しばらく走っていると探していた赤いツインテールが目に入った。
「ルビィちゃ・・・」
そう声を掛けようとしてやめた。なぜなら・・・
「こんな所に呼び出してどういうつもり?」
ルビィ「ご、ごめんなさい理亞ちゃん。いや、理亞さん・・・」
そこにはルビィちゃんだけじゃなく理亞ちゃんもいたのだ。
俺は思わず物陰に身を隠してしまう。いやでも別に隠れる必要は無いような・・・
それより今理亞ちゃんは呼び出されたと言っていたが、まさかルビィちゃんが自分から彼女と会いたいと呼び出したのだろうか?
俺は二人の会話に耳を傾ける。
ルビィ「あのね・・・け、決勝進出おめでとう。」
理亞「はぁ・・・こんな夜遅くにどうしたのかと思えばまさかそれを言うためだけに呼んだの?」
ルビィ「それは・・・その・・・違うというか・・・。」
理亞「もぉ!ハッキリ言いなさいよ!」
ルビィ「ピギィ!え、えっと・・・昨日と今日の理亞さんの様子がなんだか変だったから気になっちゃって・・・。」
どうやらルビィちゃんも異変に気付いていたようだ。というよりルビィちゃんだからこそ気付けたのかもな。
その事を言われた理亞ちゃんは呆れたように答えた。
理亞「なるほどね・・・。兄様だけじゃなくてあなたにまでも気付かれていたとは。我ながら情けないわ。」
ルビィ「もしかして・・・聖良さんと何かあったの?」
理亞「あなたに話す必要は無いでしょ。」
ルビィ「そ、そうだけど・・・。」
それでもルビィちゃんはめげずに言う。
ルビィ「確かに私達は決勝を戦う敵同士かもしれないけど・・・私達は同じスクールアイドルの仲間だから・・・何か力になれないかって思ったの。」
理亞「・・・」
理亞ちゃんも納得したのだろうか、何も言い返さなかった。
そしてしばらくして理亞ちゃんが何かを決心したかのように話し始めた。
理亞「絶対に他の人に言わないでよね。」
ルビィ「うん。」
理亞「私ね姉様と喧嘩したの。昨日の予選の少し前ぐらいから。」
ルビィ「どうして?だってあんなに仲が良くて、それでいてスクールアイドルをやってたら・・・」
理亞「姉様に言われたの。この大会が終わったらあなたはSaint Snowを続けなさいって。だけど・・・」
聖良さんもダイヤさん達と同じ3年生でこの大会が最後。
理亞「私は・・・私はまだ姉様とスクールアイドルをやりたい・・・。やっと一緒にできたのに、たった一年で終わりだなんて・・・。あと一度のステージで終わってしまうなんて。」
ルビィ「・・・」
しばらく二人の間に沈黙が流れる。
理亞「どう?あなたにはどうすることも出来ないって分かったでしょ?だから早く帰っ」
ルビィ「ううん!そんなことないよ!次で最後じゃないよ!」
理亞「は?あなた何言ってるの?」
ルビィ「だから次で最後じゃない!」
理亞「・・・いい加減にしてよ!あなただって分かってるんでしょ!あなたのお姉さんの黒澤ダイヤも私の姉様も次の決勝で最後なの!デタラメなこと言って変に希望持たせないで!」
彼女は苛立ちを隠せず、ついには怒鳴ってしまった。
ルビィ「分かってるよ。お姉ちゃんと一緒にスクールアイドルが出来るのはあとちょっとなんだって。だから・・・」
「ルビィ達と一緒にライブをしてみませんか?」
ファ!?
理亞「!?」
俺も理亞ちゃんも予想外の展開に驚きを隠せない。
理亞「そ、それってつまりAqoursとSaint Snowの合同ライブってこと?」
ルビィ「うん!ラブライブ決勝の前に私達で最高のライブ作りたい!お姉ちゃんや聖良さんに最高の思い出をプレゼントしたい!ルビィ達だけでもできるんだって見せてあげたい!」
理亞ちゃんは少し考えた。
多分、彼女自身も何か思うことがあったのだろう。聖良さんとSaint Snowを続けたい。しかし、始まるってことは終わりがあるっていうこと。それでも残された時間の中で少しでも多く大好きな姉と一緒にステージで輝きたいと。
だから・・・彼女の答えは決まっている。
理亞「・・・やる。」
ルビィ「え?」
理亞「私もまだ姉様とステージに立ちたい!このまま決勝を向かえたくない!」
ルビィ「理亞さん・・・。」
理亞「さん付けしなくていいから・・・。」
ルビィ「!」
ルビィ「一緒に頑張ろうね!理亞ちゃん!」
理亞「もちろん!やるからには一切妥協はしないわよ!ルビィ!」
という感じでこの寒空の下で二つの小さな光が大きく輝こうと動き始めたのだ。
そしてそんな二人の様子をこっそり見ていた俺はというと・・・
「ちょっと君。ここで何してるのかな?」
瑠惟「え?あの・・・これはその・・・。」
不審者と間違われて警察の方から職質されていました。
翌日、本来なら俺達は午後からの便で静岡に帰る予定の日だったのだが・・・
ルビィちゃんから話があると呼び出され一年生が泊まっている部屋に来ていた。
部屋ではルビィちゃんだけでなく花丸ちゃんや善子もいた。
ルビィ「せ、先輩・・・そ、相談があります・・・」
大体何を言いたいのかは見当がついてる。
瑠惟「あぁ分かってる。具体的には分からないけど何かをやろうとしてるんだろ?」
ルビィ「はい・・・。だから・・・」
花丸「マル達がまだ北海道に残れるように6人を納得させてほしいずら。」
ん?
瑠惟「6人?Aqours全員じゃなくて?」
ルビィ「これは・・・ルビィ達自身でやりたいから・・・。」
一年生だけでか・・・なんだか色々と不安なんだけど大丈夫かな?
瑠惟「まぁ、少し心配だが3人もいるから何とかなるだろ。じゃあがんばれよ。」
善子「何言ってるのよ。先輩も残るのよ。」
えぇ〜!?
瑠惟「一年生だけでやるんだろ!?俺は要らないだろ?」
ルビィ「それは・・・」
瑠惟「それに泊まる場所とかどうするんだ?」
花丸「詳しいことは今から決めに行くずら!」
善子「ていうことで移動するわよ!」
という感じで半ば無理やり連れ出され、たどり着いたのは一昨日に理亞ちゃんと来た喫茶店だった。
俺達4人が喫茶店に入るとルビィちゃんが店内を見渡し「あっ居た。」と言ってとある人物がいる席に案内された。
「やっと来たのね。遅いじゃ・・・」
瑠惟「よぉ。理亞ちゃん。」
花丸「こんにちは。」
善子「ヨハネ降臨よ。」
理亞「・・・ちょっと待って。兄様がいるのは分かるわ。でも後の2人は?」
花丸「えっとマルは国木田花丸ずら・・・です。」
理亞「あなた達のことは知ってるわ。私が言いたいのはなんでここにいるのかっていうことよ。」
ルビィ「花丸ちゃんもヨハネちゃんもルビィが話したら私たちの計画に協力してくれるって。」
そう言うと理亞ちゃんはバツの悪そうな顔で
理亞「私、みんなでワイワイとか苦手だし。」
花丸「それを言ったらマルも善子ちゃんも特にこのコミュ障ヘタレの先輩だって・・・」
おい、さらっと人をディスるんじゃありません。
理亞「へぇ・・・そうなんだ・・・。」
瑠惟「ルビィちゃんからある程度のことは聞いたんだけど・・・具体的に何をするんだ?」
昨日こっそり聞いておいて白々しい人間である。
理亞「私たち曲を作って一緒に踊りたいの。」
ルビィ「私達は1歩前に進まなくちゃいけないって思ったんです。お姉ちゃん達や聖良さんに私たちだけでもできるってところを見せなくちゃダメだって。」
確かに一年生は基本的には作曲とかにはあまり関わってこなかった。言い方を変えれば二年生や三年生におんぶにだっこの状態だった。だからこの機会に自分たちが成長した姿を上級生に見せて安心してもらおうっていうことだな。
瑠惟「だったら尚更俺がいる意味がよく分からないんだけど。」
ルビィ「先輩にはルビィ達の姿を一番近くで見ててほしいんです!先輩も安心してAqoursをルビィ達に託せるように!」
どうやらおんぶにだっこではなかったみたいだな。一年生もあいつらの姿を見てきたんだもんな。
瑠惟「そういうことなら喜んで残るよ。」
理亞「でも兄様達はこのまま残っても大丈夫なの?」
と彼女が聞いた瞬間に俺のスマホに千歌から着信が入った。
瑠惟「おぅ。どうした?」
千歌「『どうした?』じゃないよ!もうすぐ帰る時間だよ!どこで何してるの!」
瑠惟「えっと・・・」
ヤバいって。すっかり忘れてた。
ルビィ「先輩?」
千歌「ん?今の声は・・・ルビィちゃん達もいるの?」
瑠惟「あぁ。」
千歌「だったら4人共早く荷物をまとめて空港に来なさい!」
と千歌に怒られて電話が切れてしまった。
理亞「本当に大丈夫なの?」
花丸「大丈夫ずら!先輩がうまく説得してくれるはずずら!」
ルビィ「よろしくお願いします・・・。」
瑠惟「何とかやってみよう。」
空港へ向かう道中、俺は必死に言い訳を考えた。
空港ロビーには額に青筋が浮かびそうなくらい怒った二年生、三年生が俺達を待ち構えていた。
瑠惟「誠に申し訳ございませんでした!」
一年生「ございませんでした!」
見よ!この見事な土下座を!
千歌「はぐれて帰ってこないかもって本当に心配してたんだよ!」
梨子「まぁまぁ千歌ちゃん、こうして間に合ったんだし。」
怒り心頭の千歌を梨子がなだめる。
千歌「・・・そうだね。じゃあ静岡に帰るよ。」
許された!
花丸(先輩、言うなら今ずら!)
花丸ちゃんにここだと言わんばかりに背中を押される。
瑠惟「あのさ・・・ちょっといいかな?」
千歌「ん?」
瑠惟「実は・・・一年生がもっと北海道を観光したいって言っててさ、だから俺が面倒見るからもう少し滞在してもいいか?」
千歌「はい?」
瑠惟「ほら今は冬休みだし、せっかくここまで来たんだから・・・」
千歌「さっき迷ったばっかでその次がここに残ると?」
やばいやばいまた怒り始めたぞ。
梨子「私は別に大丈夫だと思うけど。ホテルとか飛行機はどうするの?」
瑠惟「とりあえず俺が全部立て替えておくから大丈夫。」
これはしばらく財布が軽くなるな。
千歌「むむむ・・・」
瑠惟「ほんの数日で戻るから。」
千歌「むむ・・・」
瑠惟「ちゃんと練習もさせるから。」
千歌「む・・・」
瑠惟「千歌へのお土産、欲しいもの買ってきてやるから。」
千歌「いいよ!」
いいんかい!
ダイヤ「ち、ちょっと待ってください。本当に大丈夫ですの?」
とダイヤさんは不安そうな目で俺達を見る。
今回ここに残る上で一番説得しにくいのがこの人なんだよなぁ。
さて・・・どうするべきか。
仕方ないここは先輩の土下座で・・・
ルビィ「ワガママ言ってごめんねお姉ちゃん。ルビィ達、数日で戻るから。それにこっちでも先輩にと一緒に練習するから・・・。」
ダイヤさんはしばらく考えた後、少し照れた様子でこう言った。
ダイヤ「ま、まぁ一年生だけならともかく瑠惟さんが一緒なら何も心配はありませんね。」
一年生だけならともかくか・・・
そんなこんなで何とかみんなを説得することに成功した。
で、6人は予定通り静岡に帰ったわけだが・・・
瑠惟「さっきはああ言ったけど、マジで止まる場所どうするよ?」
ルビィ「それなら大丈夫です!」
瑠惟「え?ほんとに!?」
スマホで格安ホテルと検索していた手を止めルビィちゃんの方を向いた。
ルビィ「えっと・・・さっき理亞ちゃんからメールが来て、ここに滞在するなら家に来ないかって。」
瑠惟「ということは・・・」
善子「Saint Snowの根城に」
花丸「レッツゴーずら!」
俺達四人は理亞ちゃんの家にお邪魔することになった。
ここ最近何度も来ている気がする。そんなこと思いながらお店兼住居の玄関扉を開けると理亞ちゃんと聖良さんが出迎えてくれた。
瑠惟「しばらくお世話になります。」
理亞「べ、別にわざわざ泊まれる場所を空けたんじゃないからね、偶然私の部屋に余裕があっただけなんだから。」
聖良「今日は泊まりに来てくださりありがとうございます。私も理亞も皆さんを歓迎します。どうぞ函館を楽しんでください。」
この感じだと聖良さんには計画がバレていないようだ。
四人「お邪魔します。」
理亞「あなた達三人は私の部屋ね。兄様は・・・」
すると腕をグイッと引っ張られた。
聖良「瑠惟さんは私の部屋ですよ♪」
瑠惟「え?いや、俺は一人でも大丈夫ですけど。」
瑠惟(ちょっと理亞ちゃん。どういうことだよ。)
と彼女に視線を送る。
理亞(ごめんなさい。これだけは姉様が譲ってくれなかったの。家に泊める条件で。)
と言っている気がした。
聖良「私の部屋はこっちですよ。」
まぁホテル代が浮くと考えたらこれくらい安いよな。俺は観念して彼女について行った。
聖良「さぁどうぞ。遠慮せずに中に入ってください。」
言う通り中に入ると部屋全体が目に入った。
おぉ・・・聖良さんの部屋はなんというか・・・
瑠惟「普通ですね。」
聖良「それはどういう意味ですか?」
瑠惟「いや、もっと部屋が女の子してるのかと思ってたんですけど、実際にはこう落ち着いた感じで俺好みというか。」
聖良「褒め言葉として受け取っておきますね。」
そう言う彼女の顔はどこか嬉しそうだった。
聖良「温かいお茶を持ってきますので少し待っててくださいね。」
そして彼女は部屋を出ていった。
一人になった俺は部屋を見渡した。
シングルベッドに勉強机に・・・ん?あれは・・・
机の上に置いてあるスノードームに目がいった。
遠目からでも分かるくらいそれは綺麗に輝いていた。
思わず俺は立ち上がってそのスノードームを手に取ってしまう。
スノードームの中には雪の結晶と思しきものがあった。少し振るとまるで本物の雪が降ってきたみたいにキラキラと輝いていた。
すげぇ・・・(小並感)
聖良「それは私と理亞が昔スクールアイドルになろうって決めた日に二人でおそろいのを買ったんです。」
振り返るといつの間にか聖良さんがお茶を持って戻ってきていた。
俺は慌ててスノードームを元の位置に戻した。
瑠惟「すいません。勝手に触ったりして。」
すぐに謝ると聖良さんは怒る様子もなく『大丈夫ですよ。』と言ってくれた。
聖良「そしてスクールアイドルになるって決めたその瞬間から雪の結晶を私たちSaint Snowのシンボルにしようって。」
瑠惟「いい話ですね。」
聖良「ありがとうございます。」
瑠惟「正直に言うと少し羨ましいです。そうゆう風に信頼し合える兄弟姉妹がいること。」
聖良「そういえばあなたは一人っ子でしたね。」
瑠惟「はい。だから聖良さんみたいな姉がいたらなーって思っちゃいました。」
俺の言葉を聞いて聖良さんが少し表情が暗くなった。
聖良「・・・私はあなたが思っているような素敵な姉ではありません。」
瑠惟「どうしてですか?」
聖良「私は理亞に身体的、精神的に負担を掛けていたみたいです。。スクールアイドルになってから・・・いや、もしかしたらそれ以前から。」
俺は何を言っているのかよく分からなかった。
聖良「あなたはスクールアイドルといえばどのグループを思い浮かべますか?」
唐突にそんな質問がとんできて少し考えたが俺はこう答えた。
瑠惟「俺はμ’sですかね。やっぱり今のスクールアイドルがあるのもあの人たちがあってこそですから。」
聖良「そうですよね。多分他の人もあなたと同じような答えだと思います。でも、私にとってのスクールアイドルはA‐RISEだったんです。」
A‐RISE・・・第一回ラブライブの優勝グループ。今となってはμ’sの陰に隠れがちだが、真の意味でスクールアイドルというものを広めたのは彼女達だ。
聖良「私はA‐RISEの3人の姿に憧れました。テレビで初めて三人を見た時、私の中で何かが変わったような気がしたんです。それで私もスクールアイドルになって彼女達みたいな歌を歌って踊りたいと。」
ここまで聞いて俺はある疑問が浮かんだ。
瑠惟「それのどこが理亞ちゃんの負担に?」
聖良「・・・確かに今の私の言葉じゃ足りませんでしたね。そうですね・・・恐らく私は理亞に私の理想を押し付けていたんです。」
俺は何も言わずに聖良さんを見つめる。
聖良「理亞は私のことを本当に尊敬してくれて愛してくれましたから、自分の気持ちを押し殺していたのかもしれません。あの子は優しい子ですから。」
瑠惟「もしかして・・・理亞ちゃんは」
聖良「はい。あなたの考えている通りです。理亞はA‐RISEではなくμ'sに憧れていたんです。A‐RISEのような他を寄せつけない絶対的な強さではなく、μ'sのようなみんなで一緒にステージを創り上げていく。そんな温かさを。」
正直、聖良さんからこの話を聞くまではこんな考えは絶対に浮かばなかっただろう。だって理亞ちゃんはてっきりA‐RISEを・・・
聖良「私はその事に気づいてませんでした。そして私は高校に進学して本格的にスクールアイドルを始めました。私はただただ三人の背中を追いかけました。理亞もそんな私の姿を見てきました。理亞が高校生になって二人でSaint Snowを結成して・・・そんな時でした。理亞が私にある動画を見せてきました。」
そう言うと聖良さんはパソコンを起動してある動画を見せてくれた。
瑠惟「これって・・・」
そこに映っていたのは・・・俺達Aqoursだった。
聖良「はい。あなた達が一番最初に投稿したPVです。」
Aqoursにまだ三年生が入っていない時に内浦の人達と協力して作ったやつだ。なんでこれを?
聖良「私達はこのPVでAqoursの存在を知りました。初めて聞いて私はただ良い歌を歌うなとしか思っていませんでした。でも・・・」
聖良「あの子は・・・理亞は違いました。このPVを何度も何度も繰り返し見ていました。私は聞きました。どうして何度も見るのかと。そしたら理亞はただ今後の強敵になりそうだから観察していると言いました。でも、そう言うあの子はとても楽しそうでした。」
恐らく理亞ちゃんは俺達と自分の理想を重ねて見てしまっていたんだな。
聖良「私は悩みました。このまま理亞にスクールアイドルを続けさせるか、それとも・・・」
とそこまで言いかけたところで俺はもう耐えられなかった。
瑠惟「だぁー!!こんな辛気臭い話はやめましょうよ!」
聖良「瑠惟さん・・・。・・・そうですね!せっかくあなた達が私達のところに来てくれたんですからね!」
瑠惟「それに・・・理亞ちゃんはそんなこと思ってないですよ。あの子を見てると分かります。Saint Snowとしてステージに立ってる理亞ちゃんは輝いてるって。本当に楽しそうだなって。だから聖良さんはSaint Snowのリーダーとして、鹿角理亞の姉としてあの子を引っ張ってあげてください。きっとその内彼女自身のスクールアイドルの形を自分で見つけると思いますから。」
聖良「・・・何故あなたがAqoursのマネージャー足り得るのかが分かった気がします。そういうところに彼女達は救われてきたんですね。」
ん?一体何の事だ?
頭に疑問符を浮かべている俺を見て聖良さんは微笑んだ。
聖良「あなた自身が気づいてなくても周りの人はあなたの良さを分かっているはずです。私も気づいちゃいましたから。」ニコッ
そう言った彼女に少しドキドキしたのは内緒だ。
聖良「今日は久しぶりにこんな大勢で食卓を囲めるんです。腕によりをかけて料理を作りましょう!さぁ瑠惟さんも手伝ってくださいね。」
瑠惟「了解っす。」
足どり軽く部屋を出ていく彼女を追って俺も部屋を出て行ったのであった。