転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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新たな舞台へ。


「留学?」

漣達と買い物に行った翌日、俺は神崎さんに

呼び出された。

 

「レンゲさん、横須賀や内房以外の鎮守府を

見たくありませんか?」

 

そう、神崎さんは切り出してから話を始めた。

 

実は、三宅島の一件以来、あちこちの鎮守府から

レンゲに見学してもらいたいという連絡が

舞い込んできていた。

無論、殆どの鎮守府は条件を提示していた。

その中でも神崎提督は良さそうな鎮守府を

選び、それ以外はレンゲの知らぬ間に

突き返していたのだった。

 

「あくまでレンゲさんの意思を私は

尊重するつもりですが、行動を束縛する

条件等を提示した鎮守府は全て弾きました」

 

まあ、俺も束縛されるのは嫌だしな。

そんな訳で、俺は4つの鎮守府から

一つの鎮守府を見学する事になった。

呉、大湊、リンガ、沖縄。

俺は鎮守府が提示した条件を見ながら、

よし、この鎮守府にしようと決めた。

 

「沖縄でお願いします」

 

やはりか、と神崎は思わず苦笑いしかけた。

殆どの鎮守府がレンゲの見学に対して

条件を出した中、沖縄鎮守府だけは

何一つ条件を提示しなかったのだ。

レンゲが即座に選んでもおかしくはなかった。

が、沖縄鎮守府は他の鎮守府と違い、

少し特殊な鎮守府であった。

 

普通の鎮守府は日本の管理下に置かれているが、

沖縄鎮守府だけは在日米軍と日本が合同で

管理しているのだ。

WW2(第二次世界大戦)以来米軍が日本を

守ってきていたが、10年前に深海棲艦が

出現してからは自国の防衛につきっきりに

なってしまい、危うく沖縄が深海棲艦に

滅ぼされかけたこともある。

日本政府はアメリカに抗議したものの、

「アメリカは艦娘の数が少なく、欧州の

国々と協力しなければ深海棲艦に本土に

踏み込まれる可能性がある」とけんもほろろに

追い返された。

結果として現状はアメリカ空軍の一隊が

沖縄鎮守府に常駐するのみとなっている。

 

神崎はあることを心配していた。

 

「沖縄鎮守府ですか……しかしあなたが

行くとアメリカにあなたの事が知れて

しまいますよ」

 

そう、日本はまだレンゲの情報を秘匿

していた。もしレンゲの事がアメリカや

他の国に知られれば、

「深海棲艦の調査」として外国に連れて

行かれてしまうかもしれないのだ。

特にアメリカは日本との関係を利用して

強引に連れて行く可能性もある。

 

「あー、まあ……うん。そうなったら

そうなったであいつらもついてきそう」

 

「? あいつらとは?」

 

「丙型生命体」

 

ああ、と彼は納得した。

初めて発見された丙型生命体、サンズが

脱走した際、レンゲと天龍がそれと

戦闘をしている。

更に続いて発見された丙型生命体第二号、

イカリとは遠因ながらも致命傷を

負わせる行為をレンゲはしていると

内房の提督から報告があった。

また、このことがきっかけで丙型生命体は

三宅島から手を引いたとも。

このことから丙型生命体がレンゲを狙っていても

何もおかしくはない。

 

「……あっ‼︎レンゲさん、いいことを考えました‼︎」

 

「いいこと……とは?」

 

「レンゲさんのカバーストーリーを

作るんですよ」

 

レンゲは丙型生命体に狙われているという

嘘の情報を流す。深海棲艦に加え

丙型生命体まで敵に回すのだ。

艦娘の戦力が少ないアメリカはレンゲを

連れて行くことは断念するだろう。

 

「問題は俺に加えて丙型生命体の情報も

外国に開示しなきゃいけないことですね」

 

「むしろそのことは大丈夫と言えるでしょう。

深海棲艦の新たな種として報告すれば良いだけ

ですからね」

 

何はともあれレンゲは胸を張って沖縄鎮守府に

いけるという訳だ。

 

「いつ出発すればいいんですか?」

 

「4日後に出発です。レンゲさん以外にも

鎮守府を見学する艦娘もいますから、

彼女達と一緒に行動して下さい」

 

「わかりました」

そう言ってレンゲは執務室から退室した。

 

 

 

 

 

 

4日後。

 

「やっぱり天龍さんも来るよね」

 

「たりめーだろ。お前の監視役を勤めてん

だかんな」

 

天龍さんと一緒に羽田空港のターミナルで

待っていると、二人の艦娘の姿が見えた。

 

「なんで空母担当がウチだけなんや……

加賀とか暇そうにしとったやろ」

 

「大丈夫ですよ。龍驤さんは横須賀鎮守府

随一の古株ですから」

 

「誰が古株や」

 

龍驤と時雨の姿だ。

 

「天龍さんにレンゲちゃん。あとの二人は?」

 

「知らない」

 

「あ、あれかな?」

 

天龍の指差す先にはパフェを食べている

二人の少女の姿があった。

 

「なぁ……パフェなんか食べてて大丈夫なのか?

そろそろ時間じゃないのか?」

 

「ん。平気だよ。まだ45分もあるんだからね」

 

皐月が腕時計を見せながら言う。

 

「馬鹿、その時計時間がずれてんぞ」

 

「え……あー‼︎電池切れてるー‼︎」

 

「とっととパフェ食って行かねーと

乗り遅れるぞー‼︎長月、お前もパフェ食え‼︎」

 

「わー‼︎」

 

長月と皐月がパフェをがっつく。

俺は「天龍さん、先行きますー」と言って

他の人達と一緒にゲートに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄、那覇空港。

 

一人の少女がこれから来るだろう一行を

待っていた。

 

「もう何年ぶりになるかしらね〜。

天龍ちゃん、元気にしてるといいんだけど」

 

何処か間延びした口調でそう言うと、

少女は口元に僅かな微笑を浮かべた。

 

 




球磨の改二来てほしい人は俺だけじゃ
ないはず……。

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