転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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「嵐の前触れ(後編)」

天龍を前にして、サンズと霧秀の両名は

戦闘態勢に入った。

 

「霧ちゃん‼︎2人で片付けるぞ、ドス返せ‼︎」

 

「承知」

 

霧秀が肥大化した左腕の口の一つから

ドスを吐き出す。

 

「よっ、と。……って霧ちゃん霧ちゃん」

 

それを受け取ったサンズが、何故か

怪訝そうな顔をして霧秀の方へと振り向いた。

 

「どうした?しっかりと借りたものは返した

であろうに、何か不服でもあるのか?」

 

「いや、確かにこれドスだけどさ。

……なんか刀身が短くなってるんですけど」

 

そう。サンズが霧秀にドスを貸し与えた際は

30cm程の長さがあったそれは、今では

半分以下の長さとなっていた。

 

「何かやった?」

 

「……」

 

そっぽを向く霧秀。

 

「……霧ちゃん。何か言ってくれや」

 

「ええ〜、本当でござるかぁ?」

 

「唐突なござる口調で誤魔化そうとするのは

悪いがNGの方向で頼む」

 

その言葉に霧秀はため息をつき、観念したように

話し始めた。

 

「……申し訳ないが、先程あの小童に左腕を

取られた際、貴様の刀身も半分程

持っていかれたのだ。許せ」

 

「事故か。なら仕方ねぇな。

……とっととあのガキ仕留めるぞ」

 

そういうとサンズは、遠く離れた天龍へと

ショットガン型の艤装による砲撃を加えながら

海面を奔り出した。

 

「……委細承知。ならば某は援護に徹しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンズーーーーーーッ‼︎」

 

天龍がサンズの砲撃を回避しながら

同じく走る。

 

「天龍ウウウウウウウウッ‼︎」

 

サンズも天龍の叫びに応えながら

海面を疾走する。

 

そして。

 

「「死ねやこの野郎ーーーーーーッ‼︎」」

 

互いの刀剣を相手へと振り抜いた。

今宵一番の檄音が高らかに響く。

 

「シッ‼︎」

 

その一合の後、先に刀を突き出したのは

サンズだ。

ドスの刀身が短くなった事で

斬撃の回転率が上がったのだ。

 

だがその代償として、リーチが狭まった。

そのため、

 

「うおらっ‼︎」

 

「ガッ⁉︎」

 

ドスが届く前に天龍に腹を蹴り抜かれ、

サンズは後退せざるを得なかった。

 

そこを天龍は追撃しようと一歩踏み出す。

だが、天龍は何かに気付き、慌てて後退した。

 

そこへ上から影がかかる。

 

「ムゥゥンッ‼︎」

 

霧秀が己が異形の左腕を天龍に向けて

まるで蚊でも叩き潰すかのように

振り落としたのだ。

 

爆裂。

凄まじい量の水が巻き上がり、

辺りに塩辛い雨を降らす。

 

「逃すものかッ‼︎」

 

霧秀の攻勢はそれだけでは終わらない。

振り落とされた左腕からメキリ、という異音と

共に何十もの腕が生える。

 

「ッ⁉︎なんだそりゃ‼︎」

 

生えた幾多もの腕は、天龍を捉えようと

更に伸びながら襲いかかってきた。

さながら亡者の手の如く、

うねり、天龍の中にある命を求めながら。

 

「チッ……しゃらくせえッ‼︎」

 

天龍はそれに臆する事なく襲いかかってくる

腕を的確に斬り落としてゆく。

だが、腕の数は減るどころか斬り落とす度

その傷から更に多数の腕が再生、

天龍へと再度襲撃を開始する。

 

とうとう、一本の腕が天龍の右腕を捕まえた。

天龍はそれを斬り落とそうとするがもう片方の

腕も捕らえられ、次いで両足も掴まれて

自由を奪われてしまった。

 

「霧ちゃん、俺が離せって言うまで離すなよ‼︎」

 

サンズがそう言いながら突如として

クラウチング・スタートの姿勢を取り、

天龍へと向けて走り出した。

 

そして、全力で海面を蹴り。

 

「今だああああああああ‼︎離せええええええッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗転。

横転。

逆転。

後転。

そして、明転。

 

 

 

 

「が……っァ……‼︎

げっ、がはッ‼︎おゥ……えぼっ‼︎」

 

一瞬だが意識が飛ぶ程の飛び膝蹴りを

喰らった事を、天龍は自覚していなかった。

だが、臓物が破裂した(ハジけた)ような痛みと

自らの口から溢れ出す血の混じった吐瀉物を

見て、自分が何か強烈な一撃を喰らった事だけは

理解出来た。

 

「えげつないな貴様も。あれなら殺した方が

マシであろうに」

 

痛みにのたうちまわる天龍を見やって、

霧秀がため息を吐いた。

 

「よくもまあ頑丈なもんだな艦娘の強度は。

……けど、もう動けそうにないなありゃ」

 

サンズはそう言い放ち、今度はゆっくりと

天龍へと歩みを進める。

 

「ぐっ……ゥ……ッ‼︎」

 

「テメェはよく頑張ったよ。

霧ちゃんを相手に斬り結び、2人がかりで

あっても臆する事なく立ち向かった。

俺はお前に敬意を表するよ。……故に」

 

そこまで言ってサンズは天龍の近くまで

近寄ると、ショットガンの艤装を頭部へと向けた。

 

「ここで死ね」

 

冷たい声音で彼は宣告し、迷う事なく

艤装の引き金をーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前方から向かってくる砲弾へと向けて

引いた。

 

吐き出された凶弾は物の見事に

砲弾へと命中、爆発する。

 

「……何奴。まさか先の女子衆では

あるまい?名を名乗れ、下郎」

 

霧秀は右腕の刀の切っ尖を向け、

爆炎の先にいる謎の闖入者へと問う。

やがて、炎と煙が晴れて闖入者の姿が露わとなる。

サンズはその闖入者の名を知っていた。

天龍はその顔を忘れる事などあり得なかった。

 

「……ヘェ。まさかまさか、テメェと

また会えるなんてさ」

 

サンズは黒いコートを羽織った白い肌と髪、

異形の尾を持つ闖入者へと語りかけた。

 

「また会えて嬉しいぜ。

……レンゲちゃんよおおおおおおおおおッ‼︎」

 

ーーーーーー瞳に怒りを宿したレ級の少女に。


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