あと鞠莉ちゃんのお母さんの呼び方をどうしようか迷ってます。
名前を付けるか、鞠莉ママでいくのか・・・。今回は「鞠莉ママ」で表記していますが要望があれば名前を付けるかもしれません。
鞠莉のお母さんがヘリから降りてAqoursのみんなに挨拶をする。
鞠莉ママ「それでは改めまして……いつも娘がお世話になっております。小原鞠莉の母です」
みんなに向かってぺこりと一礼をし、ちらりと隠れている俺の方を見た。
鞠莉ママ「こんなところで立ち話をするのもなんですから、淡島の方へ行きましょうか。そちらの方々もどうぞ」
彼女は聖良さんと謎の少女にもそう言った。
恐らく俺もついていかなきゃいけないな。
そう思いながら俺はみんなの後を追った。
場所は変わってホテル小原のホール会場。時々イベントが開催されるくらい広い場所だ。
俺は会場の端でバレないように身を潜めている。いや、なんで隠れてるんだろうか? 別に出てきても良くない?
Aqoursのみんなは最前列の座席に座り、他の人もその近くに座っていた。
鞠莉ママの話では『鞠莉さんたち三年生と連絡が取れなくなったこと』、『彼女たちがイタリアに卒業旅行に行ったこと』を伝えた。もちろん結婚の話は一切していない。
彼女がある程度話し終わったところで千歌から質問が出た。
千歌「あの~私たちはどうすれば……」
それを聞くと待っていましたと言わんばかりに鞠莉ママの口角が上がった。
鞠莉ママ「はい、皆さんにはあの子たちを探すのを手伝ってほしいのデ~ス!」
ざわざわと驚きの声が溢れた。
鞠莉ママ「もちろんただでとは言いません。皆さんの旅費はこちらでお出しいたしますし、見つけていただけたらそれなりのお礼もさせていただきマ~ス」
おぉとみんなが盛り上がる中、ふと冷静になった梨子がこう言った。
梨子「でも私たち6人だけでイタリアを探すのは大変かも……」
それを聞き逃さなかった鞠莉ママはこう答えた。
鞠莉ママ「安心してください。みなさんの他にも捜索に協力してくれる人物がいます」
Aqoursのみんなは考えるが誰なのか見当がつかない。
鞠莉ママ「それではご紹介します。みなさんもよく知っているあの方です。……前に来てください」
するとさっきまで明るかった会場が暗くなり、通路だけがうっすらと光を放った。
演出の一環なのだろう。さすがは小原家だと思いながら俺は席を立ちゆっくりと前に出た。
俺が一番前までたどり着くと会場が再び明るくなりその姿がみんなの視界に入った。
瑠惟「久しぶり。元気でやってるか?」
みんなの顔が驚きの色に染まり、少しの間誰も声を出せなかった。
そんな中で声を上げでたのはあの子だった。
曜「瑠惟君……どうしてここに?」
その目には涙が浮かび、声もどこか震えていた。
瑠惟「まぁなんだ……俺もこの人に三年生の捜索を頼まれたんだ」
徐々にみんなの頭の処理が追いつき、やがて俺の方へみんなが駆け寄ってきた。
梨子「おかえりなさい。まさかここで会えるなんてね」
花丸「先輩~! 会いたかったずら!」
みんな笑顔で再会の喜びを言葉にする。
もう少しこうしていたいが、Aqoursだけでなくこの人たちにも挨拶しないとな。
瑠惟「お久しぶりです。聖良さん、理亞ちゃん」
そう言うと二人は笑顔を見せてくれた。
あとは……
瑠惟「えっと……はじめまして、Aqoursの元マネージャーの西王瑠惟といいます」
先程から気になっていた少女に自己紹介をした。
するとその子は……
「あっ! 君が瑠惟君だね! はじめまして! 私は渡辺月です!」
渡辺……えっ? まさか曜の兄弟? でも曜は一人っ子だったような。
曜「月ちゃんは私の従妹なんだよ」
なるほどね。
月「君のことは曜ちゃんからよく聞いてるよ! いつも優しくて憧れてるって。それでもう付き合ってるの? まさかもうキスはしちゃったとか?」
えぇ……何この子。すんごくプライベートなこと聞いてくるんだけど。
曜「ち、ちょっと月ちゃん! 変なこと言わないでよ///」
月「私のことは気軽に月って呼んでね! よろしく!」
瑠惟「よろしく……」
差し出されたその手を困惑しながらも俺は握った。
鞠莉ママ「それではみなさん協力してくれるということでいいですね?」
瑠惟「はい」
即答した俺だったが、Aqoursの面々はどこか決断を出せずにいる。
そんな雰囲気を変えたのは彼女の言葉だった。
聖良「行ってみてはどうでしょうか?」
千歌「聖良さん……」
聖良「今の皆さんに必要なのは三年生のいなくなったAqoursをどうしたいか決めることだと思います。このまま続けていくのか、それとも……。どちらにせよ三年生や瑠惟さんと話してみることで何かが見えてくるのではないでしょうか。だから私は行くことを勧めます。それに瑠惟さんがいればどこに行っても何とかなりそうな気がしますし」
彼女の言葉に俺は続けた。
瑠惟「実はさっきみんなが踊ってるところを見せてもらったんだが、正直に感想を言うと俺は心配になった。なんだろ……うまく言葉にできないけど、みんなの心に不安が見えたんだ。三年生の三人がいなくなって戸惑う気持ちと何かに焦っている気持ちが遠くから見ている俺にも伝わった。だからさイタリアに行って俺たちみんなで話そうぜ。不安なことややりたいこと、Aqoursみんなの気持ちをさ」
少しの静寂が流れ目の前の少女たちはお互いに顔を見合わせて頷いた。
千歌「分かった! みんなで行こう! イタリアに! そして鞠莉ちゃんたち三年生に会いに行こう!」
瑠惟「そういうことです。俺たちイタリアに行きます」
鞠莉ママ「それはとても助かりマス」
そう喜ぶ彼女は不気味なくらい明るい笑顔を浮かべていた。
その表情を見て俺は何とも言えない違和感を感じた。
イタリアへの出発が決まると俺は準備のために一度東京の実家へ帰ることにした。
帰る際にSaint Snowの二人も東京に行くと言ったので折角だから一緒に戻ることになった。
帰りの電車で並んだ俺達は久しぶりの再会で思い出話に花が咲いた。
ふと気づくと理亞ちゃんがスゥスゥと寝息を立てているのに気が付いた。
どうやら疲れて眠ってしまったようだ。
するとおもむろに聖良さんがこう言ったのだ。
聖良「実は理亞のスクールアイドル活動が上手くいっていないみたいです」
瑠惟「はい、さっきAqoursのみんなと話しているのが聞こえたので何となく理解してます」
彼女は再度理亞ちゃんが寝ているのを確認すると話を続けた。
聖良「私は理亞のスクールアイドル活動を心から応援していますし、できることがあるならどんなことでも協力するつもりです。ですが、今の理亞を見ていると本当にあの学校が彼女に合っているのかと私は疑問に思います」
瑠惟「それはどういう意味ですか?」
聖良「理亞のスクールアイドルに対する情熱は私以上といっても過言ではありません。ですが逆にその情熱があの子を孤独にさせてるのではないかと思うんです」
彼女の言う通りだ。理亞ちゃんは本気でスクールアイドル活動に励み、誰よりも本気でラブライブ優勝を目指している。準優勝なんかで満足する子じゃないっていうのは別グループである俺でも分かる。だから彼女の周りにはそんな本気についてこれる子が少ないのではないか。そう思ってしまうのもしかたない。
すると聖良さんは隣に座る俺に寄りかかってきた。
え? どうしたの?
戸惑う俺に彼女は弱々しく答えた。
聖良「すいません。私……理亞の状況を分かっていながら何もできないうえに誰にも相談できなくて……。あの子の姉なのに……私悔しくて……」
泣きそうになって震える彼女の肩を優しく抱き寄せた。
瑠惟「聖良さんの気持ち分かります。ですが今は理亞ちゃんを信じましょう。Aqoursのみんなが変わろうとしているのと同じように理亞ちゃん自身も変化を起こそうと必死で動いてるんです。温かく彼女を見守って、本当に困っているなら一緒に乗り越えてあげましょう。何かあれば俺も協力しますから。だから今は……」
聖良「そうですね……。今は理亞を見守るのが姉としてできる一番のことだと思います。ありがとうございます。ですが……」
ん?
聖良「やっぱりあなたはずるいです。そういう優しくて温かいところ……」
紅く染まった頬を隠すように俯いて彼女はそう呟いた。
瑠惟「あの……俺は別に……」
この人可愛すぎでしょ。平然を装いながらも内心は結構ドキドキしている。
聖良「もし私に何かあったら……」
そして彼女は顔を上げ俺の耳元で……
「責任取ってくださいよ///」
そこから東京に着くまでのことはよく覚えていない。
気付いたら俺たちは電車から降りていて目の前には顔を赤らめた聖良さんと未だに眠そうな理亞ちゃんが立っていた。
あれからのことを聞いたが聖良さんは「忘れてください……」というばかりで何も教えてくれなかった。
まぁいっか。
聖良「それでは私たちはこれで失礼します。今日はありがとうございました」
理亞「ありがとね兄様。また会いましょ」
瑠惟「こちらこそ久しぶりに話ができて楽しかったです」
聖良「イタリアでも頑張ってください。応援してますから」
瑠惟「はい、頑張ります。では……」
家に帰った俺は早速荷造りを始めた。出発は2日後だったので早く準備を始めたかったのだ。
だがそれと同時にある疑問が頭が離れなかった。
あの時の鞠莉ママの何かを企んでいるような不気味な笑顔。それに何故俺にだけ結婚を知らせる手紙が届いたんだ?
いくら家族ぐるみで仲が良いといっても娘の結婚の報を身内でもない俺に知らせる必要がある? 鞠莉ママは俺の両親が海外に出ていることは知っているからあの手紙は間違いなく俺宛だ。
俺はあの手紙を見返すことにした。
引き出しから手紙を出して再度中身を読む。
手紙の本文にはこう書かれていた。
『小原家長女の小原鞠莉はこの度縁があり入籍する運びとなりましたことを報告させていただきます』
何度もこの文章を読み返したが特におかしな点はなかった。
だがこの手紙は何かがおかしい。
そう思い視線を手紙の端の方にやるとあることが書かれており、俺はこれが違和感の正体であることに気付いた。
まさか……そんな……鞠莉さんは……
翌日俺は虹ヶ咲学園に来ていた。
理由は簡単。生徒手帳用の写真撮影や編入生の健康診断を行うためだ。
といっても今年の編入生は俺と留学生・転校生の女子二人の計三人らしいので時間はかからなかった。
それにしても他の編入生の女子は個性的だったな。一人は外国人でめっちゃスタイルが良くて、もう一人はなんか枕を持ってて眠そうだったし。
用事も終わったので帰ろうとしたが、ふと以前ここに来た時のことを思い出して俺はまたスクールアイドル同好会の部室へと立ち寄った。
ドアの前に立ち三回ノックをすると中から返事が聞こえたので「失礼します」と言いながらドアを開けた。
部室には前と同じく優木さんがいて俺を見ると「あなたは……」と少し驚いていた。
せつ菜「西王瑠惟さんでしたね。本日はどうされたんですか?」
瑠惟「今日は健康診断とかあってこちらに来ていたので……」
せつ菜「そういえば今日は編入生の健康診断の日でしたね。立ち話もなんですからどうぞ座ってください。今お茶でも出しますから」
彼女に案内されるままに俺は適当な席に着いた。
しばらくして彼女がティーセットを持ってくると俺は気になっていたことを聞いた。
瑠惟「この同好会って優木さんの他に誰かいるんですか?」
そう聞くと彼女は少しばつが悪そうな顔で答えてくれた。
せつ菜「恥ずかしい話ですが私以外は……」
おっと今のは聞いちゃいけないやつだったか。
瑠惟「すいません。変なこと聞いちゃって」
せつ菜「いえいえ大丈夫ですよ。それに今年はきっと色んな方が入部してくれそうな気がするんです」
俺に目配せしながら語る優木さん。どうかがんばってください。
せつ菜「ところで話は変わるんですが、西王さんはAqoursというスクールアイドルをご存じですか?」
おぉもしかしてこの子Aqoursのファンなのか。
瑠惟「はい、大ファンなんですよ。優木さんも好きなんですか?」
せつ菜「もちろんですよ。日本中のスクールアイドルにとってAqoursは憧れです。でも私はAqoursのマネージャーさんのファンでもあるんですよ」
え? それ俺じゃね? 目の前にいるんだけど。
瑠惟「はぁ……」
せつ菜「私もAqoursを見て思ったんですよ。あんな素敵なマネージャーさんがいてくれたらなぁって」
この子本気で言ってる? いや、気づいてないのか?
せつ菜「そのマネージャーさんの名前……西王瑠惟っていうんですよ。もしかしなくてもこの方って今私の目の前にいるあなたですよね」
やっぱり気付いてるじゃん。
瑠惟「まぁそうなりますね。・・・では改めて。この度浦の星女学院から来ました。Aqoursの元マネージャーの西王瑠惟です」
そう言うと優木さんは納得したように首を縦に振った。
せつ菜「やはりそうでしたか。以前あなたと会った後に調べてそうかなと思っていました。それにしてもどうしてこの学校に?」
瑠惟「実は浦の星は統廃合になって俺は実家のある東京の学校に通うことになったんです」
ラブライブ優勝校が統廃合したという嘘のようなことを聞いて驚く優木さん。
せつ菜「浦の星が統廃合!? ではAqoursは解散したのですか?」
瑠惟「いや、Aqoursは別の学校で続けてくれると思う」
俺の返答に優木さんは首を傾げた。
せつ菜「なんだか含みのある言い方ですね」
瑠惟「Aqoursは俺や三年生が抜けて六人になったんだがどうも新体制になってから上手くいっていないみたいで、今度元メンバーを含めた10人で話し合いをする予定なんです。これからどうしていくのか」
せつ菜「私は……Aqoursの皆さんには活動を続けてほしいです。ラブライブや動画でAqoursを見るたびに私は元気づけられ勇気をもらいました。たとえ人数が変わってもAqoursはAqoursのままなんです。三年生の方が引退されたからといってゼロにはなりません。積み上げてきた一つ一つがAqoursを形作っていると思います。それは西王さんも分かってると思います。あ……すいません、部外者の私がこんなことを言ってしまって」
俺は優木さんの言葉に聞き入ってしまっていた。
瑠惟「優木さんの言う通りだと思います。Aqoursは俺達がいなくなってもAqoursであり続ける。それは俺があいつらと過ごした一年で身をもって学んできました。それに優木さんは部外者なんかじゃありません」
せつ菜「え?」
瑠惟「俺たちAqoursにとって優木さんを含めたファンの人たちもAqoursなんです。11人目のメンバーであり、その繋がりは決して切れるものではない。ファンの人たちがいるから俺たちは頑張ってこれたし、たくさん支えてもらった。だから部外者だなんて言わないでほしいです。大切な仲間ですから。」
せつ菜「なるほど・・・Aqoursがラブライブで優勝できた理由は曲とパフォーマンスだけじゃないっていうのがあなたの言葉を聞いて理解しました。」
瑠惟「それはどうも。」
すると優木さんは少し考える動作をして俺にこう言った。
せつ菜「あなたがこの学校に来たのもスクールアイドル同好会にたどり着いたのも何かの縁です。西王瑠惟さん、スクールアイドル同好会に入って私のマネージャーになってくれませんか?」
まさかの勧誘でした。ていうかこの流れSaint Snowの時にも体験したような・・・。
まぁでも・・・答えは決まってる。
瑠惟「優木さん、悪いけどその提案は受け取れないです。この学校には自分の夢を叶えにきたんです。」
申し出を断ると彼女は肩を落としたがすぐに戻った。
せつ菜「夢ですか・・・?」
瑠惟「実はマネージャーになる前はバスケをやってたんですけど、とある理由で離れてしまったんです。でもその後スクールアイドルのマネージャーになってみんなと一緒に夢を追いかけていくうちに自分の夢にもう一度向き合おうと決めたんです。だから俺はマネージャーにはなれません。・・・・・・ですがスクールアイドル同好会には入部します。やっぱりスクールアイドルは俺の一部ですから。それに優木さんを見てるとまた奇跡が起きるんじゃないかってそんな気がします。」
せつ菜「そうですか・・・マネージャーになれないのは残念ですが、入部してくれるのは嬉しいです!ありがとうございます!」
瑠惟「ではこれからよろしくお願いします」
彼女の前に俺は手を差し出す。
せつ菜「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
俺たちは固い握手を交わし入部を誓うのだった。
それからしばらくここで時間を過ごし、頃合いもいいので部室を後にしようと席を立つと・・・
せつ菜「あ、そうだ。西王さん、帰る前に良ければ連絡先を交換しませんか?」
俺はその申し出を快く受け取り彼女と連絡先を交換した。
せつ菜「何かあればいつでも連絡してください!それと・・・がんばってくださいAqoursのこと」
瑠惟「ありがとうございます。ではこれで失礼します」
彼女の見送りを受けて俺は部室と学校を後にした。
そしてイタリア出発当日、俺は東京の空港で千歌たちと合流した。
イタリアへは千歌たちに加え先日会った曜の従妹の月も一緒に行くことになった。
なんでも彼女は幼いころにイタリアに住んでいたらしく、現地の案内をしてくれるそうだ。これは心強い。
俺たちが乗る便の搭乗ゲートが開き、みんなが飛行機に乗り込む。
みんなの一番後ろにいる俺はチケットと共に別の紙を持っている。
そう、鞠莉さんの結婚について書かれた例の手紙だ。
必要になるかと思い家から一緒に持ってきたのだ。
目を閉じて手紙がくしゃくしゃにならない程度に強く握る。
・・・鞠莉さん、ダイヤさん、果南さん、絶対に探し出して見せますから待っててください。
千歌「瑠惟君、何してるの?早く行くよ。」
中々こちらに来ない俺に気付いた千歌が俺に呼び掛けた。
瑠惟「あぁ、すぐに行く。」
さぁ、楽しい楽しい旅の始まりだ。
劇場版編のくせに虹学メンバーを出していますが、この話は虹ヶ咲学園編が始まる前の話という立ち位置なのでお許しください。