コミュ障ヘタレと9人のアイドル   作: まきパリ

21 / 40
4thライブ東京ドームで見て感動しました!WATER BLUE NEW WORLD→キセキヒカルは泣きそうになりましたね。まだまだ止まらないAqoursの活躍が楽しみです!・・・・・・花丸ちゃんを1位にしたい!


決勝を目指して

前回のコミュ障ヘタレ。

 

予備予選を突破したAqoursのもとに東京でのイベントの誘いがきて、瑠惟は自分を変える機会だと思い参加することを決意するが、当日になるとまたしても避けようとした。しかし、千歌達や後輩の後押しもあって彼は自分と向き合い、0から1に変わることができたのであった。

 

東京でのイベントが無事終了して、俺達は次の地区予選に向けて動きだそうとしていた。

 

俺達は地区予選のルール変更について話していた。

 

ルビィ「次の地区予選は今までみたいな会場の人達の投票だけでなく、ネット中継で見てくれた人も投票できるみたいですね。」

 

曜「ということは学校の生徒数が他のところより少ない私達は・・・」

 

瑠惟「不利・・・というわけでもないぞ。」

 

ダイヤ「それはどういうことですの?私は曜さんが言っているように生徒数が多い方が自然と票も伸びると思いますが。」

 

瑠惟「それは予備予選までの話だ。今回はネットでの投票がある。つまり全国から票が集まるから完全な実力勝負だ。それに生徒数が多いからって全員が自分のスクールアイドルに投票するとは限らないだろ?」

 

梨子「確かにそう言われると少し安心かな。」

 

果南「でも完全な実力勝負ってことは相当なパフォーマンスをしないと勝てないってこと。特に私達は他の学校のスクールアイドルと比べると結成してから日も浅いし、Aqoursは高校に入ってから歌やダンスを始めた子が多いから・・・。」

 

千歌「じゃあ私達は他のスクールアイドルよりもたくさん練習すればいいじゃん。」

 

果南「千歌・・・。」

 

千歌「確かに私達は歌やダンスがそこまで上手でもないし、特別な何かを持っているわけでもない。でも・・・」

 

瑠惟「でも?」

 

千歌「私達は10人もいる!1人や2人でできないことも10人ならきっとできる!」

 

瑠惟「そうだな。10人もいるんだったらお互いに支え合えるしな。」

 

曜「私達みたいな大人数グループはほとんどないし、私達だからこそできることがあるかもしれないね。」

 

瑠惟「ならまずはいろんなことができるようになるために『たくさん練習』だな。」

 

花丸「ライブ後だからやさしいのがいいずら~。」

 

 

練習が終わり帰り支度をしていると鞠莉さん達三年生から理事長室に来てほしいと言われた。

 

やはり入学希望者のことだろうか?

 

瑠惟「失礼します。」

 

理事長室には鞠莉さん、果南さん、ダイヤさんがいた。

 

鞠莉「練習終わりにごめんね。ちょっと見てほしいものがあって。」

 

そう言って鞠莉さんが見せてきたのは・・・

 

瑠惟「これはお父さんからのメールですか?」

 

鞠莉「えぇ。それでここに書いてあることなんだけど・・・」

 

『鞠莉、すまない。入学希望者の受付は年内までと言っていたが。どうにも事情が変わってしまい期限が今月末までになってしまった。もう少し待ってくれるように頼んだのだがこれが限界だった。私が至らないばかりに本当にすまない。』

 

これはこれは・・・ちょいとヤバいですね。

 

瑠惟「つまり今月以内・・・あと約三週間、地区予選の日までに100人集めろってことですか。」

 

ダイヤ「今日現在入学希望者は57人。あと43人集めなければなりませんわ。」

 

果南「やっぱり次の地区予選が勝負ってことね。」

 

瑠惟「少なくとも予選をトップで通過。これぐらいしないと人は集まりませんね。でもそんなパフォーマンスはどうやったら・・・」

 

あっ。一つ心当たりがある。リスクが伴うがもしかしたら予選をトップで通過できるパフォーマンスが。

 

あのノートに書かれてるフォーメーションなら。

 

瑠惟「果南さん、アレをやりましょう。というかやるしかないです。」

 

俺の言っていることを理解した果南さんはすぐに言い返した。

 

果南「前にも言ったよね?絶対にやらせないって。」

 

そう言った果南さんの顔は今まで見たどんな顔よりも怖かった。

 

しかしここでひるんではだめだ。

 

瑠惟「じゃあ果南さんは他に何かあるんですか?地区予選をトップで通過して入学希望者を100人まで増やせるようなやつが。」

 

果南「・・・」

 

ダイヤ「瑠惟さんそのような言い方は・・・。」

 

瑠惟「ダイヤさんだってそう思ってるんじゃないですか?アレをやるしかないって。」

 

ダイヤ「確かにそう思っていますが・・・。」

 

鞠莉「私もダイヤと同じよ。」

 

果南「ダイヤ、鞠莉・・・。」

 

彼女はしばらく考えた後に言った。

 

果南「少し考えさせて。」

 

そう言って彼女は理事長室を出て行った。

 

瑠惟「やっぱりダメですかね?」

 

ダイヤ「いいえ、あなたの言う通りその方法以外ないと私達もそう考えていました。」

 

鞠莉「果南は後悔してるの。アレを考えてしまったこと。私にやらせてしまったこと。そして私が怪我をしたこと。」

 

やっぱりあの時のフォーメーションか。

 

瑠惟「俺、後で果南さんの所に行って説得します。」

 

ダイヤ「待ってください。」

 

瑠惟「なんで止めるんですか?」

 

ダイヤ「違いますわ。」

 

鞠莉「私達も一緒に説得するの。あの頑固者は3人で説得しに行かないと折れないわ。」

 

瑠惟「ダイヤさん、鞠莉さんお願いします。」

 

 

 

 

その夜俺達3人は淡島にある果南さんの家に行った。

 

果南さんはテラスで例のフォーメーションが書かれたノートを見ていた。

 

どこか悲しそうに・・・。

 

しかし俺達が来たことに気が付くとその表情は無くなった。

 

瑠惟「答えを教えてください。」

 

数秒の沈黙の後に彼女は口を開いた。

 

果南「やっぱり私の答えは変わらない。絶対にダメ。それしか方法がないとしてもね。」

 

そう言うと思っていた。

 

瑠惟「それでも俺はやらせます。センターである千歌を信じます。だからそのノートを渡してください。」

 

果南「絶対に渡さない。また誰かが傷つくぐらいならこんなもの・・・」

 

すると彼女はノートを海に投げようとした。

 

それに気付いた俺はいち早く反応して彼女の腕を掴む。

 

果南「離して!こんなもの捨てたほうがマシなの!」

 

暴れる彼女の腕を離した。

 

果南「えっ?」

 

思っていた反応と違っていたらしく彼女は困惑する。

 

そして俺はゆっくり卑屈っぽく話しはじめる。

 

瑠惟「なら捨てたらいいじゃないですか。そのノート。」

 

ダイヤ・鞠莉「瑠惟(さん)?」

 

瑠惟「別にどうするかは自由ですけど、それを捨てるってことはダイヤさん、鞠莉さんとの思い出を捨てるのと一緒ですよ。自分たちのやってきたことを否定するってことですよ。」

 

果南「・・・」

 

瑠惟「どうしたんですか?捨てないなら代わりに俺が捨てますよ。」

 

そう言ってノートを取ろうとすると

 

果南「・・・わけない。」

 

瑠惟「なんて言ったんですか?」

 

果南「そんなことできるわけないじゃん!」

 

そのまま彼女は続ける。

 

果南「この3人での思い出なんて捨てられないよ。大切な親友との思い出だよ。3人で頑張って考えて、何回も練習して・・・。このノートには私達の想いがたくさん詰まってる。だから捨てるなんてできないよ・・・。」

 

泣いている彼女に俺は言う。

 

瑠惟「誰も果南さんのせいで鞠莉さんが怪我をしたなんて思っていませんよ。怪我なんてする時はしちゃうもんですよ。ですよね鞠莉さん?」

 

鞠莉「えぇ。あの時は少しunluckyなだけだったから。果南は何も悪くないわ。」

 

果南「鞠莉・・・。でも私はできなかったこれを千歌に押し付けたくない。」

 

ダイヤ「ぶっぶーですわ!・・・果南さん、私達はこれをできなかったから押し付けるのではありません。次の可能性を千歌さん達に託すのです。私達の想いと共に。」

 

果南「ダイヤ・・・。」

 

瑠惟「俺だって決して安全だとは言いきれません。でもできることは全部やりたいんです。最後まで足掻きたいんです。あいつらならきっとできると思います。だから果南さん・・・」

 

果南「もし・・・もし、少しでも危ないと私が判断したら、ラブライブを棄権してでも辞めさせるから。」

 

瑠惟「ってことは。」

 

果南「うん。このノートを千歌達に託す。私達3人の想いも一緒にね。」

 

瑠惟「ありがとうございます!」

 

果南「でも・・・流石に先輩に対してあの言い方はないね。」

 

Oh・・・

 

瑠惟「あれは何と言うか果南さんをその気にさせるために言ったというか・・・」

 

果南「ちょっとこっちに来なさい。先輩への口の利き方を教えてあげるから。」

 

瑠惟「待って!助けてください!ダイヤさん!鞠莉さん!」

 

ダイヤ「私たちはちょっと用事が」

 

鞠莉「あったかも?」

 

瑠惟「行かないで~!」

 

この後滅茶苦茶説教された。

 

 

 

次の日からAqoursは新フォーメーションの練習を始めた。

 

瑠惟「じゃあ今から練習を始めるが・・・千歌と花丸、2人は別メニューだ。」

 

千歌・花丸「えっ?」

 

瑠惟「さっきも説明したが今から練習する新曲のダンスは今までのどんな曲よりも体力と筋力が必要になると考えている。特に千歌はセンターで踊る以上みんなよりも激しいし、しんどい。」

 

千歌「私はセンターだから別メニューなのは分かるけど、なんで花丸ちゃんも?」

 

花丸「そうずら。」

 

瑠惟「えーっと花丸ちゃんはスタミナ面は特に問題ないがそれよりも筋力が不足してると思ったからだ。腕立ても一回できるか怪しいだろ?」

 

花丸「・・・確かに合ってるずら。」

 

瑠惟「理解してもらえたところで練習を始めようと思う。そっちは三年生の方に任せますのでお願いします。じゃあ俺たちは移動するぞ。」

 

ということで3人は体育館に移動した。

 

瑠惟「千歌はしっかりと準備運動をしておいてくれ。それで花丸ちゃんだが・・・これを使ってくれ。」

 

花丸「これは・・・ボールずら?」

 

瑠惟「そうバスケットボールだ。小学生用の小さいサイズのやつ。それを使って俺が言うメニューをやってもらう。最初はボールに慣れてもらうために俺とキャッチボールな。」

 

彼女とのキャッチボールが始まったわけだが

 

花丸「こんな距離届かないずら~。」

 

大体5メートルくらい離れて片手で投げても届かないよな。

 

瑠惟「違う違う。片手じゃなくて両手で投げてみてくれ。」

 

花丸「両手で投げるってどうやるずら?」

 

瑠惟「言い方が悪かった。両手で押し出すようにしてみてくれ。今からやってみるから。」

 

そう言ってバスケのパスの要領でボールを彼女に放つ。

 

瑠惟「こんな感じでやってみて。」

 

花丸「押し出すように・・・えいっ!」

 

彼女のボールは見事にバウンドせずに直接俺の手元に届いた。

 

花丸「届いたずら!」

 

瑠惟「やるじゃん。」

 

片手だけで投げようとすれば利き手の方に力が集中してしまい偏った筋肉がついてしまうと思った。だからあえて距離を離して両手で投げさせた。バランスのいい筋肉をつけるために。

 

それからしばらくの間2人のキャッチボールもといパス練習は続いた。

 

彼女から少し疲れが見え始めたところで休憩を取らせた。

 

瑠惟「どうだ千歌。準備の方は?」

 

千歌「ばっちりだよ!」

 

瑠惟「よし。じゃあ今から俺が今回の曲で一番難しいところをやる。とりあえずどんな感じか見ておいてくれ。」

 

そして俺はノートに書いてあったロンダート→バク転をやって見せた。

 

何回かやってみて思ったが正直男でもマスターするのは簡単ではないと感じていた。

 

それを見ていた千歌は・・・

 

千歌「今のを私がやるの?」

 

瑠惟「嫌なら無理にやれとは言わないが・・・」

 

千歌「ううん!やりたい!」

 

瑠惟「お前ならそう言うと思ってた。」

 

千歌「簡単にできることじゃないのは分かってる。でもこれができたら絶対に輝ける!予選も突破して学校も救える!だから私絶対にできるようになって見せる。」

 

瑠惟「俺の特訓は厳しいぞ。それでもやるか?」

 

千歌「やるに決まってる。やらなきゃダメなの。」

 

瑠惟「なら俺は確実にお前がバク転ができるようにさせる。」

 

ここから俺と千歌と花丸ちゃんの猛特訓が始まった。

 

 

 

それから時間が過ぎていき地区予選2日前。

 

厳しい特訓の成果は花丸ちゃんには目に見えて出た。

 

数週間前までは腕立てなんてろくにできなかった彼女だが今では

 

花丸「15.16.17・18・・19・・・20。できたずら!」

 

瑠惟「やったじゃないか!目標の20回達成だ!」

 

花丸「先輩のおかげずら!」

 

瑠惟「そんなことない。花丸ちゃんの努力の結果だよ。」

 

花丸「毎日マルの為に時間を割いてくれて一緒にいてくれたからここまでできたずら!だからこれはマルと先輩、2人の努力の結果ずら!」

 

瑠惟「嬉しいこと言ってくれるねー。じゃあそういうことにしておくよ。」

 

と、こんな感じで花丸ちゃんの方は心配がなくなった。

 

しかし一番重要な千歌の方は・・・

 

千歌「だぁー!また失敗した!なんで!?」

 

瑠惟「おい落ち着け。焦ると余計にできなくなるぞ。」

 

千歌「でも、あと2日しかないんだよ!このままじゃ決勝にも行けないし、学校を救うのも無理!とにかく形だけでもやらなきゃ!」

 

今のコイツは何かがおかしい。いつもの千歌ではない。

 

本当に困った。教えられる事は全て教えた。基礎を徹底的にやらせ、体にかかる負担が少なくなるようにさせてきた。

 

現に惜しい場面は何度もあった。

 

でもあともう一歩が届かないのだ。

 

そんな千歌を見ていた果南さんが言った。

 

果南「千歌、明日までにバク転が成功できなかったら、フォーメーションを変える。もしできないまま本番で万が一のことがあったら私は一生後悔する。だからこれは脅しなんかじゃない。あなたを守るためなの。」

 

彼女の言うことは至極当然だ。

 

自分ができないということは張本人である千歌が一番よく分かってる。

 

そしてそれは側で教えてきた俺も同じであった。できなければ惜しいも惜しくも関係ない。どっちにしろできないのだから。

 

だから千歌は何も言うことができない。

 

ここに来て初めて諦めの気持ちが湧き始めていた。

 

万事休すか・・・。

 

 

 

しかしある1人の言葉が俺達を動かした。

 

花丸「私は千歌ちゃんならできると思うずら。今までどんな状況でも奇跡を起こして何とかしてきた。だから今回もきっとできるようになるって信じてるずら。それに瑠惟先輩が絶対にできるようにさせるって言ってた。マルはAqoursに入ってから一度も先輩の言葉を疑ったことはない。マルは先輩の言葉を信じて頑張ったから腕立てをできるようになったずら。果南ちゃんも他のみんなも先輩を・・・千歌ちゃんを信じてほしい。」

 

千歌「花丸ちゃん・・・」

 

瑠惟「ずら丸・・・」

 

花丸「ずら丸って言うなずら。」

 

果南「・・・分かった。期限云々の話は無しにする。でも、本当に本番でやらせるかの判断は瑠惟に任せる。私はあなたの言葉を信じる。」

 

瑠惟「任せてください。絶対に成功させます。」

 

さて、、こうなってしまっては仕方ない。荒療治をするしかない。

 

瑠惟「千歌。」

 

千歌「ん?」

 

瑠惟「自分でも分かっていると思うが、もしバク転が成功できないならラブライブ決勝なんて夢のまた夢だ。それに学校も救えない。つまりだな今のお前に両方とも達成するなんてことは絶対に無理だ。」

 

千歌「え?」

 

さっきの話の流れからこんな言葉が出るはずがない。

 

そう思っていたAqoursは俺の言葉に困惑する。

 

瑠惟「だから一回全部忘れろ。ラブライブ決勝も学校の事も。今のお前を縛りつけているのは決勝に行かなきゃいけないという義務感。学校を救わなきゃいけないというプレッシャー。これに囚われている以上力を発揮することなんてできん。・・・まぁ元はと言えば俺の責任でもあるからな。だから・・・」

 

俺は千歌から数メートル離れたところで座り込む。

 

瑠惟「ロンダート→バク転で俺を飛び越えろ。」

 

千歌「えっ!?何言ってるの!?ダメだよ!もし私が失敗したら・・・」

 

瑠惟「あぁ。俺にぶつかって両方とも怪我をするだろうな。」

 

千歌「そんなことできない!危ないよ!」

 

瑠惟「確かに危ないかもしれない。でも俺はお前を信じる。絶対に成功するって。だからお前も信じてくれ。俺の教えた事は間違いじゃないって。高海千歌の努力は無駄じゃないって。」

 

これは賭けだ。わざと千歌を追い込むことであいつの力が発揮されることに賭けている。だが下手をすれば大怪我をする可能性もある。

 

でもまぁ千歌なら大丈夫だろ。俺が信じなくて誰がお前を信じるんだよ。

 

千歌は無言で頷いた。

 

それはあいつが俺を信じたというサインでもある。

 

千歌「じゃあいくよ!」

 

俺は目を閉じる。

 

だんだんと足音が近づいてくる。

 

失敗したら・・・なんて俺は考えなかった。

 

ここでやってくれるのが真のリーダーだって。果南さん達3年生が夢を託した奴だって。

 

 

 

 

地区予選当日、会場は前回のラブライブでAqoursが敗退した場所。

 

Aqoursにとって因縁の場所だ。

 

会場には予選開始の30分前だというのに多くの人で埋め尽くされていた。

 

俺はあえてAqoursの控え室には行かなかった。

 

会場入りして別れる時に言いたいことは全部言ったからな。

 

瑠惟『今のみんななら絶対できる。自分達を信じろ。みんなのやってきたことは無駄じゃないって証明してこい。・・・それと千歌。このステージでは決勝も学校のことも何も考えなくていい。だから・・・思う存分楽しんでこい!』

 

できることは全てやってきた。後は見守るのが俺の仕事だ。

 

っとそれよりも席を探さなければ。このままじゃ座れない。

 

一席だけ空いてる所があったので急いでそこに座る。

 

なんとか座れたけど・・・本当に人が多いな。

 

それだけ注目されているってことか。

 

すると隣から声を掛けられた。

 

「お久しぶりですね。」

 

声のほうに向くと見知れた顔があった。

 

瑠惟「Saint Snowさん!?」

 

何でここに?確かもうすぐ予選だったような・・・

 

聖良「招待しておいてその顔ですか・・・。」

 

え?まさかあいつら俺に黙って招待していたのか?

 

瑠惟「お久しぶりです。聖良さん、理亞ちゃん。」

 

理亞「久しぶりね。兄様。」

 

瑠惟「兄様ってAqoursの前では絶対に言うなよ。面倒臭いことになるから。」

 

聖良「ところで何かあったんですか?前と雰囲気が違うような・・・」

 

瑠惟「まぁ色々あったんです。Saint Snowの2人にも感謝してます。」

 

聖良「私達何かしましたっけ?」

 

人の過去暴露しておいて忘れてるのかよ。

 

瑠惟「とにかく今の俺は前までの俺とは違いますよ。もちろんそれはあいつらも一緒ですけど。」

 

聖良「なるほど・・・そういうことですか。」

 

何がなるほどなんだよ。まぁ分かってくれてるならそれでいいか。

 

理亞「兄様、今度は私達の予選も見に来てね。」

 

瑠惟「確か出身は北海道だよね。俺、寒いのやだなー。」

 

理亞「来ないとみんなの前で『兄様』って言うわよ。」

 

瑠惟「是非行かせていただきます。」

 

聖良「あなたもずいぶん理亞に気に入られてますね。」

 

瑠惟「そうですかね?遊ばれてる気しかしないんですけど。」

 

聖良「あの子は人見知りで滅多に自分から話しかけたりすることは無いんですよ。それに『兄様』なんて呼ばれてるのがいい証拠ですよ。」

 

瑠惟「それでも人前では極力言わないでほしいですね。色々とアレですし。」

 

聖良「いいじゃないですか。妹が増えたみたいで。」

 

瑠惟「ただでさえこっちには千歌っていう妹みたいな奴がいるのでこれ以上は勘弁ですね。」

 

聖良「それもそうですね。」

 

前よりもこの2人とは話しやすくなった気がする。

 

口調は厳しい時もあるが、こういう時は普通に話してくれるので俺としてもありがたい。

 

理亞「せっかく見に来てあげたんだから変なパフォーマンスを見せないでほしいわ。」

 

聖良「前よりも成長してるって期待してますよ。」

 

おっ。言ってくれるね。

 

瑠惟「あいつらは成長しましたよ。特にリーダーは。なんせ俺が付きっきりで特訓させましたから。今日は来て良かったって思わせてみせます。」

 

聖良「あなたがそこまで言うなら私達も楽しみです。」

 

それから少しして地区予選が始まった。

 

Aqoursはくじの結果、順番が最後になったのでそれまで他のグループのパフォーマンスを見ていた。

 

こうして他のグループを見ていると思う。

 

前回のラブライブよりも明らかにレベルが上がっている。

 

流石は予備予選を勝ち抜いていただけはある。

 

Saint Snowの2人もレベルの高さに感心していた。

 

Aqours以外の全てのグループが終わり、残すはあいつらのみ。

 

注目度が高いのか始まる前から歓声が会場に響いていた。

 

聖良「とうとうですね。」

 

瑠惟「・・・。」

 

聖良「もしかして緊張してますか?」

 

瑠惟「してないって言ったら嘘になりますね。ラブライブ決勝と学校存続が掛かってますからね。そりゃ緊張しますよ。」

 

聖良「背負ってるものが他とは違う・・・。」

 

瑠惟「でも、俺はここに来る前にあいつらに言いました。『とにかく楽しめ』って。だから大丈夫ですよ。」

 

そしてAqoursのパフォーマンスが始まった。

 

今回踊る曲は『MIRACLE WAVE』。

 

あいつらがAqoursらしさとは何かを考えた結果生まれたのがこの曲。

 

そして3年生達の想いをのせた曲でもある。

 

曲が始まり、みんなが今までとは違う激しくダイナミックなダンスをしていく。

 

当初不安だった花丸ちゃんも付いていくどころか自分のものにできている。

 

そして一番の見せ場が来た。

 

サビ前の千歌のロンダート→バク転。これが成功できれば観客の心を掴むことは間違いない。

 

 

 

 

その瞬間が来た。

 

瑠惟「見せてやれAqoursの力を!」

 

千歌は2日前に俺を飛び越えたように一連の動きを成功させることができた!

 

瑠惟「よっしゃあ!」

 

思わず叫んでしまう。

 

会場のボルテージも最高潮だった。

 

まさかスクールアイドルがバク転をするとは誰も予想できないよな。

 

驚嘆の声が周りから聞こえる。

 

そして聖良さん、理亞ちゃんも・・・

 

聖良「・・・すごい。言葉が出ません。」

 

理亞「こんなの今まで見たことない・・・。」

 

曲が終わると会場から惜しみない拍手が送られ、彼女達はステージ上で喜びあっていた。

 

千歌は自分が本番で成功させたということを実感し、果南さん達3年生は涙を流していた。

 

瑠惟「千歌ぁ!」

 

千歌に聞こえるように本気で叫んだ。

 

千歌「瑠惟君!私やったよ!できたよ!」

 

瑠惟「やったな!俺も嬉しくて泣きそうだぞ!」

 

こうして喜んでいる間に会場とネットでの決勝進出者の投票が始まった。

 

さっきまで喜んでいたみんなが真剣な顔をする。

 

周りを見れば祈っている人や進出を確信している人もいた。

 

俺は祈らない。決勝進出してるって信じてるから。

 

数分後結果発表が始まった。

 

まず1位から順に呼ばれるらしい。

 

つまりここで呼ばれなきゃ学校存続は絶望的。

 

運命の瞬間・・・

 

「地区予選1位を発表します。」

 

「ラブライブ静岡予選1位は・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浦の星女学院スクールアイドルAqours!」

 

 

 

 

 

千歌「え?1位?私達が?」

 

曜「やったね千歌ちゃん!私達決勝に行けるんだよ!」

 

梨子「アキバドームで歌えるんだよ!」

 

花丸「本当にマル達がやったの?」

 

ルビィ「ラブライブ決勝・・・」

 

善子「魔都東京でラグナロクが繰り広げられるのね。」

 

各々が決勝進出を喜んでいる中、3年生達は・・・

 

果南「2年間本当に長かった・・・。やっと行けるんだね私達。」

 

ダイヤ「全てのスクールアイドルの憧れアキバドームに。」

 

鞠莉「これも千歌っち達のおかげだね。果南。」

 

果南「うん。本当にすごいよ千歌達は。」

 

鞠莉「あれ?泣いてるの?」

 

果南「そう言う鞠莉だって泣い・・てるじゃん・・・。」

 

ダイヤ「果南さん、鞠莉さん・・・」

 

良かったですね。俺も果南さん達の気持ちが伝わってきます。

 

一度挫折して諦めかけた夢。

 

それがもう一度叶おうとしてる。

 

こんなに嬉しいことはないだろう。

 

聖良「彼女達の所に行かなくていいんですか?」

 

瑠惟「俺は後で行きますから今はここで見てます。ステージに立ってたあいつら自身が一番嬉しいですから。」

 

聖良「私達はAqoursのパフォーマンスを見て感動しました。彼女達は今までの彼女達とは違う。紛れもなく今大会トップクラスの実力を持ったスクールアイドルです。私達も負けてられません。絶対にあなた達と同じ舞台に立ちます。だから待っててください。」

 

瑠惟「こっちも楽しみにしてます。」

 

理亞「私達は負けない。絶対に勝つ。そして兄様に来てもらうから。」

 

瑠惟「がんばれよ。応援してる。」

 

そう言って理亞ちゃんの頭を撫でてあげる。

 

理亞ちゃんは少し顔を紅くしている。

 

理亞「ありがと。」

 

可愛い奴め。

 

 

 

 

Saint Snowと別れた後、Aqoursの控え室に行った。

 

瑠惟「決勝進出おめでとう。」

 

千歌「瑠惟君!私、私ね・・・」

 

泣きそうになっている千歌を優しく抱きしめる。

 

瑠惟「よくがんばったな千歌。お疲れ様。」

 

千歌「う、ん・・・」

 

瑠惟「間違ってなかったろ?千歌達の努力は。」

 

千歌「・・・瑠惟君の教えてくれたことも間違いじゃなかったね。」

 

瑠惟「ありがとう。」

 

瑠惟「みんなもよくがんばった!」

 

果南「瑠惟、ありがとね。・・・あの時、瑠惟が私に言ってくれなかったらこうはならなかった。本当にありがとう。」

 

瑠惟「・・・迷って不安なメンバーの背中を押してあげる。俺はマネージャーの仕事をしたまでですよ。」

 

果南「やっぱり瑠惟がマネージャーで良かった。」

 

瑠惟「最高の褒め言葉ですね。」

 

山は一つ乗り越えた。

 

瑠惟「・・・後は入学希望者がどうなっているかですね。」

 

千歌「みんなで学校に戻ろう。」

 

入学希望者が100人を超えることを信じてAqoursは学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ番外編を挟もうかなー。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。