。ならば俺もやらなくてはならないことをするとしよう。部屋を出ていく時に背後から強風が吹き荒れる。恐らく司波が大型CADを消滅させているのだろう。爆風を背後にしての退出ってなんかカッコいい。まぁ、今の俺には風なんて感じられないんだけどな。
◇
幼女達を連れて逃げようとするレオとエリカの前に二人の軍人が現れた。
「資料にあった少女達だ」
「っ!つまりあいつら全員皆殺しにしていいってことですよねっ!」
「勝手な真似だけはするなよ」
危険を察知したレオが幼女達を奥へと避難させる。エリカは相手の正体に気付いたらしく、大蛇丸を抜刀して中段に構えた。
「出し惜しみできる相手じゃねぇか」
それを見たレオも相手の強さを悟り、強化の魔法を発動する。
「ほぅ」
それを見た敵も、相手がただの憲兵ではないと気が付く。
「そう焦んなって!...つっても、こっちもあんまりゆっくりしてる時間は無いんだけどなっ!」
最初に動いたのは赤髪の男だった。レオの命を刈り取るため、致命傷を狙った一撃を繰り出す。それは驚異的なスピードであったが、レオもそれにしっかりと反応し、相手のナイフを手首のCADで防御する。2撃3撃と男の攻撃が続く。しかし、その攻撃の手が甘くなった瞬間にレオがカウンターのパンチを撃ち込む。赤髪は大きく後方へと飛び退くことでそれを回避する。
「こいつは楽しませてくれそうじゃねぇかっ!」
それを見ていたもう一人の軍人もエリカを見てその正体に気が付く。
「総隊長が言っていた千葉の女剣士がなぜここに」
二人の剣が激しい攻防を繰り返す。最初こそ互角での打ち合いであったが、その流れはエリカが有利なものへと代わっていく。ついに打ち合いの拮抗が崩れる。エリカが上段から剣を振りかぶる。相手もその攻撃を防がんと剣を寝かせて盾にする。が、エリカは攻撃を中止して後ろへと飛び退く。
「どうして打たなかった」
「なーんか、その件と刀を交えるのはヤバいって感じたのよねぇ」
しかし4人の戦闘の拮抗も長くは続かなかった。
エリカが懸念していた通り、大蛇丸は剣の根元から折れ、レオにいたってはナイフを防ぎきることができずに、今まさに止めを刺されようかという所であった。
が、次の瞬間。
「ぐえっ!?」
赤髪の男は突如放たれたファランクスによってその身体を壁に打ち付けられて気絶した。
「克人十文字...!」
「十文字先輩がどうしてここに!?」
「お前たち!こんなところで何をしている!」
映画の冒頭でストローをくわえる口元のアップが映りますよね?
「このカットだけなのに深雪って分かるなー」
って思ってたんですよ。
そしたら達也がストローで飲んでるシーンが映るじゃないですか?
「え...。あのふっくらした唇っておまなの?(´・ω・`; )」
ってなったんですけど、皆さんはどうでしたかね?
まぁその後に深雪が映って、やっぱりそうだよねー。
って感じでしたが。あれはわざとだと思うのです。