転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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METALLICA大好きストストです。
しばらく日常回やります。


「青葉のお手伝い」

ある日。

 

「あ、いたいたレンゲちゃん。ちょっと頼み事が」

 

「? どうしたんですか青葉さん」

 

青葉が俺に向かって手招きしてくる。

俺が青葉の元に向かうと、はいこれ、と

写真屋とかで販売されている使い捨てカメラと、

フィルムをいくつかもらった。

 

「これって……カメラですよね」

 

「うん、そう。実はレンゲちゃんに

他の人達の昔の事について聞いてもらいたくて。

何故かね、青葉が来ると皆警戒するんですよ。

なんでかなぁ」

 

「ああ、そうですね」

 

「なんで納得するんですか⁉︎否定して下さいよ‼︎」

 

青葉がガクガクと俺を揺さぶってくる。

やめてください頭ガガガガガガガガガガガ……

 

「……まあいいです。それは青葉が他の人に

聞くんで」

 

じゃあ、と青葉はそう言ってどこかに

行ってしまった。

 

「誰に聞くべきかな?とりあえずは……」

 

一人、とっつきやすい人物から行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?俺の昔話を聞かせろ?」

 

天龍は甘味処・間宮で餡蜜を食べながら、

俺に向かって聞き返した。

 

「あ〜……うん。そうだなぁ。まぁ

身の上話ぐらいだったら聞かせてやるよ。

……俺の生まれた家は代々軍人とか自衛官を

輩出してきた家系でな。親父も海軍の軍人

だったよ。俺が生まれた時はなんだ男じゃ

ないのかって周りから落胆されたらしいけど、

5年前、艦娘の適性検査を受けたら合格。

途端に親族は手の平返しだよ。ふざけんなって

思ったね、あん時は。

唯一、俺が生まれた時

喜んでくれたのは親父だけだった。

……でも、もういないんだ。深海棲艦に

やられて、死体すら還って来なかった」

 

俺は、押し黙るしかなかった。自分では

ないとはいえ、同じ深海棲艦にやられたのだ。

 

「……別にレンゲの事を責めてはいないぜ」

 

天龍は真剣な表情で俺の頭をわしゃわしゃと

撫でた。

 

「親父だってその事を承知だったはずだ。

……と、なんか暗い話しちまったな。

レンゲ、餡蜜一緒に食うか?」

 

そう言って、天龍はいつものようにニカッと

俺に笑いかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習場近くにて。

 

「ん?艦娘になる前の私について聞かせて?

もちろん構わないが」

 

次に俺が接触したのは長門だった。

何故か今彼女は恐らく伐採されたばかりの

丸太を一人で担いでいる。

……コ●ンドーみたいだな。

 

「まぁ……非常に単調な生活だったな。

生け花の作法やら、茶道の作法やら、

毎日何かの稽古ばかりだった……」

 

遠い目をする長門。……ちょっと待て。

どこの華族だよ長門は。

 

「ああ、私は古い華族の家系だがそれが?」

 

嘘でしょ……。

 

「私だけじゃないぞ。呉にいる大和もそうだし、

熊野とかいう艦娘は何処ぞの社長の一人娘だとか」

 

「なにそれこわい」

 

「それゆえに、私が海軍に行くと言った時、

周りは大反対だったよ。なんせ女系の一族だから

跡取りがいなくなると思ったんだろうな。

私は“高貴なる者の責務(ノーブレス・オブリージュ)”だと

言ってなんとか周りを抑えたよ……。

本当、あの時は大変だった」

 

昔の事をたまには思い出してもいいかもな、と

長門はしみじみと呟き、俺に一緒にまた甘味処に

行こうかと誘った。

 

「あー、今日はもう一回行ってきたんで。

また今度誘って下さい」

 

「そうか……残念だ」

 

長門は踵を返して倉庫に歩いて行った。

……踵返した時に丸太が山城の顔面に

クリーンヒットした事は彼女に黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、潮とか愛宕とかに聞いて回ってみたが、

皆から様々な過去を聞けた。

電は流石に怖くて聞けなかったが……。

潮が青森出身だったり、足柄の経歴が

教師→艦娘だったりとかなり驚かされた。

 

その一方で。

親が深海棲艦に殺された、または孤児であった

艦娘も少なからずいた。

そう言った艦娘の話を聞くと、罪悪感が

湧いてくる。自分がやったのではないと

言い聞かせながらも、自分を責める気持ちは

収まることはなかった。

 

 

 

 

 

不意に青葉に会った。

 

「あ、写真撮れました?レンゲちゃん」

 

「……青葉さん」

 

俺は青葉に自分の気持ちを吐露した。

そうでもしないと、何かドス黒い何かに

変わってしまいそうで。

 

「……そう、か。レンゲちゃんの言っている事も

一理あるけど、だけど青葉はレンゲちゃんの

思ってる事はお門違いだと思うんです」

 

「……え?」

 

「だってほら、青葉達とレンゲちゃんは“仲間”。

そうでしょ?」

 

「あ……‼︎」

 

「青葉達が仲間であるレンゲちゃんを責める訳

ないじゃないですか。気にする必要はないですよ」

 

そう言って青葉は俺を抱擁した。

泣きそうになった。こんな事されたのは

いつぶりだろうか?

この姿になる前でも数年来はなかった。

久しぶりの感覚が、じわりと目頭を熱くする。

俺はそれを必死に堪え、青葉を抱きしめた。

 

俺達は仲間だという事を、青葉によって

改めて認識した、俺にとって忘れられない

一日となったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–翌日–

 

「さあ、レンゲちゃんのシークレット写真が

10枚セットでなんと800円‼︎

お買い得だよ‼︎」

 

「青葉‼︎その写真買ったッ‼︎」

 

「毎度ありー‼︎いつもお買い上げありがとう

ございます長門さん」

 

「青葉ァァァァァァァァァァァッ‼︎」

 

その後、青葉は長門共々電に説教されたのは

言うまでもない。




レ級がカメラ……あれ、前に
読んだ小説にそんなものがあったような
(すっとぼけ)

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