転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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第3話のUA10000突破しました。
というか、なんで3話だけ……。


「警戒」

鎮守府と米軍基地を襲った爆撃から約2時間後。

 

付近の海域の警戒に行っていた北上達が戻り、

レンゲ達は比較的被害の少ない米軍基地の施設の中で

敵の動向について話し合っていた。

 

「遭遇した敵艦隊の構成は、戦艦1、雷巡1、

それに駆逐艦が2つ。駆逐艦は一体だけ

取り逃がしたけど、それ以外は撃沈しました」

 

「ル級にチ級、ニ級とホ級だった。

全て通常個体でeliteやflagshipはいなかったよ」

 

大井と北上が敵艦隊の構成と詳細を報告する。

 

「うちも艦載機で周りの海域を見てみたけど、

敵艦隊はおらんかった。多分やけど北上達が

遭遇した艦隊以外に敵さんはおらんかったちゅう

ことやな」

 

「僕達も一応潜水艦とかがいないか探って

みたけど、魚一匹見つかんなかった」

 

「……そうか。一応は態勢を整える時間が

出来たということになるから喜ぶべきか。

それとも、強力な空の援護を失った事を

悲しむべきか。複雑な気持ちだ」

 

糸井川は、戦闘機という強力な援護を

失った事実を重大に受け止めていた。

 

現在では艦娘が深海棲艦に対して最も

有利な手段であるが、艦娘という手段が

確立されるまでは戦闘機がその座に立っていた。

深海棲艦という小さな的を狙うには

戦闘機の機銃掃射や爆弾の投下といった

手段が有効であったからだ。

現在は艦娘にその地位は譲ったものの、

戦闘機は未だ深海棲艦に対しての有効性は

変わらない。

そのため艦娘の少ない欧州などでは戦闘機と

艦娘の複合戦術がよく使用されたりしている。

 

アメリカはその中でも戦闘機の性能に力を

入れており、沖縄に駐留している米軍基地

にも性能の良い戦闘機が揃っていた。

 

それが先程の襲撃で纏めてパー。

おまけに整備士も殆ど一緒に丸焼きに

されたとなれば戦闘機の援護は絶望的と

呼べるだろう。

 

「戦闘機がいないのはかなり痛いにゃ。

敵の方には空母がわんさかいるだろうけど

こっちは龍驤一人だけしかいないにゃ」

 

「せやなぁ。航空戦になったらお手上げやで」

 

そこに、ジャックがドアを開けて入ってきた。

 

「ジャック、合衆国からの返事はどうだった?」

 

その問いにジャックは首を力なく横に振った。

 

「本国からは、“現在西欧諸国との合同作戦の

真っ最中であり、沖縄に送れる機体はない”と

伝えられました」

 

「ちッ……合衆国は沖縄を見捨てるつもりか⁉︎」

 

思わず、糸井川は叫び、拳を握り締める。

ジャックは慌てて糸井川に言った。

 

「ですが、まだ沖縄には戦闘機の部品が

大量に残ってマス。焼け残った機体の

無事な部分を利用して修復すれば使えるかも

しれませんヨ?」

 

「だがどれくらいかかる?整備士が少ない

状況でやるとなればかなりの日数が必要な

はずだぞ?」

 

「その点は、民間の企業にも手伝って貰えば

数日程度でなんとかなりマス。

問題としては、その間にまた爆撃される可能性が

あることデスネ」

 

「それは民間の企業の工場でも借りれば

大丈夫だろう」

 

糸井川はふう、と息を吐きながら答えた。

 

「……hey,Jack. 少し用があるんだ。

ちょっと来てもらえないか?」

その声と共に、スキンヘッドの白人ーーーーーー

ハワードがドアを開けて、ジャックを

呼んだ。

 

「Oh, sorry. イトイガワ、そろそろお暇しマスヨ」

 

「ああ、戦闘機の件、よろしく頼む」

 

ジャックが部屋から出ていくと、

大井がレンゲに向かいある事を問うた。

 

「ところで、レンゲさん。気になることが

一つあるんだけど……どうやって爆撃される

前に上を見たの?音一つしていなかったのに」

 

「俺も……良く分からないんですけど、

なんか、上から嫌な……そう、

凄く嫌な感じがしたんです……本当に

なんて言ったらいいのか……」

 

「勘というべきにゃ。それか生存本能」

 

「野生動物じゃないんですけど……」

 

だが実際、多摩の例えはかなり的を得ていると

言えるだろう。

大きな震災が起きる直前に犬や猫が

なんらかの異常行動を起こすような

例があるように、レンゲの生存本能が

体の不調といった形で身の危険を

訴えていたのかもしれない。

 

「まあ、そんなことは今どうでもいいクマ」

 

「だな。球磨姉の言う通りだ。

今は敵の襲撃に備えておくべきだ」

 

木曾が腰の軍刀を差し、天龍に言う。

 

「天龍。俺達で見張りをやるぞ」

 

「分かった。シフト制にしておいて、

時間が経ったら誰かと交代した方がいいな」

 

「だったら僕がやるよ。遠征任務とかで

一日明かしたことあるし」

 

皐月が挙手して志願する。

 

「うちも皐月と一緒にやるで。レンゲも

時間が空いたら頼むわ」

 

「分かりました」

 

「じゃ、俺達はそろそろ行くから、

仮眠なりなんなり休養はとっとけよ」

 

そう言って天龍達は軍刀と日本刀を片手に

持って海域の警戒に向かった。

 

「じゃ、うちらは寝るわ。おやすみ」

 

龍驤と皐月は仮眠を取るために二段ベッドの

ある奥の部屋に入っていった。

レンゲも寝ようと思ったが、昼間にあったことの

影響か、目は完全に冴えていた。

 

「……今日は、眠れそうにないな……」

 

雨は、昼間の時より強くなっていた。


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