転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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今回やっと、オリキャラがちゃんと登場します。



「大本営」

演習の次の日。

俺は再び神崎提督に呼び出された。

 

「大本営が貴方の処分を下すので、

一緒に来て下さい」

 

曰く、大本営に行って、横須賀に留まるか

大本営に収容されるかみたいな判断を

言い渡すから来てほしいというのだ。

無論護送という形になるので天龍が

ついてくる。

 

「二度と会えなくなるかも

しれないな……短い間だったけど、

楽しかったぜ」

 

「気が早いよ」

 

「大本営までは電車と徒歩で行きますが、

レンゲさんは靴を履いて、

なるべく深海棲艦だと分からない

状態にして下さい」

 

「分かりました」

 

俺は恐らくは二度と見ることのないだろう

横須賀の赤レンガの建物(鎮守府)

あちこち見て回り、最後に行こうという時に

目に焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営に着くのにはそれ程時間は

かからなかった。

大本営は鎮守府より大きく、荘厳な雰囲気

を漂わせていた。

 

「じゃあ私は会議がこれからあるので」と

神崎提督は着いてすぐ何処か行ってしまった。

 

「どうする?ここってあまり暇つぶす

所ねーし、艦娘も大本営?の

意向だかなんかで少ねーしよ」

 

「とりあえず奥の部屋に待合室があるから

そこで提督を待ちましょうか」

 

俺たちは一階の待合室で会議が終わって提督が

戻ってくるまで待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃3階の会議室。

そこには神崎が直立不動で気をつけの

姿勢をとり、目の前の机に座る上官達

(いずれも大佐や中将など神崎より位が上)

の処分がどのようなものか待っていた。

 

「神崎中佐。例のレ級の処分を言い渡す」

 

 

 

 

「レ級は大本営で預かり、今後の深海棲艦の

情報、及びその分布、勢力図を聴取

させてもらう」

 

つまり、それはレ級を捕縛し、

必要とあらば拷問、処刑することを

示していた。

 

「ッ……‼︎待って下さいッ‼︎彼女はまだ

年端もいかない子供なんですよ‼︎」

 

「だが深海棲艦だ。深海棲艦に

子供も何もないだろう‼︎」

 

「くッ……」

 

ここで引き下がる訳にはいかない。

神崎はこの身が破滅しようとも、

レンゲを何としても守る決意を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その地下の牢獄。

 

「おい、餌だ。早く食え」

 

暗闇で中が何も見えない牢獄の中の一つに、

衛兵が食事を差し出す。

 

……チャリッ……チャリッ……

 

と金属が擦れ合う音を立て、

何かが近づく。

そして、食事のプレートの中にある

林檎の欠片が鱗と甲殻に包まれた手に

掴まれ、闇の中に消えた。

 

……シャリッ……ガリッ……

 

衛兵はその音を聞くと自分の持ち場に

戻ろうとした。

いつもは食事を終えると中にいる「それ」は

自分からプレートを返す。

そう、「いつもなら」の話だ。

 

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‼︎

 

「⁉︎なんだ⁉︎どうした⁉︎」

 

狂ったように、しかし規則的に何か硬いもので

鉄格子を叩く音が鳴り響く。

このまま永遠に続くのではないかという程

その音は鳴り止まない。

 

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‼︎

 

「チッ……」と衛兵は腰のホルスターに入っている

拳銃を取り出した。

上層部からは何かあったら処分していいと

言い渡されている。

彼は狙いをつける為、牢獄の鉄格子に近づいた。

 

刹那。

闇の中から何かが恐ろしい勢いで鉄格子の

隙間をすり抜け、衛兵の首を刺し貫いた。

鮮血が飛び散り、床を少し赤く濡らした。

 

「うぐッ……げ……」

 

そのまま衛兵の体が一気にズルリと

鉄格子の中に引き込まれる。

 

ベキッ‼︎ バキバキッ……。 ……ゴギャッ‼︎

 

それと共に骨が砕け、折れる音を立てる。

衛兵の身体は完全に闇の奥に沈んだ。

……やがて、その中から赤く光る目が

浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はどうなっても構いません‼︎

どうか、レ級の処分を撤回して頂けない

でしょうか‼︎」

 

右端に座っていた隻眼の中年が諌める。

 

「君はまだ未来ある逸材だ。

失うのは惜しい。

だが、この処分は変えることはできないのだよ」

 

「そこをなんとか……重ねてお願い致します‼︎」

 

諦めようとしない神崎に業を煮やし、

真ん中の禿頭の男が怒鳴る。

 

「いい加減にしろ‼︎貴様も男なら、

潔く諦めろ‼︎いいか‼︎

この処分はもう確定したんだ‼︎

貴様が変えられる道理が、

ここにあるとおもうなッ‼︎」

 

瞬間。

腹の底から響くような爆音と地響きが

皆を襲った。

 

「⁉︎なんだ、何が起きた‼︎」

 

「失礼致します‼︎大変です‼︎」と

まだ年若い衛兵が駆け込んできた。

 

「何があったのか説明しろ‼︎」

 

「はっ‼︎」と彼は答え、青ざめた顔をしながら

返答した。

 

「大本営の……大本営の牢獄に囚われていた

“丙型生命体”が脱獄しました‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆音と地響きは、当然ながら

一階のレンゲと天龍にも伝わっていた。

 

「なんだなんだなんだ⁉︎

なんかあったのか⁉︎」

 

「何か……ヤバイことがあったみたい

です。俺たちも何か出来るかもしれません。

行きましょう‼︎」

 

俺たちは待合室を飛び出し、大広間に飛び出した。

そこには、

首を折られた衛兵の、または身体を腰斬された

死体がそこらに散らばっていた。

中には両目を抉り出されたもの、

バラバラになったものもいる。

 

「……くッ……う」

思わず吐き気と怒りが込み上げた。

 

「耐えろ。まだやったやつは近くにいるはずだ」

 

天龍が俺の身体を掴む。

 

……ゴキッ…………ゴキッ。

何かの音がする。

俺と天龍は揃って音のする方向に目をやった。

 

「……ク……グク」

そこには、根本からへし折られた銅像の上に

腰掛けた明らかに人ならざる者がいた。

全身は光沢を持った黒の甲殻に包まれ、

下はまるでアラジンが履くようなズボン、

それが膝の辺りで鎧で覆われたブーツに

変わっている。

上半身は何も着ておらず、胸に肋骨を模した

装備、綺麗に割れた腹筋が見える。

そして、腰のあたりに鰐のような尾が伸びている。

 

「……」

それは大きな口枷をしていたが、おもむろに

それを取った。

 

「……ヒヒッ」

その下から現れたのは、ピラニアの如く

鋭い歯。口を歪めて、それは笑った。

 

「ヨーォ。悪りぃけどよォ〜、

そこどかねぇと殺しちまうぜ〜」

 

その怪人は、軽薄な口調で俺たちに

呼びかけるのだった。




今回登場した「怪人」こと「丙型生命体」の
モチーフは鰐です。
ちなみに、頭の描写が少ないですが、
頭の感じとしては「魔法科高校の劣等生」に
登場する「ムーバルスーツ」を想像して頂ければ
近いです。

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