コミュ障ヘタレと9人のアイドル   作: まきパリ

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お久しぶりです。無事に受験も終わり、投稿を再開することができました。久々で拙い文がさらにひどくなっているかもしれませんがよろしくおねがいします。


コミュ障ヘタレは過去を背負い、今を進む

前回のコミュ障ヘタレ。ラブライブ予備予選と東京でのピアノのコンクールの日程が同じで、どうするか悩んでいた梨子。最初はラブライブに出るつもりの梨子だったが千歌達の後押しでコンクールに出ることを決意したのであった。

 

合宿が終了し、梨子がAqoursにコンクールに出場することを話すとみんなは快く同意してくれた。

 

そして今日は梨子が東京に出発する日。みんなで駅まで見送りに来た。

 

瑠惟「じゃあこれが家までの地図と合鍵だ。父さんか母さんのどちらかが家にいると思うけど一応渡しておく。」

 

梨子「本当に色々とありがとう。」

 

梨子がコンクールまでの期間で練習の場所が必要という事で、自分の家にはピアノも置いてあるしちょうどいいと思ったので梨子に泊まってもらうことにした。母さんに相談したところ全く問題ないという事で了承も得た。その間、梨子一人では不便なので父さんか母さんに東京に帰ってきてもらうことにした。

 

千歌「梨子ちゃん!がんばってきてね!」

 

梨子「うん!千歌ちゃんもだよ!」

 

Aqoursのみんなに激励をもらった梨子。

 

瑠惟「梨子、いつも通りで落ち着いてな。」

 

梨子「合宿の時、あなたが私に声を掛けてくれなかったら、中途半端な気持ちで行っていたかもしれなかった。・・・ありがとう。」

 

瑠惟「感謝するのは帰ってきてからにしてくれよ。それに・・・」

 

千歌「次は絶対に九人で歌おう!」

 

瑠惟「梨子、そろそろ時間だ。・・・いってらっしゃい。」

 

梨子「いってきます!」

 

そうして梨子はホームへと向かった。

 

ダイヤ「では、私達は練習に行きますわよ。」

 

みんなが駅から出ていく中、千歌は梨子の向かった先を見つめて止まっていた。

 

瑠惟「千歌、練習行くぞ。」

 

千歌「うん・・・」

 

不安な気持ちは分かるが、それでも梨子を信じてこっちも頑張るしか無い。

 

そして学校に戻ってきて、練習を始めると思いきや・・・

 

瑠惟「あの〜ダイヤさん、これは一体?」

 

ダイヤ「だから言ってるではありませんか。今からプール掃除をしますの。」

 

どうやら生徒会はプール掃除を頼まれていたのだが、ダイヤさんはそんな事をすっかり忘れて日々練習をした結果、今に至る。

 

鞠莉「ダイヤってば素直に忘れていたから手伝ってって言えばいいのに。」

 

ダイヤ「わ、忘れていたわけではありませんわ!ただ人数が多い方が効率がいいと思っただけですわ。」

 

そんなこんなで始まったプール掃除。ほったらかしていただけあってプールの底は相当ヌルヌルしていた。その為、転んでいくメンバーが続出したが、みんなの協力もあってか意外と早く終わらせることが出来た。

 

千歌「じゃあそろそろ練習に・・・」

 

果南「ちょっと待って。」

 

ダイヤ「どうしたんですか果南さん?」

 

果南「せっかくだから今日はここで練習しない?」

 

果南さんの提案で今日の練習はプール(水は入っていない)ですることになった。

 

瑠惟「みんな、新曲のフォーメーションに移動してくれ。」

 

それぞれが位置につく。

 

瑠惟「じゃあ始めるぞ・・・あっ。」

 

曜「どうしたの?始めないの?」

 

瑠惟「始めたいのはやまやまなんだが・・・」

 

全員、大事なことを忘れていた。

 

瑠惟「梨子のポジションが空いてるの忘れてた。」

 

Aqoursのみんなも気付いたようだ。

 

果南「どうしようか・・・」

 

瑠惟「形を変えるかあるいは・・・」

 

千歌「誰かが梨子ちゃんの所に入る。」

 

となると誰が適任か・・・

 

ポジションが相対する千歌と息が合って、順応性のある人物は・・・

 

みんなの視線が一人に注がれる。

 

曜「え?私!?」

 

曜しかいないだろう。

 

ということで曜を梨子のポジションに変更して練習を再開した。

 

だが・・・

 

曜「ごめんね千歌ちゃん。私の動き出しが遅くて。」

 

千歌「ううん曜ちゃん。私もつい梨子ちゃんとやってた時のタイミングで動いちゃって。」

 

二人の動きが何度やってもうまくいかなかったのだ。

 

正直、曜ならいけると思ってたんだが。

 

次の日も二人は練習を重ねたが一度も成功しなかった。

 

練習後、一年生たちとコンビニに寄ったが、そこでも二人は駐車場で練習をしていた。

 

花丸「先輩、二人はまだ練習してるずら?」

 

瑠惟「そうだな。まだ一度も成功してないからな。」

 

善子「何かアドバイスとかないの?」

 

瑠惟「ダンスの専門家じゃないから分からん。」

 

ルビィ「珍しいですね。」

 

瑠惟「何が?」

 

花丸「だって先輩はいつも何か考えがあって、何でもお見通しな感じがするずら。」

 

瑠惟「そんな賢い人間じゃない。買い被りすぎだ。」

 

花丸「じゃあ・・・このまま見てるだけずら?」

 

その言い方は堪えるな・・・

 

瑠惟「まぁ善処するよ。」

 

花丸「期待してるずらよ。せ・ん・ぱ・い」

 

瑠惟「ハイハイ。」

 

二人の所へ向かった。

 

瑠惟「どうだ?上手くいきそうか?」

 

千歌「ううん。やっぱりタイミングが合わなくて。」

 

曜「・・・・・」

 

曜「・・・じゃあ千歌ちゃんは梨子ちゃんとやってた通りに動いてみて。今度は私が梨子ちゃんの動きを再現してみる。」

 

千歌「え?・・・分かった、やってみよう。」

 

曜の提案でもう一度チャレンジしてみると

 

「「できた!」」

 

なんと一発で成功した。

 

千歌「じゃあ本番もこれでいこう!」

 

確かに上手くいった。でも本当にこのやり方でいいのか?何かが違う気がする・・・

 

そんな事を思っていると千歌のスマホに着信が来た。

 

 

 

 

 

ー 瑠惟 sideout ー

 

ー 梨子 side in ー

 

東京に着いた私は彼から受け取った地図を頼りに歩いていくとそれらしき家を見つけた。

 

ここが瑠惟君の実家・・・。千歌ちゃん家ぐらい大きいかも。

 

私は家の合鍵を預かっていたが、それを使っていきなり入るのも失礼だと思ったのでインターホンを押した。

 

しばらくして出てきたのは・・・

 

梨子「え!?千歌ちゃん!?」

 

なんとそこには千歌ちゃんにそっくりな女性がいた。いや、正確には千歌ちゃんが大人っぽくなった感じの人だった。

 

???「どちら様でしょうか?」

 

梨子「はじめまして。今日からお世話になります、桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

???「桜内・・・あっ!あの子のお友達ね。待っていましたよ。さぁ中に入って。」

 

梨子「お邪魔します・・・」

 

家に入ってまず目に入ったのはショーケースに飾られたたくさんのトロフィーや賞状だった。

 

梨子「すごい・・・」

 

思わず声が漏れた。

 

そしてその中には写真も何枚か飾っていて、そこに写っていたのは・・・

 

梨子「あの・・・瑠惟君って何かスポーツをしていたんですか?」

 

???「これのことね。そうよ、あの子は昔バスケットボールをやっていたの。もうやめちゃったけどね。」

 

そうなんだ。彼、バスケをやっていたなんて一度も話したことなかったな。

 

???「ここがあなたの部屋よ。」

 

案内されたのは私一人では十分すぎるくらい大きな部屋だった。

 

梨子「こんな広いお部屋使ってもいいんですか?」

 

???「いいのよ。遠慮せずに使ってね。」

 

梨子「ありがとうございます。・・・ところでもしかして瑠惟君のお姉さんですか?」

 

???「え!?違う違う。私はあの子の母親よ。」

 

梨子「そうなんですか!?全然そうは見えませんでした。」

 

母「そんなこと言ってくれるなんて嬉しいわ。そうだ梨子ちゃん、お腹空いたでしょ?晩御飯できてるわよ。」

 

食卓へと向かうとたくさんの料理が用意されていた。

 

梨子「あの・・・私、こんなたくさん食べるのは・・・。」

 

母「大丈夫よ。夫がもうすぐ帰ってくるわ。」

 

瑠惟君のお父さんか・・・。どんな人なんだろう?

 

すると玄関の扉が開く音がした。

 

???「ただ今戻りました。」

 

母「あなた久しぶりね。可愛らしいお客さんが来てるわよ。」

 

???「そうでしたね。では挨拶を。」

 

そうして入ってきたのは背が高くて、がっちりとしていて、とても真面目そうな雰囲気のある男性だった。

 

父「はじめまして。あなたが桜内梨子さんですね。私は瑠惟の父親です。よろしくお願いします。」

 

その男性はしっかりと頭を下げて、礼儀正しく挨拶をした。

 

梨子「今日からしばらくお世話になります。桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

思わず私もお辞儀をした。

 

父「彼が言っていた通り、とても真面目でいい子ですね。彼が信頼するのも頷けます。」

 

母「 じゃあみんなで晩ご飯を食べましょう!」

 

「「「いただきます。」」」

 

食事は三人で色んなことを話したりしながらとても楽しく進んだ。

 

食後に先程の飾ってあったトロフィー達を見ていると彼のお母さんが話しかけてきた。

 

母「すごいでしょあの子。昔からバスケが大好きでね、誕生日に何が欲しいか聞くと毎年、新しいバスケットのシューズが欲しいって言ってたの。練習も人一倍頑張っててね、全国大会で優勝したこともあったのよ。」

 

梨子「そうだったんだ・・・。でもなんでやめちゃったんですか?」

 

その時、彼のお母さんが悲しそうな顔をした気がした。

 

私はすぐに後悔した。聞いてはいけないことを聞いてしまったと。

 

母「・・・あの子はね、昔はもっと元気で活発な子だったの。千歌ちゃんみたいにね。今のあの子ってば自分で『コミュ障ヘタレだ。』って言ってるでしょ?変な子よね?でもね、あの子は自分から『コミュ障ヘタレ』になったの。」

 

私はその言葉の意味が分からなかった。

 

梨子「どういうことですか?」

 

母「あれは中学三年生の夏の前ぐらいだったかな・・・。その日は全国大会の出場をかけた大事な試合がある日だったの。試合に出場していた彼はいつも通りの調子で得点を重ねていき、チームを勝利へと近づけていったわ。・・・でもね周りの子は彼の卓越した力を良くは思っていなかったみたいなの。一年生の頃からレギュラーメンバーで他の一年生とは頭ひとつ以上抜けていたからね。それでその子達は試合の休憩時間の間に彼のシューズに細工をしたの。そんな事を知らない彼はそのまま試合に出た。案の定、彼は試合中に大怪我をしたの。」

 

梨子「そんな・・・ひどい。」

 

母「試合はなんとか勝てたけど、彼は今後の試合に出られるような状態じゃなかった。後で怪我の原因がイタズラだと判明すると学校側はその子達を退学処分にしようとした。でも彼はそんな事しなくていいから、その子達にバスケを続けさせてあげてほしいと言ったの。彼は怒るどころかその子達を許してほしいとお願いしたの。」

 

あまりの衝撃に私は言葉が出なかった。

 

母「彼は周りに悲しむ姿は一切見せなかった。でも一人になると泣いていたの。もうバスケはできないって。それから彼はバスケットボールに一切触らなくなったの。それに心も閉ざした。あんなに明るかった彼が日に日に暗くなっていくのはとても見ていられなかった。一部の友達と千歌ちゃんとかが慰めてくれたおかげで良くはなったの。でも心のどこかで悲しみを抱えているのは間違いなかった。・・・そんなある日にね、彼の友達が彼をスクールアイドルのイベントに連れて行ってくれたの。」

 

それって果南さん達の・・・

 

母「家に帰ってくるとね、彼は久しぶりに笑顔を見せてくれたの。そして色んな人に元気をもらったって言ってたの。別の日には曜ちゃんっていう女の子と仲良くなったなんて事も言ってたの。」

 

私はいつも頼りになって何でもできる彼が過去に壮絶な経験をしていた事に驚いた。Aqoursを支えてくれている彼が人知れず悩んでいたことを。

 

母「でも、やっぱり内浦に行かせて良かったわ。」

 

梨子「え?」

 

母「話を聞く限り、あの子は元気にやってるみたいね。あなたみたいな美人な子達に囲まれて幸せだと思うわ。」

 

梨子「美人だなんて/////」

 

母「久しぶりに連絡が来たと思ったら、女の子を家に泊めてもいいかって聞かれて本当に驚いたわ。しかも声が真剣だったからおなおさらよ。」

 

私の為に・・・。

 

母「梨子ちゃん、あの子と仲良くしてくれてありがとうね。」

 

梨子「いえいえ。私も何度も彼に救われましたから。」

 

父「梨子さん、私から一ついいですか?」

 

梨子「うわぁ!」

 

いつの間にか彼のお父さんがいたのでビックリした。

 

母「あなた、いつからいたの?」

 

父「最初からいましたけど・・・」

 

母「そう。気づかなかったわ。」

 

梨子「それで・・・?」

 

父「はい。もしあの子が何か悩みを抱えているようだったら声を掛けてあげてください。あの子は他人に迷惑をかけまいと一人で抱えてしまう性格なんです。親としてあなたにこんな事を頼むのはおかしいと分かっています。でもあの子には皆さんが頼りなんです。」

 

そんな事言われなくても・・・

 

梨子「もちろんです。私達Aqoursが彼を支えます。彼が今まで私達を支えてくれたように。」

 

父「ありがとうございます。・・・話が長くなってしまいましたね。もうこんな時間ですし、そろそろ寝ましょうか。」

 

梨子「はい。」

 

次の日から私はピアノを使って調整を始めた。

 

瑠惟君の家族の人が私の為に静かにしてくださったのでとても集中することができた。

 

時間も忘れ、気がつけば夕方になっていた。

 

ここで私はある事を思い出す。

 

梨子「千歌ちゃんに連絡するの忘れてた!」

 

急いで千歌ちゃんに電話をかけた。

 

 

 

 

 

ー sideout 梨子 ー

 

ー side in 瑠惟 ー

 

千歌「もしもし梨子ちゃん、連絡遅いよ!どうせ忘れてたんでしょ?」

 

どうやら梨子からのようだ。

 

千歌「みんな、梨子ちゃんに何か話しておくことある?」

 

千歌の問いかけに一年生達が反応するが、結局三人とも話さなかった。

 

瑠惟「千歌、変わってくれ。」

 

千歌「分かった。」

 

千歌からスマホを受け取り、梨子と話す。

 

瑠惟「もしもし梨子。」

 

梨子「瑠惟君ね。昨日あなたの家に着いたの。」

 

瑠惟「そうか。家に誰かいたか?」

 

梨子「うん。あなたのお母さんとお父さんがいたよ。」

 

マジかよ。二人とも帰ってこれたのか。

 

瑠惟「変な親だろ?母さんはずっと喋ってるし、父さんはクソ真面目だし。」

 

梨子「二人ともとても良い人達だったよ。・・・瑠惟君、何か悩み事とかあったら相談してね。絶対だよ。」

 

瑠惟「どうした急にそんなこと言って。前に梨子に言った事そのままじゃないか。」

 

梨子「なんとなくだよ。」

 

本当に女子は分からん。

 

瑠惟「曜も梨子と話すか?」

 

曜「私は・・・」

 

曜はなぜかためらっていた。

 

どうしたんだ曜のやつ。

 

千歌のスマホの充電が無くなりかけていることに気づいた。

 

瑠惟「梨子、千歌のスマホの充電が無くなりそうだからもう切るぞ。」

 

梨子「うん、じゃあまたね。」

 

電話を切り、千歌に文句を言った。

 

ここで曜がいないことに気づいた。

 

瑠惟「曜はもう帰ったのか?」

 

千歌「あれ?ほんとだ。曜ちゃんがいなくなってる。」

 

それにしても、最後に曜が見せた表情がどこか悲しげだったのは気のせいだろうか・・・

 

ーsideoutー瑠惟

 

ーside inー曜

 

何やってるんだろ私・・・

 

なんであの時電話を取らなかったんだろう・・・

 

なんで何も言わずに帰ったんだろ・・・

 

違う。私はあの場から逃げたかったんだ。

 

千歌ちゃんが梨子ちゃんや瑠惟君と楽しそうにしゃべっているのを見てると、私はいらないのかなって思っちゃう。

 

Aqoursにとっての私って何?

 

考えれば考えるほど分からなくなる。

 

???「どうしたの曜?」

 

呼ばれて振り返ると・・・

 

曜「鞠莉ちゃん!?」

 

どうしてここに?

 

鞠莉「ちょっとお話ししない?」

 

曜「・・・うん。」

 

鞠莉ちゃんに連れられて喫茶店に来た。

 

曜「それで話って?」

 

鞠莉「今日の曜の様子が変だったから話したくなったの。」

 

曜「バレてたんだ・・・」

 

鞠莉「多分、他のみんなも気づいてるよ。」

 

曜「でも大丈夫だよ!ダンスもうまくいったし!」

 

鞠莉「曜、今ここでは本音を出していいところよ。千歌っちとかだと言いにくいでしょ?」

 

とうとう観念して私は話し始めた。

 

曜「・・・私ね昔からずっと千歌ちゃんと何かやりたいと思ってたの。そして気づいたら高校生になってた。だから千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれたのは本当に嬉しかったの。でもすぐに瑠惟君や梨子ちゃんが来た。千歌ちゃんね瑠惟君といるとすごく楽しそうなの。私といるときよりも楽しそうに見えるの。梨子ちゃんも同じ。二人で曲作って、気づいたら他のみんなもいた。だから思ったの、千歌ちゃんは私と一緒じゃなくてもいいんじゃないかって・・・」

 

涙が出そうになるのを何度もこらえた。

 

鞠莉「どうしてそう決めつけるの?千歌っちが一言でもそんなこと言った?」

 

曜「言ってないけど、見てたら分かるよ。」

 

鞠莉「そうなんだ。私はちっともそうは見えないけどね。」

 

曜「どうしてそう言えるの?」

 

鞠莉「理由なんてないわ。私がそう思ったから。逆にそうじゃないってことは絶対にあり得ないわ。それとも曜と千歌っちはその程度の関係だったってこと?曜の話を聞く限りではそんなことはないと思うけど。」

 

そうなのかな・・・。私が勝手に思い込んでただけなのかな?

 

うん!絶対そうだ!私と千歌ちゃんはそんな安い関係じゃない!

 

曜「ありがとう鞠莉ちゃん。私の勘違いだったみたい。」

 

鞠莉「なら良かったわ。ところで曜・・・。」

 

曜「何?」

 

鞠莉「曜って今好きな人いる?」

 

曜「えぇぇぇ!?どうしたの急に!?」

 

あまりにも突然すぎてビックリしている。

 

鞠莉「なんとなく気になってね。それで実際どうなの?」

 

曜「それは・・・分からない。」

 

鞠莉「ふ~ん。そうなんだ・・・。てっきり瑠惟のことが好きなんだと思ってたわ。」

 

曜「る、瑠惟君!?別に私はそんな・・・。」

 

鞠莉「じゃあ・・・瑠惟と千歌っちが付き合ったりしても大丈夫なの?」

 

曜「え・・・。やっぱりあの二人はそんな関係だったんだ・・・」

 

そうだよね。見てたら分かるもん。あんなに仲が良いんだし、一緒に住んでるし、付き合っててもおかしくないよね。

 

でも、なんでだろう・・・この気持ちは何?なんで悲しいの?なんで泣きそうになるの?

 

鞠莉「まぁ例え話だけどね。」

 

曜「え?」

 

鞠莉「冗談よ、冗談。あの二人は何にもないわ。」

 

良かった。瑠惟君は付き合っていないんだね。

 

・・・『良かった』?なんで私はそう思ったの?

 

鞠莉「やっぱり曜は瑠惟が好きなんだね。」

 

そうなんだね。初めて彼に会って、助けてもらって、再開して・・・。モヤモヤが消えて、気づいた。私は彼が好きなんだ。恋してるんだ。

 

曜「うん・・・。私、瑠惟君が好き。そしてそれと同じぐらいにAqoursのみんなが好き。」

 

これが私のホントの気持ち。

 

鞠莉「じゃあ明日からまたがんばりましょ。本番までもう少しよ。」

 

曜「うん!今日はありがとう!また明日ね!」

 

こうして鞠莉ちゃんと別れ、家に帰った。

 

よし!絶対に成功させてやるぞ!

 

次の日

 

曜「おはよう!」

 

元気よく挨拶して部室に入ると既に他のみんなが来ているのが分かった。

 

千歌「曜ちゃんおはよう!見てこれ!」

 

そう言って千歌ちゃんが見せてきたのは・・・

 

曜「シュシュ?どうしたのこれ?買ったの?」

 

千歌「ううん、梨子ちゃんからだよ!」

 

曜「!!」

 

また梨子ちゃんだ・・・

 

昨日に取り除いたはずのあの感情が押し寄せてきた。

 

結局その日の練習は集中できず、何度もミスをした。

 

何かおかしいと思った瑠惟君が心配して休んでていいと言ってくれたが、それがまた私の心に刺さった。

 

見学していてもあのことが頭から離れず、ぼーっとしていた。

 

瑠惟「曜、大丈夫か?もしかして熱中症か?」

 

練習後、彼が私にそう声を掛けてくれた。

 

本当なら嬉しいはずなのに、この時は違った。

 

どうしてそんなに優しいの?私のことなんか・・・。

 

その瞬間、私の中で何かがはじけた。

 

曜「私のことはもう放っておいて!どうせ私なんていないほうがいいでしょ!」

 

瑠惟「え?」

 

気づいたら私は学校を飛び出していた。

 

とにかくここにはいたくなかった。

 

 

 

家に帰ってからも今日のことが頭の中でずっとループして再生されている。

 

あぁ・・・今度こそ絶対に嫌われちゃった。瑠惟君にも、千歌ちゃんにも。

 

なんであんなこと言ったんだろ・・・。

 

とにかく後悔しかなかった。

 

鞠莉ちゃん、ごめんね。

 

そんな時、私のスマホに着信が入った。

 

これは・・・

 

梨子ちゃんだ。なんでこんな時に・・・。

 

私は出るか迷ったが、結局出ることにした。

 

梨子「もしもし曜ちゃん?」

 

曜「どうしたの梨子ちゃん?」

 

梨子「聞いたよ。私の代わりにポジションに入ってくれたって。ごめんね。私のワガママのせいで。私の動きで会わせなくていいから、曜ちゃんなりの動きでやってね。」

 

梨子ちゃんの方が一人で不安なはずなのに、私の心配をしてくれるなんて・・・。

 

でも・・・

 

曜「もう無理だよ。」

 

梨子「え?」

 

曜「だって私、今日みんなにひどいことを・・・。」

 

絶対に怒られると思っていた。だが・・・

 

梨子「うん。知ってるよ。さっき千歌ちゃん達から相談があったんだ。曜ちゃん、聞いてね。千歌ちゃんね昔から何度も曜ちゃんの誘いを断り続けたことが申し訳なかったって、だからスクールアイドルは最後まで一緒にやり遂げたいって言ってたの。それに瑠惟君はあの時曜ちゃんと出会えて良かったって、こんな自分を頼ってくれて、涙を流してくれたことが嬉しかった。だから浦の星で曜ちゃんの恩返しをするんだって言ってたんだよ。私もね、曜ちゃんや千歌ちゃん達がいなかったら前に進むことはできなかったって思うの。だからみんなには感謝してるの。改めて言うね。ありがとう。」

 

三人がそんなに私のことを考えててくれたなんて・・・。

 

今まで私が考えてたことがバカみたいに思えた。

 

梨子「私は曜ちゃんなら大丈夫だと思う。だって千歌ちゃんとずっと一緒にいたんでしょ。私なんかよりもずっと長くね。だから大丈夫だよ。千歌ちゃんも瑠惟君も他のみんなも曜ちゃんのことは嫌いにならないよ。」

 

曜「ありがとう梨子ちゃん。明日みんなに謝るよ。」

 

梨子「うん。がんばって。じゃあね。」

 

電話を切って寝ようとすると、私のことを呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

とうとう幻聴まで聞こえだしちゃった。早く寝て、休まなきゃ。

 

そうして寝ようとするが、まだ聞こえる。しかもさっきより大きな声で。

 

さすがにおかしいと思い外を見ると・・・

 

そこにはいるはずのない人物がいた。

 

曜「千歌ちゃん、瑠惟君!?なんでここに・・・」

 

千歌「えーっと・・・こんばんは?」

 

瑠惟「こんな夜遅くにすまんな。」

 

私は急いで階段を駆け下りて二人のところへ向かった。

 

曜「どうして・・・」

 

千歌「今日の曜ちゃんのことが気になったけど連絡が取れなかったから心配でつい・・・。それに美渡ねぇも志満ねぇも忙しいから車出せないって言うから自転車で来ちゃった。」

 

千歌ちゃんの家からここまで自転車で!?そんなに心配してくれてたんだ・・・。

 

瑠惟「お前は漕いでないだろ。自分の後ろに乗ってただけだったろうが。」

 

千歌「まぁそうだけど・・・」

 

瑠惟「曜、さっきは悪かった。何か気の触るようなことをしてしまったのなら謝る。ごめん。」

 

違うよ・・・悪いのは私なのに・・・。

 

千歌「曜ちゃん、どんなことがあっても私達は曜ちゃんの味方だからね。だから大丈夫だよ。安心していいんだよ。」

 

その瞬間、私は二人の胸に飛び込んだ。

 

曜「ごめんなさい瑠惟君!さっきはあんなこと言って!瑠惟君は何にも悪くないのに・・・」

 

瑠惟「もう気にしてねーよ。誰だって不安になることはあるよ。だからもう泣くな。せっかくの美人が台無しになっちまう。」

 

曜「ごめんなさい千歌ちゃん!千歌ちゃんにもひどいこと言って・・・」

 

千歌「大丈夫だよ。私は曜ちゃんがそんな子じゃないって知ってるから。」

 

あれからどのぐらい経ったのだろうか?いつの間にか涙は止まっていた。

 

その間も二人は優しく私のことを包んでてくれた。

 

 

 

ー sideout 曜 ー

 

ー side in 瑠惟 ー

 

次の日、曜はAqoursのみんなに昨日のことを謝り、練習にも熱が入るようになった。本番までに残された時間の中で千歌と曜は新しいステップを完成させた。二人にしかできない正真正銘オリジナルステップを。

 

本番当日

 

本番前に梨子に電話を掛けた。

 

瑠惟「もしもし梨子、あの・・・その・・・前は相談に乗ってくれてありがとな。おかげで何とかなったよ。」

 

梨子「も~何言ってるの。友達が困ってたら助けるのは当たり前だよ。私も嬉しかったよ。」

 

瑠惟「そうか・・・なぁ一つ聞いていいか?」

 

梨子「何?」

 

瑠惟「もしかして聞いたのか?昔あったこと。」

 

梨子「ごめんなさい。ついあなたのお母さんに聞いちゃって。」

 

全く・・・あの親は・・・。

 

瑠惟「別にいいんだ。隠してもしょうがないことだしな。」

 

梨子「あなたはどうしてあの人達を責めなかったの?怒らなかったの?大切なものを奪われたんだよ?」

 

瑠惟「確かにあの時は悔しかったし、悲しかった。でも自分が一番嫌だったのはそのことのせいであいつらからバスケを奪ってしまうことだったんだ。あいつらだって根っこは良い奴らなんだ。今ではこうして体は自由に動かせる。それで十分なんだ。それに今は一人じゃない。千歌や梨子、Aqoursのみんながそばにいてくれてる。そして一緒に前へと進める。これ以上に幸せなことなんてないな。」

 

梨子「ふふっ。瑠惟君らしいね。今日はお互いにがんばろうね。」

 

瑠惟「あぁ良い報告待ってるよ。」

 

梨子「それはこっちの台詞よ。一回戦落ちなんて聞きたくないからね。」

 

瑠惟「大丈夫だ。みんななら絶対に大丈夫。そう信じてるからな。」

 

梨子「なら安心ね。・・・そろそろ時間だわ。じゃあ切るね。」

 

瑠惟「またな。」

 

さて、こっちも行かないとな。

 

瑠惟「みんな、準備はできてるか?」

 

一同「もちろん!」

 

瑠惟「今日ここに梨子はいない。でも、あいつは別の場所でがんばっている。だから次は九人で歌うために絶対に勝とう!」

 

全員「Aqours Sunshine!」

 

どこにいても同じ明日を信じてる。

 

『想いよひとつになれ』

 

みんなならできる。絶対にやってくれる。

 

そう思いながら彼女達を舞台袖から見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読み返すと無理矢理感がすごかった。

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