やはり俺が戦略級魔法師なのは間違っている~星を呼ぶ少女~   作:かのんベール

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動き出す陰謀

司波兄がなにやら手紙を読んでいる。アンノウンテリトリーを発動中の俺なら盗み見ることは造作とないがなっ!どれどれ...。うっ...厄介事確定ですね...。ただ今回はこいつ一人だけの問題っぽいな。俺たちは巻き込まれずに済みそうだ。なにせ、こいつが一人で軍に行けばいいだけなんだからな。まぁ、なにやらされるのかはまだ分からんが。

 

「お兄様...」

 

「軍からの出動命令だ。深雪、制限を解除してくれ」

 

「しかし、お兄様...」

 

「手紙には叔母上の許可も出ていると書かれている」

 

「あの方がそうおっしゃったと言うならば、それ程の内容なのですね...分かりました」

 

うわぁ、なんか頬が赤くなってるし、司波兄もひざまずき出したし。これってもしかしなくてももしかするよね?あのときのキス再来だよね?なんか盗み見るのも不味い気がしてきたし、そろそろあいつらのところに戻らないと怪しまれるからな。ここは大人しく退出することにしよう。

 

          ◇

 

「よく来てくれた、大黒特尉。楽にしてくれ」

 

「はっ!」

 

そういうと司波は足を肩幅に広げて、手を後ろで組んだ。まぁ、休めの態勢だけどさ、これって全然楽にしてないよね。因みに俺は後ろで手を組むときは消防士式にしている。理由は特にない。まぁ100年近く前からあの組み方は変わってないらしい。

 

「早速だがこれを見てもらいたい」

 

風間少佐がそういうと、壁のモニターに惑星の公転軌道が描かれた図が写し出される。

 

「先日地球と火星の間を移動していた小惑星GE9の不自然と思われる軌道の変更が確認された」

 

「不自然と思われる、ですか...」

 

いやいやいや、どう見てもおかしいでしょこれは!なんか突然軌道が地球に向かって直角に曲がってるじゃねぇか!ん?これって俺の魔法使ったみたいな現象だな...。まさか...いや、他に誰かが俺の魔法を完成させたのか?それとも、全く別物の理論による魔法なのか...。どちらにせよこれが狙ったタイミングで狙った場所に落とせる代物なのか否かで相当意味は変わっては来るのだが...

 

「そうだ、先日突然軌道の方向が変わった」

 

「このままいけば、72時間後90%の確率でに東シナ海に墜落すると予測されます」

 

「ほぼ確実に墜落すると言うことですね?」

 

「あぁ。しかし、落下地点がずれる可能性も高く、その場合九州地方を中心とした日本へのダメージは計り知れない」

 

九州の有明海を中心とした予想被害範囲が円となって表示される。うっわ、四国にも掛かってんじゃん。さすがにこれは不味くないか?

 

「そこで、大黒特尉には小惑星GE9の破壊を命ずる」

 

まぁこいつが対処するなら、俺の出る幕はないな。雲散霧消とかあるし、まぁ余裕だろ。さすおに。...うっわ!なんか睨まれたんだけど!見えないよね?!心読めないよね?!

 

今度からは魔法発動中でも変なこと考えるのはやめようっと...

 

          ◇

 

研究室に科学者の声が響く

 

「小惑星GE9の消失を確認」

 

報告を受けた白髪の男が言葉を漏らす。

 

「やはり介入してきたか...国防軍戦略級魔法師...。まだデータは不十分ではあるが...」

 

男は何かを決断し、科学者達に告げる。

 

「明後日...いや、もう明日か。3月31日、連邦国軍人工軍事衛星への実験を開始する!」

 

「「おぉー!」」

 

「ついに、ついにこの時がきたのか...!」

 

科学者達から次々と感嘆の声が上がる。

 

「これで日本国防海軍も我々を認めざる終えないはずだ...」

 

そんな中一人の女性の科学者が異議を申し立てる。

 

「待ってください!あの子達はまだ前回の実験をしたばかりなんですよっ!?いつもと同じように一週間のインターバルを開けるべきですっ!」

 

彼女の周りの科学者達の顔も心配そうなものになっている。それに対し、数階上の頭上からガラス越しに見下ろす白髪の男性がひどく冷徹な声で告げる。

 

「そんなものは必要ない。一週間の期間を開ける必要性を示す資料は私の元へは少なくとも届いていない。森永くん、科学者というものはね、主観を排除して客観的事実にのみ基づいて行動することが求められるものだと私はおもうのだがね?」

 

女性はこれ以上の反論が無駄であることを悟り、その表情を酷く苦しそうなものへと変えた。

 

「予定に変更はない。予定通り実験を行う、各自準備に取りかかるように」

 

今度こそ科学者たちは期待と喜びに満ちた空気の中で準備を始めた。

 

そんな科学者達を眺めながら、先ほど異議を唱えた女性の科学者は番号が振り分けられた個室が並ぶ区画へと足を運んだ。個室にはそれぞれに幼い少女達が入れられており、ベッドに腰を掛けながら俯いていたり、壁に頭を持たれかけさせていたりと様々であるが、そのどれもが全くの覇気を感じさせない。女性はその中の一つの個室へと入り、少女の手を取った...

 

           ◇

 

メールを受け取ったことで七草真由美が目を覚ます。こんな早朝からメールを送ってきたのはどこの誰かと、少々不機嫌ながらもスマホのメールを確認する。

 

「これ、暗号化メールじゃない...!」

 

彼女はベッドから出るとコーヒーを入れ、メールをチェックすると、隣で寝ていた渡辺摩利を起こした。

 

「摩利ー、ちょっとこれ見て頂戴」

 

「なんだよ、こんな時間に...」

 

「もう朝よ」

 

カーテンを開けると明るい日差しが部屋に差し込んでくる。七草は手にもったマグカップのコーヒーを手渡す。

 

「はい、これ」

 

「あぁ、ありがとう。...にがっ」

 

彼女にはブラックコーヒーの良さが分からなかったらしく、小さく舌を出している。しかし、そんな可愛い表情もメールを読み進める事に段々と険しいものとなっていく。

 

「これは...!」

 

彼女は少し目を見開き驚きを露にする。彼女たちはお互いに頷き会うと、急いで準備に取り掛かっていった。




アニメ版では色々と言われていたシーン。まさかの復活。僕はあのシーン好きだし、それを貫き通した作者は偉いと思う。
あと、惑星の名前が思い出せない。前話の飛行機の型の名前も覚えてない。

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