転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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別作品の更新やってて遅れました。
そっちもよろしくお願いします。


「嵐の前触れ(前編)」

「どうしたどうした‼︎その程度で

俺らを止めようなんざよく考えたよなぁ⁉︎

一周回って尊敬するよ‼︎」

 

夥しい砲火を浴びながらも、サンズが

球磨達にゆっくり、ゆっくりと歩を踏み出す。

堅牢な装甲の前に、球磨達の抵抗は無に帰す。

 

「……ッ‼︎」

 

「……⁉︎球磨‼︎連装砲を撃つのを止めるにゃ!」

 

球磨の異常事態に多摩が気付いたのは、

球磨がそれを自覚してからほんの数分後の事

であった。

その事態に気付けたのは……球磨の

真っ赤に焼けた連装砲の砲身。

 

連装砲はとうに過熱して球磨の背中を焼いていた。

だというのに、球磨は肉を焼く痛みに

耐えながら砲撃を続けていたのである。

 

「ッ、ぐ……こんな痛み、木曾の受けた

屈辱に比べれば……」

 

「それ以上撃ったら腕が駄目になるにゃ‼︎

そんな事誰も望んでないにゃ‼︎」

 

だがしかし、球磨のおかげでサンズを足止め

出来ているのもまた事実。

このままでは多摩も同じことになるであろう。

どうすればーーーーーー、と多摩が思考を

巡らせた、まさにその瞬間の出来事だった。

 

「チッ……いい加減に通させろテメェッ‼︎

こちとら仕事抱えてんだよ‼︎」

 

サンズが砲火から逃れようと横っ飛びに

跳躍し、一度球磨達から距離を置いた。

そして、面倒臭げに溜息を吐くと、

ゆらり、と左腕を高く上げた。

 

「テメェらには()()()()()()()で充分だ」

 

その言葉と同時に、球磨達とサンズとの間の

海面が盛り上がる。

だがそれは一瞬の事で、海面は裂けてその中から

サンズの言う“もう片方の俺達”が姿を現した。

 

 

一言でそれを表すならば、「骨」と

称した方が適切だろう。

大きさは口を開けばゆうに人1人は

吞み込める程。

それは爬虫類に似た頭骨の形をしていた。

と言っても完全にそれとは言えず、

顎に該当する部位には金属のパーツが存在した。

 

「久しぶりの出番だ。……“呑め”」

 

そう言い放ち、サンズは上げた左腕を

球磨へと差し向ける。

刹那、その首は巨体には似つかわない速度で

球磨の方へと突進してきた。

 

球磨は咄嗟に未だ赤く焼けた連装砲を

連射し迎撃する。

数発の砲弾が蛇の頭骨へと直撃、

大量の黒煙と爆炎を噴き上げた。

 

……だが。

 

「ガガッ、ガガガガガガガガガッ‼︎」

 

骨と骨がぶつかり合う様な声を上げ、

暗い眼窩から蒼い焔を噴き出しながら

首は黒煙を吹き払い何のダメージも

なかったかのように、その巨大な顎門を

開いた。

 

「ッーーーーーー⁉︎」

 

球磨はこの事態を予想しておらず、

逃げるのが僅かに遅れた。

……いや、遅れていなかったとしても

その命をほんの一瞬だけ延ばす事しか

出来なかっただろう。

 

球磨の目前に、ゆっくりと

牙の生え揃った顎門が迫りーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛沫が上がる。

血ではなく、海水。

……もしかすれば血の飛沫も上がっているかも

しれないだろうが、近くにいた多摩には

大量の海水の飛沫によってそういったものは

全く確認出来なかった。

 

一瞬の後、飛沫の晴れた跡には球磨の姿は

なかった。

ただ、先の首が開いていた顎門を閉じて

そこにいるだけ。

 

「あ、ああ……」

 

多摩はそこで理解した。

理解してしまった。

自身の姉が、今先程、あの首に喰われて

死んだと。

もう二度と、その顔を見ることもないと。

 

 

「あ、アアアアアアーーーーーーッ‼︎」

 

刹那、多摩は慟哭の叫びを上げながら

それに向かい連装砲を乱射していた。

それだけではない。自らの持つ

魚雷も総動員してその首を、

球磨を喰らった首を沈めにかかった。

 

「クソがッ‼︎クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがァァァァァァァァァッ‼︎」

 

もはや自らの命などどうなっても

構わない捨て身の攻撃。

その攻撃は流石に効いたのか、首は

眼窩から蒼い焔ではなく黒い煙を

出しながら後退し始めた。

 

多摩はそれを追って砲撃を続ける。

先程の球磨がそうだったように、

過熱された連装砲に体を焼かれながら。

 

それを見てサンズは、本当に馬鹿らしいと

ばかりにハッ、と笑った。

今まさに、もう一人の自分が攻撃されている

というのに。

 

「本当に見苦しいな。そういうのは

生前腐る程見た。……もういいよ」

 

最後、哀しげに言うと、サンズは再び

左腕を上げて、今回は振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多摩の上に影がかかる。

何事かと上を向いた多摩が見たのは、

……()()()()()首。

 

「語弊があったな。もう一人の俺達ってのは

さっきのガキを喰ったその首だけじゃないんだよ」

 

サンズの首……否、サンズの艤装は

一つだけではなかったのだ。

そして、今回のサンズの艤装は顎門の

奥から610mm4連装魚雷が飛び出していた。

 

突然の奇襲、それも上部から。

多摩は目の前の球磨を喰らった艤装に

集中していた為にこれには対応出来ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私の目の前に顎門が迫る。

ああ、私も死ぬんだ。当然だ。これは

命のやりとりなのだから。

球磨姉もこんな気持ちだったのだろうか?

結局、私は球磨姉の仇討ちすら

出来なかった。

その事が私にとっては死ぬよりも辛くて

辛くてーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそったれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び水飛沫が上がる。

 

サンズはそれを確認しようともせずに

とある方向を見た。

それは、霧秀と天龍が斬り結んでいる

最中の現場であった。

 

「なんだあれは、たまげたなぁ。

あいつらまだやってんのかよ?」

 

サンズはそう言いながら背後の

2つの首に退くように命令する。

 

「さて。……そろそろ終わりだ」

 

サンズはそう言いながら、

片手にショットガン風の艤装を構えて

2人の元へと走り出すのだった。




≪サンズの艤装≫
ショットガンとか多薬室砲とかは
ゲンブのお手製。本来のサンズの艤装は
爬虫類の頭骨を模した艤装である。
尚首によって雷撃担当、対空担当がある模様。



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