英霊になって座でのネロの物語
暗い森の外にネロは横たわるように倒れていた。
「ん・・・うむ・・・?此処は・・・?」
「ん?・・・あれはソーマの・・・?」
ネロが目を覚まして辺りを見回した時、始めは此処は一体と思ったが、森の入口で落ちていたソーマのマフラーを拾って落ちていた先の森を見た。
「ソーマはこの森に入って行ったのか・・・?」
ネロは不思議そうに思いながらも、ソーマを探す為に先の見えない暗い夜の森の中に入っていった。
◇◇◇◇◇◇
あれからかなりの時間がたった。
ネロは、森の地にあった足跡を辿りながらずっと歩いていた。
ネロは"ソーマに会いたい"ただそれだけの思いで慣れない暗い森の中をただひたすらに歩いていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
何時間も慣れない道を歩き続けたネロは、口から息を吐きながらも、休む事なく歩き続けた。
しかし体力的に無理があったのか、ネロは近くにあった木に背をもたれかけさせ、その場所でしゃがみこんだ。
すると、何処からか幼い声が聞こえてきた。
ネロがそちらの方に顔を向けると、薄くぼんやりとしていたが、その靄は一体何なのかすぐに分かった。
『待ってよソーマ!!』
『早く来いよネロ!!早く行かないとネロのお父さんに怒られるよ!!』
『だってソーマが森の秘密基地に行こうって言うからだよ!!』
『別にいいじゃんか!!少しぐらい外に出なきゃネロだって楽しくないだろ?』
『それはそうだけど・・・』
『それにもうすぐ着くんだし、早く行って帰ろうぜ!!』
『うん・・・分かった。なら・・・早く行こうの?ソーマ!』
『あぁ!!』
そう、あれは子供の頃の自分だ。あの時ソーマと一緒にソーマが作った秘密基地に遊びに行った時だ。
あの後に親に怒られたけど、楽しかった今でも忘れる事の無いあの日の思い出。
「ソーマは、あの場所にいるのか?」
ネロが思い当たったのはあの二人だけの秘密基地。彼処にソーマはいる。ネロは、それだけを思いながらまた暗い道を歩き出した。
あれから色々な幻を見た。
街の噴水で二人で一緒に水遊びをしたあの時の思い出。
二人で一緒に丘で寝たあの日。
ソーマと一緒に御菓子を食べた時の夢。
他の子供達にいじめられていた時、ソーマが助けてくれたあの時。
そして自分が皇帝になるとき、ソーマに顔を真っ赤にしながら告白紛いに言ったあの頃。
目的地である場所につくまでネロは、様々な思い出を見た。楽しい事ばかりではなかった辛い事もあった。だが、同時に自分にとって大切な人に会えた事はとても嬉しかった。
しかし、自分の中で何かが引っ掛かるような感じがした。
そう。それは、自分がどうして死んだのか?戦って死んだのか、それとも病で死んだのか。それだけが思い出す事がなかった。
ネロはそれを知らぬまま森の中を歩いていった。
ソーマがいるであろうその場所に。
それからしばらく歩いていると一人の人影があった。
そしてその人影は自分に向かって叫んだ。
「ネロ!!」
その声はネロにとって聞き覚えのある声と姿だった。
三角帽子の形をした鉄兜に背中には背丈ぐらいある大剣。そして少し跳ねているあの銀色の髪。
その人影がソーマだと分かった瞬間、ネロはすぐさま走り出した。
そして走り出した勢いを落とさないまま、ネロはソーマに飛び付いた。そしてもう離さないと言わんばかりにソーマを抱き締めたまま、ネロはソーマの胸に顔を埋めて泣いた。
もう泣かないと決めたはずだった。だが、どうしても一度流れて出した涙は止まる事はなかった。
そんなネロをソーマは泣き止むまで昔と同じ様に撫で続けた。
一人の少女の泣き声がしばらくの間、森の中で響き続けた。
しばらくして顔を真っ赤にして泣き止んだネロは、あらためてソーマを見た。
青色の瞳に銀色の髪。何時も変わらないソーマの姿は不安だったネロを安心させた。
「もう大丈夫そうだな」
ソーマはネロの頭を撫でながらそう言った。
「良かった・・・ソーマが無事で・・・ソーマがいなかったら余は・・・」
小さくそして震えた声でネロは答えた。
「大丈夫だ。俺がゲーム以外で嘘をつく事があったか?」
「・・・・・ない・・・・・」
「それにな、お前を一人にするわけないだろう。お前は一人になると何も出来ないから、俺が傍にいるんだろう?」
「・・・・・・・・・」
「ネロ?」
返事をしないネロにソーマは心配しながらネロを見た。
「すぅ・・・・・すぅ・・・・・」
「泣き疲れたか・・・全く心配させてくれる」
ネロは、疲れが一気にきたのか安心した表情で眠っていた。その顔は幼くも可愛らしい表情であった。
「やれやれ、小屋まで運んで行きますか」
ソーマはそう呟きながらネロをおんぶして、すぐ先の小屋へと向かって歩き出した。
「ソーマ・・・」
ネロは、ソーマの名前を寝言で言いながらソーマを抱き締めた。
「やれやれ。夢の中にまで俺が出てくるのか全く」
「小屋に着いたら食事でも作るか」
ソーマはそう呟き、再び小屋に歩き出した。
ネロにとってこれ程幸せな事はなかった。
ソーマにおぶって貰って小屋に着いたネロは、その後にソーマと一緒に食事をした。一緒に温泉にも入って、一緒に寝た。生前、出来なかった事が此処では出来た。
幸せだった。永遠にこの日常が続けば良いと思った。
ソーマがお気に入りである椅子に寝ている時は、ネロはその隣に入り込んで一緒に眠った。朝、ソーマが起きる前にネロは起きてソーマの寝顔を見るのが日課になった。
生前、自分がどう死んだのか分からない。だが、ソーマが居てくれるだけでその事を忘れていられる。
ずっとこの日常が続いて欲しい。壊れないで欲しい。ただそれだけを願ってネロは眠った。
だが、その幸せはすぐに壊れる事になる。
ある日、ソーマはネロに行く所があると言って小屋を出た。始めは一緒に行こうとしたが、ソーマは昼には帰って来ると言って出掛けて行った。
そして家で一人になったネロは、ソーマが帰って来たら驚かす為に昼食を作る準備を始めた。
生前、ソーマに料理の作り方を教えてもらってから慣れない料理作りを何度も練習をしていた。失敗も何度かあったが、今では店でも出せるぐらいだと自称している。
「ふん♪ふん♪ふんふんふん♪」
ネロは鼻歌を歌いながら、テキパキと料理を作っていった。
そして完成した料理をテーブルの上に並べるとその出来上がりを見てネロは満足しながら言った。
「うむ!!多少作り過ぎた感があるが出来たぞ!!後はソーマが帰ってくるのを待つだけだな‼」
「しかし、朝起きるのが少し早すぎたな・・・少しだけ一眠りするとしよう・・・」
ネロはそう言って一眠りするために寝室に向かっていった。
「早く・・・帰ってくると・・・いいな・・・」
ネロはそう言って眠った。
しかしネロが目覚めた後、居間には背中に矢や刺し傷だらけになり、血だまりの中で倒れ伏したソーマの姿を見ることになる。
そしてネロは生前の事を思い出し、あの時と同じ結末を向かえようとするが、何でも願いが叶うという聖杯の話をソーマから聞いたネロは聖杯によりソーマが死んだ事をなかったことにする為に聖杯戦争に参加をする。
あの時の幸せをもう一度ネロはそれだけを胸にひめて聖杯戦争が始まるのを待っていた。
そしてソーマの体は何時のまにか消え去っていた。
設定上では第三次聖杯戦争に参加することになるネロの物語になります。
感想、誤字報告よろしくお願いします‼
FGoで単発でバサスロットとアーチャーエミヤが来ました。最近自分の運が怖い(;・ω・)